ビジネスコンサルタントに聞いた「最強の時間管理術と隙間時間の活用法」

「もっと時間を有効に使って自分の時間を増やしたい」「テレワークで通勤時間が減ったのにダラダラしてしまって仕事が終わらない」「時々、隙間時間ができるけど、何をしたらいいか悩んでしまう」。そんな時間を有効活用したいと考えている人もいるのではないでしょうか。『仕事ができる人の最高の時間術』の著者であり、営業生産性向上に関する企業研修講師としても累計1万人以上の受講者を持つビジネスコンサルタントの田路カズヤさんに、時間を管理する極意と隙間の活用法を聞きました。

隙間時間のイメージ画像
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なぜ、時間管理が重要なのか?

「時間」は、唯一誰もが平等に与えられている有限の資源です。時間は「命」そのものと言えます。例えば、仮にあなたが30歳で、寿命が80歳だとします。1日のうち、睡眠や食事・歯磨きなどの生活に必要な時間を9時間として除くと、1日15時間が自分の能力をフルに発揮できる時間。15時間×365日×(80年-30年)=27万3750時間を持っていることになります。

この27万3750時間の使い方を見直すことで、誰でも人生を変えることができますし、仕事の成果を上げることも難しくなくなります。ビジネスで成功している人や自分の人生をよりよく生きている人の多くは、限りある「時間」を意識的に管理しながら仕事をしているのです。

田路カズヤ氏
▲株式会社プレゼンス 代表取締役社長 営業アカデミア 学長
フランクリン・コヴィー・ジャパン認定コンサルタント 田路カズヤ氏

8,568通り、あなたはどのタイプ?

スケジュールを渋滞させないために隙間時間を作る

時間をうまく使い、人生をよりよく生きる=タイムリッチに過ごすためのポイントは、第一にスケジュールに渋滞を起こさないことです。『渋滞学』(新潮選書)で知られる東京大学の西成活裕教授は、その著書で渋滞が起こさない一番シンプルな方法は、車間距離をきちんとることだとしています。

1台がブレーキを踏むことで、すぐ後ろの車や後続車が次々とブレーキを踏んでスピードを落とし、ついには止まってしまう。これに対し、前の車のブレーキランプが光っても、十分な車間距離があればブレーキを踏まずに速度を調整することができるため、ブレーキの連鎖で渋滞が生まれないからです。時間の使い方も全く同じです。

スケジュールを組む際はこの渋滞学に基づき、1つのタスクに対してあらかじめバッファーを設けておきます。1時間の会議が予定されていたら、次の予定は15分から30分後に設定する。仮に会議が若干延びても、急な業務が発生しても対応できます。たまたま隙間時間が生まれることを期待するのではなく、戦略的に隙間時間となるバッファーを組み込んでおくのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

スケジュールを組む前に、タスクにかかる時間を測ってみる

そのために肝心なことは現状把握。忙しいと言いながら、何のタスクに時間を取られているのか尋ねても答えられない人が実は圧倒的です。何を食べて何カロリー摂取し、どのくらいの運動でカロリー消費しているのか把握せずにダイエットしても成功しないのと同様に、自分が何のタスクにどのくらい時間かかっているかを把握する必要があります。

まずは1週間、自分が何にどれだけ時間がかかったのかを書き出してみましょう。例えば、見積書の作成、報告書、社内資料の作成、社内会議、クレーム対応、精算伝票の起票など。ざっくりと1週間記録してみることで、「企画書を書くのに1時間かかった」「メールの返信に15分かかっている」など、自分のタスクと全体量が見える化し、おおよその傾向がつかめます。

そのうえで、一つひとつの予定にかかる時間にプラス15分~30分のバッファーをとってスケジュールを組みます。そうすることで、前の予定が順調に終われば隙間時間として活用でき、ずれても吸収できるから後ろに押さない。予定がずれこむことによる焦りやイライラで仕事の質が落ちたり、再調整の手間が増えたりするリスクを避けられます。

