「自制心」を鍛えて仕事の効率をアップさせる6つの方法

やるべき重要なことがあるのに、ついムダに時間を過ごしてしまう。夜は勉強の時間にしようと決めたのに、ついテレビや動画を観てしまう──そんな「自制心」の弱さに自己嫌悪感を抱いてしまう人は少なくないようです。特にリモートワークでは、自制が効きにくいこともあるでしょう。そこで今回は、仕事の効率化にもつながり、本当にやりたいことができる時間を増やすために、自制心を強くする方法について、習慣化コンサルタントの古川武士さんにアドバイスをいただきます。

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そもそも「自制心」とは

「自制心」とは、一般に自身の感情や欲望などを抑えたりコントロールしたりする精神力を指します。

「感情の爆発を抑えて人間関係を円満に保つ」なども自制心の一つですが、今回は、「やるべきことがあり、とりかからなければならないとわかっているのに、別のことをする欲求を抑えられない」という、仕事の効率ダウンにもつながる課題にフォーカスしてみましょう。

前提として、自分の欲求のコントロールを「完璧にしなければいけない」と思わないほうがいいと、私は考えています。それは不可能なことですし、目指す必要もありません。

「今晩は資格の勉強をするつもりだったのに、お酒を飲んでしまった」。その結果、勉強がはかどらず、翌朝に少し二日酔いになってしまったとしても、お酒を飲むことでストレスが解消できたのであれば、多少はよしとしていいと思うのです。

「ネットやSNSを見ていて、納期が迫っている仕事にとりかかれなかった」なんてこともあるでしょう。けれど、ネットで面白い情報に触れたり、友人とコミュニケーションをとったりしたことで気分のリフレッシュになったのなら、ある程度はしてもいいと思います。

ただ、それが積み重なることで、「やるべきことができなかった」「自分はダメだ」と、気持ちが落ち込んでしまうことがマイナスなのです。ですから、自制心とは、「行動を抑え込む」というより「気持ちをコントロールする」ことが重要だと考えます。

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自制心を強くすることのメリット

自制心を強くすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
一つは「仕事の効率化」。余計なことをせずに、すぐに仕事に集中できれば、短時間で達成できます。そして、「気が重い」仕事に対するプレッシャーが和らぎ、「先延ばし」を防ぐことができます。

自制心を増幅していけば、仕事だけでなく私生活の場面でも自制心が高まっていきます。例えば、暴飲暴食をやめて、運動する意欲などが湧いてくるでしょう。このように自制の習慣ができていくと、「自己肯定感」がアップします。

「自信」とは、自分で自分をコントロールできないときに低下し、コントロールできているときに上昇するものです。自信がつけば仕事のパフォーマンスも上がり、高評価につながり、ますます自信が持てる。新たなチャレンジにも向かっていけるなど、好循環を生み出すことができます。

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自制心を鍛える6つの方法

強い自制心を持つために、欲求を「我慢する」必要はありません。少しだけ行動を変え、習慣化することで、自然と身につけることができます。その方法を6つご紹介しましょう。

1.朝ルーティンを作る

自分の行動をわずかでも「コントロールできている」という感覚があるとき、自制心は高まります。朝の5分~15分でも、自分がやると決めた「主体的な活動」をしたとき、自分で自分の時間を掌握していると感じられます。その行動は、「早起き」「ストレッチ」「片付け」「1日の計画」など、何でも構いません。

朝から他者に振り回されることってありますよね。始業してすぐメールを開いたら、急ぎの案件が来ていて予定を変更せざるを得ないなど。しかし、「朝一はとりあえずこれをやる」とルールを決め、それができれば「主導権」を握ることができます。自分の意思で集中したやった感が得られ、そのまま次の集中モードへ入っていけます。

自分主導で行う、自分をコントロールする習慣=ルーティンを持つことによって 自制心は慢性的に高まっていくのです。

2.睡眠・リラックスの時間を取る

睡眠不足だったり身体が疲れたりしているとき、自制心が効きにくくなります。身体の不調のつらさをまぎらわせるために、「食べる」「お酒を飲む」「ネット・SNSを見る」といった手軽な欲求に走りがちになるためです。

