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「GREE Platform for smartphone」に国内最大規模の171社が参加
グリーのスマートフォン向け開発、国際事業展開を追う
グリーのスマートフォン向け開発や国際事業展開が止まらない。12月に発表した「GREE Platform for smartphone」には、すでに171社の開発パートナーが参加。また今期中には米国法人を立ち上げ、英語版を手始めにグリーの海外向けサービスも始まる。一瞬も目を離せないグリーの事業展開を追った。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.01.11
パートナー企業のスマートフォン向けソーシャルアプリ開発を支援

 グリーは、2010年12月6日、「GREE Platform for smartphone」の仕様をソーシャルアプリのデベロッパー企業向けに公開した。「GREE Platform for smartphone」とは、スマートフォン版のSNS「GREE」をプラットフォームとして、外部のデベロッパーがアプリケーションサービスを提供できる仕組みだ。すでにサンドボックスが公開されており、年末までに、171社のデベロッパーがこのプラットフォームをベースにソーシャルアプリを開発することを表明した。

 パートナー企業には、これまで国内フィーチャーフォン版「GREE」向けにソーシャルゲームなどを開発していた、ソーシャルアプリケーション業界の面々がそろうが、それに加えて、iPhone/Androidアプリの開発企業、さらにセガ、タカラトミーエンタメディア、ハドソンなど大手ゲーム会社も顔を並べる。171社は、他の国内SNS企業の開発プラットフォームと比べても多い数字だ。

 このプラットフォームの提供は、パートナー企業のソーシャルアプリ事業を最大限支援することが目的だが、「GREE」のユーザーにとっては、開発パートナーが増えることで、より多くのアプリケーションを楽しめるようになることを意味する。

サードパーティのミドルウェア、ゲームエンジンにも対応
伊藤 直也氏
メディア開発本部
ソーシャルメディア統括部長
プロデューサー

伊藤 直也氏

「開発パートナーにとっては、iPhone/iPod touchなどのiOSアプリ、Androidアプリという2つのネイティブアプリケーション開発向けに「GREE」のSDK(ソフトウェア開発キット)を提供することが大きな意味を持ちます。それに加え、iPhone/Android端末向けのWebアプリ開発を容易にするための仕組みも提供します」と、プラットフォームの“全対応”を強調するのは、ソーシャルメディア統括部長・プロデューサー、伊藤直也氏だ。

「iPhone/Androidというと、そのネイティブアプリケーションに注目が集まるが、占いなどのカジュアルなゲームは、むしろWebブラウザだけを使った方が遊びやすい。これまでフィーチャーフォン向けにゲームを開発してきた企業はWebブラウザでの開発に慣れているので、そのためのWeb対応でもある」と語る。

 さらにこれらのパートナー企業支援のために、「Unity」「Titanium Mobile」など海外サードパーティが提供するミドルウェア、ゲームエンジンへの対応も強化されている。例えばサンフランシスコに本拠をもつUnity Technologies社のUnityは、iPhoneでは非常に大きな成功を収めているゲームエンジンで、FacebookやMySpaceなどのソーシャルゲームでも利用されている。グリーは、これらのゲームエンジンに対応したSDKを用意し、ゲームと「GREE」のソーシャル機能の接合をより容易にする。

 これからはデベロッパーがiPhone用のネイティブアプリを開発する場合に、アップルが提供するSDKに加えてUnityなどのミドルウェアを活用するケースはますます増えていくだろう。「GREE Platform」に集うデベロッパーは、さらに「GREE」のiOS SDKを利用して、その上でアプリケーションを開発することができるようになる。

 こうしたレイヤー構造の上で開発されるアプリはどのようなものになるのか。
「すでに『麻雀 by GREE』と『Unlock!』というアクションゲームをApp Storeにリリースしています。これらがサンプルになるかもしれません。例えば、麻雀ゲームでは自分のアバターをゲームに参加させます。進行中のゲームの状況をつぶやいたり、上がり牌のスクリーンショットを撮ってSNSに公開できます。ゲームをしながら『GREE』のユーザー同士でコミュニケーションを楽しめる。実際、この前、社内のユーザーが“ダブル役満”を上がったときは、“いいね!”のリプライが相次いで、社内がにわかに盛り上がりました」(伊藤氏)

