テレワーク「サボる気はないのに、はかどらない…」効率をアップし、ストレスフリーに働くための仕事術

新型コロナウイルスの感染拡大防止で、テレワークを取り入れる企業が増えた昨今。「新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査(※2020年9月株式会社リクルートキャリア実施)」によれば、テレワークを経験した人の約6割が「テレワーク前にはなかったストレス」を感じています。さらに若手ビジネスパーソンの中には、オフィスとは異なる環境で仕事がはかどらず、上司や先輩に「仕事をサボっていると思われるのでは」という不安を抱えている場合もあるようです。

そこで今回は、研究者で「Lifehacking.jp」を運営するブロガーの堀 正岳さんに、若手ビジネスパーソンがテレワークで抱えるストレスの解消法、テレワーク環境で業務効率をアップする方法をお聞きしました。

プロフィール

堀正岳さんプロフィール画像正岳(ほり・まさたけ)

研究者・ブロガー。北極における気候変動を研究するかたわら、ライフハック、IT、文具などをテーマとしたブログ「Lifehacking.jp」を運営。知的生産、仕事術、ソーシャルメディアについて著書多数。理学博士。代表作に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(以上KADOKAWA)など。

テレワークで若手ビジネスパーソンがストレスを抱えるのはなぜか

若手ビジネスパーソンの場合、「与えられている裁量権が小さい」ことが、テレワークのストレスを生んでいます。オフィスで働いていたときは、自分自身で判断したり問題解決したりするよりは、上司やほかのメンバーに合わせて動くことが多かったと思います。テレワークでは、それが難しいですよね。

上司も同じで、オフィスにいれば部下の動きを見ながら随時指示を出せるでしょう。しかし、テレワークでお互い姿が見えない状況下では、問題解決の判断を個々のメンバーに委ねなければならなくなる場面も増えています。

若手の立場としては、「これ、自分が解決すべきこと?」「任せると言われたけど、どうすればいいの?」と戸惑うのも無理はありません。そもそも裁量権を持たされたことがないような業務も増えてしまったのですから。それを自分1人で解決しなければならないため、余計にプレッシャーがかかってしまうのです。

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「『サボっている』と思われてしまうかも…」テレワーク中の不安から陥りがちなパターンとは?

どの仕事をいつまでに、どの程度の裁量で、どのレベルまで解決すればいいのか―。業務分掌やゴールがあいまいな状態のとき、若手ビジネスパーソンが陥るのは大きく2パターンです。

  1. 無限にコミットしようとしてやりすぎる
  2. 判断ミスや失敗を恐れて手を止め、先送りにする

前者のパターンの人は、自分自身を追い詰めてしまいます。一方、後者のパターンで仕事がはかどらない人は、他者からみるとサボっているように見えてしまう、あるいは「自分は仕事をサボっている」と後ろめたさを感じてしまいがちです。

例えば、完全テレワークの職場なら、週1~2回程度、上司や先輩とオンライン会議が行われている場合があります。若手ビジネスパーソンにとっては不安やストレスを解消する場にもなるわけですが、会議やコミュニケーションがない時間はずっと不安が続きます。

経験が浅い若手ビジネスパーソンは、まだ仕事の全体像が掴めていないことも多い。解決策がうまく見いだせず、報告に必要な課題の切り出しや状況把握に不慣れな点もあるでしょう。このように解決できない状態が続き、仕事がはかどらず自分自身を責めてしまうケースも見られるのです。

テレワークのイメージイラスト 
Photo by Pixta

テレワークのこういった不安やストレスを解消しながら、段取りよく仕事をするにはどうしたらよいのか。ポイントを3つ紹介します。

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テレワークで仕事がはかどる!3つのポイント

1.メンバーと「コラボレーション」するため、チャットツールを活用する

先ほど、「テレワークではコミュニケーションがない間、不安が続く」とお伝えしました。そこで、より気軽にコミュニケーションを取る手段や機会を自ら作りましょう

そのために有効なのが、チャットツールです。チャットツールとは、例えばSlack(スラック)、Discord(ディスコード)、Chatwork(チャットワーク)、Microsoft Teams(チームズ)などです。そのほかにもビジネス向けにさまざまな種類がありますね。

