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言語・開発スタイル・風土の違い、面接の質疑応答は?
なぜ、外国人エンジニアたちはグリーを選んだのか
グローバル採用を強化中のグリー。海外での現地採用に加えて、日本での外国人エンジニアの採用にも積極的だ。グリーが展開するグローバル採用とはどんなものか?外国人エンジニアに求めるものとは?
(取材・文/広重隆樹 編集/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.03.25

 IT業界において外国籍のエンジニアは決してめずらしい存在ではない。プログラム言語は世界共通。外資系企業も多い。日本、欧米、アジアと、地域をまたぐオフショア開発も盛んに行われている。ただ、ソーシャルメディア業界の場合は、日本における世界に先駆けたモバイルインターネット市場での経験や、自社開発のプラットフォームやアプリケーションを、これから世界に展開しようという独自の立ち位置にある。

 いずれは世界の複数拠点で開発とサービスが同時進行で行われるようになるだろう。そうしたグローバル展開を見越しながら、いま外国人採用を強めようとしているのがグリーだ。グリーに転職してくる外国人エンジニアたちは、どんな経験や技術力をもっている人たちなのか。彼らがグリーで発揮する得意技とは何なのか。3人のエンジニアに聞いてみた。

【Part1】金融システムで培った安定性のノウハウを、インターネット業界に持ち込みたい
劉 斌(リュー・ビン)氏(35歳)
上海にある復旦大学でコンピュータ・サイエンスを学ぶ。日本SIベンダー、金融系ソフトベンダーを経て、2010年12月グリーに転職。
新しい技術が生まれるホットな場所に移りたかった

 劉斌さんが来日したのは今から12年前のこと。日本のSIベンダーに新卒で採用され、SEとして仕事を始めた。キャリアの大半は金融業界に詳しいソフトウェアアーキテクトとしての実績だ。2002年に金融業界向けシステム構築を得意とするソフトベンダーに転職。大手証券会社に出向し、自社パッケージによるオンライン証券サービスを構築した。折からブームになっていた中国株取引の基盤プラットフォームの設計に携わったこともある。 「10年間にわたる仕事を通して、常に最先端の金融系システムに触れてきたという自負はあります。しかし、今となってはそれも成熟期にさしかかっていて、新しい技術革新は生まれにくい。追い打ちをかけるようにリーマンショックがあり、金融系システムの投資は縮小する一方でした」

 常に技術革新が繰り返される、勢いのある領域で仕事をしたいというのはエンジニアとしての本能のようなもの。劉さんの目にはモバイルインターネット業界こそが、そうした可能性のフィールドに思えた。
「オープンソースなどを大胆に取り込み、技術的にも熱いところですからね」

 その一方で、前職での経験も十分活かせると思った。
「金融システムで培った、高い信頼性や安定性のノウハウをインターネット業界に持ち込み、新しいサービスを創出できる可能性がある。それができることが、自分の強みだと感じたのです」

 昨年12月にグリーに転職。現在は、スマートフォン向けのGREE Platformの開発に携わる。そのプラットフォームは、約240社のSAP企業向けの開発環境として提供されるもの。いわばお客様相手の基盤づくりだから、安定稼働は重要なポイント。劉さんのノウハウが十分活かせるのだ。

中国企業との協業経験をグリーでも活かしたい

 前職は大手証券会社を相手にしての大規模開発だったため、総勢100人規模の体制でプロジェクトマネジメントをしっかりやり、半年ごとのマイルストーンを着実に消化していくというのが開発スタイル。少しのミスも許されなかった。
「でも、グリーはクオリティと同時にスピードをものすごく重視します。少人数で、短期間でシステムを毎日のように更新していく。最初は面食らったけれど、エンジニアの自由が保証されているので、面白い。やっぱり開発者って、好きなことをやらせてもらえれば、どんどん夢中で仕事をする人たちですからね」

 12年の在日経験で日本語にはまったく不自由しない。 「でも、僕ほど日本語できなくても大丈夫。言葉って単なるコミュニケーションのツールでしょ。技術者としての専門知識、つまりネタがあれば、身振り手振りだってコミュニケートできる。なによりソースコードを見せれば、国籍なんて関係なく、上手い下手はすぐ分かっちゃうしね」

 グリーはこの1月、中国最大のインターネットサービス企業であるTencent(本社:中国広東省深セン、CEO:Pony Ma Huateng)と業務提携した。今後の中国市場でのサービス展開のための橋頭堡だ。
「前職で中国株の取引システムをつくったとき、中国のIT企業と提携した経験が僕にはあります。企業間提携の窓口など、グリーの中国展開で僕が必要になったら、いつでもお役に立ちたいと思っています」

