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エンジニアの宿命とあきらめるのはまだ早い! 「上司と顧客で板ばさみ」地獄から這い出す技術
文句ばっかりの上司、無理難題を押しつけてくる顧客……。どちらもやっかいなのに、その“板ばさみ地獄”にはまったらもう大変! エンジニアの宿命とあきらめがちなこの難題、あなたならどう這い出す?

(取材・文/川畑英毅 総研スタッフ/ウォーリー内海 イラスト/ならたつひこ) 作成日:05.10.26
エンジニアの宿命とあきらめるのはまだ早い! 「上司と顧客で板ばさみ」地獄からはい出す技術
Part1 エンジ二アは“板ばさみ”に深く苦悩する!

技術で問題解決をするのがエンジニア。だからこそ、過大な要求やクレームをあちこちから突きつけられ、身動きを取れずに苦悩するケースも。宿命ともいえる"板ばさみ"状態に、エンジニアはどれほど悩まされているのだろうか。

■4人中3人は、仕事上の“板ばさみ”を意識!

 Tech総研では、約300人のエンジニアを対象にアンケートを実施。 職場で“板ばさみ”を実感したことがあるかどうかを尋ねてみた。
 その結果は、右表のとおり。「常に感じている」「頻繁に感じている」――この両者を合わせ、明らかに日常“板ばさみ”を重荷にしているエンジニアは、33%。「たまに感じるときがある」41%を合わせれば、 4人に3人が“板ばさみ”を意識しているという結果となった。
 もちろん、技術を通して「問題解決」を図ることこそエンジニアの仕事。仕様や納期など、会社・組織の要望と顧客のニーズなど、 秤にかけなければいけない要素も多いから、ある程度の“板ばさみ”はむしろ必然。しかし、中には深刻なケースも……。
今の職場ではどのくらい「板ばさみ」を感じている?

■“板ばさみ”地獄の元凶No.1は、いちばん身近な上司!?

 エンジニアにさまざまな要求が舞い込むのは、 仕事の性質上当然かもしれない。しかし困ってしまうのは、明らかにその要求が「エンジニアとしての自分の職分」を越えてしまっている場合。 また、"板ばさみ"というからには、自分の左右に2人の人物が存在している。その片方の言い分はそれなりに合理的だとしても、もう片方の対処が非合理的、 あるいは十分でないために、板ばさみの構図に発展する、そんなケースも実に多い。 あなたを「板ばさみ」にするのは誰?
 アンケートでは、 主にだれが"板ばさみ"のプレッシャーを掛けてくるのかについても尋ねてみた。ここでは「やはり」というか、 筆頭に挙げられたのは上司。顧客や部下がかかわるにしろ、常にそのもう一方には上司がかかわっていることが多い。 現場の技術をよくわかっていないのに要求・文句だけは厳しい、しかも責任は部下に……など、 アンケートの回答には「あなたは一体敵なの?味方なの?」と疑いたくなる上司がズラリと並んだ。

Part2 “板ばさみ”地獄からはい出すために必要な技術!

では、実際に“板ばさみ”に悩み、それを切り抜けるために努力するエンジニアのケースを見てみよう。自らもエンジニア出身のコンサルタント、大滝令嗣氏に、よりよく対処するためのヒントをいただいた。

今回の“板ばさみ”地獄からはい出す技術アドバイザー/プロフィール
大滝令嗣 (おおたき れいじ)氏
大滝令嗣 (おおたき れいじ)

東北大学工学部応用物理学科卒、 カリフォルニア大学サンディエゴ校電子工学科博士課程修了。東芝、米系コンサルティングファームを経て、 1988年、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングに入社。代表取締役社長、同会長兼アジア代表を歴任。 2005年10月現在、人事コンサルタントとして活躍中。著書に『「アリ」が笑うとき「キリギリス」が笑うとき―21世紀の人生設計』(扶桑社)、 近著では『理系思考―エンジニアだからできること』(ランダムハウス講談社)などがある。

