映画「メリー・ポピンズ リターンズ」のセリフ、「Off we go!」ってどういう意味?

今回、英語について解説したい映画は、54年ぶりに続編が公開された「メリー・ポピンズ リターンズ」(Mary Poppins Returns)です。前作「メリー・ポピンズ」(Mary Poppins)は、ディズニー映画における不朽の名作と言うべき作品です。


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その続編である「メリー・ポピンズ リターンズ」を英語で味わうためのヒントについて、『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「映画に学ぶ英語フレーズ」を教えていただきました。

リスニングの難易度は他の映画よりも高い?

もともと英語のままで映画を観ることに対して、ハードルが高いと感じる人は多いかもしれません。

さらに、「メリー・ポピンズ リターンズ」に登場する人たちの英語には「ある特徴」があります。映画中、最初に歌われる曲のタイトルが

(Underneath the) Lovely London Sky
(愛しのロンドンの空)

つまり、舞台はロンドンであり、イギリス英語なのです。さらに、ミュージカル的な要素も強い映画であり、歌となると(バラードならまだしも)聞き取りがさらに難しくなります。

ですので、ちょっと注意がいるかもしれませんが、ぜひ英語のままで、イギリスの特徴的な発音も含めて楽しんでいただければと思います。

なお、映画中に登場する歌の一部(例えば「A Cover Is Not the Book」「Trip a Little Light Fantastic」「The Place Where Lost Things Go」)は、YouTubeに公式の動画がアップされており、字幕も表示が可能です。映画を観た時にはうまく聞き取れなかったとしても、何度も復習することができますよ。

「Off we go!」とはどういう意味?

「メリー・ポピンズ リターンズ」の予告編でも取り上げられている、泡だらけのバスタブの中に彼女が入っていくシーンがあります。その時にメリー・ポピンズは以下のように言います。

Off we go.

この英文を見て、いきなりoffで始まっていることから、よく分からないと思ってしまう人も少なくないのでは……と思います。倒置をしていない語順に直すならば「We go off.」になります。

似た表現で有名なフレーズに

Here we go.
(さあ、行くぞ)

がありますね。これも非常によく似た意味合いを持っていますし、こちらの方が馴染みがあって分かりやすいかもしれません。

まず主語がweになっている理由は、他に(先にバスタブの中に入っていった)3人の子どもがいるためです。「Here we go.」はもともとの語順ならば「We go here.」であり、「私たちはここでgoする」という意味です。

goはもちろん「行く」と訳されますが、離れたところに進むようなニュアンスがありますから「出発する」と訳すこともできます。

ところで、日本語でもそうですが「行くぞ!」とか「行きます!」など、つまり「行く」という言葉を発しながら出発したくありませんか?

英語でも同様で、そのタイミングで「go」と言いたいのです。ですから、倒置をすることでhereを文頭に持ってきて、「Here we go.」という言い方をすることにより、最後のgoという言葉に合わせて出発できるようにしている――とお考えください。

なお、今回のフレーズは「Off we go.」です。offは「離れる」ことを表し、それがgoに加わることで、「勢いよく出発する」ようなニュアンスが加わるとお考えください。「go off」は例えば「発射する」という意味でも使われますし、「(銃が)暴発する」「(アラームが)鳴る」ような場合にも使われます。

ご参考までに、この「Off we go.」は、予告編では「さあ、行くわよ」と訳されており、実際の映画の字幕では「さあ、始まりよ」になっていました。しかし、ニュアンスとしてはあくまでも「go off」であり、いわば「発射!」なのです。

メリー・ポピンズが語る前向きな言葉たち

メリー・ポピンズは、子どもたちの「住み込みの教育係(nanny)」になります。そして、母親を亡くし悲しんでいる子どもたち(そして大人たち)に人生の楽しみ方を伝えていきます。

そのような映画ですから、彼女が発するセリフや、映画の中で登場する言葉には、非常に前向きなものが多いと言えます。その中のいくつかをご紹介します。

Everything is possible. Even the impossible.
(どんなことでも可能なの。不可能なことでさえも)

