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業界の つわものどもが ぶっちゃける クラウドは脅威?愉しみって?サーバエンジニア座談会
「後は任せた!」などと言われてシステムを保守・運用するサーバエンジニア。リリース後の改修がなぜか当然のように行われるIT業界にあって、彼らは最後の砦とも呼べる存在だ。そんな彼らが本音を爆裂! 話の中心はクラウド、仕事の危機感、日々の喜び……ほかじゃ聞けない話がぎっしり。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:11.01.17
サーバエンジニアが本音で語る「クラウドとは」
中村和夫さん
中村和夫さん
大学卒業後、30歳でサーバエンジニアに。数社を渡り歩くうちにサーバ構築、運用監視、障害監視など多様なスキルを積む。雑誌などへの寄稿も数多い。コミュニティに入っていつの間にやら「ボス」に。現在はネット系企業に籍を置く。
桑原 去年の後半くらいからクラウドが流行してきたでしょう。サーバやインフラエンジニアを置かずにサービスを始める企業も増えてきた。だけどこれ、本当は3〜4年前からあったことで、使っている企業は皆隠してた。だってお客にバレると「コスト掛かってないんでしょ、もっと安くしてよ」と言われるから。
 広告代理店の下請け何かがそうで、実はサーバはアメリカにあったりする。50万とか100万で請け負っても、借りているのが月に数百円だったりした(笑)。知ってる人は使ってた。

中村 この前もあるVPS(バーチャル・プライベート・サーバ)のサービスを使ったんだけど、月額1000円くらいで2週間無料。やりたいことがあって20分使って解約してタダ。そして、コスト以上にすぐに使えることが大きなメリット。サービスを考えたらすぐにできるので、サーバ管理者様にお伺いを立てなければいけない時代は終わってる(笑)。

桑原 海外のIaaSを借りたことあって、申し込みのクリックをすると、すぐに携帯電話に国際電話がかかってくる。「お申し込みありがとうございます。カードはVISAになさいますか……」などと言われ、それが本人とカードの確認になってるんだね。そして数千円でサービスが始まる。
 これで日本語対応やられたらどうなるのか。この会社は赤字覚悟でやっていると思うけど、今市場を刈り取るしかないと思っているんだろうね。

中村 だから、新しい事業が始まってサーバ管理者が「できません」なんて言うと、「じゃ、IaaSを入れるから辞めて」となってしまう。ここ2〜3年でこんなことがドンと出てくると思う。

桑原 SIもプライベートクラウドが普通になってきた。ただ、仮想化を始めたのと同じ理由で、SIerが他社にお客さんを取られたくないから。それに最近では、日本人の感覚を逆手に取ったうまい商売をするところもある。
 日本人は諸外国の人に比べて、大事なデータを信頼関係のない相手に預けられないと考える人が多い。そこでSIerは、「クラウドですが、御社のためだけのクラウドです。安くしますし、人も常駐させます」などという。単に「クラウド」って言葉でコンピュータの売り方が変えたたけなのに。

中村 それって「クラウド」だっけ?(笑)。企業のほうも、財務や顧客の情報は大事なデータだから自社で持って、別の業務はクラウド化するという話があって当然なのに、ゼロかすべてかの二択で判断している。先にコスト論があって技術論が出てこないんだ。

山田 僕は大学時代にベンチャー企業を立ち上げて、大手を含めてお客さんと接する機会が多いのですが、完全に2つに分かれていると思いますね。クラウドでもパッケージでも構わないのでアウトソースしたい企業と、自前で何でも持ちたいという企業。
 ただ、自前の場合は自社で担当者を育成する余裕がないので、誰が育てるのかという話になり、ボロボロになっているところが多い。それに、キーマンがすべてを握ってしまって、部下にすら仕事を教えない。あるいは、専門が深くなりすぎてトータルでコーディネートできる人がいない。そんな人がいても給料は総務と同じだったりするので、スキルを積んだら転職していく。

中村 いるね。異動したくないから知識をブラックボックス化している人。でも、実はせいぜいサーバのつくり方を知っているくらいだったりする。もうそんな時代じゃない。コストの話をすると100中98の企業はIaaSの話になる。
 僕はVPSがサーバエンジニアの食いぶちをつぶしていくように思う。経営層から見るとIaaSがあればサーバエンジニアは必要ないんだから。ネットワークは残るとしても常駐者はいらなくなるし、何かあったときに困ることはあっても、その頻度とコストを考えればカットするという経営判断もある。サーバエンジニアがいなくなり、次はネットワークエンジニアがいなくなる。サーバエンジニアはもっと危機感を持つべきなんだ。
クラウドが普及するとサーバエンジニアは失職する?
桑原 クラウドがサーバエンジニアの食いぶちをなくすのは明らかにそう。でも、サーバエンジニアにとっては雑務がなくなるので、クラスタリングの組み方に頭を使うなどの時間も増えてくる。だから、クラウドの裏側に入るスーパーエンジニアと、サーバの一般的な運用経験しかなくて職を失う人に分かれるのかもしれない。

