• はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.92
エンジニア6割が「景気悪化で給与に影響あり」の実感
仕事が減った。残業代もカット。ボーナスも不安。エンジニアの働き方や、生活にどんな変化が起こっているのか。そこで、エンジニア500人に半年前と今の給与・残業・仕事事情を聞いた。アンケートから浮かび上がる、その実態は──。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.05.27
エンジニアの64%が給与に景気悪化の影響あり
 昨年秋、リーマンショックでより鮮明になった米国金融経済のバブル崩壊は、日本にもすぐに波及してきた。米国経済の減速は急速な円高ともあいまって、海外輸出に頼る日本の製造業に深刻なダメージを与え、それが消費マーケットにも影響を与えている。

 企業全体の決算状況をみても、2008年3月期まで6期連続で経常増益、5期連続で最高益を更新していた日本の上場企業だが、09年3月期は世界的な景気後退の影響で、7期ぶりの経常減益が確実視されている。輸出製品を手がける製造業を中心に業績が悪化。内需企業の多くも業績は落ち込んでいる。

 こうした景況の変化は、エンジニアの収入や働き方にどんな影響を与えているのだろうか。まず基本給の変化を尋ねた。(調査時期2009年4月、調査対象24〜39歳のエンジニア500人対象)「景気悪化の影響で、基本給に変化はありますか」という設問に、「基本給が一律ダウンした」と答えたのは16%。「基本給は上がっていない」が26%あった。「今は変わらないが、今後はダウンしそう」という回答も22%を占めた。
DATA1 景気悪化で、給与に影響あった?
DATA1 景気悪化で、給与に影響あった?
 これらを景気悪化のマイナスの影響ありとひとくくりにすると、その割合は実に64%に達する。以下のコメントを見てもわかるように、その影響はIT・ソフトウェア職種にもおよんでいることがわかる。もちろん逆に「不況にもかかわらず基本給がアップした」という回答もないことはなく(10%)、「特に影響なし」とする回答も約25%あった。
ナマゴエ!!
Q. 景気悪化で、給与に影響あった?
基本給が35万円から25万円に減らされた(31歳/コンサルタント)
経営悪化により、10%前後減額となった(29歳/システム開発)
毎年3000円から1万円アップするが、今年は一切なし(30歳/運用、監視)
システム開発部が大赤字を出したので、その補填のために定期昇給がなくなった(35歳/ネットワーク設計)
2〜3カ月先の仕事が見えない。その先から減額されるか、リストラされるかも(31歳/パッケージソフト)
基本給じゃないけど、手当がカット。30万円が27万5000円になった。しかも、出張抑制で、出張費もでない(35歳/セールスエンジニア)
ボーナスがなくなるという悪夢
 基本給への影響は軽微としても、2009年夏・冬のボーナスの減少を危ぶむ声は多い。ボーナスで収入のバランスを図っていた人も多く、具体的な数字を挙げて苦況を伝える声も見られた。
ナマゴエ!!
Q. 今年のボーナスへの影響は?
基本給は数年間全く上がらないひどい状況だったが、それでもボーナスがそれなりにあり、安い給料で我慢していた。しかし、これからはボーナスもかなり減り、年収も落ち、生活するのがやっとという状況になる(37歳/サービスエンジニア)
基本給は37万円のまま。冬のボーナスは全額カットされる予定(35歳/生産技術)
ボーナス支給時期まで、会社がもつかどうか……(29歳/パッケージ開発)
 09年夏のボーナスについての予想を集計すると、「支給なしの見込み」が7%、「支給額が減額の見込み」が58%、「特に影響なし」が24%となっている。残りは「まだわからない」10%というものだ。「まだわからない」と回答している人たちも、支給額や、支給の有無について、ネガティブな予測をしている人が多かった。
DATA2 景気悪化で、今年のボーナスへの影響は?
DATA2 景気悪化で、今年のボーナスへの影響は?
企業業績の悪化、業務の激減、人員削減も
こうした企業業績の悪化は、エンジニアの仕事の現場、取引先との関係にも如実にその影響が表れている。IT・ソフトウェア業種でも新規案件が激減しているという声が多い。案件数は変わらないにしても、単価の引き下げや、外注への契約打ち切りなどの余波を嘆く声も多く見られる。職場には、現実的に仕事がないため、稼働日が減らされたという声もあった。 取引停止、受注・発注減、単価の減少、コスト削減要求、社内予算・経費削減、残業抑制……など、職場の状況を尋ねると暗い話がほとんどだ。
ナマゴエ!!
ここ半年で、新規案件が激減した(35歳/Web系システム開発)
取引先から単価の引き下げ要求があった。外注との契約を切って、社員による対応が増えた(39歳/オープン系システム開発)
これまで、外注していたものを内部でやるからと言われ、長い付き合いだった取引先がなくなった(24歳/Web系システム開発)
稼働日が週2日になっているところもある。先月は週1日だったので今月はちょっとよくはなっている(31歳/パッケージソフト開発)
月の残業代は35%のマイナス
 「残業がなくなったため、給料は月に10万円ほど減った」と、愛知県の機械・機構設計エンジニア(28歳)は書いている。基本給は変わらずとも、残業代が減れば、手取り収入の減少につながるのは当然の話。