マネタイズのノウハウを惜しみなく提供し、Win×Winの関係に

 現時点のゲームで提供しているのはそこまでの機能だが、今後は「GREE Platform」の集客・課金などマネタイズ機能を活用するアプリが登場することを、伊藤氏らは期待している。小規模なデベロッパー企業がたんなるアプリ販売ではなく、「GREE」のコミュニケーション機能を活かして収益を生むチャンスが到来しているのだ。

 iPhoneではFlashが使えないという制限があるが、これをJavaScriptやミドルウェアで置き換える方法はある。これまでスタンドアロンのゲームしか開発したことのない企業にとっては、ネットワークや通信機能の実装は難しい問題。これらの技術的課題についても、グリーは細かくサポートしていく。デベロッパー・サポートの窓口に寄せられる質問については、伊藤氏も目を通しているという。

「ソーシャルアプリ開発で収益を上げようとするとき、一番難しいのは、アプリにどういう仕掛けを施せば、ユーザーが集まるのかというところ。この点では、自社製アプリで試行錯誤してきた経験が私たちにはあります。そのノウハウを最大限提供することで、デベロッパーの開発をサポートできます。フィーチャーフォン以上に表現力豊かなスマートフォンは、私たちプラットフォーム側にとっても、デベロッパーにとっても技術力の発揮の場であると同時に、新たな事業チャンス。この勢いは当分止まることはないでしょう」
 と、伊藤氏は言う。

メディア開発本部 ソーシャルメディア統括部長 プロデューサー 伊藤 直也氏

1977年秋田県まれ。青山学院大学大学院博士課程前期修了(物理学)。ニフティ、はてなを経て、2010年9月1日付けで、グリーに入社。自身のブログでも精力的にプログラミング技術などの実装ノウハウを紹介。また雑誌や書籍の執筆を通じたエンジニアの技術力底上げについても高く評価されている。

グローバルモバイル市場の成立で、国際事業のチャンスが広がった

 スマートフォンの普及であらためて活気づくソーシャルアプリ業界。デベロッパーと協力し、ユーザーを拡大しながら、その国内での勢いをグローバル市場につなげていくことも、グリーの役目だ。

 グリーが全社的な中期目標として掲げる「会員1億人」という数字。これを達成するためには、サービスを世界中に拡大する必要があることは言うまでもない。3Gネットワークの普及、スマートフォンのプラットフォームの統一など環境が整い始め、ようやくグローバルモバイル市場というべきものが誕生しつつある。それをリードするために、昨秋から同社のグローバル戦略は急ピッチで進んでいる。

 グリーのグローバルメディア戦略を指揮するのが、ソーシャルネットワーク統括部長・国際事業担当の荒木英士だ。12月だけでも米国などに5回出張し、20〜30社の企業を訪問。海外企業も巻き込んだグリーのサービス開発を進めているという。
「もともと、日本のゲーム産業は世界を制覇したこともあり、その力は秀でている。しかし、この10年で海外企業の競争力が高まり、ゲームを作る能力、資金力、マーケティング力の面で相対的に落ち込んでしまった。グローバルモバイル市場の成立はその劣勢を覆すチャンス。これまで世界展開など夢だった中小規模のデベロッパーにとっても、グローバル・ビジネスは現実味を帯びている。こうしたデベロッパーと共に私たちは世界で戦っていきたい」と高らかに宣言する。

 今期中には米国に拠点を立ち上げるが、すでにスタートアップ人材を獲得済み。そうした人材を核に、1年以内に現地オフィスを100人体制にまで広げる。「海外のソーシャルアプリ業界でもグリーの知名度は高い。日本にすごい会社があると。ただ、肝心のサービスが日本国内向けなので、早急に国際版を立ち上げパートナーとともに事業を展開していきたい」(荒木氏)

