「仕事ができない人」からの脱却法は?──心理カウンセラーが教える、効果抜群のイメージ挽回法

誰しも「仕事ができない人」扱いはされたくない。では、どんな人がそうなってしまうのか。そんなふうに思われないためには、何か方法があるのか。また、そんな扱いをされたら、どうやって抜け出すか。折しもリモートワークの拡大で環境が変わり、今や「仕事ができる人」の尺度も変わり始めているらしい。
コミュニケーションのスペシャリストであり、心理カウンセラーの五百田達成さんにアドバイスを聞いた。

「仕事ができない人」からの脱却法

心理カウンセラー 五百田達成(いおたたつなり)さん

作家・心理カウンセラー。最新刊『超雑談力()』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が5万部を超えるベストセラーに。「男女コミュニケーション」「きょうだい型性格分析」「ことばと伝え方とSNS」をテーマに執筆・講演。そのほかの著書にシリーズ70万部を超える『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
五百田達成さん公式サイト(

【脱却法①】「仕事ができる」と言われている人を観察する

仕事ができる人

まず五百田さんが指摘するのは、「仕事ができない」とは一体どんなことなのか、という根本的な問いかけだ。

「仕事ができる、仕事ができない、って実はものすごく曖昧なことなんです。それこそ100人のビジネスパーソンがいたら、100通りの“仕事ができる”があると僕は思っているんです。だから、仮に“仕事ができない”と思われたとしても、それはあなたが“仕事ができない”のではなく、その人が求めている“デキさ”と違うということなんです」

だから、「仕事ができない」と言われても落ち込んだり、自信を失ったりしてはいけないという。

「ある方が本に書かれていたことですが、一口にいいパソコンといっても、様々です。デザインがいいとか、CPUが早いとか、メモリーが多いとか、バッテリーが長く持つとか。でも、全部を兼ね備えているパソコンはそうそうない。これは人も同じなんです」

アイデアがバンバン出せることを得意にしている人もいれば、ロジカルシンキングこそが大事だと考えている人もいる。両者にとって「仕事ができる」は違う。

「だから、仮に“仕事ができない”と言われていたとしても、思っているほどできなくないよ、と伝えたいんです。できる・できないは相対的なもの。そんな評価は気にすることはない。それよりも、自分の武器を磨いていけばいい、と」

しかし、そうは言っても「仕事ができない人」とは、できれば思われたくない。では、どうすればいいのかというと、探ってみればいいのだ、と五百田さんは言う。

上司や先輩など周囲が思う“仕事ができる”とは何なのか、探ってみればいいんです。 “仕事ができる”と言われている人は、どんな人なのか。観察するんです。どんなところが評価されているのか。資料を早く出す、なのか、返事が早い、なのか。それを見つけてマネしていけばいい。そういう人をパクっちゃえばいいんですよ」

【脱却法②】「仕事ができる」って?思い切って聞いてみる

「仕事ができる」って?

だが、探ることも簡単ではない、と感じる人もいるかもしれない。そこで五百田さんが提案するのが、直接聞いてしまうことだ。

「何をもってすれば仕事ができるのか、先輩や上司に直接聞いてしまうんです。どうしたらいいですか、自分には何が足りないんでしょうか、と。認められたいんです、教えてください、とストレートに言ってもいい」

もしかしたら、はっきりとは教えてもらえないかもしれない。だが、仮に教えてもらえなかったとしても、「聞く」ことには大きな意義があるという。

素直で謙虚だな、という印象を与えられるからです。こいつは、変なプライドを持っていないな、と思ってもらえるし、もしかすると『素直に聞いてきたヤツなんて初めてだよ。なかなか見どころがあるな』なんて思ってもらえるかもしれない」

聞いてもらえることは、嬉しいことなのだ。聞いてくる人間は、かわいくなるのである。

「そんなことで評価が変わってしまうのが人間なんです。かわいがってる後輩だ、となると勝手に仕事ができることになったりする。ただホチキス留めが甘いだけだと『できねぇヤツだな』となるところが、かわいい後輩だと『ちょっと雑だけど中身はいいんだ』なんて言ったりするわけです(笑)」

