コーダーからの脱出！創造性不可欠な仕事がスタンバイ

誰も実現していなかった潜在的にニーズが高い技術を、自ら開発して新たなマーケットを築く。そんなマーケティング指向の強いヨシダカマガサコには、自然と必要なエンジニアが集まるという。優秀なエンジニアが門をたたく背景を探ってみた。

（取材・文／中村伸生　総研スタッフ／山田モーキン）作成日：09.02.06


			ヨシダカマガサコ……と聞いて、会社名だと思う人は少ないだろう。ましてやソフトウェア開発を行っている企業だとは思うまい。インパクトのある社名だが、開発した製品の衝撃度もそれに負けていない。同社の名前をゲームおよび携帯電話業界に知らしめたのが、「Spear」と「Spear Multi」だ。「Spear」は、3G携帯電話ネットワーク上でのP2Pによる高速リアルタイム通信を、世界で初めて実現したフレームワーク。「Spear Multi」は、さらに接続台数を複数にまで広げられるフレームワークである。NTT docomoをはじめ、au、WILLCOMの3キャリアで利用可能となっているこの技術によって、携帯電話でシビアな通信スピードを要求する対戦型のリアルタイム・オンライン・ゲームが楽しめるようになった。ほかにも、ゲームに限らずさまざまなアプリケーションの活用が考えられている。第22回デジタルコンテンツグランプリの「経済産業大臣賞」を受賞した上記2つのフレームワークは、同社開発のオリジナル技術であり、すでに数多くのコンテンツプロバイダーにソフトウェアライセンスとして供給されている。このようにヨシダカマガサコは、高度なソフトウェア技術をもち、独自プロダクトをつくる、2004年設立・社員8人のベンチャー企業なのである。

ヨシダカマガサコがここ数年で生まれたソフトウェア開発企業と一線を画すのは、当初から受託開発ではなく、自社プロダクトで勝負することにこだわったことにある。この点について社長の吉田氏は次のように語る。
「友人の鎌ヶ迫と共に起業する時点からP2Pフレームワークを自製して売るという構想はありました。ベースとなる技術も温めていました。そこに、携帯電話会社のネットワーク技術の進化が追いつき、パケット定額制のユーザー間でコミュニケーションをする文化が広がったことが、Spearをクローズアップしたのだと思います。つまり、先に技術とマーケティング構想があり、時代の流れに適応できたと言えると思います。弊社は、こうした技術によって新たなマーケットを築くビジネスモデルにこだわり続けます。目指すのはグーグル、アップル、マイクロソフト、任天堂など、技術とマーケティングの両輪がバランスよく回っている企業です」
そんなヨシダカマガサコだけに、エンジニアの採用にかける意気込みは大きい。吉田氏は言う。
「われわれは、テクノロジーベンチャーとしての矜持をもち、“今いちばん面白いことをやる”ことに全力投球しています。成長性と革新性、それにビジョンの合理性で、新しいことをどんどん手がけていきます。Spearもその一つにすぎないと言えますし、今年に入ってからは新たに携帯電話で画像共有ができるコミュニティサイトを立ち上げました。よいエンジニアはこれから伸びるベンチャー企業への嗅覚が鋭いもの。そんなエンジニアが指名で集まってくる会社でありたいですね」