 国際事業の人材については、「現地採用が基本だが、既存のグリー社員のなかで、海外で働きたい人は積極的に外に出す。新たに日本で採用した人を送り込むこともあるし、海外で採用した人を、グリーのビジネスを学んでもらうために日本で働いてもらうこともある。グリーのエンジニアは世界中どこででもハイパフォーマンスが出せる、という状況を作り出したい」という。

 同時に海外のゲーム・デベロッパー、携帯端末メーカー、モバイル・キャリアとの業務提携も進める。デベロッパーについては事業スピードを速めるためにM&Aも検討する。こうした拠点展開と同時に、海外仕様のコンテンツ展開もスタートさせる予定だ。

「グローバル・ビジネス展開のベースになるのは、やはりグリー本体の技術力。伊藤らが全世界共通となるソーシャルメディアとしての『GREE』を生み出し、私はそれを国際化しながら同時に現地の文化に合わせたコンテンツを開発していくという関係」と荒木氏は言う。

荒木 英士氏
メディア開発本部
ソーシャルネットワーク統括部長

荒木 英士氏
さらなるエンジニア増員計画。1億ユーザーを目指してエキサイティングな経験

 スマートフォン向け「GREE」立ち上げのプロジェクトで、もともと荒木・伊藤の両氏は同チームの間柄。伊藤氏の視野にも海外市場は当然見えている。 「もともと私がグリーに転職した理由も、これからは海外で勝負を賭けていくという田中良和社長の言葉を聞いたのがきっかけ。このタイミングで勝負に乗らなければ、転職した意味がない。日本のネット企業の海外での成功事例を示さなくちゃいけない。グリーには成功したビジネスモデルと資金力があり、勝機は十分ある。国際事業成功のために、できることは何でもやります」と、こちらも意気軒昂だ。

 グローバル市場を視野にとらえたグリー。スマートフォン向けのサービス力、開発力を高めるために、年明けからさらなるエンジニアの増員が計画されている。
「国際的なIT企業での経験、ソーシャルアプリの企画・設計・開発経験などはもちろん重要ですが、そういった個別の技術は単なるハウツーの領域なので、3カ月もあれば対応できる。それ以上に求めるのは、インターネットの未来に対する信念」と、人材採用にあたってエンジニアのマインドを強調するのは伊藤氏だ。

「BtoCの領域でより多くの人に使われるサービスを生み出したいという情熱、変化があるからこそ、それが楽しいという姿勢は重要。さらに国際的な事業展開では、モノの作り方や決定の仕方などマルチな価値観を受け入れられるかどうかも大切になる。こうした多様性に対しては、私たちも柔軟でありたいし、これからのエンジニアにも求めたいところです」と、荒木氏が補足する。

 海外市場の調査を通して、荒木氏はあらためて日本のエンジニアと米国のエンジニアの給与格差に気づいたという。「西海岸で人を採用するとすれば、GoogleやFacebookとの競争になる。グリーの給与水準をそれに負けない世界水準に高めていくことも、これからの課題」と語る。

 具体的に求める人材像として、両氏は「WebアプリやiPhoneアプリを作って、ダイレクトにユーザーのフィードバックを味わったことのある人などはいいですね」と口を揃える。自分が作ったアプリを500人に使ってもらっただけで、エンジニアは興奮する。それがこれからは世界の1億人が対象なのだ。エンジニアにとって、他の環境ではなかなか得られないエキサイティングな経験。そのバトルフィールド(戦場)への入口はいま広く開かれている。

●米国オフィス始動。世界を変えたい人、積極募集! ⇒ http://www.gree.co.jp/recruit/career/us_career/

メディア開発本部 ソーシャルネットワーク統括部長 荒木 英士氏

2005年8月入社。PC版グリーのPMを経て、06年以降「踊り子クリノッペ」の企画・開発を率いる。「モバイルプロジェクト・アワード2008」で優秀賞を受賞。ソーシャルゲーム事業、PC版SNSのリニューアル、スマートフォン版SNSの立ち上げなどコミュニケーション・サービスとしての「GREE」の構築に関わる。2010年秋から国際事業の専任担当を務めている。

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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