ですから、睡眠がしっかりとれている状態、リラックスできている状態、本当に好きなことを楽しめている状態であれば、精神的ニーズが満たされ、自制心が高まります。

しっかり眠る、お風呂にゆっくりつかる、気心が知れた人と会話する、そんな時間を意識的に増やしてみてはいかがでしょうか。

3.仕事に制限時間を設けて緊張感を生み出す

自制心を高めるには、「緊張の時間」と「緩和の時間」のバイオリズムを上手に生み出すことが大切です。

デートや大事な予定がこの後に控えているのに、急ぎの仕事が発生。そんなとき、普段はない集中力で取り組み、通常の半分の時間で終わらせた。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

その緊張感を再現するために、例えば「いつもより2時間早く仕事を終える」などコミットしてみましょう。その瞬間、仕事の無駄をそぎ落とす強制力が働き、最小限のプロセスでやり遂げる道筋が見えてきます。

さらに仕事を細かく区切り、「タイマー」を活用するのもおすすめです。例えば、「この資料作成を30分で完了する」と決め、タイマーをセットする。また、休憩時間にネットニュースのサイトを開き、そのままダラダラと見続けてしまう方であれば、「15分」などとタイマーをセットし、アラームが鳴ったらそこでやめるようにしてもいいでしょう。

4.「習慣三種の神器」を活用する

私が「習慣三種の神器」と呼んでいる、人生に大きく影響を与えた大きな変化をもたらした習慣行動があります。それは「早起き」「運動」「片付け」です。

早く起きることで、時間の使い方が変わり、有意義な時間を過ごすことで自己肯定感が高まります。しかし、早起きしたことで日中に眠くなったのでは生産性が下がります。ここで重要なのは、早起きをやめることではなく、睡眠の質を上げることです。

睡眠の質を劇的に高めるのが「運動」。激しい運動でなくても、散歩程度のウォーキングで構いません。運動すると、「幸せホルモン」と呼ばれる「ドーパミン」「エンドルフィン」「セロトニン」が分泌され、自然とポジティブな気分になります。満足感・幸福感が高まれば、自制もききやすくなります。

そして「片付け」。これは、「朝に15分片付け」を習慣化してもいいですし、日中に眠気を感じたときなどに5分ほど片付けをするのでも構いません。雑然とした環境を見ていると、心も雑然とする。スッキリした環境を見ていると心もスッキリする。部屋を少し片づけるだけで、心が片付き、集中に入れるのです。

5.「放電&充電日記」をつける

「放電」は自分のテンションが下がった出来事。「充電」は自分のテンションが上がった出来事。この2つを毎日書き留めます。

「これができなかった」「これがつらかった」といった放電も、「うれしかった」「感謝する」などの充電も、しっかり受け止めることで気持ちが整います。調子が悪いときは、放電が多く、充電が少ないもの。それを毎日書いてモニタリングしていると、自分の気持ちをコントロールしやすくなるものです。

6.「完璧主義」ではなく「最善主義」を目指す

力の入れどころと抜きどころが上手な人は、「最善主義」で仕事をしている人。一方、完璧を求める主義の人は、「0点か100点」「白か黒」を明確に分け、100点でなければ0点と考えてしまいます。自分が考える100点を目指さなければ、不安になったり自己嫌悪に陥ったりするのです。

この世の中に、そもそも「完璧」は存在しません。良かった点と改善点の連続です。「完璧」という幻想を持たず、「うまくいったこと」「反省点」「次への改善行動」を意識し、限られた時間と現状のスキルの範囲でできることに集中しましょう。このマインドセットを持つことで、自らの成長を感じられ、自然と自制心も高まります。

プロフィール

習慣化コンサルティング株式会社 
代表取締役 古川 武士(ふるかわ・たけし)氏

習慣化コンサルタント 古川武士さん写真米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約5万人のビジネスパーソンの育成と1万人以上の個人コンサルティングの経験から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援の事業を開始。『理想の人生をつくる習慣化大全()』『成果を増やす 働く時間は減らす 高密度仕事術()』など著書多数。

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取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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