成功者ならではの習慣を真似したい!何を参考にすればいい? 【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!今回は、成功者の習慣を知りたいという26歳男性からのお悩みです。

曽和さんメインカット
曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

ビジネスで成功している著名人の「習慣」が知りたい

 

<相談内容>
CASE49:「成功者の習慣、何を真似すればいい?」(26歳・メーカー勤務)

2年目までは営業に従事し、3年目の今年からマーケティング部門に所属しています。以前から「早く成長したい」という思いが強く、営業時代は人一倍努力し、トップの成績を収め続けることにこだわってきました。

その成果が認められ、希望していたマーケティングに異動。もう一段、成長に加速をつけるために、そろそろ世にいう「成功者」の習慣を真似て、ノウハウを身につけたいと思って、役に立ちそうな本を片っ端からチェックしています。

ただ、すばらしい著名人の本はたくさんあり、真似したくなる習慣もたくさんありすぎて絞り切れません。おかげで、本を読んでも自分の中で消化しきれずにいます。

一般的に、成功者に共通する「習慣」とは、どんなものなのでしょうか?また、数多ある「成功者の習慣」の中で、自分に合うものを整理するにはどうすればいいのでしょう?曽和さんも社長として成功しておられるので、曽和さんの習慣の中で私にも真似できそうなものがあれば教えてほしいです。(マーケティング職)

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

成功者の多くは、成功の理由を正しく認識できていない

曽和さんインタビューカット

確かに、著名な経営者や企業のハイパフォーマーを見ていると共通点が数多くみられます。そして、たくさんの成功者が自身の成功談やその理由を著書にまとめています。

しかし、気を付けなければならないのは、「ほとんどの成功者は、自身の成功の習慣を正しく認識できていない」という点です。

以前もこの連載でお伝えしたことがありますが、スーパープレイヤーと呼ばれる人は一般的に、「自分がなぜスーパープレイヤーなのか」を言語化する能力が低いと言われています。何をすれば成果が出るのかなんていちいち考えず、頭の中で最良の方法を自動処理して動いているからです。

長嶋茂雄さんが読売巨人軍の監督時代、選手に「ホームランはブーンと打つんだ」と教えたり、浅田真央さんがジャンプの飛び方を聞かれて「よいしょって飛びます」と答えたりしているのがまさにそれ。なので、個人的には成功者の著書なんて一番アテにならないと思っています。

相談者が本当に、成功者の「成功につながる習慣」を身に着けたいならば、この人のようになりたいと思う成功者の「言っていること」ではなく「やっていること」を観察して、それを完コピするしかありません。

成功につながる習慣は1つではなく、いくつかの「習慣のピース」が組み合わさることで、成果を生み出しています。それを習得するには、まずは成功者の行動を1から10まで完全に真似する必要があります。

朝何時に起きるのか、モーニングルーティンは何か、どんな本を読んでいるのか、どんな服を選んでいるのか、昼には何を食べているのか、普段どんな人と付き合っているのか、情報収集のチャネルは…などなど、成功者の行動を微細に、徹底的に調べ上げ、完コピを。どれが本物の成功習慣かわからない以上、全部もれなくやってみるしかありません。

そして、「何だかうまく仕事が回ってきたな」と効果を実感するようになったら、これは必要ないかもと思える習慣をジェンガみたいに1つずつ抜いていきましょう。すると、あなた自身に合った成功者の習慣が、自分の中に残るはずです。

 

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真似する成功者は「身近な人」もしくは「近づきやすい人」

曽和さんインタビューカット

行動を観察し、完コピすることが大前提になるので、参考にする成功者はできるだけ身近な人がいいと思います。社内にいればベストですが、たとえばベンチャー経営者ならば社会人インターンシップやプロボノに参加する方法などで近づけるかもしれません。

一方、過去の偉人を真似するのは止めたほうがいいと思います。本などで語り継がれているエピソードや武勇伝はたいてい美化されているうえ、時代背景や環境も異なるのでその通り真似してみても身にならないことが多く、非効率です。「存命している人」で、かつ「一番近い(近づきやすい)成功者」がお勧めです。

そして、行動を完コピする過程で、おそらく「なぜこういう行動を取っているのか」見えてくるものがあるはずです。

例えば、ターゲットとなる成功者が「車はボルボしか乗らない」「平日の飲み会は初めの1杯しか飲まない」ということがわかったとします。これらの事実を単体で見れば、「ボルボが好きなのかな」「お酒が弱いのかな」で終わってしまうかもしれませんが、こういうところに、本質が表れていたりします。

ボルボ、お酒以外の行動も含め全体を俯瞰して見れば、「頑丈な車にこだわっている」「お酒は好きらしいが深酒をしない」→「常に100%の能力を発揮するために、日常の安心・安全を含め自身の体調管理を徹底している」という本質が見えてくるかもしれません。

ちなみに、私は成功者ではないので蛇足かもしれませんが、歴史番組はすべて録画し、空き時間に2倍速でチェックし頭に入れています。業務上、組織人事の説明をする機会が多いのですが、歴史上の話が一番比喩に使いやすいからです。

冒頭で上げた長嶋茂雄さんの例も、もしかしたら若い人の中にはすでにピンと来ない人もいるかもしれません。真央ちゃんの例も、10年後にはネタとして古くなり、効き目がなくなっている可能性があります。
でも歴史的人物の例を挙げて「古い!」とは言われません。そしてみんな学校の授業で少なからず歴史を学んでいるので、ある程度理解してくれる。投資効率が非常に高いのです。

実はこの習慣は、以前勤めていたライフネット生命の出口治明社長(当時)の行動を完コピしたうえでのものです。出口さんは「未知の分野を学ぶときは分厚い本から読む」などたくさんの独自の習慣を持っていますが、それらをすべて真似してみたうえで、「歴史を知ること」が最も自分に合っていて、仕事にも役立つと思えたのです。なお、出口さんはテレビ番組ではなく歴史に関する原書をお読みになっているので、正確には完コピと言えないかもしれませんが…。

完コピなんて面倒くさいと思われるかもしれませんが、本気で自分に合った成功習慣をつかみたいならば、完コピが一番の近道。少なくとも間違った方向に進むことはないはずです。

 

アドバイスまとめ

成功は1つの習慣によるものではなく
いろいろな行動のセットで成り立っている。
成功者がそれを正しく言語化できない以上、
「観察・完コピ」が結局は近道

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

 

 

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