テレワークが増えてきたとはいえ「メールとZoomしか使っていない」という企業もまだまだ多いようです。気軽に使えるチャットツールの導入を、所属部署に提案してはいかがでしょうか。また、チャットツールを導入していても、あまり使っていない企業も見られます。その場合は自ら積極的に活用していきましょう。

例えば、上司への連絡はメールで行うにしても、チームメンバーとのやりとりにはチャットが便利でしょう。手軽に質問や相談を投げかけられて、相手も返事がしやすいからです。メールを送るよりも心理的ハードルが低いチャットツールを使うことで、コミュニケーションの頻度が高まると、安心感や連帯感を持てるようになります。間違いもすばやく正せるため、失敗のリスクも軽減できるでしょう。

チャットツールには、チームやプロジェクトごとに区分できる「チャネル(チャンネル)」があります。やりとりがスムーズに流れるようにするためには、なるべく細分化して設定しましょう。1つのチャネルは最大でも5人、なるべくなら3人程度の単位で設定するのがおすすめです。

チャットツールで最小単位のチーム内で相談し、重要な決定事項などがあれば随時、上司や先輩などにメールで発信しましょう。チャットのグループを立ち上げたいときは、「〇○さん、△△さん、□□さんでやりとりするチャネルを作りましょう」などと改めて宣言する必要はありません。一時的な質問・相談の体裁で、巻き込みたい人たちを指定してグループチャットを送り、その後、やりとりを繰り返せば定着していくはずです。

メール・チャットなどのコミュニケーションツールは、業務連絡をすることで「ちゃんと仕事をしていますよ」というアリバイを作るためのものではありません。コミュニケーションを活発にし、お互いの状況把握しながら認識をそろえたり、周りと手分けして業務に取り組んだりと仕事上のコラボレーションを生み出すためのものです。自分の仕事を前進させるような使い方に切り替えましょう。

2.1日3時間「コアタイム」を設ける

テレワークの場合、オフィスでは取らないような休憩や私用をはさむこともあり、オンとオフの切り替えがあいまいになりがちです。それが「自分はサボってしまっている。サボりがバレてしまうんじゃないか」という不安につながっているのではないでしょうか。このモヤモヤを解消するためには、「コアタイム」を設定して時間を区切るスケジューリングがおすすめです

そもそも、通常の勤務時間の8時間、フルに集中していられる人はいません。集中して重要な仕事に取り組む時間を「3時間」などと決め、自分にとってもっとも能率が上がる時間帯に置いてみてください。

テレワーク以前は、オフィスに入り、自分のデスクにつくことで仕事へのスイッチが入っていました。しかし、生活の場でもある自宅では、そのスイッチを切り替えることが難しいですよね。だから「コアタイム」の設定が有効なのです。

前日までに、「明日は○時~○時までをコアタイムとして、この業務を完了する」と決めてスケジュールを入れておく。そうすれば、解決すべき課題を「ついつい先送り」してしまうのを防げるでしょう。

コアタイムを設定するにあたり、コツを3つ紹介します。

(1)自分の生活リズムや自分が集中できる時間に合わせて設定しよう

例えば、「午前中は電話やメールが入ることは少ないので、朝9時からの3時間をコアタイムとする」「自分は朝が弱い『夜型タイプ』なので、夕方にコアタイムを設ける」など、生活リズムや体調に合わせて設定してみてもよいでしょう。

