漫画としてもアニメとしても大人気の『進撃の巨人』。そこに登場する様々な名言や印象的なセリフの内容を、英語でも言えたらいいなと思いませんか?
そこで今回は『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されているイングリッシュ・ドクター(R)西澤ロイさんが、『進撃の巨人』を題材に、英語表現のスキルアップのヒントをお伝えします。
目次
丸暗記ではなく、英語を理解する題材として活用しよう
まず、私がイングリッシュ・ドクターとしてオススメするのは、『進撃の巨人』のセリフを英語で暗記するのではなく、「英語を学ぶ入り口にする」こと――。
英語力を上達させるために大切なのは、英語を学ぶというインプットだけで終わりにするのではなく、実際に自分でも使ってみるというアウトプットを何度も行なうことです。
日本語のセリフを英語で表現するのも、正解は1つでなく、様々な訳し方が可能です。ですからこの記事では、数パターンの英訳例をご紹介します。
自分で使える単語やフレーズなどが1つでも増えることは、英語の上達だと言えます。「これは使える」、もしくは「これは使ってみたい」などと思えるものはぜひ実際に使う練習をしてみていただけたらと思います。
「戦わなければ勝てない…」
では、さっそく、本題に入っていきましょう。
強盗に襲われたエレンが、ミカサに対して「戦え!! 戦うんだよ!!」と叫んだ後に、続けて言うのがこの言葉です。
このように、「~しなければ…できない」という表現を、サッと英語で言えますか?
文字通りに英語に訳したならば、例えば以下のようになるでしょうか。
もちろん、これでもバッチリ通じますが、もう少し自然な英語に変換してみましょう。
まず、日本語と英語は語順がほぼ反対ですよね。それは「~なら(if)」「~の時(when)」などの接続詞句についても同様なのです。つまり、if節は後ろに持ってきた方が自然な語順になります(前に持ってくると、その接続詞句を強調するような意味合いになります)。
また、「if … not」という2語の組み合わせは、「unless(もし~でなければ)」という1語で表現できます。
上記の方が、英語としての切れ味はより鋭いと言えます。
また、以下のように言えば否定語がなくなるため、より簡単に表現ができます。
(もし勝ちたいのならば、戦わなければならない)
「仕方ないでしょ? 世界は残酷なんだから」
女型の巨人と戦うことを躊躇するエレンとミカサの間で、こういうやり取りがあります。
ミカサ「仕方ないでしょ? 世界は残酷なんだから」(第32話「慈悲」より)
「世界は残酷なんだから」という部分に関しては、cruel(残酷な、無慈悲な)という単語を使って
などと表現すると良いでしょう。「世界が狭い」ことは、歌にもなっていますが、以下のように言います。
(世界は狭いですね)
worldにつける形容詞を入れ替えることで、いろいろと表現ができます。
さてそれよりも、「仕方がない」というところを、どのように英語で表現するかをぜひ考えてみたいと思います。
まず、「can’t help」という表現を思いついた人もいるかもしれません。例えば、以下のような使い方をします。
(仕方なかったんです)I couldn’t help laughing.
(笑わずにはいられなかった)
この表現には「押さえられない」といったニュアンスがあります。例えば、タバコを止めようと頭では思っているのに、つい吸ってしまい、「I can’t help it.」。はたまた、笑いをこらえきれなかったことを思い出して「I couldn’t help laughing.」…。「can’t help ~」という表現は「仕方がない」と訳されることもよくありますが、ここではちょっと当てはまりません。
また、「仕方がない」=「方法がない」と考えると、以下のような表現も思いつくかもしれません。
(それに関して、何もできません)There’s nothing you can do about it.
(それについて、できることは何もありません)
「進撃の巨人」の今回のストーリーでは、「戦う」という方法が存在する(戦うしかない)ため、これも意味的にちょっと当てはまらないと言えます。ですから、この「仕方ない」に関しては、以下のような英語表現がニュアンス的にふさわしいのではないでしょうか。
(他に方法がない)What else can we do?
(他に何ができるの?)