case1 無責任な「評論家上司」に、顧客の不満も積み重なって板ばさみに!
板ばさみシチュエーション:顧客>自分<上司  顧客の注文に沿って設計をしているのに、 何かにつけて上司がケチを!――かといって手伝うわけでもなく、仕事は部下に押しつけるだけの言いっ放し状態。 顧客からクレームがくると、すべて部下のせいにして、フォローなし。
 顧客もその上司の対応に不満があるため、文句といえばなんでもかんでも自分に言ってくるので、いつも板ばさみの状態でした。
 最終的には、自分が上司に代わって顧客と直接のやり取りをするようにしました。顧客が自分の対応に満足してくれたので、 上司も余計な口出しができなくなり、メンバー内で余計なストレスをため込むこともなくなりました。
−こう脱出した− 顧客に自分を褒めてもらう
大滝さんのひと言アドバイス:よい対応だが、将来に禍根を残す可能性も……。
 ことあるごとに口だけ出して自分は動かない……いわば「評論家上司」ですね。
 エンジニアの場合、人物評価には上司・部下というヒエラルキーの上下だけでなく、 「技術力」という見えない指標もあります。そして、管理者になって「技術の井戸を掘る」ことから遠ざかっても、 昔取ったきねづかで、口だけ出して「自分は技術力でも負けてないぞ」と、変なプライドを発揮してしまう上司もいます。 部下の活躍に、少し嫉妬心があるかもしれません。
 「顧客に褒めてもらう」というこの方の対応は見事で、私でもこうするかも。ただし、根にもつタイプの上司だと、 「自分一人のせいにされた」とかえって恨みをもって、将来リベンジに出てくる可能性もありで要注意です。経緯を見ると、 この方自身、しっかりチームのマネジメントもできる人だと思いますから、場合によってはさらにその上の上司に、 客観的な事実をもとに経緯をレポーティングしておいて、将来の禍根を断つ必要があるかも。

case2 上司とのあいまいな業務分担で、社内の不満が一気に自分へ!
板ばさみシチュエーション:他部署>自分<上司  システムのサポートだけを任されているはずなんですが、 業務上の運用など、管轄外の仕事でも「システムに関することだ」と社内の相談や苦情がすべて私のところに舞い込んできます。
 本来、上司はきっちり交通整理してくれる立場にあるはずなのに、それをせず、むしろ私を矢面に立たせて全部お任せという格好。 その後もあいまいな仕事は全部自分にきてしまい、へとへとでした。
 結局は、システムと業務の運用、マスターについて、わかりやすく説明した資料を作成して、 上司や取締役に提出。業務外の仕事がこない予防線を張りました。
−こう脱出した− 自分の担当を周囲にわからせる
大滝さんのひと言アドバイス:一見うまく切り抜けたようだが、実はもったいない!
 管轄外の仕事がどんどんきて、 てんてこ舞い……でも、見方を変えれば、それはエンジニアとして能力を発揮する機会をもらっていることでもあります。
 ですから、欲を言えば、管轄外の仕事を封じ込める工夫をするのではなく、それも任せてもらえる立場や待遇をこそ要求してほしかった!
 余計な仕事が舞い込んで大変なのは、それを全部自分でやらなければいけないからであって、例えば、 「これをうまく処理するにはメンバーが1人必要です」という具合に、自分の領土を広げてしまう方向に使えば、これは大きなチャンス。
「自分の担当外だから」と切り捨ててしまうのは、外資系によくある仕事観の、功罪の"罪"のほうという気がします。

case3 直属上司とその上と、お偉方両方から責められて……
板ばさみシチュエーション:組織上司>自分<直属上司  コスト削減策でプロジェクトの期間も人数も半分に、 しかも残業するなと言われて、全然仕事が追いつかない! しかも、組織の上司は、 プログラムも書けないのに、お金の節約だけを考えて、仕様をコロコロ変更。おかげで、仕事倍増です。
 直属の上司は、それに対して盛んにグチを言うのですが、直接に逆らうことはせず、 私たちのお尻をたたいてせかすだけ。結局、ひそかにサービス残業をするしか、逃げ道がないんです。
 これ以上余計なストレスをため込むのもいやなので、文句は全部聞こえないフリ。ただ、黙々と仕事を進めています……。
−こう脱出した− じっとガマン!
大滝さんのひと言アドバイス:「耐え忍ぶ」のは、不正解ではないけれど……。
 直属の上司が、ただのメッセンジャーに成り下がってしまっている「サラリーマン上司」。 部下のフェンスになってくれていないわけですよね。
「もっとわれわれのために努力してくださいよ! それがあなたの仕事でしょう!」とたきつけたいところ(もちろん、 その場合は直属上司が"板ばさみ"になるわけですが)。しかし、もちろん、それができないからこそこの方は苦しんでいるわけです。
 単に直属上司が問題の元凶なら、その上に直訴する方法もありますが、このケースの場合は、「その上」がさらに問題なので、 これも無理。結局、上が変わってくれなければ問題の解決にはならないわけで、「耐え忍ぶ」というのも不正解とは言えません。
 しかし、それはあくまでも「今の職場で頑張るなら」という条件下。 "ゲームのルール"はなかなか自分で変えられないわけですから、自分に合った"ルール"=社風や環境をもつ職場への転職を検討するのも選択肢に加えてほしいところ。 実は私自身も、大手メーカーの"ルール"に合わず、そういった選択をしているのです。

Part3 エンジ二アの宿命“板ばさみ”はチャンス?

