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自社のパッケージ製品を開発したいと中堅SEが転職

ERP製品のライン拡充を加速するワークスアプリケーションズへ

大企業向けERPの人事・給与システムでは抜群の導入実績を誇るワークスアプリケーションズ。同社はERP「COMPANY」シリーズとして既に会計システムを投入し、総合ERPベンダーへの道を邁進している。今回はその製品開発者の最終選考面接を再現する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.10.19
ERP
応募したエンジニア 企業の面接担当者
塩畑智弘さん
塩畑智弘さん
(当時26歳)
小島豪洋氏
管理部 人事・総務グループ
人事担当マネージャー
小島豪洋氏
当時の職種
業務系アプリケーションSE
募集職種
パッケージ研究開発員
業務内容
△△証券取引所売買システムの開発。
仕事内容
大手企業向けERPパッケージソフト「COMPANY」の各モジュールの機能強化・機能追加。
職務経歴
大手繊維会社で自社用カラー管理システムの開発を2年。システム開発会社で業務系アプリケーションの設計・開発を3年弱。
応募資格
大卒以上。ソフトウェア開発経験2年以上。経験内容および業務知識は不問。顧客志向で機能追求姿勢が強い人を求める。
志望動機
独立系ベンダーで自社パッケージ製品の企画、設計、開発に携わりたい。
募集背景
自社ERP製品のフルライン化を目指すとともに、既存製品のバージョンアップを図るため。
面接の流れ
人事部門で選考後、会社説明会へ出席してもらう。応募の意思を再確認したうえで約1時間の筆記試験。
人事部門のスタッフ2人が個別面接を行う。所要時間は30分程度。
開発部門のリーダークラス2人が個別面接を行う。所要時間は30分〜1時間。
人事担当マネージャーが1対1の面接を行う。所要時間は30〜40分。
3次面接の日から遅くとも3日以内に通知する。
 
