デジタル映像機器／地上波デジタル開始で拡大加速

地上波デジタルの本格普及を前に、ハイビジョン撮影機器をはじめデジタル映像機器が盛り上がりを
見せている。ハイビジョンによるコンテンツ配信を前に、映画、ドラマなど多くの映像ソフトが
デジタル撮影に移行中なのだ。21世紀産業に乗り遅れるな。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.05.19

　デジタル撮影はテレビ番組から劇場用映画まで、急速に広がりつつある。その勢いが、地上波デジタル放送の本格化で、さらに加速すると見られている。HD（ハイビジョン）映像を撮影するためのHDカメラ、膨大なデータ量の映像を記録するためのHDD収録装置、デジタル映像を素早く編集・加工するための編集機など、デジタル映像機器を巡る世界的な開発競争が激化しているのだ。

　現在、デジタル映像で最も身近なのはハイビジョンだろう。NHKが考案したハイビジョンはBSデジタルで一気にメジャーなものになった。今はPDPや液晶テレビなどのデジタルテレビが市場を牽引しているが、放送がデジタルでも、コンテンツがアナログでは、それらは真価を発揮できない。
　逆にいえば、映画、ドラマ、ドキュメンタリーなど、テレビ放送のコンテンツになり得るものすべてに、デジタルハイビジョン化のニーズが発生するのである。そしてこの傾向は、ディスプレイが進化するほど強くなる。

　総務省は地上波デジタルの経済効果を、2003年から10年間で40兆円と見込む。また、日本政府はコンテンツ産業を、21世紀の日本の主要産業に育てようとしている。デジタルテレビなどの民生機器だけでなく、放送設備、デジタル撮影装置などの需要が大幅に伸びるのは必至である。
　高品質なコンテンツを製作するための、デジタル映像機器のさらなる性能向上は当然の課題。第一線のクリエイターのニーズにこたえる製品の開発は、エンジニアにとって大いにやりがいのある分野になる。

　デジタル映像機器は、実は日本企業の得意分野。デジタルハイビジョンカメラの開発では、大手家電メーカーがしのぎを削る。編集分野では、リアルタイム・ノンリニア編集（テープを使用せず、直接HDDや高密度光ディスクなどに収録・編集する）のためのDSPデバイスなども、世界の最先端を走っている。
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　デジタル映像機器の開発に必要なスキルは幅広い。ハイビジョンカメラではCCD、光学レンズ、フォーカスコントロールなどのオプトメカトロニクスはもちろんのこと、データ転送のためのI/O回り、Blu-rayやHD-DVDなど光ディスクの経験も有用だ。
　非圧縮リアルタイム・ノンリニア編集機では、DSP回りの設計に独自性が求められるが、ハードウェアとしてはワークステーションやサーバーとの共通性が強い。

　カラーバランス、特殊効果といったデジタル映像処理のためのソフトウェアは、一朝一夕に作れるものではないが、OS自体はWindows 2000、Windows XP、Linuxなど、通常のPCやサーバーで使用されている。PCや拡張カード、各種OSの開発経験があれば、採用される可能性はありそうだ。
　クリエイティブ分野のテクノロジーに関心のあるエンジニアなら、一度は考慮してみる価値があるだろう。