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グリーンITには2つのアプローチがある | |||||
今や、環境に関するニュースが流れない日はない。私たちの環境に対する意識も高まっている。そんな中、IT業界では昨年ごろから注目を集めているキーワードがある。「グリーンIT」──。グリーンITというと、データセンターのCO2削減や電力量削減が話題になるが、実は省電力化や資源のリサイクルなど、地球環境に配慮したIT製品の提供およびITシステムの活用に関する概念である。 IT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)のシニア・アナリスト生熊清司氏によると、「日本のユーザー企業においても、ようやく昨年の年末ぐらいからグリーンITへの関心が高まってきた」と語る。その背景にあるのは、CSR(企業の社会的責任)が問われる時代になってきたこと。「グリーンITに取り組むことはCSRの活動の一貫。そのような取り組みをすることで、顧客満足度(CS)の向上が期待できるからです」(生熊氏) |
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しかもグリーンITへの取り組みは、コスト削減にも直結する。企業にとっては、コストを削減しながら、CS向上にもなるキーワードとして期待されているグリーンITだが、企業情報システムを開発している一SEやプログラマにとっては、「自分にはあまり関係ないこと」と思うかもしれない。だが、そうではない。先述したように、グリーンITにはIT製品そのものの省電力化や廃熱量の低減を図るアプローチだけではない。 「例えばITで流通や物流を変革したり、テレビ会議システムやWebミーティングを導入したりするなど、ITを活用して業務の効率化を図り、ムダなエネルギー資源を削減するアプローチもある。このアプローチを実現するためには、SEやプログラマの力が不可欠だからです」(生熊氏) では実際にグリーンIT領域でITエンジニアにどのような活躍の場があるのか、アクセンチュアでの例を見ていきたい。 |
Case:アクセンチュア グリーンITに関する知識の習得はステップアップのチャンス |
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●環境は新しい価値基準 「これまでの企業のITは、コスト削減や売り上げ向上、コンプライアンス、ガバナンス、リスク管理という価値を出すために導入されてきました。これからはそれらに『環境』という新しい価値基準が加わります」 こう語るのはアクセンチュアでグリーンITに関するコンサルティングサービスに携わっている森泰成氏だ。 「最近、ユーザー企業も自社ITのグリーン化を経営課題として考えるようになってきました。しかし、どの企業も今は何をやっていいのかわからないという状態。そこで私たちは、何を狙ってどのような施策を打っていくか、グリーンIT構想の策定支援を行っているのです」 新しいIT導入の価値、グリーンIT。グリーンITで難しいのは、「システムを成長させながらエネルギー消費を考慮した提案をしていかなければならないこと」と森氏は語る。例えばユーザー企業にとってIT機器によるCO2排出量は、生産や運輸設備などと比較すると圧倒的に少なく、成長と引き換えにするほどではないと考えられるからだ。「企業に利益をもたらし、かつCO2も削減するという課題が両立する施策を提案し、最終的にはCSRの向上につなげていく。これが私たちの仕事なのです」(森氏) |
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●どういうテクノロジが省電力化に貢献するか 森氏はITが環境に貢献できる領域を図のように提示する。「例えばデータセンターの省電力化に対しては、サーバ統合という手がある。100台あったサーバを30台にすることができれば、CO2削減につながるだけではなく、運用管理の手間も省けます。またオフィス環境の省電力化に対しては、シンクライアントの導入およびプリンターやファクス、スキャナなどを複合機に置き換える、という方法などがある。どういうテクノロジを活用すれば、省電力化できるか、常に論理的に考え、提案できる能力が必要です」(森氏) これらはITそのものの省電力化というアプローチだけではない。ITによって省電力化や有害物質低減などの機会をつくり出していくアプローチもある。「例えば請求書をWeb化し、紙を削減するような取り組みもそのひとつ。環境への配慮だけではなく、請求書を発送するという業務の効率化も実現できます。このようにグリーン化への取り組みはいろいろある。それらを個別に見るのではなく、全体を俯瞰できることが重要です」(森氏) |
