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明日に向かってプログラめ!!PARTV vol.10/10 猪子寿之@チームラボは、今も昔も少年ジャンプ!
イケメン、185pの長身、東大出身、優良ITベンチャーの社長、数々の受賞歴、パリの美術館に出展するクリエイター……と書くと、まるでスーパーエグゼクティブのようですが、猪子さんの魅力は何といっても“ハート”。一度でいいから彼と話してみてください。絶対にとりこになるはずです。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:09.04.17
プログラミングとは、空想や妄想を現実にする道具である
猪子寿之さん
「PLAY」
「PLAY」
「Rhythm」
「Rhythm」
勝手に水墨画が広がり、勝手に街が育つケータイ
このケータイ、むちゃくちゃカッコいいですね。全面ディスプレイで、墨絵が広がり錦鯉が上ってく(上の写真)。
ホントすか? これは2007年の「au design project」に出した「Rhythm」という作品なんです。このプロジェクト、外側のデザインにこだわったプロダクトデザイナーの作品が多かったんですけど、僕は外も中もどっちでもよくて、インタフェースのデザインを革新したかった。
 じゃあ何が革新かと考えたら、インタフェースって、機能のため仕方なくあるものなんですよね。ユーザーがしたいのは電話を掛けたりメールを送ることで、ボタンを打ちたいわけじゃない。目的のための行為を実現する、そのしょうがない存在がインタフェースなので、そこをオシャレにしてもオシャレなしょうがないができるだけでしょ。
 だったらその行為に、目的とは関係ない別の価値をつけちゃおうと思ったわけ。ケータイの操作ではたくさんのボタンを押すから、ドラムを打つリズムのように、ボタンを押す間隔に合わせて映像が動くようにした。ボタンを早く打ったり遅く打ったりする速度をアルゴリズムで制御して、ディスプレイに水墨画が描かれたり、広がったり、メールを送信すると鯉が泳ぎ始めるとか。
猪子寿之さん
こちらのケータイはキャラがかわいいですね(同)。
「PLAY」というんですけど、インタフェースが街で、電話帳の人たちが住民。仕事仲間にばかり連絡していると街がオフィス街に、友達とのやり取りが多いと南国リゾートに変わったり、ラブリーなメールが届くとかわいい画像になったり。また、不在着信がたまるとその人が怒って街を壊したり、電波状況が悪いと皆がハゲになったりもするんです。
ユーザーがタグ付けなどをするんですか?
全然。平日の昼間に発信するとビジネス街、週末の夜は歌舞伎町のような街並みといったキーが振られるような設計で、ラブリーかどうかは文面のテキスト解析、街が昼や夜に変わるのは時間によります。
唯一の心配は「飽きる」ですかね?
そうかもしれないけど、操作に関しては愚直に作っているから大丈夫だと思う。「Rhythm」も「PLAY」も画像が勝手に動いているだけで、動かすために必要な操作は一切ない。ほっといて、普通にケータイを使っていればいいんです。むしろ、使い続けるうちに愛着が出てきて、「街を壊したくないから早く出なくちゃ」なんて思ったり(笑)。
これ欲しい! 実用化はされないですか?
一時はそんな話があったんすけど、いつの間にか消えてしまって……。ソフトウェアもディスプレイなどの筐体部分もそんなにコストはかからないはずだから、全然ありだと思うんですけどね。新しいソフトをハードに入れるわけですから、ハードメーカーさんが二の足を踏んでしまうのかも。auさんにプッシュしてくださいよ。
auさん、これ売れるよ! 完成したらTech総研の記事でPRするよ!
猪子寿之さん
プログラミングは苦手、アルゴリズムを考えるのが好き
プログラミングを始めたのはいつからですか?
大学のころですね。大学に入ったのが1996年でインターネットがはやり始めていたから、自分で何か作りたいと思って、まずは独学でCを覚えたのかな。グシャグシャして何もできなかったけど(笑)。2年の後半には専門の授業が始まって、そこでちゃんとプログラミングを習った感じです。でもね、プログラミングは苦手。アルゴリズムを考えるほうが断然好き。
猪子寿之さんのキーボード
……え、苦手??