メリー・ポピンズは魔法使いですから、「不可能なことがない」のは彼女にとっては当たり前だと思われるかもしれません。しかし、彼女がいつも魔法を使って助けてくれるわけではありません。基本的には手出しをすることなく、本当に必要な時まで何もせずにずっと見守るのです。

ですからそこで大切なのは、私たち自身が「できる」と信じることなのです。なぜなら、私たちは様々なことに対して「これはムリ」「こんなことは不可能だ」などと考え、「現実」や「常識」、「経験」という名の偏見の中に生きてしまいがちだからです。

自分で何かを不可能だと思った瞬間に、それは確実に、不可能なことになってしまいます。そもそも魔法が使えたとしても、不可能だと思ってしまったことは不可能なのです。だからこそ、メリー・ポピンズは「不可能なこと」だと決めつけるな、と教えてくれています。「どんなことでも可能」だと思い続け、可能性を諦めないべきなのです。

次のフレーズがこちらです。

A cover is nice. But a cover is not the book.
本のカバーは素敵だけど、カバーは本ではない。

これは「A Cover Is Not the Book」という歌の歌詞に登場する一節です。いくらカバーが素敵であっても、それ自体が本なのではありません。ですから「きちんと開いて読んでみよう(open it up and take a look)」とも言っています。

忙しい時代ですから、多くの人がつい、物事を表面的なところだけで判断してしまいがちではないでしょうか。もちろん、時間があるならば中身をしっかりと見るのが良いでしょう。しかし、表面だけしか見れない時には、「それがカバーに過ぎない」ことを認識しておくのも大事かもしれません。

また逆に、表面を取り繕うことは比較的容易にできますが(もちろん見た目も大事ですが)、本当に大切なのは内面だということですね。しっかりと内面を磨く努力を怠らないようにしたいものです。

There’s nowhere to go but up.
行くところは上しかないのよ。

このフレーズは、風船が登場する場面で歌われる歌詞に含まれています。ヘリウムの入った風船を考えるならば、空気よりも比重が軽いですから確かに行くところは上しかありませんね。

しかし、別に風船に限らず、人生にも同じことが言えるのではないでしょうか。人は生まれる時、身長は50センチ前後であり、自分でできることはほとんどありません。しかし、そこから体は大きくなり、できることが増えていきます。もちろん個人差はいろいろとあるかもしれませんが、体も心も、成長しない人などいないのです。その意味でも「行くところは上しかない」と言えるかもしれません。

また、人生において、大変な時期は誰にでもあるでしょう。ツラいタイミングには、全てがネガティブに思えてしまうかもしれません。しかし、夜に例えるなら、いつかは夜明けが来ます。暗いトンネルに例えるなら、いつかそこから抜けることができます。最悪の時だと思っても、落ちるところまで落ちたなら、「行くところは上しかなくなる」のです。

そして最後にご紹介したいのは、こちらのフレーズです。

Nothing is gone forever, only out of place.
(永遠になくなってしまうものなんてない。この場所から外れてしまうだけ)

メリー・ポピンズが教育係をつとめる3人の子どもたちは、1年前に母親を亡くしています。そんな子供たちに対して、メリー・ポピンズが子守歌として歌ってあげる「The Place Where Lost Things Go」という曲の中に、上記のフレーズが含まれています。

「out of place」とは、「本来あるべき場所から外れる」という意味合いです。「永遠になくなるのではない」というこのフレーズが映画の中でどのような意味を持つのかは、ネタバレになりますので触れません。ぜひ実際に映画をご覧いただけたらと思います。

完全日本語吹替版では、歌手の平原綾香さんがメリー・ポピンズ役に加え、「幸せのありか」というエンドソングを歌っているのも魅力的ではあります。ですが字幕版をご覧になることで、ぜひ英語のまま、エミリー・ブラントさん演ずるオリジナルバージョンを味わってみてください。

<映画情報>

映画『メリー・ポピンズ リターンズ』(→)
製作会社 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ / ルカマー・プロダクションズ マーク・プラット・プロダクションズ。配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン。
2月1日(金)より大ヒット上映中。
(C)2019 Disney Enterprises Inc.

著者プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数()。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度UP」が好評を博している。★「イングリッシュ・ドクター」公式HP(

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