 すでにグリーには中国語がネイティブの社員が、劉さんを含め4人在籍している。中国ビジネスでは彼らが重要な役割を果たすことになるだろう。
 同郷の奥さんとの間に子供が1人いる。
「将来は日本か中国か、というように国にこだわるんじゃなくて、グローバルにどこでも仕事ができるような大人に育ってほしいと思いますね」
 これからのグローバル人材の生き方を、親自らが実践してみせることになる。

【Part2】僕らしいユニークさを活かせる会社。これからはAndroidで勝負するよ
ジェイソン・パロット氏(24歳)
バンクーバーから北方700kmの小さな街で生まれる。ブリティッシュコロンビア州のITスクールで学ぶ。その後は独学でゲーム開発。3年前来日し、外資系のWebシステム開発会社を経て、2011年1月からグリーへ。
日本企業の堅苦しさが全然なかった

「バンクーバーのビルの地下にある共同住まいにこもって独学でプログラムを勉強し、ゲームの開発をしていたことがあります。そういう住まいのこと、向こうではベースメント・スイートって言います。実はそこで今の奥さんとも知り合いになったんです。彼女は、日本人だったので、この国と縁ができました」
 というのは、ジェイソン・パロット氏。彼女と知りあう前から実は日本のアニメやゲームのファンだった。今は日本の江戸や明治維新の歴史にも興味があるという。日本語はきちんと勉強したことがないが、来日3年目とは思えない上達ぶり。

 アメリカの大手コンピュータゲーム会社エレクトリック・アーツにもQA(品質保証)テスターの契約社員として3カ月だけ在籍した。そこでゲーム会社での仕事の仕組みをあっという間に理解した。長く会社組織にいればいいというものでもない。自分の個性、自分らしさ、つまり「ユニークさ」を発揮することができる場所を求めて、彼はまっすぐ、すばやく動く。
「開発者として仕事したいんですよね。だから、最初日本に来てお金がなくなったときでも、英会話講師の誘いには乗らなかった。インターネットでジョブサーチして、インド人社長が経営するWebアプリの会社に潜り込み、Java、HTML5、CSSなど最新技術を吸収した。するとスマートフォンの波がやってきて、僕、iPhoneよりAndroidの方が絶対好きだから、一生懸命Androidアプリを書いていました」

 そこは2年半でサクッと退職し、いよいよ選んだのがグリー。そこで本格的にAndroidやサーバー技術を活かそうと思ったのだ。ただし、この転職活動でも、自分らしさを貫くため、決して妥協はしなかった。
「最初はグリーは日本の会社だし、入ろうとは思ってなかった。僕の日本語は、独学だから漢字はあまり読めません。それに日本の会社って残業あるじゃないですか。僕、残業するのは絶対嫌だし。それにスーツを着るのもお断りだなって」

 それでも人材会社が強く勧めるので、面接だけは受けた。面接の担当者と会ってグリーのイメージが大きく変わった。その理由は面接での会話だった。
ジェイソン「スーツは?」 グリー「ノープロブレム」
ジェイソン「日本語は?」 グリー「漢字読めなくても会話ができればOKだよ」
ジェイソン「通訳者や翻訳者みたいに使われるのは嫌です」 グリー「もちろん!あなたはエンジニアですからね」

残業は嫌だったけど、今はまんざらでもない

 最後の関門が残業問題。「残業は確かにあります」。この回答には抵抗があったが、面接官とのやりとりがとてもリラックスしたものだったので、入社を決めた。
「僕を外国人としてではなく、一人のエンジニアとしてきちんと扱ってくれる最初の日本の会社だったから。入ってみて残業についての僕の考え方も少し変わった。嫌々残業するんじゃなくて、ここではエンジニアが自分の仕事を完成したいから、進んで残ってでも仕上げている。みんなで楽しく残業できるって、意外と面白いじゃないって」。

 希望通り、スマートフォン関連のチームに配属。携帯電話向けアプリをスマートフォンに移植する開発ツールの制作などにかかわる。これからはスマートフォン、とりわけAndroidの可能性を引き出すネイティブアプリも書いてみたい。
「Androidが用意しているAPIを日本の会社はまだフル活用していないっていう感じがします。SuicaのようなICカードやBluetoothへの対応もばっちりだし、なによりマルチプロセスで動くし、Androidは素晴らしいですよ。これで動くソーシャルアプリはものすごく面白くなる」