【通過率:約2割】

【通過率:約1.5割】

【通過率:約1割】
Part1
前職と現職の勤務先について
新卒入社では事業内容が多様な会社を選択
(あいさつの後、小島氏が「何か質問や改めて話したいことがあれば、どうぞ」と促した。 塩畑さんは「特にありません」と答えた)
小島:
 それでは、私のほうから伺います。【Point1】塩畑さんの大学での学科は応用化学ですね。なぜ化学系を選んだのですか?
塩畑:
 高校時代に化学の成績がよかったのと、化学反応式にパズルのような面白さを感じたんです。化合物の仮説を立てて、実験で検証する。そんな興味から応用化学を選びました。
小島:
 就職先が○○○(大手繊維会社)なのは大学の専攻からですか?
塩畑:
 絶対にこれをしたいという希望はなかったのですが、せっかく専攻した学科です。○○○なら生かせるのではないかと。
小島:
 どんな点にひかれたのですか?
田辺:
 ○○○は化学繊維が主な事業ですが、非繊維が6割以上あり、自動車部品など多種多様な展開をしています。【Point2】私は好奇心が旺盛なので、化学以外のものに興味がわいたとき、可能性がある会社のほうがいいと判断しました。
ソフト開発の面白さから開発企業に転職
小島:
 ○○○に2年間勤めた後、現在の勤務先である●●●へ転職しています。ここはどんな事業をしている会社ですか?
塩畑:
 SI企業から開発の一部を受託している、システム開発会社です。
小島:
 いわゆるソフト業界へ身を転じたわけですが、そのときの思いをなるべく具体的に教えてください。
塩畑:
 ○○○で配属されたのはカラーシステム部という新設の部署で、色と調色を管理する自社用パッケージシステムの開発が当面の業務でした。学生時代はほとんどパソコンに触りませんでしたが、ソフト開発を始めたらこれが面白い。得意だった数学を思い出すような感じでした。ならば、本格的な専門集団の中でやってみようと考えたのです。
小島:
 ソフト業界にはたくさんの会社があります。どうして●●●を選んだのですか?
塩畑:
 仕事の内容もそうですが、本社が私の郷里にあり、将来的にUターンしやすいと考えたからです。ただ、その問題はクリアできたので、現在はUターンの希望はありません。
Point1
[面接官]この質問の狙いは、普通に考えて納得いく答えを、すんなりと返せるかどうかです。良し悪しを判断することはありません。私の面接では、「なぜ?」「どうして?」という質問を随所で投げ掛けます。
[応募者]私は好奇心が強いせいか経歴がバラバラです。大学の学科選択までさかのぼって聞かれるのか、嫌なところを突かれたなと思いました。
Point2
[面接官]この答えからは好奇心やチャレンジ精神がうかがえ、好印象ではあります。しかし、選択肢の少ない会社だったら、彼のチャレンジ精神はどうなるのか。また、当時と違って今は興味がどんな方向を向いているのか。そのあたりは後から探ります。
Part2
今回の転職動機
自分の伸びしろがあるうちに転職したい
小島:
 【Point3】塩畑さんが今の会社で、最も大きく貢献できたことを教えてください。
塩畑:
 私は×××に常駐して仕事をしています。入社当初は×××との取引額は小さく、弊社への信頼度が低いため、多くは雑用に近い開発業務でした。そこで私は、先方への提案を心掛け、信頼関係を深めるようにしました。その結果、委託される仕事量も常駐スタッフも増え、売上高のアップに貢献できました。
小島:
 そんなふうに貢献していながら、なぜ転職を考えているのですか? 最も大きな理由をひとつだけ挙げてみてください。
塩畑:
 う〜ん、ひとつだけですね。指示された仕事のみをしていればいいという状況です。難易度の高い仕事は回ってこないので、簡単にこなせてしまい、面白みがありません。また、立場上から責任がほとんど伴わず、仕事をしている満足感がないんです。
小島:
 【Point4】塩畑さんにとって、満足感が得られるのはどんな状態ですか?
塩畑:
「今、俺は頑張ってるなあ」と実感するときでしょうか。
小島:
 では、面白みを感じる仕事とは?
塩畑:
 ある程度の裁量権を与えられ、自分で決めて進めていける仕事です。
小島:
 社内交渉などで、そういう方向へ変えていくことはできないのですか?
塩畑:
 作業規模を増やすか、別の常駐先にしてほしい。あるいは、自分で取引先を開拓するから、そこを任せてほしい。そういった希望を出して交渉してきましたが、すべて却下されました。我慢してきた期間は1年以上になります。そんな事情から、自分の伸びしろが十分あるうちに転職しようと決心しました。
自社で作って売るパッケージ開発が希望
小島:
 【Point5】今後のキャリアプランはどう思い描いていますか?
塩畑:
 プログラマからSE、コンサルタントといった具体的なキャリアは考えていません。会社に依存しないで生き残れる能力を、その時々で身につけたいと思っています。
小島:
 【Point6】今回の転職先で最も重視する条件をひとつだけ挙げてください。
塩畑:
 ひとつ挙げるとすれば、「自立した会社」です。大企業のグループ子会社や2次請け、3次請けの会社へは行きたくありません。第2の条件を言わせていただければ、パッケージ開発という仕事内容です。
小島:
 【Point7】なぜパッケージ開発なのですか?
塩畑:
 ○○○から今の会社へ転職した3年前には、パッケージ開発やSI、受託開発といった区分や性格は考えもしませんでした。しかし今は、パッケージ開発が自分に合っているし、面白いことも知っています。
小島:
 どんな点が合っていると?
塩畑:
 自分たちで考え、自分たちで決められる点でしょうか。特に御社に関しては、自社でつくり、自社で売り、自社で導入するという垂直型のビジネスに魅力を感じます。私は何でもやってみたいのです。
Point3
[面接官]技術には門外漢の私でも理解できるように話せるか、が注目点です。具体的に話せることがなぜ重要かというと、実際にその人が貢献した証拠とみなせるからです。
[応募者]実際の面接では、この質問に関連して細かく尋ねられ、うろたえて不十分な答えになってしまいました。頭の中では「どれくらいの貢献といえるのか」といった自問自答が渦巻いていました。
Point4
[面接官]この質問と次の質問は、弊社におけるエンジニアの働き方とのマッチングを探る前段です。弊社への入社を仮定する前に、現職で満足感や面白みを感じられる条件を聞いておきたかったのです。