3つの時間割でスケジュールを管理し、隙間時間を作る

自分のタスクにかかる時間の傾向が分かったら、必要なバッファーを組み込みながらスケジュールを管理しましょう。その際に役立つのが、タスクを「ナレッジワーク」「コラボワーク」「ルーティンワーク」という3種類に分けて時間割を作る考え方です。

ナレッジワーク:企画書の構成や重要な書類の作成など集中して考える業務
コラボワーク:社内外の仕事関係者と打ち合わせや会議を行う業務
ルーティンワーク:事務作業などの定型業務

「ナレッジワーク」は基本的に午前中に組みます。朝一番は脳がフレッシュな状態。起床から3時間が脳のパフォーマンスが最も高い時間帯だからです。

「コラボワーク」は眠気に襲われやすい午後の時間帯に設定します。クライアント先など、社外に出て打ち合わせする、プロジェクトチームでディスカッションするなど、人と話すことで気持ちを切り替えたり、リフレッシュしたりすることができます。

「ルーティンワーク」は資料整理や業務報告、社内外とのアポイント調整、メールのチェックなど、「ナレッジワーク」や「コラボワーク」の合間にできた隙間時間、つまり先述したプラス15分~30分のバッファーでこなせるものが少なくありません。

諸説ありますが、集中力を生み出すドーパミンが脳内で分泌され始めるのは、人が行動を起こしてから15分ほど経過してからと言われています。脳のエンジンがかかるまでに15分かかるわけですから、私は15分以内の隙間時間は無心でできるルーティンワークに当てるべきだと考えています。

なお、メールのチェックは隙間時間にしていますが、返信はスケジュールを確保して朝と夕に1回ずつ、それ以外は30分の隙間時間ができた場合に限って行っています。なぜなら、ナレッジワークに集中しているときにメールが来るたびに返信をしていると、思考も細切れになり、集中できません。どちらの仕事の生産性も下がるからです。

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隙間時間5分/10分/20分/30分でできることをリストアップ

隙間時間は、次の予定というタイムリミットがあるため「集中しやすい」「気分転換になる」などのメリットがあります。一方で、時間ができたら何をやるか意識していないと、無為に過ごしてしまいがちです。あらかじめ、空き時間が5分、10分、20分、30分の場合にできることや、やっておきたいことをリストアップしておきましょう。

ちなみに私は以下のように、5分でできることは「チェック」、10分でできることは「アレンジ」、20分でできること「プランニング」、30分でできること「アウトプット」というように、意識しながらリストアップしています。

5分でできること「チェック」

・メールのチェック(重要なものや今日中に返信するものにフラグをたてる)
・数字のチェック(予算や企画の進捗状況をチェック)
・ニュースチェック(直近の経済ニュースほかをネットでチェック)

10分でできること「アレンジ」

・スケジュール調整
・出張や会食の手配
・カバンや財布の中の整理
・伝票整理

20分でできること「プランニング」

・資料や企画書の構成を考える
・講演・研修の構成を考える
・戦略・戦術の練り直し、優先順位の見直し

30分でできること「アウトプット」

・SNSの投稿をする
・多少込み入った、文章構成が必要なメールの返信
・近所のジムで軽くトレーニング

オフタイムの隙間時間でできることをリストアップするコツ

ご紹介した時間活用のポイントは、オンタイムだけでなくオフタイムにも共通です。例えば私は、隙間時間ができたら「心技体を磨く」ためにできることをリストアップしています。「心技体を磨く」ことは、以下のように位置付けています。

心を磨く:メンタルを鍛える、気分をリフレッシュする行動
技を磨く:知識やスキルを身につける行動
体を磨く:美容・健康に気を使う行動

これらは、「やれたらいいな」「時間ができたらやりたいな」では決して行動に移すことができません。まとめて確保できなくても通勤や移動時間、待ち時間に何をするかを決めておきましょう。例えば英語を学びたい人なら、ランチをオーダーしてから出てくるまでの10分は英単語アプリを見る、通勤電車の20分は英語ニュースを読むなどでもいいでしょう。

肝心なことは、習慣化するまで少なくとも3週間は続けることです。例えば、スマホのゲームが習慣になると、電車に乗ると無意識のうちにゲームアプリを開いている。なんとなくゲームをしないと気持ちが悪い。そんな経験はありませんか?

