職場の人間関係がグンと良好に!【テレワーク】コミュニケーションのコツをプロが紹介

コロナ禍を機に広がったテレワークや在宅勤務。会社で気軽に雑談したり、飲み会に参加したりしながら人間関係を築いてきたのに、そういった機会が失われたことで、一緒に働くメンバーの近況や人となりなど知る手段も限られるようになりました。また、新卒採用や転職で中途入社した企業でテレワークが導入されていて「上司や同僚の顔もわからず、いまいち人間関係が築けている実感がない」と感じている方もいるかもしれません。そんなテレワークならではの悩みを解消し、コロナ禍前と変わらず、職場の人間関係を構築したり、より良くしたりするコツはあるのでしょうか。

「職場の苦手な人を最強の味方に変える方法」(2019年/PHP研究所)、「これからのテレワーク──新しい時代の働き方の教科書」「オンラインコミュニケーション35の魔法──リアルのコミュ力も上がる!」(いずれも2020年/自由国民社)などの著書を持ち、現在も人材育成コンサルタントで産業カウンセラーとしてご活躍されている片桐あい氏に伺いました。

テレワークの環境が整っても、職場の人間関係は希薄になっている

2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大した当時、多くの企業が在宅勤務・テレワークに移行したばかりの時期とあって、社員も企業も手探りの状態でした。それから約1年、テレワークに慣れてきたことで、現在、企業はテレワークで働く社員が働きやすい体制を整えつつあります。採用では、オンラインでの採用面接や入社時の受け入れなどの仕組み・ノウハウも整ってきている企業も増えているようです。

企業がテレワークの働き方を整えていく一方、社員は日常業務に関する連絡・報告以外の「雑談」「相談」が思うようにできないという点で、いまだに悩みが解消されていないようです。つまり、コミュニケーションによる「人間関係のうるおい」がない。業務を行う上で必要なコンテンツは手に入るものの、職場の仲間との関係がどんどん希薄になっているのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

テレワークで「うまくコミュニケーションがとれない」のは、あなたのせいではない

上司・同僚といった職場のつながりが弱い状態では、「この会社の一員」という実感を持てないだけではなく、業務にも支障をきたします。テレワーク環境では、単独で行う作業には集中しやすいのですが、同時に同じ業務を進めている人・前工程を担当する人・後工程を担当する人たちとの連携が困難でしょう。連携すべき人たちがどんな人たちかもわからない状態では、気軽に連絡や相談もしづらく、業務が停滞することにもなりかねません。

そうした課題を受けて、テレワーク環境での仕事の進め方、コミュニケーションの仕組みを見直す企業もあるようですが、一方、テレワーク前の仕事のやり方をそのまま引きずっている企業も少なくないようです。コミュニケーションの量・質が落ちていても、企業や上司が対策を講じていないとなれば、社員・部下、特に入社したばかりの方が戸惑うのも無理はないでしょう。ですから、「コミュニケーションをうまくとれないのは自分のせい」などと気に病まないでください。

とはいっても、会社任せにしていると、いつまでも悩みは解消されないかもしれません。そこで、テレワーク環境における上司・同僚とのコミュニケーションについて、実践しやすい具体的な方法を3つご紹介します。

オンライン会議中のイメージ
Photo by PIXTA

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人間関係を良好にするテレワークのコミュニケーション術

(1)「仲が良い人」と個別に会話したり、「仲良くなれそうな人」を見つけてアプローチしたりする

部署やチームメンバー全員とまんべんなく仲良くなれるなら、それに越したことはないのですが、実際には、「とっつきやすい人」「とっつきにくい人」がいると思います。

ですから、「テレワークだからこそ、あえて相手によって距離感を変えてもいい」と割り切り、自分と話が合う人と個別に話す機会を積極的につくっていかがでしょうか。新しい会社や部署に配属になった場合は、全メンバーでのオンラインミーティングの際、それぞれの表情や話しぶりを観察して、「この人となら話しやすそう」「仲良くなれそう」と感じた人に、個別にアプローチしてみましょう。

「この業務をうまく進められるようになりたいので、相談に乗っていただけませんか」
「職場に早く慣れたいので、お話しする時間をいただけませんか」

――といったように、目的を伝えた上で、まずは気軽に対話を持ちかけてみると良いでしょう。

(2)積極的に「自己開示」をする

(1)で個別に対話する機会を得たら、業務に関する話だけで終わらせず、積極的に「自己開示」をしましょう。自分の人となりや考え方、価値観などを相手に知ってもらうのです。

初めて会話する相手ならば、「一緒に仕事をしていく仲間として、自分のことを知っていただきたい」と、目的を伝えて、例えば、新卒入社であれば学生時代の経験、中途入社であれば前職の経験、この会社に入社した理由などから話すといいでしょう。

打ち解けてきたら、近況などのプライベートを話題に出しながら、相手のこともたずねてみてください。共通点が見つかれば、ぐっと距離が縮まります。こうした個人的な対話は、業務時間中にするのは抵抗感もあるかと思います。お昼休みの時間帯を提案し、「ランチを食べながらお話しする時間をいただけませんか」などと誘ってみるのも手です。

(3)ライトな「相談」で頼る

仕事をしている中では、何でも「自分で解決しなければ」と思ってしまう人も多いでしょう。しかし、コミュニケーションする上では、あえてほかのメンバーを頼り、相談することをお勧めします。人は、誰かから頼りにされるとうれしいものです。距離を縮めるきっかけにもなります。