[応募者]採用に影響するとは思いましたが、意図的に好ましい答えを返すゆとりはありませんでした。また、仮にそうしても、面接のプロをあざむくのは難しいと思います。本心を正直に話し、相手がそれを認めてくれるのが、よい相性ではないでしょうか。
Point5
[面接官]今後の志向のベースラインを知りたくて尋ねました。もしこれがずれているのであれば、枝葉の部分で弊社に合っていても無意味だからです。転職する以上、当面のキャリアプランは描けているはずという前提での質問です。
Point6
[面接官]転職先の条件を聞く際には、先に述べてもらった転職理由との整合性をチェックします。大きく違うようなら、どこかにごまかしがあるか、よく考えていないかのどちらかでしょう。ちなみに、私が質問の中でしばしば「ひとつだけ」と限定するのは、いくつも挙げてもらうとピントがぼやけてしまうからです。
Point7
[面接官]システム開発の経験者がパッケージ開発を希望するからには、そこに何らかの思いがこもっているはず。それをチェックせずに採用することはできません。
Part3
 人物素養
行動力とポジティブ思考が長所
小島:
 【Point8】自分が自分に対してアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスをしますか?
塩畑:
 気の短いところがあるので、「落ち着け」「一呼吸おいて」と呼びかけます。切羽詰まってくると慌ただしく行動したり、即断したりしがちなところがありますから。
小島:
 逆に、自分の最大の強みは何ですか?
塩畑:
 行動力があるところです。悪く見れば短気、それがよい方向へ働くと行動力です。常駐先への提案を思いつきだけで発言してしまうのが悪い例。しかし、いったん考えて提案すべきだと考慮したうえでなら、行動力とみなせます。これまでにその両方がありました。
小島:
 【Point9】ビジネスパーソンとして最も重要視していることは何ですか?
塩畑:
 公私ともに、常にポジティブであることを意識しています。ミスを犯した場合でも、いつまでもくよくよしていても仕方がないので、次回は気をつけようとすぐ切り換えます。それから、人にあまり不快な思いをさせないようにしています。
小島:
 そういう切り換えができるのは、これまでに努力してきた結果なのですか?
塩畑:
 多分に努力してきました。意識せずに切り換えが速いという人は、根っからの楽天家ではないでしょうか。
仲間に好かれる性格は少年サッカーから
小島:
 【Point10】ところで塩畑さんは、小学校高学年のころは、どんなお子さんでした?
塩畑:
 良いにつけ悪いにつけ、クラスを盛り上げるのが得意でした。
小島:
 そのころの自慢話を何かお願いします。
塩畑:
 たくさんの友達から好かれていたという点はあります。病気で2週間休んだときは、友達が毎日、入れ代わり立ち代わり見舞いにきてくれました。また、サッカーの少年チームに入っていたので、ほかの小学校の生徒とも広く交流をしました。その仲間たちと高校までサッカーをしたんです。
小島:
 塩畑さんの根っこの部分はそのころからあまり変わっていない?
塩畑:
 サッカーを始めてからはそう変わっていないように思います。
小島:
 ソフト開発者には少ないタイプですね。
塩畑:
 友人には営業向き、コンサルタント向きといわれますが、私としては何かをつくっていく仕事をしたいと思っています。
小島:
 【Point11】作る仕事にどうしてそれほどひかれるのですか?
塩畑:
 ひと言でいえば、新しいものを生み出す喜びですね。
(このあと、小島氏は塩畑さんのほうからの質問を、面接冒頭に続き再び促した)
Point8
[応募者]面接でよくある「あなたの短所はどこですか?」という質問とは、意味合いが少々違うと受け取りました。単に短所を答えるのではなく、それをどうカバーしているかまで問われていると思ったのです。つまり「自己分析+自己コントロール」をワンセットで答えねばと考えました。
Point9
[面接官]文字どおりの意味で聞きました。仕事への取り組み姿勢を知りたいわけです。弊社では自分から課題に立ち向かう、切り開く、そういう姿勢の人がよくマッチするのです。
Point10
[面接官]ここからの一連の質問は人物像を整理するためのものです。策士でもない限り、子供時代の自分についてウソをつくことはありません。面接の中で描けた応募者のイメージを再確認したいわけです。
Point11
[面接官]突っ込んでこう尋ねた理由は、仕事のアウトプットではなく、ツールとしての技術に関心の比重が高い応募者が意外に多いからです。弊社では、何を使ってつくるかよりも、何をつくるかに重点を置いています。
面接官はココを見た!
●論理的な思考力があるか。
●質問に対して具体的に答えられるか。
●仕事に対して前向きに取り組んできたか。
 2次面接で技術経歴をチェックするが、技術レベルは採用の絶対条件とはなっていない。重要なのは人物素養と基礎能力。3次面接ではそこを重点的に見る。特に論理的な思考力に比重を置く。「なぜ?」「どうして?」と問いを重ね、受け答えを展開させる力によって判定する。次に、答えは具体的であることを重視する。公私ともに主体的に生きてきた証拠とみなすからだ。仕事に対するスタンスでは、自分で切り開いていく姿勢が社風にマッチする。
塩畑さんはコレで決めた!
「人材紹介会社からの情報を全面的に信用して応募しました。
本当に入りたいと思えた会社だったからです。
つまり、応募の時点で入社の意思は固まっていたわけです」
 私は、本当に入りたいと思えた会社にしか応募しませんでした。そのせいか、面接を受けてみて新たに感じたことも見えてきたこともなく、面接を受けたことで入社の意思が強まったといったことはなかったのです。応募した時点で、内定したら入社すると決めていました。実は、人材紹介会社の担当者から詳しい情報を事前にもらっていたのです。それを全面的に信用し、あとは実際に入社してみないとわからないという考えでした。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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とても明るく、取材中も笑い声が絶えなかった塩畑さん。そんな彼でも、繊維会社からソフトハウスへと転職し、再度転職するという経歴が、場当たり的な性格に思われないかと心配していました。結果はご覧のとおりです。知りたい転職の職種、企業、シーンなどがありましたら、下のフォームからメールをください。
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