山田 僕は企業側の視点で考えてしまうのですが、今のご時世、人材を流動化させたいというところが増えています。総務、労務、情シスって、企業の中で固定化している既得権益のある閉ざされた世界。
 そこをオープンにしたいと思っているのだろうけど、総務と労務は比較的うまくいっていて、最後の牙城が情シスやインフラ系職種。
 企業としては新しく入ってきた人が数カ月のトレーニングで仕事ができ、数年してまた別の部署に行けるようにしたい。

中村 本当を言えば、繁忙期には処理が重なるからこの部分だけクラウド化できないかとか、営業には非効率な作業が多いので新しいアプリを導入したいとか、今の情シスはそんな提案ができればベスト。でも、そんな簡単なことではないし、一般的なサーバエンジニアにもまず無理だけど。
 結局、クラウドの内側に行けるのは上から下までわかる人で、企業が求めているのも似たようなエンジニアになる。ある意味で先祖返りなのかと。

桑原 そう、昔はそんなスーパーエンジニアが普通だった。仮想化の設定も、コンピュータのぶん回し方も、カーネルの処理の仕方も普通に知っているような人。分業体制が進んだから、ほかを知らないのが当然というエンジニアが一般化した。
2000年以降に消滅していったスーパーエンジニアたち
桑原幸人さん
桑原幸人さん
専門学校卒業後、ネット系企業に。運用、認証、メールなど各種サーバを担当し、その後は通信系のコンサルタントに。起業経験もあるが、現在ではホスティング会社の研究員。本人いわく「アプリ屋ではなく、Webだけで食ったことはないです」。
中村 2000年に業界に入ったからそれ以前のことは知らないけど、最初のころはサーバエンジニアとネットワークエンジニアの区別もなく、普通にアプリも書いていた。バランサが出たあたり、2005年以降は完全にネットワークとサーバに分かれたような気がするかな。

桑原 宗教とまでは言わないけれど、流儀には厳しい人たちでしたね。例えば、Windowsのファイルが来たら読まんとかね(笑)。今じゃ笑い話だけど私の先輩は全員そうだった。添付ファイルがあったら、読まないで捨ててしまうとか。

中村 TOなら読むけどCCなら読まないとかもあった。そんな厳しい人たちに鍛えられて、下の人にそれを教えていくという感覚だった。

桑原 決して意地悪じゃないんですよ。コンピュータの性能が低かったから処理に時間がかかることをしないとか、編集しやすいテキストを元データにして利用するから、わざわざバイナリにする必要はないとか。
 それに、サーバは当たり前に壊れるし、当たり前に動かなくなると考えていた。当たり前にインストールには膨大な時間を食う。僕は自分でつくったマシンを仮想イメージで置いてコピーするので、インストールはしていない。昔は同じことをハードディスクでやっていた。サーバのクローニングは昔から行われていて、そのハードディスクを育てるのはまさにノウハウの固まり。その集大成がクラウドだと思っていい。

中村 「俺が考えていることは相手もわかっている」がなくなったね。例えば、アプリがしたいことをサーバエンジニアが想像できなくなり、向こうの言うことが自分たちのリスクかどうかで判断してしまう。

桑原 2000年前後にインターネットが爆発的に普及したから、万人単位のお客さんに対して短期間で対応する必要が生まれた。それをさばくには作業をルーチンワーク化して、「そこは触るな」という状況にならざるを得なかった。仕方がないことだけど、分業制が進んでしまったのはIT業界の暗部かもしれないね。

山田 分業化と関係あるかわからないけど、システムをパッケージやクラウドにすると、中身もインタフェースも業務も変わる。しかも、システム変更の3年サイクルが2年になり1年になり、ユーザーはもうお手上げの状態なんです。だから僕たちがサブシステムで昔と同じように仕事ができるようにしてあげる。
 例えば、業者が変わればサーバもDBも、当然のようにインタフェースも変わる。今までの仕事ができないんですよ。同じような画面やステップで帳票が出せればいいだけなのに、事前に提案できないのが実情。その差に気付いていても大きな問題だとは思わないし、コストの前には些細な問題と思われてしまう。特に大手企業は「箱ありき」ですからね。
サーバエンジニアが生き残る方法を探れ!
中村 IaaSが普及した後はIaaSの提供者がPaaSに上がってきて、大抵のお客さんはIaaSでなくてPaaSでいいという話だと思うので、構築するサーバはPaaSの裏側に入ってくる。するとエンジニアは、SaaSの組み合わせを考えるだけになってしまうかもしれない。 やっぱりサーバエンジニアは先のスーパーエンジニアになるか、クラウドにもSaaSにも興味のない会社で働くかの二極化になって、サーバ技術に対する価値が一般的になくなると思う。

桑原 PaaSを使いこなせるというのは非常に高いスキルでしょう。ただ、SaaSもPaaSもサーバではないし、その体系、使われ方、癖を知っていないと使いきれない。実際にSaaSやPaaSを数人でやっているベンチャーにニーズがあって伸びている。「Azureが使えて納期が30分の1」なんて言われると、お客さんは来るよ。

