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スピーディーな開発ペースが合わず、大手電機から専門が生かせる化学メーカーに転職したF.Yさん
業界が変われば、製品開発にかかわるエンジニアの働き方や環境も大きく変わる。大学院で有機合成化学を専攻したF.Yさんにとって、化学メーカーを経て入社した大手電機での開発スタイルは、転職を決意させたほど肌が合わなかったようである。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:08.07.11
発売にこぎ着けるまで十数年以上かかるとされる医療の新薬ほどではないにしろ、材料研究からプロセス開発まで数多くのフェーズを経て製品化される化学・医薬製品。一方で、半年ごとの新製品発表に合わせて、短期間の開発プロジェクトが続くデジタル機器製品。この開発における時間感覚がまったく異なる二つの製品分野を経験したF.Yさん。有機合成を専門に修士課程を修め、新卒入社した化学メーカーでエンジニアとしてのスタートを切った彼にとって、一度目の転職先だった大手電機におけるデジタル機器の開発スピードは、配属されていたのが化学材料関連部門といえども、なかなかなじめないものだった。決して戦力になれなかったわけではない。その証拠に、二度目の転職の際には強く引き止められている。自分にフィットした環境のある企業を見つけるのが、成功する転職の原則であることを、F.Yさんの例が如実に示している。
Profile 大手化粧品製造企業 製品開発エンジニアF.Yさん(32歳)
私立大大学院で有機合成を専攻。大手化学に新卒入社後、転職市場で人気企業とされる大手電機A社に転職したが、開発環境が合わず、再び化学業界に転職によって戻る。
転職前 大手電機メーカーA社
(材料系開発エンジニア・30歳)
転職後 大手化粧品製造企業B社
(化粧品素材開発エンジニア・31歳)
年収約650万円。残業代込みだが、別に収入面に不満はなかった。 給与 年収700万円強。転職理由として収入のアップは優先順位が低かった。
8時半〜21時前後(残業時間は月に50時間以上) 勤務時間 9時〜19時(残業時間は半分以下に)
自分も周囲も忙しく、余裕がない雰囲気。個人個人の動き。 職場環境 少人数のアットホームな雰囲気。ミーティングも多い。
ドライな関係で、個人的な話をする機会も少ない。残業が多く、飲みに行く機会がなかった。 職場の
人間関係
みんな仲良くやっている。会社にテニス同好会があり参加。昼休みは会社敷地内のコートでリフレッシュ。
今回の注目!
希望の有機合成にかかわれたのは一時期だけ。高分子系の素材開発や材料研究など、さまざまな業務が任された。 仕事の中身 有機合成の知識を活かした化粧品素材の研究開発。市販品の開発にはやりがいが感じられる。
1テーマを決まったタイトなスケジュールの中でこなしていく。 仕事の
進め方
4〜5テーマについて研究開発をするが、自分でスケジュールを決められるのでやりやすい。
スケジュールで縛られた多くの研究員の中の1プレーヤー。 仕事の
役割
一人前の開発スタッフとして、仕事内容もスケジュール管理も任せてもらえる。
転職前編 話が違う!入社後、わずか半年で立ち消えに
大学院で有機合成を専攻し、新卒入社したのが大手化学メーカー。ここで医薬品の原薬製造方法の開発に従事した。本当は新薬の開発をしたいと考えて入社したのだが、これはこれで面白かった。だが、若かったせいだろうか、大きな不満はなかったがもっと面白いことがあるのではないかと考えて、誰もが知っている世界的な大手電機メーカーA社に転職した。本来の専門の有機合成に携われると面接で約束されたことも大きかった。

