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上流志向エンジニアの新フィールド 製造業社内SEの魅力 SCM、PDMプロジェクト乱立背景編 上流志向エンジニアの新フィールド 製造業社内SEの魅力 SCM、PDMプロジェクト乱立背景編 上流志向エンジニアの新フィールド 製造業社内SEの魅力 SCM、PDMプロジェクト乱立背景編
上流志向エンジニアの新フィールド 製造業社内SEの魅力 SCM、PDMエンジニアの仕事編
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停滞気味の景気に呼応するように、減少ぎみのSEの華々しい仕事。しかし製造業では、今、グローバル、大規模なプロジェクトが続々と立ち上がっている。そんなダイナミックで上流工程に携われる製造業社内SEの仕事の魅力を明らかにする。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:03.12.03
続々立ち上がる大規模SCM、PDMプロジェクト
 前回も述べたが、大手製造業では今、グローバルかつ大規模なプロジェクトが続々、立ち上がっている。では実際、どんなプロジェクトが立ち上がっているのか、製造業社内SEの役割とは何かを、日産自動車、ヤマハの例から探ってみよう。
case1 日産自動車株式会社 グローバル・システムの開発に携われるチャンスがある case1 日産自動車株式会社 グローバル・システムの開発に携われるチャンスがある
連結会計、購買、部品表、SCM、R&D……あらゆるシステムを刷新
 日産自動車では今、あらゆるシステムが刷新の時期を迎えている。グローバル情報システム本部システム開発部部長・岸本俊一氏は次のように語る。
グローバル情報システム本部 システム開発部 部長 岸本俊一氏
グローバル情報システム本部
システム開発部 部長
岸本俊一氏
「『日産リバイバルプラン(2000年〜)』以前は、業績がよくなかったため、それほどIT投資をしてきませんでした。さらに約9割が保守・運用に使われていたため、新規のシステム開発を抑制してきました。そこで今、グローバルなビジネスプロセスの変革のニーズも反映しながらほとんどのシステムを作り変えているところです」

 実際、今、立ち上がっている主なプロジェクトは、連結会計、購買、部品表、R&Dシステムの開発など。これらはすべて世界で共通に使われるシステム。従ってチーム編成も日本だけではなく、欧米などのメンバーが加わり、グローバルな顔ぶれとなる。
「当社のIT部門はグローバルで約900人弱。そのうち日本のエンジニアは300人(うち転職者は約40人)です。SCM関連のプロジェクトリーダーは欧州、基幹システム(人事・会計・購買など)は北米側がリーダー、設計や解析シミュレーションなどR&Dにかかわるシステムや販売・受発注システムに関しては日本側がリーダーシップをとるといったことが非常に増えてきています。これらのシステムは世界中の拠点で使われるため、ユーザー要件もグローバルで論議して決めます。世界各国を飛び回ることもある。また部品表や購買システムはルノーと連携しており、その調整も必要です」(岸本氏)
R&Dにかかわるシステム開発でビジネスに貢献
 前回でも述べたが、現在、日産では約400ものプロジェクトが立ち上がっている。それらの中でも、製造業ならではの醍醐味を感じるプロジェクトとは何か。

「モノづくりのノウハウをデジタル化で革新していく部品表や造形・設計など、トップクラスのR&Dを支援するシステムでしょうね」と岸本氏。

 従来、自動車の開発期間はデザインが決まってから20カ月間といわれていたが、今ではこれが半減している。半分の開発期間で、ユーザーのニーズに合った製品を出していくのだ。しかも日産自動車の2004年度の目標は「100万台増販」。これを達成するためにもR&Dにかかわるプロセスに効果的なITを続々と導入し、効率化を図らなければならない。

「私たちが作ったシステムで、BPRを実現していく。それが社内SEの役割なんです」(岸本氏)

 IT投資の効果を測るため、定期的なエンドユーザーへのサーベイや同業・異業他社とベンチマークも積極的に行っている。ROI(投資対効果)を意識し、ビジネスにインパクトを与えるシステムの企画・開発。それが日産自動車社内SEの仕事だ。
Case2.ヤマハ株式会社 PDM、SCM、ERP、基幹系システム刷新プロジェクトに携われる Case2.ヤマハ株式会社 PDM、SCM、ERP、基幹系システム刷新プロジェクトに携われる
複数のプロジェクトで2005年をめどにサービスインを目指す
 ヤマハにおいても今、基幹システムを刷新している真っ最中だ。情報システム部情報企画室・企画担当課長の井川祐介氏はこう語る。
情報システム部 情報化企画室 企画担当課 井川祐介氏
情報システム部
情報化企画室 企画担当課長
井川祐介氏
「今、グループ会社を含め、ERPやSCM、データウェアハウスなどの構築を含めたSAPソリューションの導入を進めています。そのほか、図面管理システム、ナレッジマネジメントシステムの構築などを行っています」