さっきの「PLAY」も生態系のアルゴリズムで勝手に街ができていくわけです。生態系って、例えば森はランダムに生まれているように見えるけど実はバランスよくできていて、同じことが都市にも言えるんですね。秋葉原に電気店が増えると次にレストランができて、かといってレストランが際限なく開業するわけではなく、どこかでバランスが取れていく。実際に2年前の秋葉原は電気街ばっかりだったけど、レストランができて儲かったという話も聞いたことがあるし。自然と社会って、シンプルな論理でよく似た現象を起こすんですよ。
えっと、これはプログラマの記事なので、もう少しプログラミングの話を……。
大学を卒業したときに会社を設立したのだけど、同時に大学院にも進んで、院時代にはプログラムを書いていましたよ。創業メンバーは僕の高校や大学の友達とかその友達とかの5人で、全員が工学部の情報系出身でプログラマ。今は取締役をやっているけど、2人は現役でバリバリ開発している。だから、プログラミングの話ならCTOとかに聞いたほうがいいかも。
あ、いいです。では、猪子さんは経営に集中しているとか?
経営の仕事は一切やってないよ。誰かがやっているんだと思う。もともとうちは、社員の8割がプログラマを中心としたエンジニアで、残りの1割がデザインで1割がその他。プランニングをするコンサルタントはいるけど、営業部隊はないですしね。エンジニアが作品を作って、それが評価されて、また依頼がくるという感じなんです。
 CFOもいません。というより、財務担当者は全社でひとり経理がいるだけ。元プログラマで、経理がしたいっていうから。
チームラボの最初の作品はレコメンデーションエンジンですよね。
僕はアルゴリズムと全体の設計を考えた。自分の中に問題があって、「こうなったらいいのにな」という方法を探して、革新になるものを考える。今の仕事でもアルゴリズムにかかわることもあれば、どういうアイデアにするとオモロイかというプランを考えたり、プロジェクトによっては細かい部分まで入っていくこともある。ただ、実装するのはほかの社員ですね。
チームラボが製作した「アイディーユープラス」の企業HP
チームラボが製作した「アイディーユープラス」の企業HP
ほかにも、検索エンジン「サグール」や動画検索サービス「サグールテレビ」を開発していますし、企業のホームページも作っていますね。
最近作ったのは株式会社アイディーユープラスさんのHP。これですけど……ほら、画面に絵を描いたり、ビルや車や木を付けることができるでしょ。人が左側から落ちてくるんだけど、青い線を引くと加速したり、オレンジだとジャンプしたりね。ビルは何かの圧力が掛かると倒れていくし、樹木は種を落としてビルやボールに当たると、それらが上に飛んで行くんだ。そして、思わぬときに落ちてくる。
ヤバい。遊んじゃう(笑)。ところで、「あなたにとってのプログラミングとは」をいつも聞いているのですけど。
僕はプログラマじゃないんだけど(笑)。そうね……空想とか妄想とかを実際のモノにする道具。
少年ジャンプと任天堂のマリオに囲まれて育った
猪子寿之さん
チームラボは、昨年12月にパリのルーブル宮内装飾美術館で開催された、「感性 kansei Japan Design Exhibition」に出品していますね。
日本のデザインを紹介する試みだけど、ただ和風の作品を展示するのではなく、日本とヨーロッパでは思想や美意識が違っていて、日本の長い歴史の延長線上に今のデザインがあることを、現地の人に体験してほしかった。そして、単なる伝統ではなく、最新の技術を含めて、空間そのものを提供したかった。
 そこで、高さ2.7mのLEDディスプレイを12台置いて、3DのフルCGでアニメーションを流したんですよ。実際にCGを作っているのは3人くらいだけど、チームで知恵を出し合って、一からチームラボでつくったもの。1年くらいかかったかな。
猪子さんはそもそもアートに興味があった?
