ＵＷＢ／高精度な無線ブロードバンドを創れ

ユビキタスネットワークづくりのカギを握るUWB（超広帯域）テクノロジー。ケーブル頼みの
通信網のあり方を根底から変革する技術だが、電波干渉などの課題も山積み。その難題をクリ
アして、世界標準の獲得に名乗りを上げてみないか？

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.12.10

　現在のIEEE802.11系無線通信の速度をはるかに上回り、4G通信をも超える速度が出るという話題のUWB（ウルトラ・ワイド・バンド）。多くの通信関連企業が開発に乗り出しており、実証実験では既に、現在の光ファイバーを超える100Mbps＋の速度記録が次々に生まれている。

　スピードだけではない。UWBは通信のほか、測位、測距というポジショニング機能ももつ。その位置測定精度は数センチ程度の誤差と、従来の衛星航法システムGPSと比べても格段に高い。UWBは2007年までに、Bluetooth、RFID、WLANなどと合わせて、330億米ドルの世界市場を形成するといわれている。

　UWBはユビキタスネットワークをはじめ、新型カーナビ、ITSなど、幅広い分野での利用が期待されているが、実用化までの課題も多い。特に、占有する周波数帯域が非常に広く、携帯電話、衛星電波など既存のインフラで使用される電波との電波干渉は、かなりやっかいな問題だ。
　日米欧にインド、中国、韓国を交えて開発競争が繰り広げられており、難問を解決した陣営が標準規格をリードする。そのデファクト獲得競争への参加チケットは、エンジニアだけに与えられる特権だ。

　リクナビＮＥＸＴで「UWB」をキーワードに検索すると、2件がヒットする（11月10日現在）。国内デバイスメーカーと海外総合電器メーカーである。萌芽的技術開発の常で採用件数は多くはないが、無線通信関連はアンテナ、回路、ソフトなど幅広いため、求人が突発的に発生することもある。求人情報は常にチェックしておきたい。

　企業が重視するスキルは、既存の無線技術と共通性が高い。移動体通信用の無線アクセス技術、無線IPネットワーク技術、アンテナおよびフロントエンドの開発、MODEM、MIMOなど。もちろんファームウェア、リアルタイムOSなども必要である。

　そのほか、UWB特有の課題である超短波パルスを発生させる小型省電力回路の実用化に関しては、高周波回路や振動子など、パルス関連の知識があると有利だろう。特性測定などの実験に関するスキルも重宝されそうだ。
　問題山積みという前提に躊躇するエンジニアには、不向きな分野かもしれない。しかし、そんな課題を「さまつなこと」として意欲を燃やすのが、本当のエンジニアだ。