同様に、通勤電車に乗ったら英語のアプリを開くことを続けていると、なんとなくやらないと気持ちが落ち着かなくなる。習慣化するまで最初の3週間を乗り切るだけで人生は大きく変わってきます。

田路カズヤ氏

半年先までスケジュール入れておく

30分以上かけて心技体を磨くための予定は、隙間時間にやればいいとは考えずに、半年先までスケジュールを先に確保してしまいましょう。私の場合は、1年先までスケジュールに書きこんで時間を確保しています。「心技体」を磨く時間を確保したうえで、仕事のための時間をやりくりすることが、効果的なスケジュールの組み方になるのです。

例えば、水曜日の夜にジムに行くと決めたら、夜の19時半からスケジュールを「ジム」と入れてしまいます。するとその日の退社時間が決まります。水曜日は19時までに仕事の結果を出さなければならないという思考に変わるので、そのために何をすればいいか逆算して効率の良いやり方や手順が生まれますし、集中力が高まります。

残業時間が多い人の共通マインドに、「仕事が終わらなければ残業すればいい」というものがあります。このマインドである限り仕事の生産性は上がりません。社会人の方の中で最も生産性が高いのはワーママやワーパパだと、私は思っています。保育園に預けている子供のお迎えの時間に間に合うように退社するために、朝からフルスロットルで逆算しながら仕事をして結果を出しているからです。

同様に、予定を入れてしまうことで、時間内で終わらせるために何を省略できるか、どこに無駄があるのかを発見するなど、パフォーマンスを上げることがで、きっとできるはずです。

1日15分の内省の時間を設けよう

スケジュールを見直し組み立てるだけでなく、ぜひ行っていただきたいのが、毎日15分内省の時間をつくることです。例えば退社前の15分間や就寝前の15分間など、1日を振り返り、自分と向き合う時間を確保することが大切です。習慣化してしまえば意識しなくても、例えば入浴中でもできますが、習慣化するまではしっかり時間を取ってスケジュールに組み込みましょう。

ここですることは主に2つ。1つは翌日のゴールを思い描くことです。「明日どういう状態になれば、自分の時間の使い方としてOKなのか」を前日に考えて、そのためにやるべきことを洗い出して、スケジュールに落とし直します。

もう1つは、「今日を振り返ってうまくいったこと」や、「周りに感謝したいこと」を書き出すことです。日々をポジティブに振り返ることで自己肯定感が高まりますし、良かった点に自分で気づけると、明日はもっといい日にしようというエネルギーが生まれるからです。

人生は、「誰とどのように時間を過ごすか」で10割決まります。大人になってから、才能やセンスを変えることは難しいですが、時間の使い方を変えることはできます。つまり、人は、誰でも、いくつになっても、いくらでも人生を変えることができるのです。たった数分間の隙間時間でも、それを活用し続ければ、人生を変える大きな一歩になります。この可能性に気づき、最初の一歩を踏み出せる人を増やしていくことが私の使命です。

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プロフィール

株式会社プレゼンス 代表取締役社長 営業アカデミア 学長 フランクリン・コヴィー・ジャパン認定コンサルタント 田路カズヤ(とうじ・かずや)氏

1974年兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。パソナでマイクロアウトソーシング事業の立ち上げやクレジット業界に特化した人材派遣事業に関わったのち、リクルートマネジメントソリューションズ(旧社名:人事測定研究所)入社。採用・教育・人事制度設計のソリューション・プランナーとして、3半期連続の営業MVP&7半期連続の営業表彰を含む11半期連続全指標達成。2007年プレゼンス設立。人事・営業・目標達成・生産性向上に関するテーマでの講演や研修を数多く行い、累計受講者数は1万人を超える。銀座四丁目で、日本最高立地のシェアオフィス「タイムリッチ銀座」を運営。著書に『仕事ができる人の最高の時間術()』(明日香出版社)『HRプロファイリング()』(日本経済新聞出版)。

取材・文:中城邦子  編集:馬場美由紀
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