大学では応用物理系の計数工学科にいて、研究テーマは「隠れマルコフモデルによるオンラインの手書き文字認識」。大学院では自然言語処理だったけど、最後のほうは専攻をアートに変えてしまった。チームラボでも創業時からアート系の作品を続けてきたんです。
 ただ、アートが特別好きというわけじゃなくて、テクノロジーでもクリエイティブでも、人間の創造性で新しい領域にイノベーションが生まれて、未来へちょっと進むのがすごい好き。だから、技術もアートも境界線はそんなにない。
生み出す発想は何かが降りてくる、とか。
いやいや、すごく論理的でパリの作品もそう。西洋の遠近法の絵は空間を論理的に平面化しているじゃないですか。だから、方法を知れば誰でもできる。一方で、日本の水墨画は感性で平面化しているから、個人によって手法が異なるというけど、僕はそうじゃないと思う。遠近法とは違った論理的な平面化の方法があり、それは、3次元空間の中に物を置いて平面にしていたと思っている。
 その論理を表現したのがこの「花と屍」で、コンピュータ上に3次元空間を作って、そこに人や木や建物や雲を置いて、眺めると勝手に水墨画に見えるというもの。それぞれの立体物を個別につくって、空間に配置して、動かして、ビデオカメラで撮っていくような方法でつくった。
 この論理が正しかったかどうかは、他人がこれを水墨画だと思ってくれるかどうか。そう見てもらえればうれしいし、違うと言われればまだまだかなと。
動画で見ると奥行きがあって空間が広がっていることがわかりますね。平面の日本画に見えますよ。
大人になるにつれて、日本の文化に興味をもつようになったんです。西洋人は考えないけど日本人なら思いつくようなものは何かと考えたら、西洋では行為は目的のために合理的であるべきと考えがちだけど、日本人は行為そのものを楽しもうとする、この差かなと。
 例えば、茶道はお茶を飲むことが目的のはずなのに、俺の飲み方のほうがカッコいいぜとか、俺のいれ方だと宇宙とつながれるんだとか、お茶を飲むまでのプロセスにこだわるし、行為を楽しんでしまう。そのベースは僕にも多くの日本人にもあると思いますよ。
猪子さんもチームラボの方も若いし、日本の文化に囲まれて育ったわけでも……。
日本の文化に囲まれて育った。マンガとゲーム。少年ジャンプと任天堂のマリオ。ジャンプは昔から読んでいるけど、マンガは何でも好きで、今もチョー好きで、雑誌なら週に5〜6冊は読む。大学のころはもっと多かったけど、仕事もあって減らしたから。マンガ(単行本)で好きなのは『寄生獣』とか『リバーズ・エッジ』とかかな。
 撮影に使うんだったら、たくさんあるからもってこさせますよ。おーい、ちょっといい?(と、社員の方が雑誌を用意してくれて撮影が始まる)。
最後に、これからやりたいことは?
「ヤバいもの」をつくりたい。それで最終的に、世界中の人が「ジャパン、ヤバい」と思ってくれればうれしいよね。
アイデアはあるんですか?
考え付くことはいっぱいあるんだけど、すぐに忘れちゃうんだ(笑)。
「感性 kansei Japan Design Exhibition」 に出展された映像インスタレーション「花と屍」
「感性 kansei Japan Design Exhibition」
に出展された映像インスタレーション「花と屍」
猪子寿之さん
猪子寿之さん 猪子寿之さん(31歳)
1977年生まれ。東京大学工学部応用物理計数工学科卒業後の2001年にチームラボを設立。2004年に東京大学大学院情報学環中退。同社開発の産経新聞社のニュースサイト「iza」が「Web of the Year 2006」を受賞。「au design project」で発表した「Rhythm」と「PLAY」が2007年度「第11回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査員推薦作品」に選ばれる。2008年12月の日仏交流150周年記念事業「感性 kansei Japan Design Exhibition」で映像作品「花と屍」を展示。2008年の「第6回Webクリエーション・アウォード」で「Web人賞」を受賞。同社の代表取締役社長のほか、ブランドデータバンク取締役、産経デジタル取締役を兼任。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
猪子さん、面白い! どれくらい面白いかというと、取材の後に無性にうれしくなって飲みたくなり、友人を誘い出してそのまま門前仲町で3軒ハシゴしたほど面白い! 無礼を承知で言えば、すごく「いいヤツ」っぽい。チームラボみたいな会社、日本に10社もあるのかな。

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明日に向かってプログラめ!!

編集部が注目したプログラマの趣味やハマりごとにフォーカス。彼らの人間性とその魅力を通して、プログラマライフをクローズアップします。

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