素直に聞くだけで、印象はまったく変わるというのだ。

【脱却法③】人は誰でも「教えたがり」。HOOを活用する

「教えたがり」な人

「先輩や上司と何を話していいかわからない、と若い人に聞かれることがあるんですが、聞いて教わっておけばいいんですよ。『そのネクタイいいですね、どこで買ったんですか?』『そのボールペン、かっこいいですね、どこのですか?』『今度、接待があるかもしれないんですが、良い店ご存じないですか』とか」

男性でも女性でも、先輩や上司には教わる意識がいいという。しかも、実践しなければいけないわけではない。

「みんな教えたがりなだけですから。とにかく教わっておけばいい。それこそ上司には、若い頃の話を聞かせてください、とバブル時代の思い出を聞いておけばいいんです(笑)。それだけで、かわいいヤツだな、という印象になりますよ」

五百田さんは著書の『超雑談力()』でも、先輩や上司、義理の両親など目上の人に対しては「聞く」姿勢を強調するといい、と書いている。

「HOOと略しているんですが、褒める、教わる、お礼を言う、の3つです。その△△いいですね、と褒めて、教わったらお礼を言う。これだけです」

知っていれば、何を話そうか、と困ることはなくなるのだ。

【脱却法④】正確で早いコミュニケーションを心がける

コミュニケーション

一方で、一般的な「仕事ができる」イメージもある。相手がしてほしいと思うことを想像して、先回りしてしまう。何を求めているかを察して、プラスオンの価値をつけて提供してしまう。

「実際、そういう人もいますよね。でも、これを目指すのは、やっぱりハードルが高いと思うわけです。そうそうできるものではありません」

だが、それができないときに「使えねぇな」というセリフが飛んでくることになる。

「使えねぇな(部長にお酌もできないのかよ)、使えねぇな(書類にミスが多いんだよ)という(  )の部分ですよね。ただ、それを簡単に教えてもらえたらいいですが、そうではないから困るわけです」

そこで五百田さんが勧めるのが、コミュニケーションを変えることだという。これは、「仕事ができない」とすでに思われているかもしれないとしても、挽回する方法になると語る。

マメで正確で早いコミュニケーションを心がけることです。言われたことは復唱する。忘れないようメモする。来たメールはすぐに返す。これなら、誰でも心がければできる。レベルの高い気配りや気の効いたコミュニケーションなんてしなくても、とにかくこれだけやる。でも、印象はかなり変わります。費用対効果が高くて、最もコスパのいい方法だと僕は思っているんです」

【脱却法⑤】子育てのように後輩や部下を育成する

子育て

また、後輩や部下に対しても、ナイスな先輩や上司でいたいもの。だが、これまた何をすればいいのかが難しい。そこで五百田さんが勧めるのが、面倒見のいい先輩や上司を目指すことだ。

「余計なことをする必要はありません。見てあげること。そして見ているよ、と知らせてあげることです。『あのときの発表の資料、良かったよ』『いいスーツ、着てるじゃん』『あのクライアント、お前が担当になってイキイキしてきたな』。コミュニケーションなんていらない。見てあげる。そのためにも観察しておくことです」

日本のビジネスパーソンには、注意力と観察力が足りない、と五百田さん。だから、察することができない。ボーッとしてしまっているのだ。

「見て、それを伝えるだけでいいんですよ。部下を伸ばすコミュニケーションって、実はそれなんです」

上司の部下育てと子育てはとてもよく似ているという。

「親は赤ん坊を見て、『立った』『笑った』と言うだけですよね。それで十分なんですよ。『もっと右足をスムーズに出しなさい』なんて言わない。『あの立ち姿は若い頃の××だ』とかも言わない。転んで怪我しないよう、見張っているだけ。それだけで成長するんです。部下も同じです。見ている、というメッセージこそが大切なんです」

見ていることを伝える。これだけで部下や後輩からの印象は大きく変わるという。

【脱却法⑥】「引き」で映る。大きなアクションを心がける

オンライン会議の様子

一方、新型コロナの影響でリモートワークが拡大し、ここで「仕事ができる」「できない」に大きな変化が現れている、と五百田さん。

「ある方が言われていたんですが、今、仕事ができそうに見えるのは、画像のいいカメラといいWi-Fi環境、音声や画像が途切れず、おしゃれな背景が設定されている人だ、と。まさにその通りだと思いました」

五百田さん自身、残念なオンラインのやりとりをしたことがあるという。カメラ画質が粗くてぼやけた画面で遅刻して入ってきて、「あれ、始まってる。あれ、入ってるのかな」と一人で騒ぐ。