A社に転職し、最初に取り掛かったのは約束どおり有機合成をベースとした薬品の開発。ところが、約半年でこの業務は立ち消えになってしまった。入社半年で? 疑問が渦巻いたのは言うまでもない。なぜ、自分を採用したのだと不満が募った。そしてそのすぐ後に配属されたのは、高分子の技術による素材開発。さらにその半年後は材料系の開発である。いずれも有機合成とはほとんど無縁の領域である。電気や機械、ソフトウェアのエンジニアが多数を占めるA社だけに、化学出身の社員は専攻を無視されてひとくくりにされたようだ。
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そのうえ、半年ごとに開発テーマが異なる目まぐるしい風土にも強い違和感があった。追い立てられるようなスケジュールである。必死に取り組むのはいいが、プログラムの改良や機能の追加などのように、合成も材料も短サイクルで実現可能な世界ではない。答えを求めるスピードが速すぎるのである。アウトプットが十分な形で終えられない仕事に対し、徐々に苦しさまで感じてきた。
入社2年を待たずして、再度の転職活動に取り掛かることを決意した。
転職活動編 「有機合成がやりたい!」面接で正直な気持ちを吐露
まずは転職エージェントと転職サイトに登録した。化学系の募集は、案件こそ少ないが魅力的な企業が少なくないことを以前の転職で知っていた。でも、今回を最後の転職にしようと心に決めていた。IT系はそうでもないのかもしれないが、化学系のエンジニアで転職が何度もあるというのは、自分でもどうかと思う。だからこそ、医薬系の企業で、有機合成にかかわれることを転職条件の第一とした。それ以外の条件には目をつぶろうと思った。

思ったとおり、エージェントはいくつかの著名企業を挙げて、自分が募集条件を満たしていると言ってくれた。大手食品、大手繊維、大手化学……著名企業ばかりである。医薬系とは少し離れるが有機合成に携われるのなら、話を聞いてみたいと思った。

ところがその直後、転職サイトに“これは!”と思える募集広告が載っていた。メーカーB社が、有機合成のスキルをもつエンジニアを募集していたのである。すぐに応募メールを送ったところ、面接の日取りが決まった。
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最初の面接で自分の経歴や志望理由を述べるときに、ぜひとも有機合成がやりたいこと、前社は超有名企業だが、化学系の開発環境については疑問が多く自分の力を発揮できなかったことを訴えた。また、先方は、化粧品素材の開発現場が有機合成のエキスパートを欲しがっていることを正直に言ってくれた。この時点では相思相愛の転職であることが判明し、落ちたという反応は感じられなかった。だが、自分のスキルレベルを過信してはいない。自信を得たわけでもなかった。

数日後、役員面接となった。ここでは、「もし、転職後にテーマが大きく変わったらどう考えるか」という質問をされた。つまり、有機合成以外のテーマもあり得るということだ。先方が正直に話してくれたこともあり、「合成の知識を生かして、与えられたテーマに集中します」と答えた。
その日の夕方、合格の連絡が入った。
転職後編 理想の仕事に加え、思いもよらぬ好転が
現在、化粧品素材の研究開発に従事。念願の有機合成のスキルを存分に生かした仕事である。仕事の進め方も化学研究・開発に適したスケジュールで、無理がない。研究開発の段階によって忙しさがかなり変わるが、4〜5のテーマを並行して進めることで、仕事量を調整できるようになっている。だからだろうか、仕事の密度は濃いのに残業は激減した。

さらに、時間に追われない環境だからか、周囲と協力したり、あるいは仕事以外のことを話したりする機会も増えた。有機合成をやりたいという一念で始めた転職だったが、自分にとっては思いもよらぬ環境の好転に恵まれることになった。正直、ホッとしている自分を感じる日々である。
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F.Yさんの転職考察 専門の有機合成にこだわった結果、満足のいく職場にめぐり合えた
転職して良かった点
・やりたい仕事(有機合成)にかかわれた。
・市販品の開発はやりがいがある。
・残業が減ったうえにフレックス制で働きやすい。
・収入と時間的なゆとりが増えた。
・開発チームやテニス同好会を通じて会社に友人が増えた。
転職して悪化した点
・会社の知名度では少し落ちた。
F.Yさんの前職での不満点は二つ。開発サイクルが早く、納得する成果が得られないまま製品化されること。そして、化学出身者として専攻を考慮されずに多彩な業務にアサインされたことだろう。この二つの根源的な要素を言い換えれば、自分自身のパフォーマンスを最大化できない環境と風土に違和感を覚えたのである。
そうした理由から専門の有機合成に携われることを第一に転職活動をしたF.Yさんには、募集企業も好感触を示したようだ。収入が上がったことや残業時間が減ったことは、本人も言うようにF.Yさんにとって本当に副次的なことにすぎないといえるだろう。
気をつけたいのは、F.Yさんの有機合成のスキルに高い市場価値があったことだ。転職を前に、いま一度、自分のスキルの市場価値を高めることを考えてみることが必要かもしれない。
今回の転職ノウハウ:仕事上の不満が正当なものであれば、理想の会社探しはフォーカスしやすい。
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