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尊敬できる上司・憧れの先輩が見つからないアナタに捧ぐ 40歳を賞味期限と言わせない!現場主義エンジニアたち
「3年後、5年後の自分は輝いているだろうか?」ふと、エンジニアとしての将来に不安を感じることはないだろうか。
現場の第一線で活躍し続ける2人の40代エンジニアをリポートし、燃え尽きない秘訣を追った。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/木下ミカエル)作成日:05.01.26
CASE1 半導体デバイスの最前線を支えるFAE 株式会社アルティマ 内藤正志さん(42歳)
現場の第一線で活躍を続ける秘訣:常に技術に興味をもち、自らの吸収力を信じること
半導体デバイスの技術コンサルとして活躍
 半導体商社の雄として知られるマクニカ、そのマクニカグループの中で常に高い成長率を維持し続ける企業、株式会社アルティマに内藤さんは勤務している。
 
 彼は海外から最先端の半導体デバイスを国内のセットメーカーに紹介しつつ、ニーズに応じてカスタマイズやベンダー側への仕様変更の依頼をかける業務を担っている。システム側の設計にも深く関与し、ひとたび問題が生じれば現象を理解して対処する彼の業務はコンサルタント的でもあり、高度な回路設計技術なくしては全うできないものだ。

「カナダの通信系半導体メーカーのRAIDなどのPHYデバイスを担当しています。現場で先端の技術に触れながら、モノづくりの醍醐味が味わえることが魅力ですね。部下の指導もしていますが、まだまだ若い者には負けていませんよ(笑)」
 そう笑顔で語る内藤さんだが、現在に至るまでは紆余曲折があった。
自分の技術力に自信がもてなかった20代
 大学卒業後、入社した会社は、大手電機会社系列の通信機器メーカー。そこで内藤さんは回路設計技術者としてのスタートを切った。

 最初はトランスやオペアンプなどのアナログ回路。納期に追われるあまり、毎日の帰宅は終電、土曜日も出勤という日々が続く。このままでよいのかと転職を考えることもあった。
「でも、今の自分には社外で売れるスキルがないと思った。それで、いま一歩踏み出せませんでした」

 20代後半からはデジタル回路の設計にスイッチ。光ファイバーによる高速デジタル通信規格の伝送装置を開発した。依然として仕事に追われていたが、まずはエンジニアとしての基礎を固めていこうと考えた。
 技術的にわからないことがあれば、40代、50代の先輩に聞きまくり、つらいときは、「デバイスが動いたときのうれしさ」を思い出して乗り切った。

「毎日をガムシャラにやっていったら、いつしか技術的に他社のエンジニアに負けていないかもと思うようになった。かなりの仕事量をこなしましたが、それが自分を鍛えてくれたのでしょう」

 そんな内藤さんに転機が訪れたのは40歳手前だった。上司から、そろそろマネジャーとして、管理業務に専念しないかと言われたのである。企業人としては出世かもしれないが、開発現場を退かねばならない。迷った末、内藤さんは希望退職制度を利用して、現役技術者としても活躍できる環境を求めてアルティマに転職した。

「ほかの人が設計したものを見ると、『俺だったらこうするのに』って思ってしまう。やっぱりモノづくりの現場にいたかった。それで、環境を変えようと決心しました」
「吸収力」を信じることが、技術力を生む
 内藤さんは40歳直前で回路設計技術を買われて転職に成功した。その時点まで市場価値の高い技術力を保持してきた秘訣はどこにあったのか。彼は2つほど思い当たることを挙げてくれた。
「ひとつは、技術に興味をもち続けることで、キャッチアップのつらさを攻略する楽しさに置き換えることでしょうね。半導体デバイスの分野は、それこそ進化の連続でした。高集積化はもとより、個別用途LSIの発展、その一方でシステム化、CADなどの開発ツールと手法の進化、新しい規格……それらを『今度もマスターしよう』って考え、楽しんでいく。

 もうひとつは、自分の吸収力を信じること。新しい技術の習得は、必ずそれまでのスキルがベースとなりますから、実はベテランほど理解が早いものなんです(笑)」
デバイスを評価する。時折、勉強会を催し、部下たちに技術ノウハウを伝えている。「何か問題が起こったとき、回路構成がわかっているのといないのでは大きな違いがあるんですよ」
内藤正志さん
株式会社アルティマ
(マクニカグループ)
PMCビジネスユニット部 
技術課課長 
内藤正志さん(42歳)
1986年 23歳 通信機器会社に就職
1988年 25歳 アナログ回路設計に従事 親会社向けの通信機器開発案件を担当 転職も考えたが自分の市場価値が低いとみて断念
1991年 28歳 デジタル回路設計に従事 SONET/SDHの仕様に準拠した伝送装置の周波数制御回路を設計
1995年 32歳 ハードのシステム全体の設計を担当 機能の一部を満たす回路設計からハード全体の設計にプレイングマネジャーとして10Gの伝送装置の開発を担当
1998年 35歳 転職を具体的に考え始める
2001年 38歳 海外ベンダーのASIC調達業務に携わる 昇進とともに開発現場引退をほのめかされる
2002年 39歳 アルティマ(マクニカグループ)に転職
CASE2 「声の符号化」に取り組む信号処理技術者    大日本印刷株式会社 茂出木敏雄さん(45歳)
現場の第一線で活躍を続ける秘訣:強い意欲と好奇心、そして 「周囲を巻き込む力」をもつこと
先端技術研究者として、あらゆる音の符号化に挑む
 茂出木さんが開発したのは「音楽の自動採譜ソフト」。もう少し具体的にいえば「人間のボーカルを含む音楽をすべて符号化するソフトウェア」だ。

