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フリーランスSEのメリットとデメリットを見極め 最終的に正社員として転職したK.Tさん
技術があれば、企業に属さなくても収入が見込めるシステム開発の世界。完全なフリーランスとして活躍するSEやPGも少なくない。果たして理想のスタイルか。数年間フリーで活躍した後に正社員を選択したK.Tさんの例を紹介する。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:07.03.19
職人気質のエンジニアにとって、腕一本で業界を渡っていくフリーランスは、ひとつの理想像だとされる。プロジェクトごとに契約し、役割を終えると同時に次のプロジェクトに移る。もともと、システム開発の世界に、フリーランスという働き方は相性がよいのだろう。コンスタントに契約できれば、収入面でも一般の正社員雇用より多い場合もあるくらいだ。 43歳のK.Tさんは現在の所属企業に正社員として入社する前に、フリーランスSEとして長期にわたって活躍してきた経歴をもつ。そのK.Tさんが、どうしてフリーの立場から降りたのか、正社員となって環境や働き方はどう変わったのか、その一つひとつを検証していこう。現在、完全フリーランスのエンジニアも、フリーランスを目指すエンジニアも、正社員も、契約社員や派遣のSE・PGも、今後のキャリア設計で参考になる面が大いに違いない。
Profile 中堅SI企業 東京支社マネージャー K.Tさん(43歳)
私大工学部を卒業後、小規模なシステム開発企業に就職。転職を重ね、30代半ばからフリーランスSEとして活躍。現在は関西に本社を置く中堅SI企業の、東京地区責任者を任されている。
転職前(フリーランスSE 41歳) 転職後(中堅SI管理職・43歳)
年収約700万円。ネットバブル期に1500万円稼いだ年も 給与 年収720万円
0時間〜13時間(契約のある/なしによる) 勤務時間 10時間〜12時間
プロジェクト参加時は毎回、新しいメンバーになじむ努力が必要 職場環境 自分のデスクがあり、安心感がある
案件ごとに人脈は広がるが、日常の人間関係は少々希薄。 職場の
人間関係
オフィスでは責任者として、現場ではチームリーダーとして、メンバーをまとめる存在
プロジェクトごとに詳細設計フェーズから入り、プログラミングもこなす 仕事の中身 東京支社で請け負った案件を、最上流工程からカットオーバーまでプロジェクトマネジメントする
今回の注目!
職人的な立場として、基本設計どおりに詳細設計からプログラミングまでを進める日々 仕事の
進め方
東京支社の責任者として、クライアントと契約交渉をすることも多い。依頼された後は、ITコンサルタント的にクライアントと接し、開発現場ではプロマネの立場
取り換えが簡単なひとりのSE 仕事の役割 東京支社3人の社員と7人の外部スタッフを率いるマネージャー職
転職前編 フリーランスの良い面も悪い面も味わった
大学を卒業して入社したのは小規模なシステム開発会社。ここではさまざまな業務を経験した。汎用機系のソフト開発に加え、出向した不動産会社ではシステム開発に携わった後、不動産事務業務のお手伝いまでした。その後、本社の人事・総務部門を経て、さまざまな業務システムの開発を経験した。要件定義など、上流工程の面白さも味わった。

その後、転職を2回。顧客サポートやオープン系開発など、スキルを広げられた。

そうして34歳のときに、フリーとなった。きっかけは、以前の会社でかかわったクライアントが、個人的に仕事を依頼したいと言ってきたからだ。このとき、自分はフリーのSEとしてやっていけるのではないかと考えたのである。

だが、その案件が終わったら、仕事がなくなった。営業しようにもどうすればよいかわからない。そこで派遣会社に登録。そこから派遣スタッフとして客先での開発に参加した。これではフリーになった意味がない……そう思い始めたころ、別の派遣会社で個人事業主契約が結べることを知り、さっそく切り替えた。
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幾つかの案件をこなしていくうちに、フリーランスとしての動き方が板につき、思い切って各ソフト会社と業務委託契約を結ぶ完全フリーランスとして出発することにした。フリーだからといって、言われたとおりに業務をこなしただけではない。自ら提案したり、積極的に人脈を築いたりした。それが功を奏したのか、依頼が殺到。時はネットバブル期ということもあり、Web 系の開発が続き収入は1500万円を超えた。

ところがネットバブルも去り、仕事があったりなかったり。年収は700万円前後で安定していたが、プロジェクトとプロジェクトの間の期間は、もう仕事が来ないのではないかという不安に襲われるようになった。そしてもうひとつ。フリーランスでは上流工程に進めるチャンスがほとんどないことも不満だった。

