『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームが実践している会議に時間をかけない方法」についてお聞きしました。
疲れているからこそ立って会議を行う
私が部長に昇進して最初に手掛けたのは「会議の改革」でした。
二週間に一度行われる定例会議。建設現場から所長たちが集まり、工事の進み具合やコストの増減などの報告を行います。通常、所長は建設現場の仕事を終えると本社に寄らずに現場から直帰します。会議の日だけ本社に戻って来なければなりません。
そんな声が聞こえてきそうです。内心そう思っていたかもしれません。しかし、疲れ切っている中だからこそ、立って会議を行うことを提案したのです。
定例会議に参加して思ったことは、ただ座って聞いているだけの報告会でしかないということ。自分が発表しているとき以外は、半分寝ている所長もいます。疲れた身体でリラックスできる肘掛け付きのイスに座っているので、眠気が襲ってくるのも無理はありません。これでは忙しい中、集まってきた甲斐もありません。
どんなに興味のある本でも、疲れているときにソファで横になって読んでいると眠くなります。しかし本屋で立ち読みしながら眠る人はいません。
会議でも、まずは話を聞く体制を整えたかったのです。
会議は始める前が勝負!
ただし毎回3時間は行われる会議を、終業間際に立ったまま行うのでは、さすがに苛酷です。このままではパワハラ級の扱いです。そこで会議を早く終わらせるために、次の提案も同時に行いました。
その提案とは、各所長には事前に会議で配る報告書を参加者にメールで一斉送信してもらいます。定例会議の9割は、工事の進み具合や原価管理の話です。そんな説明は読めば分かります。出席者は事前に読み、気になる箇所だけ会議で質問すればよいのです。
毎回3時間は行っていた会議を、立って行う集中力と資料の事前配布により30分未満に短縮できました。実に80%以上の時間を短縮することができたのです。
会議後に予定を入れると、強制的に終わりがくる
さらに遅くても1時間以内に終わるように、個別のミーティングや飲み会など、会議の後に何らかの予定を入れるようにしました。会議がはじまってから1時間後に予定があれば、期限までに終わらせようと集中します。さすがに打ち上げ場所を「立ち飲み屋」にはしませんでしたが(笑)。
スキャナ、ボイスレコーダー、カメラ撮影は三種の神器
もうひとつ、会議で大変だったのが議事録作りです。以前に勤めていた建設会社でも毎月1回20名ほどの現場所長が集まり、定例会議を行っていました。
当時の私は総務担当で、入社6年目の28歳。1に現場、2に営業、3・4がなくて5に総務という扱い。そんな序列だった会社で総務の私は、議事録作りとお茶出し係で、当時は現場に出ている後輩にもお茶を出していました。
現場が一番という感じでふんぞり返りながらお茶を受け取る19歳の後輩を見ながら「30歳になったら絶対会社を辞めてやる」と決意していました。実際、この悔しいという思いから原動力となり、30歳で会社を辞めて税理士試験に専念するのです 。
速記のように話し言葉を書き写し、会議が終わったら要点をまとめてワープロに打ち直す。次の日までには工事部長に提出しなければなりません。3時間の会議ならその倍の6時間はかかる議事録作り。会議を含めて9時間です。
議事録を作成しても、見直しや改善、そして今後の検討資料に使うこともなかったので、なんて無駄な時間なんだと以前は思っていました。今でこそ、新しい職場でこの反省点を活かして改善できているので、決して無駄ではなかったと思うことができるのです。
現在の会社では議事録を作っていません。会議中に発表された気づきや注意点を書いたノートをスキャナで取り込み、所長から一斉送信で集めた現場進行表とともにパソコンのフォルダに保存して完了です。時間にして10分。以前の職場で6時間かけていたのがウソのようです。また、ボイスレコーダーに録音し、ホワイトボードをカメラ撮影して保存しておくだけで議事録にしている会社もあります。
会議に時間をかけない方法をまとめると、
2. 会議は立って行うことで集中力を高める
3. 議事録を廃止、簡略化する
4. 会議後に予定を入れることで、強制的に時間通りに終わらせる
残業しないチームはこのように会議の効率化を図ることで、会議の時間を大幅に短縮しているのです。
著者プロフィール
石川和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。
最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を8冊出版している。