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●経験者が少ない今がチャンス アクセンチュアでは、グリーンITの推進計画を策定するための方法論「グリーン・マチュリティ・モデル(GMM)」を用意。その診断結果に基づいた施策サービスを提供している。「現在、週に2件から3件の依頼があります。今後もグリーンIT関連市場はますます成長していくと期待されています。グリーンITに携わることは、ITで地球貢献するという社会貢献意欲が満たされるだけではなく、それを専門スキルとすることで、エンジニアとしてもステップアップが図れる可能性があります。今はまだ経験にモノを言わせる領域じゃない。狙い目の領域でしょう」と森氏。 では、どんなITエンジニアなら、この領域で活躍できるのか。「仮想化などグリーン化につながる個別技術の知識があるに越したことはないが、重要なのはいろいろな切り口を提示できる能力。もちろんロジカルシンキング能力、コミュニケーション能力は必須です」と森氏。 「グリーンITはこれからが本番。ガイドラインをつくるような仕事にも携われる、チャンスもある。そんな面白みも味わえる領域なんです」 |
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“eco”なエンジニアが高値を呼ぶ |
アクセンチュアの森氏の話からもわかるように、立ち上がったばかりの領域であるグリーンITは、環境への関心が高まる今、新しい価値基準として定着することは間違いなさそうだ。もちろん、すべてのSE、プログラマにグリーンITに関する知識が求められるわけではない。また、現在のグリーンITは、サーバやストレージなどのIT機器やデータセンターの省電力化が中心となっている。しかし前出のITRの生熊氏は次のように警鐘する。 「グリーンITは単なるIT機器の省電力化にとどまるものではなく、システム全体で実現するべきものと考えるべきです。つまり、グリーンITを実現するシステムとは、効率がよく、柔軟性の高いシステムのことでもあるのです。よってこれからのITエンジニアは、標準的な部品を使い、再利用できるようなシステムをつくるなど、常にムダのないシステム構築を心がける必要があります」 そのためのいい手本が日本にはある、と生熊氏。「家電や自動車の生産工程はムリ、ムダがなく、世界の中でも最も効率化、および標準化が進んでいるシステム。それを業務システムにも展開できれば、ムリ、ムダが省けるだけではなく、ビジネス環境の変化にも追随できる柔軟なシステムが構築できるはず。これがグリーンにつながる。これからはより効率的で柔軟なシステムのアーキテクチャを考え、提案できる人が、高値を呼ぶのではないでしょうか」(生熊氏) |
オブジェクト指向技術に関する情報交換の場、オブジェクト倶楽部。オブジェクト指向技術に関連するアジャイル開発プロセスやJUDE、エクストリームプログラミングなどに関するコミュニティを展開している。 7月1日に開催したイベントでは、「オブジェクト倶楽部のイベントに参加するとエコに貢献できるかもしれないって本当かな……」というキャッチコピーが付けられていた。「北海道洞爺湖サミットも開催されるので、タイムリーなテーマだと思ったから」と今回のキャッチをつけた岸田氏は笑って答える。 しかしその笑顔のウラには、大きな目的が隠されていた。「最近は技術というよりもむしろ“つくる人”に焦点を当てたセッションの充実を図っている」と天野事務局長が語るように、モチベーションやチームワークの向上を図ることで、仕事を効率化し、『キツい』『厳しい』『帰れない』という3K職場を技術者自らの手で変えていってもらいたいという思いがあるからだ。つまり仕事のムリ、ムダを省くための情報伝播である。これもひとつのエコへの取り組みである。 |
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オブジェクト倶楽部の運営母体のひとつ、永和システムマネジメント・取締役副社長の平鍋氏も「顧客に頼まれて作った機能のうち、65%は使われないものだったりします。これを解消するのは、コミュニケーション力。顧客との折衝力を身につけ、ムダのないものをつくることでエコになります」。懸田氏も続けて「ソフトウェアをつくるのにも電気が必要。ムダなものをつくらなければ、省電力にもつながる」と言う。 「オブジェクト倶楽部の活動の根底にあるのは、ワークスタイルの改善。3K職場を、『楽しい』『高い給料』『定時に帰れる』という3T職場に変えていくための知識習得の場。参加者はここで得た知識を企業に持ち帰り、広めていく。そして業界のグリーン化推進につながればと思っているんです」(平鍋氏) 仕事のやり方をグリーン化する手法を習得することも、これからのITエンジニアにとって重要な要素になりそうだ。 |
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