 今回の調査によれば、2008年12月には平均26時間、最大で120時間こなしていた月の残業時間が、09年3月には平均20時間と大きく減っている。また、12月には残業時間「0」という回答が「107人」であったのに対し、3月では「166人」と5割以上増えている。残業時間の削減に伴って、残業代も減る一方だ。12月の平均残業代が「3万3673円」に対して、3月は「2万1919円」。35%のマイナスということになる。
DATA3 景気悪化の影響で、人員削減に変化は?
DATA3 景気悪化の影響で、残業時間に変化は?
 ワークライフバランスの観点からいえば、残業は少ないに越したことはないが、基本給を含む賃金ベースが上がらない中、エンジニアにとっての残業代は生活を維持するための収入源のひとつであったことは間違いない。その意味では、残業代の約4割削減は、エンジニアの生活を直撃することになる。寄せられた声も切実だ。
ナマゴエ!!
基本給は変わらないが、残業がカットされた。また昇格が停止された。昨年結果を出したのに昇格できず、残業代もカットされるので、年収は2カ月分以上減るだろう(30歳/セールエンジニア)
会社全体で業務が減り、残業するまでもない(34歳/制御系SE)
残業代カットのため、残業するなと上司より言われ、定時になると全員帰宅させられる(30歳/運用、監視)
派遣社員の解約により一人当たりの仕事量が増えた。また、残業規制により残業ができなくなったため、サービス残業が増えた(26歳/機械・機構設計)
仕事量に変化はないが、残業がまったくできず、一時帰休まであるので、家で仕事をするしかない(30歳/生産技術)
派遣社員がいなくなった職場。次は正社員か?
  経営者側からみれば、コスト削減の究極の策は人減らしだ。昨年までは派遣労働者のリストラや新卒者の内定取り消しが話題の中心だったが、今年に入ってからはリストラの対象は正社員にもおよんできた。大手電機メーカーによる人員削減の発表も相次いでいる。急激な収益の低下の前には、なりふりかまっていられないというところだろう。

 こうした人員削減は今回のアンケート対象のエンジニアの身近でも起こっている。500人の回答のうち、「景気悪化の影響で職場の人員が削減された」と回答したのは48%に上る。
DATA4 景気悪化の影響で、人員削減に変化は?
DATA4 景気悪化の影響で、人員削減に変化は?
ナマゴエ!!
製造現場を担う派遣の人が、業務縮小に伴って一斉に解雇された(26歳/半導体設計)
業績悪化に伴い、派遣社員解雇。正社員も40歳以上はリストラ対象となり、面談が行われ、希望退職を募った(31歳/生産技術)
業績の悪かった事業部は、派遣社員が全部切られてしまった。また、その事業部の社員の多くは、他部署に異動になってしまった(30歳/品質管理)
もうすでに生産ラインにおいては、90年代バブル崩壊後、ぎりぎりの人数でやっているので、削減はされていない。ただ、他部においては、正社員が定年となって減った分を正規社員で補充せず、派遣社員で埋めている(39歳/生産技術)
 また、正社員への希望退職勧奨など、人員削減対象の広がりは、製造業では深刻だが、それに比べると、IT・ソフトウェア業界はまだゆるいという印象もある。ギリギリの人数の正社員をコアに、景気変動を派遣社員の増減で調整するという、日本企業の雇用スタイルが定着していることがうかがえる。これがどこまでもちこたえられるかは、ひとえに今後の景気動向にかかっている。

