ロジックツリー、プロセス図…仕事で即役立つ「図解」基本の4つ

「図解」とは、図を用いて事象や概念などを説明すること。「図解」を用いれば仕事の効率がぐんと上がるうえ、リモートワークで離れている相手とでも意識合わせがしやすくなるのです。そこで、働き方の専門家でありオフィスコミュニケーションのプロ・沢渡あまねさんに、図解を仕事に活かす方法と、お勧めの図解方法を教えていただきました。

図解を用いたプレゼンイメージ

沢渡あまねさん顔写真あまねキャリア工房代表 沢渡 あまねさん

業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOOアドバイザーほか。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。350以上の企業や自治体で働き方改革、コミュニケーション活性、組織改革の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり、#ダム際ワーキング()。著書『バリューサイクル・マネジメント()』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町()』『職場の問題地図()』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?()』『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」()』など多数。

図解を用いれば、離れた相手と目線合わせができる

図解にはさまざまな方法がありますが、ビジネスシーンでよく目にするのはロジックツリーや4象限マトリクス、ピラミッド型、まるの組み合わせなどといったフレームワーク。いずれもフレームワーク自体は非常にシンプルで、事象や概念、データ、プロセスなどを共有することができます。

たとえ同じミッションのもと、同じ目標に向かって突き進んでいても、自分が見ている景色と他の人が見ている景色が異なるケースは多いもの。いくら口頭で説明したところで、互いが思い描いている景色に少しでもズレが生じると、仕事を進めていくうちにそのズレがどんどん大きくなり、抜け漏れや手戻りが生じたり、大きなトラブルに発展してしまったりする恐れがあります。最近はリモートワークなど、物理的に距離が離れている相手とやり取りする機会が増え、なおさら意思疎通が難しくなっています。

そんなとき、図解を用いれば、文字通り「一目瞭然」で景色合わせをすることが可能です。インフォーマルコミュニケーションが難しいリモートワーク下は特に、情報を補完するという意味でも有効。例えば、オンライン会議中に通信不良などで音声がちょっと途切れた際にも、あらかじめ図を共有しておけばキャッチアップが容易になります。

 

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こんなときに便利!「図解」が活きる場面とは?

図解を用いたプレゼンイメージ

図解は、ロジカルコミュニケーションが必要などのシーンにおいても活躍します。日常業務で言えば、例えば次のようなシーンで活かすことができます。

上司や同僚にヘルプを求めたいとき

仕事で壁にぶつかったり、何かトラブルが発生したりしてヘルプを求めるとき、図解で示すことで意思疎通が図りやすくなります。

自分がどの案件の何に困っていて、何を助けてほしいのかを明確に伝えられないと、的確な助けは得られません。助けを求められた側も、何をしてあげればいいのかわからず、モヤモヤしてしまいます。

例えば、後述する矢印型の「プロセス図」などで業務の全体像を示したうえで、どの段階でつまずいているのか指差ししながら説明すれば、あなたがどこで困っているのか、相手と「現在位置」の景色合わせがしやすくなります。その結果、相手はあなたに的確かつ迅速なサポートをすることができるでしょう。

自社の製品やサービスの特徴を説明するとき

自社の製品やサービスがどんな領域をカバーしているのか、構造化してクライアントに説明したいときに有効です。

例えば、問題解決の際に活用されることの多いフレームワーク「ロジックツリー」などを使い、Aという製品が提供できる価値を構造化し、できないことを示すことで、クライアントにAの魅力を伝えるとともに、「この機能は備わっていない」と明確に示すことで、期待値調整が容易になり、コミュニケーションの効率が上がります。

このほか、2つないし3つの〇(まる)を組み合わせた図解方法や、二軸で自社製品の立ち位置を示す4象限マトリクスなども、商品特性をわかりやすくシンプルに示すのに有効です。

上司に進捗報告をするとき

プロジェクトや商談などの進捗報告をする際にも、図解は有効です。どの業務のどの話をしているのか、全体像を示しつつ説明しないと、その進捗報告が順調なのか遅れているのか、うまくいっているのか難航しているのか、にわかには判断できない可能性がありますが、図を用いれば聞き手である上司の頭の中に即座に景色を描くことができます。

在宅勤務になり、終業時にその日の業務進捗を上司に報告するのが日課になっている人もいることでしょう。例えば「プロセス図」などで業務ごとの全体像をあらかじめ図解しておき、「今日はこの業務をここまで進めました」と報告すれば、景色合わせが早くなり、日々の進捗報告がスムーズになります。たくさんの業務を抱え、大勢のメンバーをマネジメントしている上司の負担を減らすことにもなるため、評価アップにつながるかもしれません。

 

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いろいろなシーンで使いやすい!オススメ図解4選

図解にはさまざまな方法がありますが、中でも使いやすく、かつ汎用性が高いものをいくつかご紹介します。

〇(まる)の組み合わせ

まるの組み合わせ図の一例

自分の頭の中にある物事の要件や条件、特徴などについて、視覚化し共有する際に役立つ図解方法です。

例えば、地方のクライアントを招き、東京でセミナーを開催することになったとしましょう。上司と開催会場をどこにするか話し合う際に、「東京23区内というのは必須、地方からもアクセスしやすいよう新幹線の駅が近いほうがいいな。飛行機で来る人もいるから羽田空港からもアクセスしやすいほうがいいな」…などととりとめもなく口頭で話してしまうと、情報がどんどん流れて行ってしまい、全体を俯瞰しにくくなります。その結果、例えば上司が最後に行っていた「羽田に近い」という条件をうっかり忘れてしまったなど、情報の欠損が起きてしまう可能性もあります。

