社会人として求められる“協調性”とは?意味を正しく理解しよう

働く上で求められる性格特性に“協調性”があります。ただ、”協調性がある“とひと口に言っても、企業や現場によって内容が異なることも多く、解釈が分かれる言葉でもあります。そもそも協調性とは何を指すのか。人事・採用コンサルタントとして多くのビジネスパーソンと向き合ってきた曽和利光さんに伺いました。

チームでミーティングする社会人
Photo by Adobe Stock

企業から根強く求められる「協調性」

「協調性」は、企業が人材に求める資質・要素の上位を占めています。

日本経済団体連合会(経団連)が2001年から2019年まで行ってきた「新卒採用に関するアンケート調査」では、「選考時に重視する要素」の上位5つについてほとんど変わることはありませんでした。上から、コミュケーション能力、主体性、チャレンジ精神、協調性、誠実性となっています。

また、同じく経団連が2021年8~10月に行った「採用と大学改革への期待に関するアンケート(※)」では、381社の企業に対し「採用の観点から、大卒者に特に期待する資質」を聞いています。

トップは「主体性」で84.0%、次いで「チームワーク・リーダーシップ・協調性」を挙げた企業が76.9%と、今も協調性が根強く求められていることが分かります。

【(※)参考】採用と大学改革への期待に関するアンケート結果│日本経済団体連合会(pdf)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

企業によって異なる「協調性」の定義

では、そもそも企業が求める協調性とはどんなものなのでしょう。

協調性とは、「協力して調子を合わせる」姿勢を指しますが、実は、企業によってその定義は異なります。

前述のアンケート結果では、協調性より主体性が好まれる傾向が見えます。しかし、「当社は主体性のある人材を求めています」という経営者に話を聞くと、「目の前の与えられた仕事をポジティブに受け止め、積極的に取り組める人」と定義しているケースもある。「どちらかと言えば、それは協調性では?」と思うことも少なくありません。

性格特性を表す言葉は、人によってさまざまな解釈がある“多義的”なものといえます。

例えば上司や先輩から「もっと協調性を発揮してほしい」と指摘されたとしても、相手が考える「協調性」が具体的にどんな行動を指しているかを理解できなければ、求められた方向へ改善していくことはできません。

そこで、働く上で求められる協調性には、どんな意味があるのかを細かく分けて考えていきましょう。

協調性の中身【1】周りに合わせる同調の姿勢

周囲がやりたいことに合わせて動く姿勢を指します。

会議で決まったことなどを、いったんは受け入れてやってみる、方針に沿ってみるのも協調性の一つ。入社したての方が、下記のような行動をとった場合も、協調性があるといえるでしょう。

  • 社内用語をとりあえず使ってみる
  • 周りの服装のトーンを真似してみる
  • 同僚と一緒のランチを選んでみる

協調性の中身【2】期待役割に応える姿勢

望まれたことや求められた役割に応えよう、貢献しようとする姿勢です。

相手の立場を考え、自分がどう振舞えば相手が喜ぶのかという観点から、自分の行動を決めようとします。利他心ともいえるかもしれません。

協調性の中身【3】非を唱えずポジティブに乗っていく姿勢

決まった方向性に対して非を唱えず、行動していく姿勢です。

課された数値目標に、わき目も振らずまい進できる素直さ、従順さを「協調性がある」という企業もあります。

協調性の中身【4】周囲の意見をまとめて和を作っていく姿勢

みんなのバラバラな意見をまとめて方向合わせをしていく姿勢も、能動的な協調性といえます。いわば“協調”を作っていく側。

独立独歩で動くのではなく、周りを巻き込む力を「協調性」として求める企業もあります。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「協調性」も会社のフェーズ次第

このように、協調性という同じ言葉を使いながら、意味が異なるケースは多くあります。

企業や現場によって求められることは変わってくるので、具体的にどんな姿勢・行動を求めているかを確認する必要があるでしょう。

また、前述の調査から、協調性が20年にわたり重視されてきたということが読み取れます。別の見方をすると、「みんなで力を合わせて集団で勝つ組織」が多かったといえるでしょう。

事業の方向性が決まれば、うまく実行するために衆知を集めて改善を繰り返す――。そんな、製造業で多く見られた勝ちパターンには、協調性が不可欠でした。

ただ、スタートアップ企業のように、「試行錯誤の結果、うまく行った事業を伸ばしていく」という動き方では、協調性よりも、新しいものを創造する力が求められるところもあります。

組織のステージによって、協調性の重要さは変わってくるといえます。

求められる「協調性」の確かめ方

では、具体的な「協調性」の中身はどのように確認できるのでしょう。
まずは、

  • 社内でどんな人が活躍しているのか
  • どんな行動が求められているのか

を、人事や経営者などに聞くことです。評価制度の中にどのような項目があるのかを聞くのもいいでしょう。

現場のメンバーの場合、文化が浸透していればいるほど、適切に言語化して相手に示すのが難しくなります。解釈を聞くのではなく、どんな行動をとっているのかという事実を確認しましょう。社内で物事が決まる際のプロセスを聞くのもいいと思います。

自分が持っている協調性と相手が求めているものが異なれば、「自分なりに解釈して行動したら、まったく評価されない」ことも起こりうるでしょう。

人の特性や資質を表す言葉は、含まれる意味が多様です。具体的にどんな行動が求められているのかを、丁寧に確認する姿勢が大切です。

協調性と主体性のバランス

企業から求められる協調性は、方向性を合わせる、という点は共通しているでしょう。もし「協調性がない」と言われることがあれば、「全体の方向性に対して異を唱えすぎていないだろうか」と立ち止まってみては。

決まったことをまずはやってみる。しかし盲目的にやり続けるのではなく、改善すべき点が見えてきたら批判の精神で意見してみる。

そのような、協調性と主体性の程よいバランスが、企業が本質的に求めていることかもしれません。

▶あなたの知らない自分を発見できる。無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラル上司等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)も話題に。

取材・文:田中瑠子

 

PC_goodpoint_banner2

Pagetop