相手に負担をかけるような重い悩みではなく、例えば、「この作業に時間がかかってしまうのですが、効率的に進めるコツはありますか」など、ライトな悩みや疑問について相談してみてはいかがでしょうか。

オンラインでも相手が気持ちよく話せる「聞き方」が良い印象を与える

前述の(1)~(3)を実践する場合、相手の時間を割いてもらうわけですから、相手が気持ちよく話せるような「聞き方」を心がけてみてください。対話中、次のようなアクションを意識すれば、相手は「興味を持って聞いてくれている」とうれしくなり、どんどん話してくれるでしょう。会話が盛り上がり、「この人ともっと話したい」「関係を深めたい」と思ってもらえる可能性が高まります。

明るい第一声

オンラインで相手と自分の姿が映ったら、「○○さん、お疲れさまです」「お時間いただき、ありがとうございます」など、明るい表情と声のトーンで話しかけてください。最初の雰囲気作りが大切です。

口角を上げた表情

相手の話を聞くとき、なるべく唇の両端「口角」を上げましょう。にこやかな表情になりますので、相手が話しやすくなります。

うなずき

「うなずき」は、「もっと話していいですよ」というサイン。うなずきながら話を聞けば、相手はどんどん話を進めやすくなります。

ただし、小刻みで「うんうん」とうなずきすぎると、相手は「早く話せ」と急かされている気分になることもあります。相手の話の中で「句読点」、特に句点(。)のタイミングで、こくりとうなずくといいでしょう。

あいづち

「うなずき」と組み合わせ、「あいづち」も意識してみてください。「はい」「あー」「へー」「なるほど」「わかります」「いいですね」など、相手の発言の間にはさみ込んでみましょう。

前のめりの姿勢

相手とオンラインで対話中、「ここぞ!」というタイミングで、前へ身を乗り出し、カメラに近づいてみてください。相手の話に興味を持っていること、相手の話が響いていることを表現できます。

こうしたリアクションを意識すれば、相手は気持ちよく話すことができます。あなたとの会話を「楽しい」と思ってくれて、距離を縮めることができるでしょう。

話しにくい相手なら、ビジネスライクに徹するのも手

ここまで気軽にコミュニケーションできる上司や同僚を想定し、オンラインミーティングのポイントをお話しました。一方、職場で働く方全員が一緒に働く「人」にまで関心を抱いているとは限りません。中には、業務やプロジェクトを効率的に回していくことに集中し、プライベートなコミュニケーションには興味を示さないタイプもいます。そういったタイプと「対話を避けられない」相手として関わらなくてはならない場合、なんとなく話しにくいと感じ、どうコミュニケーションをとればよいかと悩むこともあるのではないでしょう。

このような相手に対しては、無理に「懐に飛び込む」努力をしなくてもいいと思います。ただし、コミュニケーションをとる必要はありますから、このタイプにはビジネスライクに徹し、ロジカルな話し方を心がけてはいかがでしょうか。

そこで紹介するのが「ホールパート法」と呼ばれるビジネス話法。最初に伝えたい結論(Whole)を話し、続いて詳細(Part)を説明し、再度、最終結論(Whole)で締めくくる話し方です。

詳細の説明では「ポイントは3点あります」など、論点を整理し、事前にメモにまとめておくといいでしょう。もし、想定していない質問を投げかけられ、即答できない場合は、ごまかそうとせず正直に伝えます。「その部分には考えが至っていませんでしたので、後ほどメールにて回答します」で十分です。このように無駄のないコミュニケーションを意識することで、相手をイライラさせることもなく、良好な関係が築けるのではないでしょうか。

人間関係は「手段」。悩んだら「目的」に立ち返る

ここまでお話ししてきたように、テレワークだからこそ、全体のオンラインミーティングなどの様子を見ながら、職場の人との関わり方を変えてみることをお勧めします。

本来、職場においては人間関係を築くことが一番ではありません。業務を円滑に進め、成果を挙げることこそが目的のはず。人間関係を築くのは、その目的を達成する手段の一つととらえてみましょう。

コミュニケーションが足りないことで、メンバー同士のトラブルに巻き込まれるなど、ときに職場の人間関係に振り回されることもあるでしょう。そんなときも対応は同じです。「仕事を前に進める」と言う目的に立ち返り、フラットに周囲の人との関係性を見つめ直してみましょう。1人でも2人でも、頼れる仲間がいれば心強いもの。悩みや課題を1人で抱え込まず、共有できる相手を早い段階で見つけてくださいね。

プロフィール

片桐 あい氏プロフィール画像カスタマーズ・ファースト株式会社 代表取締役・代表講師。人材育成コンサルタント 産業カウンセラー

片桐 あい(かたぎり・あい)

1992年、サン・マイクロシステムズ株式会社(現・日本オラクル株式会社)に入社。コール・センター業務・リーダー職を経て、業務改善プロジェクト・マネージャとして、日本のみならず海外のメンバーとも連携し、さまざまな企業の課題を解決。その際、手法として「シックス・シグマ」を取り入れる。2002年以降は、社内の人材育成部署(Career Development & Training)を立ち上げ、エンジニアの成長に貢献。延べ1000人の人材育成に関わる。2014年に独立後、さまざまな外資系IT企業を中心に独自のプログラムを提供し、現場で成果を上げる人財の育成に尽力している。著書に、「職場の苦手な人を最強の味方に変える方法」(2019年/PHP研究所)、「これからのテレワーク──新しい時代の働き方の教科書」「オンラインコミュニケーション35の魔法──リアルのコミュ力も上がる!」(いずれも2020年/自由国民社)

WRITING:青木典子
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