中村 あるいは、社内コンサルという生き残り術はあると思う。僕はプラットフォームは商売にならず、そこに流れるデータに価値があると思うんです。Webサービスならアクセスログはもちろん重要だし、社内ポータルの使われ方を調べて改善点を見つけるとか、たまったデータを活用するという視点もあるはず。無理やり「俺しか扱えないデータ」を人質に取ってしまうとかもね(笑)。
 サーバエンジニアは道具のお守りをしているだけだと会社に思われがちなので、道具の使い方をもっとアピールする。「運用=コストセンター論」に切り込んでいく。そして、こうした付加価値を提案しても会社が認めてくれなければ、転職したほうがいい。

桑原 仮想化、Webサービス、クラウド、PaaSやSaaSといろんな動きがあり、それを知っておくのはエンジニアとして普通のことだし、本もネットもあるので勉強できる。調べていけば、「こんな組み合わせだったのか」と納得もできるはず。
 いろんな勉強会が増えたけど、昔は20〜30人だったのが、今では100人とか珍しくない。しかも、いろんな人がきていて、「先週も会いましたね」という人もいる。皆それなりに頑張っているとは思う。
サーバエンジニアの「密かな愉しみ」や「嫌なヤツ」
山田誠一さん
山田誠一さん
大学時代に、主にDB系システム開発のベンチャーを立ち上げる。企業への提案、システム構築、運用などを一括して引き受けるため、自然とサーバ関連にも詳しくなる。電話の交換機なども扱うようになり、この日は工事の帰りで作業服での参加。
中村 サーバエンジニアの喜びは、上げたものが上げた通りに動くこと。ネットワークエンジニアがつながることに喜びを覚えるのなら、サーバエンジニアは「自分の城をつくる」イメージかな。手塩にかければかけるほど応えてくれるのがサーバ。だから、アプリをやりたいという人は少ない気がする。
 大家と店子の関係に近くて、店子(アプリ)がヘンなことをしても守るという番人の感じ。でも、ルート権限を持っているサーバエンジニアは強いから、お役人的かもしれない。権限があり、説得しないと動いてくれず、裏では好きなことを言っている(笑)。

山田 アプリは革新的なので、トライアンドエラーで試せばいいじゃないかというタイプが多い。動けばいいんじゃない、年に一度や二度なら落ちてもいいんじゃない、だったらやろうよ、みたいな(笑)。

中村 特にDNSとかRAあたりはネット上の俺の城で、当然管理者は複数いるのだけど、「こんなサーバにしたいよね」「これを入れると楽だよね」「スケーラビリティのある運用や監視はこのスクリプトぶち込むといいよね」とか運用面でのチューンナップが楽しくて。だからというか、美学が違う人同士は合わないと思うな。

桑原 美学というか、「これはやっちゃいけないな」というエンジニアがいる。例えば、引き継ぎをせずにいなくなるサーバ管理者。ルートパスワードがない。サーバは24時間365日動いていて、お客さんはFTPアカウントがあるので使えている。でも、特定のファイルだけロックが掛かっていて、「開けないんですけど…」という連絡。そいつを連れ戻して直させましたけどね(笑)。

中村 サーバエンジニアならまだ同情するけれど、SIerでひどいのは耐えられない。彼らが撤収した後で手順書どおりに切り替えようと思ったら、落とした方がまだよかったとか(笑)。何のための冗長構成なんだとか、待機系が信用できないので稼動系が落ちたらサービス停止にさせてくださいとか、実際にあった。

山田 サーバ移行のときにドキュメントが全くないというのは困る。「リプレイスしたいのだけど担当者がいない」という場合も多くて、社員の方がサーバを覗いたら動かなくなったので何とかしてくれとか(笑)。資料はどこですかと聞くと「ない」。業務の流れを聞いて想像するとか、もう大変です。

中村 ノラサーバ(野良鯖)というのが多くて、勝手につくって勝手に運用していたら周りが載ってきていつの間にか基幹サーバになっていたようなもの。もう誰も、何もわからない。
 ルートパスワードがなくてアタックしたり、一度止めさせてもらって、インストーラーからファイルマウントしてパスワード配列を変えたりとか……。クラウドの裏側の人がそんなサービス始めたらすごいね。

桑原 いやいや、実際にあるよ。結局、スキルセットのまばらなエンジニアがまばらな場所にいるから、管理されていないサーバがあちこちに出てくるわけでしょ。本当のノウハウがある人が管理してくれるのがいちばんいいわけで、それがクラウドのいちばんいい点であるべき。
 修羅場をくぐったバッドノウハウもあるエンジニアは本当にすごい人たちばかりで、復旧作業をどれだけ短期間に抑えるかの解決策も知っている。でも、そんなエンジニアは1000人もいない。企業単位で求めるのは無理なので、どこかに集約していく方向になる。相手はお客さんなので、ルートを書き換えて逃げるようなやつはいないしね(笑)。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
この座談会はピザパーティの形式で、ピザとビールとソフトドリンクを用意して、好き勝手なことを話してもらいました。エンジニアの座談会、これからもやりたいと思います。みなさんはどう思いますか?

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