『プーと大人になった僕』のセリフで英語を学ぼう~否定語noの使い方~

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第23回目の今回も大好評企画の「映画に学ぶ英語フレーズです。今回は映画『プーと大人になった僕』を題材にしたいと思います。

プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度UP」が好評を博している。

「くまのプーさん(Winnie the Pooh)」が初めて実写映画化された『プーと大人になった僕』(原題:Christopher Robin)はご覧になりましたか?

ユアン・マクレガーが演じる、大人となったクリストファー・ロビンがプーさんと再開を果たすこの映画。仕事に疲れた大人に響く、と話題になっています。

今回は『プーと大人になった僕』のセリフを通じて、英語における否定語の使い方を学んでいきましょう。

否定を表す言葉nothing

Doing nothing often leads to the very best something.

(何もしないことが、最高の何かにつながることがよくある)

これは、プーさんの言葉です。日本人にとってなかなか理解しづらいのが、否定語のnothingではないでしょうか。

somethingの方がずっと理解しやすいでしょう。「漠然と少し存在する」ことを表すsome+「もの・コト」を表すthingから成っており、「なにか」という意味になります。

nothingは、否定を表すno+thingであり、「何もないもの」を表します。このような否定語は日本語には存在しません。「do nothing」は「何もないことをする」⇒「何もしない」という意味合いになるのです。

例えば「I have nothing.」であれば「私は何もないものを持っている」⇒「私は何も持っていない」という意味になりますね。

noはnot anyと言い換えられる

もし、noという言葉がうまく理解できなければ、not+anyと言い換えてみると良いでしょう。anyも日本語に訳しづらい単語ではありますが、その意味は「どんな~(であっても)」という任意性を表します。

「doing nothing」は「not doing anything」と言い換えられます。「どんなこと(anything)であってもしない」⇒「何もしない」という風に考えると分かりやすいかもしれません。

同様に「have nothing」は「not have anything(I don’t have anything.)」に相当します。「どんなもの(anything)であっても持っていない」⇒「何も持っていない」ということです。

ただし、このようにいちいち言い換えるのは時間がかかります。ですからこの言い換えは、慣れるまでの「補助」にとどめておきましょう。最終的には「doing nothing」や「have nothing」をそのまま理解できる必要があります。

nothingは主語でも使われる

さて、日本人にとってさらに理解しづらいのが、nothingのような否定語が主語としても使われることです。

People say “nothing is impossible.”

(不可能なことなどない、と人々は言う)

これもプーさんの言葉です。

「○○ is impossible.」は「○○が不可能である」という意味ですよね。be動詞は「イコールである」ことを意味し、その後にある形容詞のimpossible(不可能な)と主語とを「○○ = impossible」だと表現しています。

しかし、nothingを主語にすることにより「何もないもの = impossible」、つまり「impossibleなもの(不可能なこと)は何もない」という意味になるのです。

なお、noは全否定をする言葉ですから、数学が得意な人であれば「何もないもの = impossible」⇒「全てのもの ≠ impossible」という風に置き換えると分かりやすいかもしれません。

さて、この用法は慣れが重要ですから、いくつか例を出しておきましょう。

Nothing can stop him.

(何もないものが彼を止められる⇒何も彼を止められない)

Nothing tastes better than this coffee.

(何もないものが、このコーヒーよりも良い味がする⇒このコーヒーよりも美味しいものはない)

No one knows.

(no one(誰でもない人)が知っている⇒誰も知らない)

「nowhereへ行く」ってどういう意味?

ここまででご説明したのが、英語としての基本に当たります。しかし、『プーと大人になった僕』では、もう少しひねった表現が登場します。

Pooh: Where are we going?

(どこへ行くの?)

Robin: Nowhere.

(nowhereだよ)

Pooh: Oh, one of my favorite places.

(あぁ、大好きな場所の1つだ)

nowhereというのは「どこでもないところ」を表す否定語です。

つまり、「We are going nowhere.」は普通に考えれば「どこでもないところに行く」⇒「どこにも行かない」という意味になります。しかし、ここで2人は「nowhere」というのを、まるでそのような場所があり、そこへ行くかのように表現しているのです。

英語では実際に、時々このような表現を使います。例えば

It’s in the middle of nowhere.

これは「どこでもないところの真ん中」、つまり「in the middle of nowhere」は「ド田舎」という意味合いになります。日本語で田舎に対して「何もないところ」という言い方をするのとちょっと近いかもしれません。

nothingをする

そしてもう2つ、クリストファー・ロビンのセリフをご紹介しておきましょう。

Robin: I like doing best… is nothing.

これも「何もしない」のではなく「nothingをする」のですね。「どうでもいいこと」「意味のないこと」などという日本語に置き換えてしまうと訳しすぎになります。あくまでも「nothing」なのです。

そして、全寮制の学校に進学することになり、プーさんに別れを告げる時のセリフがこちらです。

Robin: I’m not going to do nothing anymore. They don’t let you at the boarding school.

(僕はこれ以上、nothingをすることはできないんだ。寄宿学校では許されないから)

まとめ

nothingなどの否定語は、日本語の感覚からすると理解しづらいものですので、まずはしっかりと基礎を押さえておきましょう。その上で、応用的な使い方までも理解することができれば、映画のセリフを原語のままで味わえることになります。

日本語訳を必要とせずに、英語のままで深く理解できる喜びは、それを知らない人にはなかなか伝えられない英語学習の醍醐味と言えます。

映画『プーと大人になった僕』の英語は、発音がイギリス系ではありますが、単語としての難易度は決して高くありません。DVDなどが出たら、ぜひ繰り返しご覧になり、セリフを味わってみていただけたらと思います。

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