さまざまな要因がある“板ばさみ”。もちろん、それに具体的にどう対処すべきかは、ケースによって異なる。しかし、「そのまま悩んでいてもハジマラナイ!」のも、また確か。苦境をいかにバネにするか、その基本的な技術を考えてみよう。

■「直訴」や「転職」も視野に入れよう

"板ばさみ"状態をいかに脱却するか。 特にそれが直属の上司の対応の問題である場合、"その上"への「直訴」も方策のひとつ。ゆるやかな環境改善だけでなく、アンケート結果でも「直訴で直属上司が異動した」など、強力な鉄槌が下されることもある。
「ただし、そこで気をつけないといけないのは、あくまで直訴する相手は、普段顔を合わせている範囲内であること。 なおかつその人自身がバランスが取れた人であることは絶対条件。通常の組織では、 人を見る目をもった人間が組織上司になっているはずです。
 もちろん、それもできないからこそ悩んでいる人も多いと思うんですが、その場合は、 思い切って自分に合ったメカニズムの新天地を目指すべきだと思う。
 日本の会社の場合、まだ慣例となっているところは少ないけれど、転職の面接の際に、組織長だけでなく、 直属の上司や同僚となる予定の人にも会わせてもらって、"環境を知る"ことも、可能であれば試みるべきだと思うんです」(大滝氏)
「板ばさみ」状態のときは、どんな心境?

■“板ばさみ”は“期待”の証でもある

 しかし、その前に「"板ばさみ"状態を生かす」道もないかどうか、 考えてみる必要がある。
 アンケートでは、「"板ばさみ"状態のときは、どんな心境?」についても尋ねた。その結果が、右上のグラフ。 「しょうがない……」と、あきらめの境地のエンジニアが、67%にも達した。それに対して、 「むしろチャンスだと思っている!」と前向きな回答は、わずか2%。この数字の少なさが気になる、と大滝令嗣氏は言う。
「もちろん、どうにもならない、少なくとも現時点では耐え忍ぶしかないケースというのも多々あります。 しかし、一方で、チャンスに転じる可能性があるケースというのも少なからずあって、それがたったの2%というのは少なすぎる。 "板ばさみ"になるというのは、エンジニアに対する期待が大きいことの証でもあるんです。
 いちばん新しい著書、『理系思考』にも書いたことなんですが、日本のエンジニアは、能力の割に、 会社のなかで虐げられた存在であると思う。それだけに、閉じこもった見方になりがちでもある。しかし本来、 ビジネスで価値がある『要求に応える』『問題を解決する』というシーンには、エンジニアが最も向いていると思います。 なぜなら、裏の技術を知っていて、ロジカルな思考がお手のものであり、『どこが問題点で、 解決のためには何が必要か』という仕事を日常的に行っているから。だから、"板ばさみ"にあったときは、 目の前の作業だけに固執せず、少し視界を広げて冷静に観察すると、さまざまな問題点と合理的解決法が見えてくるはずです。 また同時に、自分の作業を円滑に行うために、領分を広げていくことができないかどうか考えることも、 決して忘れないようにしてください」

ほとんど海外にいるという大滝氏だが、「海外赴任のエンジニアも大変な板ばさみなんです」と日本人エンジニアを気遣う。

“板ばさみ”からはい出すための3つの基本技術-- ◆“板ばさみ”はエンジニアへの期待の裏返しでもある。チャンスに転じる努力も忘れずに。 ◆「何とかなる」板ばさみか、「どうにもならない」板ばさみか、その見極めをしっかりと。 ◆「ゲームのルール」は自分では変えられない。組織自体に根深い問題があるときは、転職もオプションに。
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ウォーリー内海(総研スタッフ)からのメッセージ
ウォーリー内海(総研スタッフ)からのメッセージ
300人のフリーコメントから、"板ばさみ"地獄の悲壮を痛感し、 正直大反省! 私も社内ではエンジニアへの要求が厳しい割に、こちらの納期がユルかったり……、 力があって頼れるからこそ甘えてしまいます。そんな彼は頑張りすぎ!くらいに頑張ってくれたのですが、 それこそが"板ばさみ"だったとは。初めてのレポートでしたが、今後新たなレポートを担当するたびに、 無自覚を反省することになりそうです。

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