テレワーク(在宅勤務)下で部下をどうマネジメントすればいいのでしょう?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!今回は、テレワークでのマネジメントに悩む、32歳男性からのお悩みです。

曽和利光さんメインカット曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

マネージャーに昇格してすぐテレワークに…マネジメントに悩んでいます

 

<相談内容>
CASE54:「テレワーク下での有効なマネジメント方法とは?」(32歳・ITサービス会社勤務)

昨春にマネージャーに昇格しましたが、そのあと会社がテレワークに態勢を切り替えたため、マネージャーとして部下とうまく信頼関係を築く前に「遠隔でのマネジメント」になってしまいました。そのためか、いまいちうまく部下を管理できないでいます。

うちの会社は現在、コロナを受けて全面的に在宅勤務に。そのため1日1回、必ず進捗報告するようメンバーに伝えていますが、報告漏れが目立ちます。困ったことがあったらこまめにアラートを上げるようにも伝えていますが、それも徹底されていません。先日も、受注確実と報告されていた案件が実は途中で頓挫していることを、月の営業〆日ギリギリに打ち明けられ、リカバーが間に合わず月のチーム目標を外してしまいました。
普段からチャットやビデオ会議でコミュニケーションを頻繁に取り、「報連相」の重要性も伝え続けているのですが…メンバーの気が緩んでいるからではないか、テレワークをいいことにさぼっているのではないかと疑念を抱いてしまいます。

同期の中でも早く抜擢されたので、会社の期待に1日も早く応えたいのです。テレワークでも部下の姿勢を変え、チームをまとめるにはどうすればいいのでしょうか?(営業マネージャー)

 

そもそも自分から「自己開示」できているか?

曽和利光さんインタビューカット

進捗報告や報連相など、部下から情報を集めることばかりに注力しているようですが、そもそもご自身はメンバーに対して「自分を発信」できているのでしょうか?

「信頼関係を築く前にテレワークになってしまった」とのことですが、あなたが部下のことを十分に理解できていないのと同様、部下もあなたのことを理解できていないから、うまくコミュニケーションが取れていないのだと思われます。上司の人となりがわからないのに一方的に指示ばかりされていたら、部下はあなたに対してまるでパソコンから指示されているような無機質な印象を持ってしまいます。だからいくら口うるさく指導したところで、部下の心に響かないのではないでしょうか。

相談者は、頻繁に連絡を取り細かく指示をすることで部下を管理しようとしているようですが、人はそんなに簡単に言うことを聞いてはくれません。特に日本人は、「上司の指示だから」という理由だけで動く人は少なく、「気持ち」で動く人が多いとも言われています。

だからこそ、まずは徹底した「自己開示」が重要です。通常は、マネージャーに就任したタイミングで所信表明とともに行うべきことなので、もしかしたら「もうやったよ」と言われるかもしれませんが、相談内容を見る限りでは十分に自己開示できていないという印象を持ちます。

自分は何を目指してこの会社に入り、何にやりがいを感じていて、どんな思いを持ってマネージャーに就任したのか。そして今後、この部署をどうしていきたいと思っているのか。仕事に対する思いや方向性、価値観などを、メンバーにさらけ出しましょう。できれば趣味や特技、週末何をしているかなど、プライベートについても可能な範囲で開示するといいでしょう。

いきなり「この人のために頑張ろう!」とまで思ってもらうのは難しいでしょうが、「面白そうな人だな」とか「この人の言うことにはちょっと共感できるな」などと思ってもらえれば、それが仕事に対する能動性につながり、進捗報告や報連相などの動機づけにもなるはずです。

 

部下の業務量と業務レベル、キャパを正しく把握できていない可能性

曽和利光さんインタビューカット

相談者は「テレワークをいいことにさぼっているのではないか」と疑念を持っておられるようですが、今人事の世界ではテレワークにおける過重労働やバーンアウト(燃え尽きる)のほうが問題視されています。日本人特有の生真面目さなどが理由とされていますが、実際のところは在宅勤務をいいことにさぼる人は少なく、逆に際限なく仕事をしてしまい、体を壊したり鬱状態になってしまったりする人が増えているのです。

「進捗報告も報連相もろくにできない荒くれものの集団を任されてしまった可能性」もゼロではないでしょうが、組織論から言えば、新任マネージャーに最初に任せるのは、マネジメント経験が浅くても束ねられる自律性の高い組織であるはず。従って、「進捗報告も報連相もろくにできない」のではなく、「できないぐらい業務がパツパツでまさに限界を超えかけている」可能性のほうが高いのではないかと思われます。

相談者は、同期の中でも早い出世だったとのこと。おそらくプレーヤーとしてかなり優秀だったのでしょう。ただ、優秀なプレーヤーは「自分基準」で他人の業務キャパも決めてしまう傾向があります。あなたは1時間でできる仕事だと思っていても、部下からすれば「いやいや、丸1日かかるよ!」というケースもあるでしょう。

そのため、早急にメンバー一人ひとりに対し、現在の業務量についてヒアリングしてみることをお勧めします。現在抱えているタスクは何か、一つひとつの業務にどれぐらい時間がかかっているのか、自身のキャパを超えた業務量・業務レベルになっていないか、細かく確認するのです。全員の現状を把握したうえで業務の平準化を行えば、今よりもコミュニケーションが円滑になり、相談者が抱えている悩みも軽減されるかもしれません。

なお、ヒアリングの際に注意してほしいのは、「サボっているのでは?」という猜疑心は一切持たないこと。少しでも猜疑心が伝わると、部下は心を開いてくれません。

部下からすれば、「業務レベルに追いつかずキャパを越えています」とはなかなか言い出しにくいもの。「そんなことを言ったら、もう責任ある仕事を任せてもらえなくなるかも」と思う人もいるはずです。そんな不安を抱かせないためにも、テレワークで過重労働になっているのではないか(=だから図らずも進捗報告が漏れたり、報連相が遅れたりしてしまっているのではないか)、でもなかなかヘルプが挙げられないのではないか…という前提に立ってヒアリングしましょう。

人は、相手から期待されたらその期待に応えたくなり、期待通りの成果を上げるようになるものです。これを心理学用語で「ピグマリオン効果」と言いますが、まずは相談者が部下を信頼し、徹底的に自己開示し、期待を込めて接することで状況は好転するはずです。部下を変えるのではなく、まずは自分が変わることを肝に銘じましょう。

アドバイスまとめ

テレワークで離れているからこそ、
なおさら自己開示が重要。
信頼しているという姿勢を見せることで
部下との関係性も変わるはず

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

 

 

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