 しかし、ソーシャルアプリの技術は、一つのところに止まってはいない。技術への探求心は継続して欠かせない。
「半年から1年で技術が変わっていく。それが当たり前。僕だって、1年後にはまったく違うコードを書いているかもしれないし」
 プログラム開発にかかわるすべてのことは、ネットで学び、自分で書いて試すという繰り返しの中で、身体の中に染み込ませてきた。その自信が、彼のユニークさのバックグラウンドになっている。

【Part3】外国人だからって特別扱いしない。エンジニア主義の風土がいい
ロビン・晃・ブーシェ氏(25歳)
日米ハーフとして日本に生まれる。南カリフォルニア大卒業。西海岸のゲーム受託開発企業で1年半働く。ソーシャルアプリに未来を感じて、2010年5月、グリー入社。
転職活動で感じたグリーのハンパないスピード感

 生まれも育ちも日本。日米ハーフとして日本に生まれ、高校までインターナショナル・スクールで学んだロビン・晃・ブーシェさん。大学は南カリフォルニア大で、卒業するとすぐオレンジ・カウンティにあるモバイルゲームの会社で仕事を始めた。
「日本企業も含むゲーム会社のクライアントから受託して、携帯電話用のゲームを、すべてのキャリアに対応させたり、スマートフォンに移植する仕事。Java、BREW、iPhone、Android、Windows Mobileまで、あらゆるプラットフォームを経験しました」

 昨年初めに会社が倒産したのを機に、日本に行くことにした。どうせだったら今度はソーシャルアプリをやってみたいと、グリーを含むいくつかの企業のインタビューを受けた。そのとき感じたのが、グリーの業務スピードがめちゃくちゃ速いということ。
「転職活動のときはまだ住所はアメリカにあったから、1カ月の滞在期間中に仕事を決めなくちゃならなかった。毎週のように日本企業の面接を受けたのですが、グリーの回答が一番速かった。なにせ最終面接の返事は、その日中に来ましたからね。僕の事情を汲んでくれたのかなとそのときは思ったんだけれど、実はこの会社はもともと色々なことのスピードが速いんだ。それが入社してみてわかりました」

 驚いたのは、開発のスピードが速いこと。前職は受託開発型だったので、不本意ながらもクライアントのゲーム会社の意向に従わなければならないことも多かった。そのゲーム自体もデバイスに対応したネイティブアプリで、デバイス側にダウンロードして遊ぶものだったから、一度リリースしてしまえば、大きな仕様変更はたまにしかなかった。

 ところがグリーでは内製ゲームの開発だから、社内エンジニアが主導権を持ち、ぐいぐいプロジェクトを引っ張っていく。その上、ブラウザベースのゲームだからこそできる頻繁なパラメーターの変更。毎日の意志決定のスピードを速くしないと、ユーザの反応に遅れをとってしまうのだ。

3カ月悩んだことを3分で解決してくれる、スゴイ奴らがここにはいる

 社内のエンジニアのレベルの高さも驚きの一つ。
「日米どっちがすごいっていう比較はできないけれど、少なくともグリーには、凄いと思う人がたくさんいますね。特にプラットフォームの開発者やサーバー・エンジニアは天才の集まりですよ。僕が3時間悩んでいたことを、たった3分で解決してくれるんだから」

 日本生まれとはいえ、米国の会社とのカルチャーの違いは少し心配だった。特に、カリフォルニアは多人種・多国籍の人々が一緒のオフィスにいるのは当たり前。国籍なんて全然気にならない。でも日本企業では外国人はどうしても目立って、浮いてしまうのではないか、と。
「ところが、そういうことはなかったですね。外資系じゃないのに、不思議と外国人が日本人の間に普通に溶け込んでしまう風土があるみたい」

 現在は「海賊王国コロンブス」をiPhoneアプリに移植するチームの一員だ。
「移植作業って簡単そうに見えるけれどそうじゃない。まず画面サイズが違うから、画面に載せる文字数も違ってくる。画像の解像度を合わせつつ、そのクオリティを保つことも難しい。iPhoneはFlashが再生できないから、その部分をHTML5やJavaスクリプトに置き換えて、違和感をなくすという作業も必要。画面にタッチすることが増えるから、タッチエリアの設計などもありますね。なにより、iPhoneならではの機能を取り込みながら、携帯版との統一感を出すというところも苦労するところです」

 グリーのグローバル事業戦略の中では、アメリカ市場も重要なターゲットだ。
「今後、アメリカに行ってちょっと仕事をしてこいと言われたら、喜んで行きますよ。バイリンガルでバイカルチャーというのは、この会社での僕の強み。特に米国企業で働いた経験は、これからのグローバル戦略に大いに活かせると思っているんです」

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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