そんな時、この「〇の組み合わせ」で情報を整理すれば、抜け漏れや誤解がなくなります。すなわち「東京23区内」「新幹線の駅から近い」「羽田空港から近い」という3つの円を描き、その縁が交わる中心はどこかを話し合えば、条件からズレることはありません。

この例の場合は「品川」という結論になりそうですが、図解することで条件を俯瞰的に眺めることができるため、条件をずらしながら議論を進めることも可能です。例えば「今回は関西から来る人が多いから、23区からは外れるけれど新横浜という選択肢もありますよ。そちらのほうが今から借りられる会場も多そうです。羽田空港からリムジンバスも出ています」など、目的に沿った建設的なディスカッションがしやすくなるというメリットもあります。

プロセス図

プロセス図の一例

矢印を用いたプロセス図は、手順、プロセス、そして現在位置をシンプルに伝えられる図解方法です。

この図のように「企業の選考プロセス」を図解すると、求人に応募して雇用契約に結び付けるまでにどんなプロセスを踏むのか、そしてどれぐらいの長さなのか、イメージすることができます。例えばあなたが求職者で、応募企業からこのプロセス図を示されれば「この会社は書類選考を経て3回面接があり、その後給与待遇などの条件が提示されるのだな」とわかります。それぞれの面接でアピールポイントを変えるなどの戦略を立てられたり、他社の採用選考と調整しやすくなったりします。

また、仕事で困っているときに、業務のうちのどの部分でつまづいているのか共有して相談したり、進捗報告をする際に「全体のうちのここまで進んでいます」と具体的に示したりするのにも便利です。

このプロセス図のいいところは、例えば電話など、図が視覚で共有できない環境にあっても、プロセス図を頭に思い描きながら口頭で伝えれば、正しい情報共有が可能になる点。例えば、クライアントにオンラインで、契約に必要な手続きを案内する際に「契約のプロセス図」を思い描きながら、「これからやっていただきたいことが5つあります。おおよそ15分ほどかかりますが、いまお時間大丈夫ですか?」などと伝え、順を追って説明していけば、相手と景色合わせができるだけでなく、「どれぐらいかかるんだろうか」という不安やストレスを軽減し、信頼関係構築にもつなげることができます。

ロジックツリー

ロジックツリーの一例

物事の観点や論点、構成要素を抜け漏れなく洗い出す際に役立つ図解方法です。

私は初対面の方に自己紹介する際、このロジックツリーを使っています。「働く目的」を最上段に置き、そのためにどんな活動をしているのかを分解することで、自身の強みや守備範囲を詳細に伝えることができます。併せて「制度作り」の経験がないことも明確に示すことで、相手の期待値を調整することができています。

ビジネスシーンにおいては、今起きている問題の構造を分析して根本的な原因を突き止めたり、前述のように自社製品やサービスの特徴を抜け漏れなく説明したりする際などに活用することができます。

例えば、製造工程において不良品が発生した場合、考えられる原因を構造化して書き出し、整理することで、根本的な原因はどこにあるのか突き止めやすくなります。問題発生を未然に防ぎたい場合も、ロジックツリーで想定される問題を洗い出し、どこが手薄で何を強化すればいいのか、皆で目線を合わせながら対策を練ることができます。

4象限マトリクス

4象限マトリクスの一例

物事の価値やポジショニングを整理し、分析する際に役立つ図解方法。要素や流れなど、ポイントとなる軸を縦軸と横軸で交差させて4分類し、それぞれのポジショニングの特徴や課題を洗い出し議論する際に有効です。

例えば、あなたの会社で新しいフードデリバリーサービスを検討するとします。どこで勝負をするのか、進むべき方向性を整理するために、「顧客特性」と「地域特性」の2軸で整理し、縦軸を「法人・個人」、横軸を「都心・郊外」として、それぞれ4つの枠について議論していけば、全員の目線合わせがしやすくなります。
そして議論が進み、縦軸が「個人」に決まったら、縦軸を「法人・個人」から例えば「単身・ファミリー」に切り替えるなど、より詳細な戦略立案に進めていくこともできます。

市場における自社もしくは自社製品の立ち位置を示す際にもよく使われます。例えば、自社製品であれば「認知度」と「価格」の二軸でマトリクスを作り、ライバル製品を洗い出していけば、差別化戦略を練りやすくなります。

 

図解スキルは、ロジカルコミュニケーション力の強化にもつながる

ビジネスにおいては「まず結論から言う」「発言の種別を伝える」など、物事を体系立ててロジカルに説明することが重要視されますが、図解のメリットは、全体像とその要点を一目で明確に示せる点にあります。まさに図を用いたロジカルコミュニケーションであり、リモートワークが当たり前となった今、ビジネスパーソンには必須のスキルといえます。

前述した4つのように、いくつかのフレームワークを知っていれば、さまざまな業務のあらゆるシーンにおいて活用が可能。「その場にいない第三者」にも抜け漏れなく同じ景色を伝えることができる点も、図解ならではです。

そして、会議や商談などの場で主導権を握ることも可能です。自身が作成した図解に参加者全員の目が集まり、それをもとに議論が進められるためです。それに伴い、「この人にお願いすれば会議全体をまとめてくれそうだ」「物事を分かりやすく端的に伝える能力に長けている人だ」などの印象にもつながり、周囲に一目置かれるようになるはず。まずはどんなシーンでもいいので、「自分の伝えたいこと」を図にしてみるところから始めてみてください。

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EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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