部下の「残業ゼロ」を実現する6つのスキル――元マッキンゼー『ゼロ秒思考』著者が伝授

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今回は、「部下の残業ゼロを実現する仕事術」について、ご紹介したいと思います。

上司の仕事は部下のお尻を叩き、部下に指示・命令だけしていれば責任を果たしているという考えの方が多いようですが、これでは今どき通用しません。

そうではなく部下に具体的な指示をし、コーチングして大きな成果を達成するまでリードし、支援するのが上司の仕事ですし、少し工夫をすれば十分できることです。今日からでも実践可能な6つのコーチングスキルについて紹介したいと思います。

著者:赤羽雄二(あかば ゆうじ) 

ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。1990年にはマッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグループの世界的な躍進を支えた。

【コーチング1】先にゴールを示す「アウトプットイメージ作成アプローチ」:何をどうすべきか具体的に指示すること

「アウトプットイメージ作成アプローチ」とは、上司自らが30分ほどの短い時間で、作成すべき書類などの最終形が何ページで、どういう内容を各ページに盛り込むべきかのたたき台をつくります。それを部下に説明してその後の仕事を進めてもらうというコーチング方法です。

上司がたたき台をつくって示すので、スキルの低い部下が上司の期待を慮ってあれこれ悩んだり、余計なページを多数書いたりするムダが一切なくなります。これが残業ゼロ実現の鍵になります。 「アウトプットイメージ作成アプローチ」をうまくやると、書類作成の時間が3分の1から4分の1くらいに短縮される場合も出てきます。また、短時間で整理し、フィードバックするので、上司のほうがが大きく成長します。

残業ゼロ実現のため、自部署で作成する大半の文書をアウトプットイメージ作成アプローチで実行することをお勧めしたいと思います。 上司が一人でやるのはあまりに仕事量が多いのであれば、簡単なものは経験の長い部下にやってもらうと彼らも成長します。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【コーチング2】業績・成長目標合意書:部下の長所を十分認め、成長課題を遠慮なく伝える

業績・成長目標合意書とは、A4の1ページに長所、成長課題、今期の業績・成長目標、本人と上司(あるいは育成リーダー)の取り組み施策を簡潔にまとめたもので、 上司が作成し、部下と面談して内容の確認をし、合意をします。

ポイントは、長所を7~8点書くことです。本人は自分の長所を認識でき、また上司がそこまで見ていてくれたのかということがわかり、嬉しくなります。その上で、成長課題については、「業務スピードが遅く、通常の1.5〜2倍かかる」「相手に遠慮しすぎて、難しい話をうまく伝えられないことがときどきある」など、遠慮なく5~6点書きます。こういった率直なフィードバックをされた人、しかも書面で丁寧に説明されたことのある人は、おそらくかなりまれでしょう。

業績・成長目標合意書で初めて成長課題を的確に指摘され、しかもここまで改善しようという成長目標が示され、自分だけではなく上司あるいは育成リーダーまで一緒に取り組んでくれるんだ、と認識することで、前向きに取り組みやすくなっていきます。

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【コーチング3】アクティブリスニング:部下が自信を持ち、問題解決も進む

上司が部下に接する際、一番効果的なのはアクティブリスニングです。アクティブリスニングとは、ただ聞くだけではなく、質問をしながらどんどん掘り下げて状況をより正確に理解していくやり方です。アクティブリスニングを丁寧に実施すると、部下の気持ちや置かれた環境をよく把握できます。多くの場合、何が問題か把握できるだけではなく、「こうすれば、解決できそうだ」というところまで見えてきます。

残業ゼロは極めてチャレンジングな目標なので、それを実現するには、やみくもに部下に命令するのではなく、アクティブリスニングをして、十分に現状を把握することが効果的であり、必要です。

部下に感謝しながら、強い関心を持っていることを声と表情、身振りで伝えます。さらに質問を続けて、全体像をつかめるまで深掘りしていきます。その際、注意すべきは次の7つです。