「まぁ、せいぜい… 悔いが残らない方を自分で選べ」
女型の巨人に追いかけられるリヴァイ班。巨人に変身して戦おうか悩むエレンに対して、リヴァイ兵長がかけるセリフが以下です。
「悔いが残る」ことを英語で表現できますか?
まず、regret(後悔する)という動詞を知っている方も多いかもしれません。例えば
(自分のしたことを後悔しています)
などのように使います。
また、「be sorry」という表現は、謝ったりする時だけでなく、後悔するような場合にも使うことができます。
(あなたは後でこのことを後悔することになるだろう)
そういった表現を使うと、リヴァイのセリフは例えば以下のように表現できるかもしれません。
(後で後悔したくなかったら、慎重に選ぶんだな)Make the choice that you will not regret.
(後悔しない選択をしなさい)
「駆逐してやる!!」
「進撃の巨人」で絶対に外せないのは、エレンが巨人について言う以下のセリフでしょう。
この「駆逐する」を、あなただったら英語でどのように表現しますか?
「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざをご存知の方もいるでしょう。
英語では、以下のように言います。
このdrive outを使って、以下のように言うこともできます。
driveは「運転する」という意味だけでなく「強い力をかける(ことで変化させる)」ことも表します。
(頭がおかしくなりそうだ)
例えば上記は、「主語(の何か)が私に強い圧力をかけることで、私をcrazyに変化させる」という表現です。そして「drive out (titans)」は、「巨人らに強い力をかけることでoutの状態(ここでは「いない」という意味)にする」ということから「駆逐する」に当たるのです。
しかし、それ以外にも様々な表現方法があります。例えば以下の表現は、誰でも知っているシンプルな単語を使ったものです。
また、ちょっと難しい単語ですが、exterminateという動詞を使うのもよいかもしれません。ex-を取った形がterminateであり、映画「ターミネーター(The Terminator)」の名前の元になっている言葉です。terminateで「終わらせる」という意味がありますが、そこに「外」を表すex-をつけることで「限度を超える」イメージがプラスされ、「せん滅する」「絶滅させる」ことになります。
「100年壁が壊されなかったからといって…」
最後に、会話でよく使われる非常に便利なフレーズが当てはまるセリフをご紹介します。第1話でのアルミンの発言です。
この「~だからといって…というワケではない」を表すのに使えるフレーズが「Just because … doesn’t mean …」です。「…」のところには、それぞれ文が入ります。
この表現は慣れるととても重宝しますから、ぜひ練習してみることをオススメします。もういくつか例文をご紹介しておきましょう。
(彼女がnoと言わないからと言って、yesなワケではない)Just because he is older doesn’t mean he is wiser.
(彼の方が年齢が上だからと言って、彼の方が賢いわけではない)
まとめ:使わなければ身につかない
「進撃の巨人」における有名なセリフを入り口にして、使える英語表現などをご紹介してみました。ご自身でも使ってみたいと思えるような英語表現はありましたでしょうか。
有名なセリフの英語を丸暗記するのも1つの手ではありますが、それだと応用が利きづらいという欠点があります。また、暗記だらけになってしまう英語学習のやり方を、私は「英語病」に分類しています。挫折しやすい上に、英語嫌いを引き起こしてしまいやすいからです。
英語表現を丸ごと覚える必要はありません。それをキッカケにすることで、英語への理解を少しでも深め、自分で使える表現を1つでも増やしていきましょう。
なお、「戦わなければ勝てない」のと全く同じで、英語は「使わなければ身につかない」と言えます。さて、これを、「unless」を使ってしっかりと表現できますでしょうか?
例えば、以下のように言えますね。
また、否定語を除いたシンプルな英語で言うならば、例えば以下のようになるでしょうか。
さらに、ちょっと表現を変えることで以下のような言い方もできますね。
(英語力を上達させたいなら、練習が必要です)
ぜひこのように、いろいろと英語を使ってみるというアウトプットや応用練習をしてみてください。
著者プロフィール
西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター
英語学習がうまくいっていない人専門のイングリッシュ・ドクター(英語の“お医者さん”)。英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数(⇒)。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ⇒」が好評を博している。★「イングリッシュ・ドクター」公式HP(⇒)