高度な知的作業に集中できる時間の目安として「3時間」を挙げましたが、人によっては、「1時間のコアタイムを分散させて3回」などでも構いません。3時間に設定したとしても、ぶっ通しではなく「50分集中して10分休憩」の3サイクルを回してもいいでしょう。コアタイム以外の時間は、事務処理など、手を動かせば片付く作業にあてます。

(2)コアタイムでは「重要な課題」とだけ向き合う。終わったら必ず振り返る

もっとも良くないのは「重要な課題」と「雑用」の時間を区切らず、混ざってしまうパターン。1日で使える集中力は有限です。雑用をこなしているうちに集中力を全部消費してしまい、「今日も重要課題に向き合えなかった」となれば、罪悪感が残るでしょう。しかし、コアタイムにしっかり集中できれば、「自分はサボってしまっている」という感覚に陥ることはないと思います。

なお、コアタイムを設定したら「どれだけ仕事が進んだか」のログを取っておきましょう。自分がどれだけ集中できていたかを把握できます。「仕事がはかどらなかった」と感じたら、コアタイムの設定パターンを変えるなどして対策し、効率を高めていきましょう。

(3)コアタイムで集中していることを周りに宣言する

コアタイムにしっかり集中するためには、社内外とのやりとりの時間もなるべくコントロール下に置くことをおすすめします。例えば、「○時~○時の間は、メールやチャットでのご連絡に対応できません」と宣言しておくのです。

オフィスにいると否応なく話しかけられ、応対する必要がありましたが、時間設定をして集中力を維持できるのはテレワークのメリットです。メンバー同士の姿が見えない状態だからこそ、自身の行動パターンを伝え、「あの人はこういうペースでこう動いているんだな」と思ってもらえるようにしましょう。

「隠す」という行動は、ストレス値を上げてしまいます。「自分はこの時間配分で働くのが、最も効率的なんです」と正直に伝え、理解を得てください。そうすれば、「サボっていると思われているのでは」という不安を感じることも減ると思います。

ほかにも「午前中にいただいたメールには午後に返信します」「夕方以降にいただくメールは、翌日午前に確認します」「緊急の要件の場合のみ、お電話でご連絡ください」など、テレワークのスタイルやコアタイムの設定状況に応じて、関係者に周知すべき内容を調整しましょう。

3.サボらないために「遊び」の予約を目に見える形で入れておく

1人でテレワークしていると集中力がすぐに切れ、ついダラダラと仕事をしてしまい、「自分は仕事をサボっている」と思う人もいるようですね。
本来の仕事に集中できなくなってしまう要因の一つには、取り組まなければならない課題が面倒だったり難易度が高かったりして、つい先送りしたくなる心理があると思います。

これを防ぐ方法として有効なのが「遊び」の予約を入れておくことです

コロナ禍によりなかなか外へ出かけられない状況が続いています。しかし、業務時間外や休日には、必ず個人的な遊びの時間を確保するように意識しましょう。これは頭の中で思うだけではなく、カレンダーにしっかり入れておくことが大切です。「この日のここからここまでは遊びの時間!」とスケジュールとして色付けして目に見えるようにしましょう。そうすることで、遊びの予約を守るため「早くこの課題を片付けてしまわないと」と思うようになり、それが仕事に取り掛かる上でのモチベーションにつながります。

自宅で仕事をすると集中力が切れてしまうきっかけも多いと感じているかもしれません。自分で仕事と遊びのメリハリを作ってコントロールできるようになることで、業務効率が上がり、心理的なストレスも軽減されるものです。

自分を責めずに、自分を救うための仕組み作りを考えよう

テレワークで判断が難しい課題を与えられ、どう進めればいいか迷ったり、自宅という環境に集中できず業務が滞ってしまったりして、仕事がはかどらないことで、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

しかし、オフィスでほかの人とコミュニケーションをとることで、ストレス解消ができない状況では、仕方がないこともあることを知っておきましょう。
そして自分を責める前に、「自分に優しくする」「自分を救う」ための仕組みを作ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

WRITING:青木典子
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