1.相手の言葉を途中でさえぎらず、最後まで聞くこと

2.部下の仕事への思い、悩み、希望などを聞くこと

3.相手に関心を持ち、好奇心を持って話を聞くこと

4.疑問点は遠慮なく聞くが、事情聴取されているような感じを与えないこと

5.決して相手に不安を与えないよう、にこやかにしていること

6.無理に聞きだそうとはせず、相手のペースに合わせること

7.「もっと論理的に説明しろ」「わかりやすく言え」などは禁句

残業ゼロなどのように目標レベルが高ければ高いほど、上司のアクティブリスニングが特に重要です。

【コーチング4】ポジティブフィードバック:部下・チームがやる気を出し、急成長する

アクティブリスニングに並ぶ上司の基本スキルがポジティブフィードバックです。ただ褒める、ということではなく、どのようなやり取りもポジティブな表現でするということがポイントです。

1.部下が残業削減で大きな成果を上げたとき。他の部下の前で大きく褒めます

2.部下が若干の成果を上げたとき。どんな小さな成果でも褒め、感謝します

3.部下が残業削減をしようと真剣に努力してもうまくできなかったとき。努力をねぎらい、次回以降への激励をします

4.部下が残業削減をバカにして、手を抜いたとき。問題点を遠慮なく指摘するものの、ポジティブに激励します。ただ、なぜ部下が反発しているのかを理解し、やる気を出させることが先決です。多くの場合、ちょっとしたボタンの掛け違いがあって会社や上司に不信をいだいていたりするからです。

上司の仕事はけなすことではなく、部下のやる気を高め、残業ゼロという目標に向かってチャレンジさせ続けることです。

また、遠慮なく褒めるのはいいですが、えこひいきは厳禁です。えこひいきとは、同じくらい素晴らしい結果が出ているのに、自分のお気に入りの部下のときは大きく褒め、それ以外の部下のときは無視したり、軽く褒めるだけにしたりすることです。論外だと思いますが、実際は、えこひいきする上司が後を絶たないようです。

【コーチング5】情報収集力の強化:部下の情報感度を上げる

残業ゼロ実現に向けて、部下の情報感度を大きく上げる必要があります。情報感度が上がると、上司がいちいち言わなくても、

1.部下が勝手に最新情報を把握して最善手を打ってくれる

2.部下が勝手に賢くなってくれる

3.部下があらゆる意味で勝手に成長してくれる

という多大なメリットがあります。

ただ、情報感度というのはややくせ者で、興味・関心を持たないと全く上がりません。部下の情報収集力を強化するために、上司として取るべきステップは、次の8つだと考えています。

1.部下が何に関心を持っているか普段からできるだけ聞いておく

2.その関心事に関係がある業務があれば、なるべくやってもらう

3.その関心事に関係があり、部署としても重視するトピックスはフォローさせる

4.成功体験があると関心を持つので、何かの小さな成功体験を得るようにする

5.講演会や展示会の内容を発表する立場になると急に関心を持ち始めるので、できるだけ参加してもらう

6.情報収集のしかた、グーグルアラートの使い方などを共有し、広める

7.情報収集に関するベストプラクティス共有会を月1回開催する

8.情報感度が高いと素晴らしいということを手本を見せる

考えられることをすべてやってみましょう。情報収集にはゲーム性があるので、情報収集に関して一度何かの成功体験があると、部下同士で競って情報感度を上げてくれるようになります。

【コーチング6】コーチング機会の提供:部下にコーチングさせる

人が一番育つのは、成功体験をしたときと、誰か後輩を育てたときです。人を育てる中で、客観視ができるようになり、自分の課題にも気づきます。そのため、上司としては、若手部下にできるだけキャリアの長い部下をつけ、コーチングする立場にしてあげると効果的です。

自分が最初どのように部下に接したのか、どんな感じでおっかなびっくりしていたのかを思い出し、接する心構えを話し、手ほどきをしてあげます。いつもそうやって部下に接していると、自分が育てるべき部下が勝手に育ってくれるので、自分はより重要で難易度の高い仕事に取り組むことができ、好循環が始まります。残業削減において、先輩が後輩に指導することが山のようにありますので、絶好の機会です。

他にもいくつかありますが、このへんにしておきます。残業削減、生産性向上については、『最少の時間で最大の成果を上げる 最速のリーダー』(カドカワ刊)に詳しく述べました。ご覧いただければ嬉しいです。

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

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