観衆を引きつける!文字だらけスライドの磨き方──澤円のプレゼン塾(その19)

プレゼンで伝えたいことをついつい押し込めてしまい、気づいたらスライドが文字だらけに……。そんな経験はありませんか?
文字だらけのスライドは聴衆の注意を奪ってしまうし、何よりかっこよくはありません。澤円のプレゼン塾・第19回は、スライドの要素をそぎ落とし、スマートなスライド作りのテクニックをお伝えしていきます。

スライドはキーワード・画像・グラフだけを載せる

前回までは、プレゼン用スライドの全体のラフイメージを作るまでのフェーズについてお話ししました。

今回からは、スライドづくりの中期段階の第二弾についての話になります。

ある程度の枚数のスライドが作成され、アジェンダもとりあえずできたところで、「磨く」作業に入ります。

まずチェックするのは、スライドをタイル表示にして「文字だらけ」のスライドを見つけることです。

ここは好みが分かれるところではありますが、澤は「スライドはキーワード・画像・グラフだけを載せる」をモットーにしています。

理由は、「文字だらけのスライドは、オーディエンスが画面の文字を読み始めてしまい、視点の誘導やイメージの植え付けができなくなるから」です。

なので、とにかく文字を減らす。あっという間に文字は読み終わって、自分のプレゼンテーションに意識を向けなおしてくれるように仕向けます。

この手法はプレゼンスタイルに大きく依存するので、「これが正解!」というのはあまりないかなと思います。

ただ、かっこいいプレゼンが見られるメディアの一つに「TED」がありますが、スピーカーが文字だらけのスライドを使うことは(少なくとも澤の知る限りでは)ほとんどないと思います。映されているのは、事実を伝えるためのグラフだったり、想像力を喚起するための画像だったり。場合によっては、一度もスライドを使うことなく話しきるスピーカーもいます。

▲Ben Wellington: How we found the worst place to park in New York City — using big data より

スライドを作っているとき、「話すこと」をそのまま文字にしてしまう人がいます。これは、大失敗はしないまでも大成功には程遠いプレゼンへの第一歩と思ってください。

かっこいいプレゼンは、文字だらけのスライドでは作られません。かっこよく振る舞うあなたの一挙手一投足によって決まるのです。その阻害要因となるような文字は、とにかく減らすに越したことはありません。

ということで、びっしり文字が書かれたスライドを見つけたら、その文章を丸ごとパワーポイントの「ノート」の部分にコピーしてしまいましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「です・ます」などの口語的表現はそぎ落とし、「体言止め」に

そして、その文字の中で最も重要な部分、効果的と思われる表現、印象に残るキーワードなどを抜き出して、スライドに書きましょう。その際、「です・ます」などの口語的表現は極力そぎ落としてしまいます。

言葉をパーツ化して、意味が伝わる最少単位を目指します。冗長になりそうなら、英語を交えるのも効果的です。横文字を使うことにアレルギー反応を示す人もいますが、カタカナ英語でとして浸透している言葉であれば、ある程度使うのは構わないかと思います。

基本は「体言止め」。その方が、オーディエンスは理解がしやすくなります。しかし、どんどんそぎ落としていくと、なんとなく文字の居場所が寂しい感じになることがあります。

そういう場合には、言葉を図形の中に入れてあげると、居心地のいい感じを作れます。

これだけでも、ずいぶんとすっきりした印象になりませんか?

最初に思いついた文章は、プレゼンテーションの中でそのまま口に出して話せばOKです。

スライドに文字を多く入れてしまうと、ついつい自分もその文字を目で追い始めてしまいます。

よくあるのが、大画面に移されたスライドを、オーディエンスと一緒になって読んでいるプレゼンテーション。下手するとステージで後ろを向いてしまって、お客さんにお尻向けてしまっている人もいます。

「それ、資料を配ればいいのでは?」と思ってしまいます。プレゼンテーションをしている意味が、ほとんどありません。

「行間にある何か」を補足するために、スライドと自分がコラボレーションしなくちゃいけないのです。

スライドは、あくまでプレゼンテーションをするあなたの引き立て役。スライドにコントロールされないでください。文字の多いスライドは、あなたを縛ります。「書いてあることを読まないのはダメでは?」という心理状態になりやすいのです。自分を解き放つためにも、スライドの文字を減らしてみましょう。

もし、資料としてどうしても細かい文字の含まれるものを使いたいのであれば、プレゼンの添付資料としてあとで配布する、もしくはスライドとは別の資料として渡す、という方法もあります。

たとえるなら、映画のパンフレットのような感じですね。映画を観終わった後に、より深く登場人物のことを知りたくなったり、ストーリーの裏側を感じたくなったりした時に読むものを渡すのです。

次回は、スライドの文字効果を各段に高める「画像」活用法について解説していきます。お楽しみに!

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著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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