 同社の情報システム部門は110人。そのうち、インフラ整備(グループウェアやWindowsなどの保守・運用)を行うチームと、SAP導入などの業務を分析しシステム設計を行うチームとに大別される。そして今は中途採用を積極的に展開し、後者の人材を増強していると井川氏。
「当社の商品は、電子楽器のようにある程度標準化された工程のものから職人の感性を必要とする工程をもつものまで幅広い。このような幅広い商品をそれぞれ欠品、過剰在庫を出さないように生産管理を行える仕組みをつくるのです。しかも顧客のニーズは固定ではありません。顧客のこだわりがどこにあるのかまで考えて、ストックポイントを考えたり、ラインを設計できる仕組みを企画する。そこが面白いところです」(井川氏)
異常値を発見するシステムづくり
 楽器の生産では、どうしても機械化できない工程、例えば「特定の職人による木のまげ」などの工程が発生する。このような標準化できない工程をも含め、どこで生産量が落ち込んでいるか、原価がどこで上がっているかなど、パッケージだけでは対応できない異常値を発見できる仕組みづくりも行わなければならない。

 また従来からあった図面管理システムも刷新中。2005年をめどにナレッジデータベースと連動した大規模なPDMシステムを構築する予定だ。

 これらの設計・製造にかかわるシステムは「刷新すればずっと恒久的に使える」わけではない。「景気などの外的要因はもちろん、職人、従業員などの内的要因などの変化するパラメータに合わせて、常に刷新していく必要があります」(井川氏)という。

「言われたことだけを電算化する時代は終わりました。どう効率よく業務を流す仕組みをつくれるかが、社内SEに期待されている仕事です。SEこそ、各業務を深く知らなければならない。製造業の強みの核をにぎる部門だと思うんです」(井川氏)
社内SEに求められる経験・能力とは
 日産自動車、ヤマハ双方とも製造業社内SEは重要な役割を担っている。では、どんな経験・スキルが求められるのだろうか。

 日産自動車・岸本氏は次のように語る。
「BPRを目的としたシステム導入に携わったことがあること、顧客の要件をうまく聞き出すコミュニケーション力、プロジェクトマネジメント能力などがスキル・経験としてあげられます。もちろん、グローバルプロジェクトなので英語力も。しかし私たちが最も重視しているのは自分のシステムで仕事を変えてみたいと思っているかどうかです」

 一方、ヤマハの井川氏も
「SAPソリューションの導入経験があればよりよいですが、導入経験や技術ではなく、業務そのものに興味をもち、業務を深く掘り下げて、ユーザー部門と一緒になって業務プロセス構築を行っていけるタイプが合うと思います」
 という。

 ガートナー ジャパンのリサーチディレクター浅井龍男氏は
.NETやJ2EEなどの最新技術の知識は必要でしょうが、それらの道具をうまく使って、製造業のバリューチェーンに貢献できるかどうかです。特に日本の製造業は品質向上や効率化という面において、人間とのかかわりを重視しています。このような人間がかかわるという変動型のものをIT化すること。それこそ、社内SEが今後、携わっていく仕事です」
 と製造業社内SEの魅力について言及する。

 日本の製造業の競争力を生み出すバリューチェーンの特性を、ITのアーキテクチャに落とし込むこと、それが製造業のIS部門が解決しなければならない、正解のない課題ともいえる。

 それだけ、今後も優秀なSEの需要が期待されるフィールドといえよう。「アウトソーシング全盛時代の到来、社内SE冬の時代」といった、ひところマスコミを賑わした内容とは、全く違ったチャンスがここにある。
製造業社内SEの5大魅力ポイント
1. 大規模・グローバルプロジェクトに携われる
2. BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を目的とするため、最上流工程に携われる
3. 社内はもちろん、同業、異業他社の情報システム部門とのネットワークが築ける
4. エンドユーザーとかなり密接に連携し、業務を分析するため、その企業独自であるが、
深い業務知識が身につく
5. プログラミング、コーディングなどの実作業はパートナーベンダーと協業して行う
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
製造業社内SEというと、どうしても既存システムの運用・保守というイメージが強いようです。でも今回取材で明らかになったように、開発〜運用・保守という工程をアウトソーシングし、業務の分析からシステムの企画・設計という上流工程のみを担当する仕事へと変革しています。製造業社内SEこそ、ビジネスと非常に近しい部分に携わり、業務知識も相当に身につくため、その後のキャリアパスとして、CIOや業務知識のあるITコンサルタントへの転身など、市場価値の高騰が期待できるフィールドなのでは……

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