いつしか正社員として就職する選択もあるかもしれないと考えるようになっていた。その一方で、ネットバブル期に稼いだ記憶が忘れられない。組織に属さずにやってきたという自負と誇りもある。さて、どうしようか。
転職活動編 フリーランス時代のいちばんの財産、人脈を駆使する
フリーランスを続けるか、それとも正社員として就職するか。その気持ちの振幅がしばらく続いた。そして、その揺れを止めたのは、私の迷いに感づいていた妻のひと言だった。大きな収入がなくてもいいから、そろそろ安定した働き方をしてほしいと言うのである。さらに続けて妻は、もし病気になったら、厚生年金はやはり魅力、数年先まで見た家計を考えたい……などと、現実的なことを口にした。元システムエンジニアの妻だけに、業界のことも知っている。だからこそ、説得力がある。実際、50代のプロマネやリーダーはたくさんいるが、50代の個人SEを第一線で見ることは少ない。この先のことを考えて妻が発言したのは明白だった。

確かに妻の言うとおりだ。ここ2〜3年、年収は700万円前後で安定している。ネットバブルのころのように1000万円以上儲かることなど、もうやってこないかもしれない。それに、あのときは本当に忙しかった。この先体力が落ちたら、あの仕事量をこなせるだろうかという不安もよぎった。

そうと決めたら行動は早かった。フリーランスを長年やってきていちばんの財産は人脈である。すぐに自分を高く評価して雇ってくれそうな企業はないかと、数多くの旧知の間柄に連絡した。すると、幾つかのリアクションが戻ってきた。開発スキルだけではなく、業務に詳しく上流工程の経験もあることが評価されたらしい。
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それですぐに飛びついたわけではない。自分を売り込むという術は、フリーランスで身につけている。今回は、ポジションと収入にこだわった。正社員として就職するからには、フリーランスではなかなか手がけられない上流工程ができることを望んだ。そして、ここ数年の収入水準を落としたくなかったので700万円以上という条件を示した。

幾つかの打診の中で、大阪に本社を置く中堅SI企業から、東京市場進出の責任者として採用したいとのオファーがあった。いろいろと条件を聞けば、2つのこだわりポイントもクリアできそうだ。ここに決めた。
転職後編 本社の後ろ盾のありがたさを実感
現在、3人の部下と7人の外部スタッフをマネジメントする東京支社の責任者の立場にいる。大阪本社経由の依頼案件もあれば、自ら開拓した案件もある。自分を売り込む営業は慣れているが、会社を売り込むのは経験がない。それでも順調にクライアントを開拓できた。本社という後ろ盾があるのは大きい。それに個人を売り込むときと異なり、クライアントは企業の責任者として見てくれるから、商談は広がりやすい。時としてコンサルタント的にかかわることもあるし、契約がまとまれば最上流工程から参加することになる。フリーのときに願ってやまなかったポジションだ。メンバーの分の仕事を取ってこなければならないという責任の重さを感じるが、マネージャーとしてのやりがいがそれを上回る。フリーの気持ちがわかるためか、外部スタッフもまじめに仕事をしてくれる。

妻も、私がはつらつとしていると見えるのか、喜んでくれている。年収は720万円と固定だが、東京支社の売り上げが伸びればインセンティブや昇給も考えてくれるそうだ。最近、心に余裕ができたからだろうか、久しく遠ざかっていた絵を描くという趣味が復活した。
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K・Tさんの転職考察 転職前後で最も変化したことは、立場と心の平静。
転職して良かった点
・ コンサルタントや要件定義フェーズなど責任ある上流工程のポジションに就けた。
・ 自分についてきてくれる部下がいて、仕事自体にもやりがいを感じる。
・ 突然仕事がなくなるのではないかという不安から解放された。
転職して悪化した点
・案件と案件の間で長期の休みが取れない。
・契約上、働いたら働いただけ収入アップするわけではない。
K.Tさんのケースは、技術の高いSEならフリーランスから正社員にシフトするのも難しくはない……という内容ではない。彼が現職のマネージャーに就けたのは、上流工程の経験とスキルがあり、人脈や折衝力をつくるコミュニケーション力があったからにほかならない。考えてみればフリーランスは自分というブランドを売っていく個人経営者でもある。昔ながらの寡黙な職人気質では展望は開けない。フリーランスから正社員を目指す方、その反対にフリーランスを目指す方、いずれのエンジニアにも参考になる転職記だったと言えるのではないだろうか。
今回の転職ノウハウ
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