 景気悪化の影響で「失業」という文字が、身近なものになりつつある。経済諮問会議では、経済社会総合研究所所長・岩田一政氏は、「来年後半か来年末には、失業率が7%(今年2月は4.4%)まで上がる可能性」を指摘した。失業率7%といえば、失業者500万人。まさに悪夢としか言いようがない。こうした悪夢のシナリオを実現させないために、政府、地方自治体、政党、企業経営者はもとより、働く人すべての知恵と創意工夫が問われている。
  • はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
あなたを求める企業がある!
まずはリクナビNEXTの「スカウト」でチャンスを掴もう!
スカウトに登録する
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
残業が減って、早く帰れる。当然ながら、そう単純に喜んでいる人はあまりいませんでした。無駄な仕事の効率化ができた、というポジティブな意見もありましたが、仕事が減ってしまって残念がっている人、人員削減で業務量は増えたのに、残業禁止で苦しんでいる人が多かったように思います。早く景気回復してほしいものですね。

このレポートの連載バックナンバー

エンジニア給与知っ得WAVE!

キャリアプラン、ライフプランの設計に「お金」の問題は欠かせません。エンジニアのお金に関する疑問に独自調査データとトレンド情報でお答えします。

エンジニア給与知っ得WAVE!

このレポートを読んだあなたにオススメします

エンジニア給与知っ得WAVE!

景気回復と残業規制でエンジニアの残業はどうなった?

エンジニア給与知っ得WAVE!景気は徐々に回復しつつあり、労働統計上では残業時間も伸びる傾向にある。ただ、景気低迷期に、賃金総抑制やワーク・ライフ・バランス的…

景気回復と残業規制でエンジニアの残業はどうなった?

エンジニア給与知っ得WAVE!

勤務先業種で満足度に格差!2011年賞与平均は106万円

エンジニア給与知っ得WAVE!東日本大震災や原子力発電所の事故に揺れた2011年。大企業のボーナス事情は明るかったが、中小企業は、非常に厳しい結果が報告されて…

勤務先業種で満足度に格差!2011年賞与平均は106万円

エンジニア給与知っ得WAVE!

20代、30代エンジニアの平均貯蓄額は、476万円!

エンジニア給与知っ得WAVE!景気の先行き感がいまだ不透明な時代に、頼れるのは貯金。とはいえ、給与・ボーナスが伸び悩むなかで、蓄財はそう簡単ではない。IT系と…

20代、30代エンジニアの平均貯蓄額は、476万円!

エンジニア給与知っ得WAVE!

前年比アップでも不満。2010年冬ボーナス平均は56万円

エンジニア給与知っ得WAVE!2010年冬のボーナス。デフレの深まり、円高の進行など景気の先行き感は不透明が続くが、大手企業では前年比プラスに転じているものの…

前年比アップでも不満。2010年冬ボーナス平均は56万円

エンジニア給与知っ得WAVE!

大手SIer・化学が健闘。2010年夏ボーナス平均は59万円

エンジニア給与知っ得WAVE!大手企業では3年ぶりに前年を上回っている一方で、中小企業ではボーナスの減額や、支給なしという企業もあるようだ。景気回復の波に乗る…

大手SIer・化学が健闘。2010年夏ボーナス平均は59万円

応募者は「イケた!」と思ったのに……なぜ不採用?

スキルが高い人材でも「NG」を出した人事の証言

求人の募集要項にあるスキルは満たしていたのに、なぜか結果は不採用。そんな経験をした人も多いのでは? では、採用に至らな…

スキルが高い人材でも「NG」を出した人事の証言

この記事どうだった?

あなたのメッセージがTech総研に載るかも

あなたの評価は?をクリック!(必須)

あなたのご意見お待ちしております

こちらもお答えください!(必須)

歳(半角数字)
(全角6文字まで)
  • RSS配信
  • twitter Tech総研公式アカウント
  • スカウト登録でオファーを待とう!
スマートグリッド、EV/HV、半導体、太陽電池、環境・エネルギー…電気・電子技術者向け特設サイト

PAGE TOP