 単純にメロディとリズムを記した従来の楽譜ではない。このソフトによっていったん採譜した音符があれば、それをもとに楽曲を再現できるのである。用途はかなり幅広い。音楽の自動採譜はもちろん、音楽データの高能率伝送、音楽コンテンツの制作と検索などが想定されている。
 この研究のベースとなったのは、茂出木さんが医療目的で開発した「心音の解析診断システム」であり、既に実用化されている。

 実は、茂出木さんは音楽が好きで、20代のころから「いつか人間の声をコンピュータ・ミュージックで演奏したい」という思いをもっていた。今やこの夢を実現させたわけだが、最初からこの研究を手掛けられたわけではなかった。
会社の次世代事業を担うが成果が乏しかった若手時代
 茂出木さんは大日本印刷に入社以来、印刷業のデジタル化に取り組んできた。最初は印刷物の検査装置を開発。次にCGに挑み、その後に文字データの圧縮技術やDTP(コンピュータによる誌面デザイン/レイアウトと製版フィルム作成)の導入に携わる。

 しかし、当時は高性能PCなどない時代。高額な最新コンピュータを購入しても、今の標準から見るとかなり貧弱な性能だった。それだけに印刷現場の業務をすぐに改善できるような装置やシステムは少なく、またトラブルも多発した。
「当時は、現場で何度も怒られました」と茂出木さんは回想する。アナログな手法のほうが効率はよく、使い物にならなかったのだ。実際、本格的なCGやDTPが普及するのは、それから数年後である。

 茂出木さんは焦った。「まだ自分には、画期的な新技術を出せていないという思いがありました」。悩む中、チャンスは意外な形でやってきた。
「郵政省の通信総合研究所が、マルチメディア関係の研究所を業界横断で立ち上げるから、社内から適当な人を出してほしいと言ってきたんです」
 ところが、適任者が見当たらない。
「じゃあ自分が行こうということになりました。上には“あいつにやらせてみよう”という雰囲気があったのかもしれませんね」
信頼感づくりにこそ、技術力を発揮したい
 通信総合研究所に出向してから茂出木さんの快進撃が始まった。データベース知的検索技術の開発に始まり、医療聴診音(心音・呼吸音)の遠隔伝送を目的とした符号化に着手。それを音声や歌声にまで拡張していく。研究成果の一部は、日本医療情報学会の「ベストハイパーデモ賞」を受賞した。

 茂出木さんが、エンジニアとしてやりたかったことを実現できた秘訣は何だろうか。
「コレを実現したい、と大声を張り上げてでも言い続けることですね。もちろん要望を言うだけでは周囲は動かない。常に意欲と好奇心をもち続け、実績を積み上げること、あとはコミュニケーション力でしょうか」
 相手を説得するには、数値上のメリットを訴えるだけでは足りないのだという。

「最後はフィーリング、信頼感の問題だと思うんです。『これは、やるといいことなんだな』『彼にやらせてみよう』と相手に思ってもらう雰囲気づくりをすること。自ら動いて相手とふれ合う。エンジニアは机に座っているだけではダメなんですよ」
スタジオでの実験風景。
「始めて、符号から音声が再生されたときはうれしかったですね」
茂出木敏雄さん
大日本印刷株式会社
情報コミュニケーション
研究開発センター
主席研究員 
茂出木敏雄さん(45歳)
1982年 22歳 大日本印刷株式会社に入社 印刷物の検査装置開発に従事 マシン語でプログラムを作成、ソフトウェアの面白さに目覚める
1983年 23歳 当時出始めたCG技術に携わる プレゼンシステムを開発
1985年 25歳 印刷レイアウトツールを開発 DTPの先鞭をつけるが、現場定着に苦労する
1987年 27歳 3DCGアニメーションを制作 エンジニアとして焦りを感じるようになる
1995年 36歳 郵政省通信総合研究所に出向 医療画像の研究を経て心音解析の技術に着手 現在の研究テーマである人間の声の符号化に取り組み始める
2001年 42歳 日本医療情報学会で「ベストハイパーデモ賞」受賞
「賞味期限ラベル」は、自分からはがしてしまおう
 以前にTech総研がエンジニア3117人に行ったアンケート調査では、半数以上のエンジニアが「技術変化への焦燥感」を感じていると答えている。
 日々、多忙な中で新技術に追われる疲弊感。周りの上司や先輩を見て、自分も現役では何年も持たないのではないかという不安感。そんな思いを抱える20代、30代エンジニアは多い。

 だが、今回紹介した内藤さんや茂出木さんのように、40歳を過ぎてもなお、エンジニアとしてのフレッシュさを失わない人たちは存在する。
 彼らは現場主義をやめない。20代、30代のうちから自分に「賞味期限ラベル」を張らないし、周囲に張らせないからだ。
 基礎を積み重ねる、自らの吸収力を信じる、やりたいことは大声で言う、コミュニケーション力を磨く……彼らの姿勢から、いつまでも現場で輝くヒントがありそうだ。
技術変化などに対するスキルアップの焦燥感はありますか? 【技術力について】 円グラフ 出典:Tech総研『エンジニア白書』(2004年2月)
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木下ミカエル(総研スタッフ)からのメッセージ
以前、出版業でベテラン編集者の方にお会いし、その仕事術に接する機会がありました。質問項目の作り方、構成の練り方……、基本を踏まえた「緻密さ」にはショックを受けた覚えがあります。現役で活躍し続ける秘訣は、皆が当たり前と思うような仕事の基礎を重視する「繊細さ」にもあるのかもしれません。

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