VoIP／いよいよ始動、世界的ＩＰ通信網の大本命技術！

NTTをはじめ、多くの通信キャリアがIP通信網に莫大な投資をする方針を打ち出し、活況を呈している
VoIP業界。世界が相手の研究開発とあって、小規模ネットワーク関連とは違った醍醐味を味わうことが
できる。ほかの電子機器との共通点も多く、他業界のエンジニアにとっても興味津々だろう。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:05.02.16

　ネットワーク業界では既になじみの用語となったVoIP。ADSL、光ファイバー、CATVなどによる常時接続の普及に伴い、IP電話化も急速に進みつつある。IPネットワーク上で音声通話を行うためのさらなる技術的飛躍が今、かなり期待されている。
　エンタープライズユースにおけるIP電話化の流れはすでに本格化していたが、NTTがIP電話への移行を経営方針として打ち出したことで、ファミリーユースにおけるIP電話化の流れも決定的なものとなった。

　IP電話のユーザーは現状でもかなりの数に上っているが、そのほとんどは通常の電話機やPBXにVoIPゲートウェイを接続する方式だった。これは既存の通信網との親和性を取るための措置だったのだが、最近は端末同士を直接IP網に接続するIP-PBXを使った、フルVoIP化の動きも出てきている。
　IP-PBXを設置するプロバイダーや通信網は今後ますます増えていくと見られている。NTTはIP通信網に5兆円を投資すると表明しており、他社の投資額と合わせると、90年代後半の日本版情報ハイウェイ構想以来の大規模投資となる。
　この投資を見込んだVoIP関連企業はハードウェア、ソフトウェア両方の開発競争を激化させており、エンジニアの人材ニーズも今後ますます増えていくと予想される。

　VoIPの技術開発は国内だけでなく、海外を対象としている点が特徴だ。通信網のIP化は日本だけでなく、世界的な流れなのだ。日本は政策上、IP化では他国に遅れ気味だが、技術力ではアメリカと並んで世界最先端だ。
　要求される技術水準には厳しいが、VoIPを用いた次世代技術を迅速に開発できれば、グローバルな事業展開に一役買うことも可能だろう。通信機器、ネットワーク系エンジニアにとっては見逃せないジャンルだ。

　VoIPは大手IT企業や通信キャリアをはじめ、VoIPソフトウェアベンダー、デバイスメーカーなど、多くの企業が参入している。リクナビＮＥＸＴでは「VoIP」をキーワードに検索すれば、求人情報は入手可能だ。また、大手通信キャリアなど、VoIPを手がけている企業名を直接入力してもいい。

　職種は主に機器開発のための回路設計、ミドルウェア開発、組み込みソフトのプログラミングなど。ネットワーク機器の知識がある程度要求されるケースがほとんどだが、一般的な電子機器の開発とスキルがかなり重複するので、他業種のエンジニアにとっても比較的とっつきやすいジャンルといえる。
　ちなみに、以前需要が高かったVoIPゲートウェイの開発は、今後は縮小されていく見通しである。

　要求されるスキルはさまざま。ハードウェアでは回路設計の経験はもちろんのこと、近年では1チップにVoIPの機能をオールインワンで実装する商品が提案されてきており、システムLSIなど半導体の経験も生きる。また、無線LANを介したVoIPも今後増加する見込みであることから、ネットワーク機器、無線関連の知識も役立つだろう。
　ソフトウェアではC＋＋による組み込みソフトのプログラミング、UNIX系（Linux含む）OSならびにデバイスドライバの開発経験は必須。ハードウェアをある程度理解し、実装する機能の提案力をもっていることが望ましい。

　高成長が見込まれているVoIP業界では今後、人材需要が徐々に増えていくものと見られている。成長業界に活躍の場を求めたいエンジニアにとっては、まさにチャンス到来だ。