「残念ながら、仕事ができなさそうに見えちゃいますよね。画面映りもよくて、ウェブのリテラシーにこなれている人のほうが仕事ができるように見えるし、そういう人と一緒に仕事がしたいと誰もが思っています」

仕事ができない、と思われてしまわないためにも、まず行うべきは、オンライン環境の整備だということだ。Webカメラを購入したり、ライトを購入したり、マイク付きイヤホンにしたり、場合によっては、パソコンを買い換えることも検討したほうがいいかもしれない。

「もうひとつが、オンライン上のコミュニケーションの距離感に気を付けることですね。リモートが一気に広まったとき、初心者の誰もがやってしまっていた。バストアップでやたら顔が大きく映っていたんです」

みんな、パソコンのカメラに近づき過ぎていたのだ。これは仕方のない面もある。誰もやり方を教えてくれなかったからだ。

「何が違和感だったのかというと、顔が大きく映っているというのは、コミュニケーションとして情報量が少なすぎるからです。リアルなコミュニケーションで必ず行う、身振り手振りも映らない。つまり、もっと引いて映らないといけないということです。そうすることで、身振り手振りを含めた、多くの情報を相手に伝えることができるんです」

これは、会議などでも同様だという。経験している人はおわかりいただけると思うが、オンライン会議では、話者になると周囲の反応が聞こえてこない。とても不安になるのだ。

「そんな中で、一人でもちゃんと大ぶりにリアクションをしてくれていると、これは話者にはうれしいですよね。そして、こういう人の印象度は上がる。つまり、そういう人になったほうがいい、ということです」

例えば、上司や先輩が話しているときに、まるで反応のないまま聞いている人と、大きくうなずいて聞いてあげている人と、どちらに対して好印象を抱くか。一緒に仕事をしたいと思われるか。どちらの評価が高まるか。大きなリアクションを心がけたほうがいいということだ。

リモートワークになってから力を発揮する人も

力を発揮する人

リモートワークではもうひとつ、メッセンジャーアプリが多用されるようになった。リアルなオフィスで、口頭でやりとりするのとは異なり、ここでもまた「仕事ができる」感は変わったはずだと五百田さんは語る。

「相手がどんな様子なのかがわかりませんから、距離感が微妙につかめないんですよね」

それで妙なことを書いてしまって呆れられたりする。だが、ここでも、おかしなことに決してならないシンプルな方法があるという。

相手や周囲のマナーに合わせる、ということです。相手が3行なら、自分も3行で返す。これは、LINEのやりとりでもそうなんですが、恋人同士でうまくいくのは、この長さが一致する人だったりするんです」

大勢でやりとりをしているときも同じ。いきなりおかしな絵文字を使って、引かれてしまう上司のようになってはいけない。

空気を読んで、周りに合わせるんです。改行は多いのか。“。”はつけるのか、つけないのか。オレ流のオリジナリティを出しても意味がありません。相手の、あるいは周囲の心地良さに合わせることです」

また、オンラインで会議を行っているとき、頼まれていない議事録をアップしていくのも、印象を良くするという。

「意見をバンバン言えるような雰囲気でなければ、チャット欄にいいコメントを書き記していく役割を担う。これは後で喜ばれますね。ただ、“お前の意見はどうした?”と聞かれることもありますから、注意も必要ですが(笑)」

リモートワーク浸透で「仕事ができる」概念に変化

仕事ができない、から、仕事ができる、に

いずれにしても、リモートワーク、オンラインでの仕事が中心になったことで、大きな変化が始まったのだ。

「仕事ができる、できないも、ガラガラポンでリセットされたんです。対人関係に強くて声がでかくて、圧と雰囲気でデキそうに見せていた人の時代は終わりました。オンラインでみんなのオーラと圧は、平準化されて平等になったからです」

テレビのバラエティ番組でも、リモートになってから力を発揮する芸人も出てきている。面と向かっていないために、大御所の圧に負けずに突っ込めたりするのだ。

「同じように雰囲気に飲まれたり、遠慮してアイデアを言えなかった人が意見を言えるようになったり、見事なスライドで提案書を作り画面共有するようなことが起きているんだと思います」

リモートワークは、これまで仕事ができないと思われていた人が下剋上する絶好のチャンスにもなったのである。

INTERVIEW&WRITING:上阪徹

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