株式会社　吉田鎌ヶ迫（ヨシダカマガサコ）
代表取締役社長
吉田　将人氏

吉田氏は、同社に入社する最大の魅力は、待遇や充実した教育などではなく、精鋭エンジニアたちと机を並べて仕事ができることだと言う。同社が求めているエンジニアは「マーケティング感覚に優れたソフトウェアエンジニア」ということだが、スキルやキャリア、専門性にはそれほどこだわってはいない。重要視しているのは、キャリアのあるエンジニアならば創造性、若い発展途上のエンジニアならば伸びしろの大きさということだ。
「キャリア層ならば、精鋭エンジニア同士の会話からマーケット意識の高さに触発され、培ってきた技術力と創造力を『どうしたらもっと多くの人に喜んでもらえるだろうか？』という方向で生かせるようになっていきます。若手層ならば、精鋭エンジニアたちから丁寧に指導され、近い将来に自分でプロダクトやサービスを開発していくベンチャースピリットと技術力が身につくはずです」
こう語る吉田氏だが、そこにはベンチャーならではの大変さもあると言う。
「人数が少ないということは、会社の成功を自分のこととして感じられるというベンチャーのダイナミズムを実感できますが、その半面、一人ひとりの責任の大きさも半端ではありません。プレッシャーを跳ね返しながら仕事に挑んでいくことは、エンジニアとしての成長に必ずつながりますし、リーダーシップを育むことにもなるはずです」

少数精鋭のトップエンジニアが集結したヨシダカマガサコの職場環境は、同じエンジニアにとって大きな刺激になるはず

成長面を中心にヨシダカマガサコへの入社メリットを語る吉田氏だが、実はファシリティに関してもプログラマ・オリエンテッドの姿勢が見える。開発リーダーの一人で、取締役でもある林氏はまず、プログラマの機材は社長以上のスペックのものが用意されると言う。
「当社において、プログラマはコーディング作業者ではなく、創造的な仕事を行うエンジニアとしてリスペクトされています。それだけに、才能やスキルを引き出すために、最高の環境が与えられています。開発用のマシンはクアッドコアのワークステーション。メモリもチップセット指定の限界まで積んでいます。ディスプレイは一人に20インチを2台用意。キーボードやマウスに関しても、長年にわたって使用できるインターフェイスとして優れた製品を推奨しています」
また、マネジメント面でも、プログラマの意欲やスキルを存分に引き出すことが第一に考えられている。林氏は次のように紹介してくれた。
「プログラマに、プログラミング以外の雑用はさせません。ただ、仕様の策定やサービス企画のミーティングには参加してもらいます。何をつくっていくか、ビジネスにどう乗せていくか、これもプログラマに期待される創造性発揮の一部なのですから」

「当社のエンジニアはリスペクトされる存在」と断言する林雄一郎氏（取締役副社長兼チーフソフトウェアアーキテクト）

ヨシダカマガサコは、「Spear」と「Spear Multi」だけの会社ではない。ベンチャーらしく一つの成功に安住せず、次々と新しいアプローチを展開している。その一つを吉田氏が紹介してくれた。
「今年に入って携帯電話の画像共有コミュニティサイトとして、『Piclee』を発表しました。これも、温めてきた技術とアイデアをベースに新たなマーケットを築こうとする、弊社らしいチャレンジです。弊社ではこうした新しいアプローチをどんどん手掛け、最終的にはグーグル、アップル、マイクロソフト、任天堂のような、技術力をベースとした世界的なソフト・カンパニーを目指していきます。その中心となっていくのは創造性をもったプログラマ。意欲的な方と出会いたいですね」
仕様が決まった開発案件でコーディングに明け暮れるプログラマにとって、こうした仕事を任せてもらえることこそ、同社の最大の魅力ではないだろうか。

「世界的なソフト・カンパニーを目指すために今、創造性をもったプログラマが必要」と語る吉田氏


	ヨシダカマガサコは、待遇面に関してはあえてそれほどクローズアップしたくはないと、吉田氏は言う。「待遇で仕事を決める人は、待遇で仕事をやめてしまう。待遇よりもヨシダカマガサコの仕事の面白さ、新しさ、カルチャーに共感できるエンジニアや、ベンチャースピリットを存分に発揮したいエンジニアに来ていただきたい。しっかりと結果を出したエンジニアに大きく報いるのは経営としては当然のこと」とのことだ。技術をベースにビジネスを構想し、それを実現に導くエンジニア集団という同社の本質こそが、エンジニアのマインドに訴えられるはずと同氏は考えている。彼らの熱い開発意欲は熱い求人魂に直結している。何か感じるところがあったソフトウェアエンジニアは、門をたたいてみるといいかもしれない。