デジタル時代だからこそ、デジタルでは割り切れないアナログの「気づかい」に悩まされる人もいるのではないでしょうか。自分ではよかれと思って行動したのに、裏目に出てしまい、恥をかいたり、かかせたり。それだけにとどまらず、相手の期待を裏切り、信頼を失ったなんて経験をした方もいるのではないでしょうか。悲しいですが、自分の気づかいが、必ずしも相手に喜ばれるわけではありませんよね。そこで、『損する気づかい 得する気づかい』(ダイヤモンド社刊)の著者八嶋まなぶさんに、損しないための気づかいの極意を教えてもらいました。
©ひらのんさ
プロフィール
八嶋まなぶ(やしま・まなぶ)
サラリーマン作家。「気づかいLabo」主宰。
広告業界の第一線で営業職として勤務するサラリーマン作家。東証一部上場企業の経営者、世界企業のCEO、政治家、医師、弁護士、大物俳優・女優、クリエイター……などのクライアントと仕事をともにし、その過程で気づかいやダンドリといった対人スキルを磨く。その結果、「業界平均3割で上々」と言われる競合プレゼンにおいて、勝率は7割超をキープ。近年では口コミでクライアントから「直接指名」で仕事を獲得するようになる。そうした経験を通し、「そつなく気をつかい、うまいことやっていく人」と、「気はやさしいのに、よかれと思ったことが裏目に出る人」には決定的な共通点があることを実感。「空気を読む」「あうんの呼吸」といった概念を、極めて具体的なアクションに起こし、紹介する活動を開始。プライベートレッスンでは「コミュニケーションが苦手だった人が無理なく人と話せるようになる」「新卒の大学生が飛び込み営業のエースになる」など、実績を残している。
損する人は、「自分が何を話すか」ばかり考え、得する人は、「相手が話したいこと」を引き出している
人見知り・口ベタでもできるコミュニケーションのコツ
初対面の人と話していて、こんな場面を経験したことはないでしょうか。
「会話が思うように続かず、時計の秒針がコチコチ動く音がやけに耳についた」
「空になったお茶のコップを飲むふりをして時間稼ぎをした」
「何となく気まずくて特に用がないのにスマホを取り出した」
いろいろ話題を提供するも、相手の興味とかみ合わず、自分ひとりで空回りしてどんどん気まずい雰囲気になる……。そんな経験があるかもしれません。では、なぜそうなってしまうのでしょうか? 答えは一つです。
「自分が何を話すかばかり考えているから」。
「何を話そう」「どうやってこの間を埋めよう」と、自分を中心にぐるぐる思考をめぐらせていると、会話は止まりやすくなります。なぜなら、「自分が話すことばかり考えてしまう」というのは、「相手に興味がない証拠」でもあるからです。いいコミュニケーションは、響き合い。「相手はどんな人なのか」「相手は何を話したいのか」に軸をあわせていくと、「ぜんぜん盛り上がらない」という事態は避けられます。
コミュニケーションがうまい人ほど、話すよりも聞くことに力を注ぎ、コミュニケーションのカギ(話題の中心)を見つけています。理想の割合は、「自分が話す2」:「相手の話を聞く8」の比率です。そうすれば、そもそも「口ベタ」「人見知り」だから人になるべく会いたくない、という悩みもなくなります。むしろ、しゃべりすぎる人よりもずっと印象がよくなり、慣れてくれば人間関係をつくるのが得意になっていくでしょう。
本音を引き出す「3つのテッパン質問」とは
「でも、何を聞いてよいかがそもそもわからない」という方もいると思います。そこで、私が考えるおススメの「相手が話したいことを引き出す3つのテッパン質問」をご紹介します。
鉄板質問(1) わらしべ
「わらしべ長者」というおとぎ話があります。ある貧しい人が「わら」を物々交換して、最後は大金持ちになるというストーリー。この「わらを物々交換する」という考え方が質問にも応用できます。
たとえば、「この前、美味しいパスタの店を見つけてね」と言われたら「何のパスタを食べたのですか?」と一部(わら)を切り出して質問(物々交換)する。そして「カルボナーラだよ」と相手が答えたら、「昔からカルボナーラがお好きなんですか?」とまた切り出す。このように相手の会話の一部(わら)を抜き出して質問するだけで、相手の興味がある話で会話することができます。
鉄板質問(2) やまびこ
「わら」を探すのが難しいという方には「やまびこ」がおすすめです。
やり方は簡単で、「相手が発したフレーズ」を「疑問形」にして「やまびこ」のようにリピートするだけです。たとえば「最近、いい出会いがなくて」と言われたら「出会いがないの?」と言うだけ。ちょっとした雑談では、多くの人は具体的なアドバイスではなく、「話を聞いてもらいたい(理解してほしい)」と望んでいることが多いように思います。だからこそ「やまびこ」を使って、相手の本音を引き出し、その言いたい答えを聞くだけで会話が続きます。
鉄板質問(3) ねぎらい
相手がネガティブな話題をしてきたときに使えるのが「大変ですね」です。人間少なからず、「自分の話を聞いてもらいたい」と思っているのではないでしょうか。余計な会話は不要です。「大変ですね」と共感し、ねぎらうだけで「そうなんですよ」と相手が話し出してくれます。
「ご出身はどちらですか?」からどう広げればいい?
より具体的に、会話を広げる方法を見てみましょう。たとえば、定番中の定番「ご出身はどちらですか?」。
このやり取りから、どのように会話を広げればよいでしょうか。
相手の答えは、自分のよく知っている場所かもしれませんし、知らない地名かもしれません。その答えが行ったことがない場所、かつあまり詳しくない場所だった場合も、安心してください。
答えは、変に知ったかぶらずに「失礼な質問でごめんなさい、○○県のどのあたりなんですか?」「ごめんなさい、初めて聞いた地名なんですが、どんな場所なんですか?」などと聞くことです。
また、ある程度知っている場所ならば、「今度遊びに行こうと思うのですが、おすすめの食べ物(スポット)はありますか?」「地元の方は○○(名産品など)を食べたりするんですか?」と返してみてください。運よく行ったことのある場所ならば、「〇〇なんですか! 素敵なところですよね」「○○がおいしかったなぁ」「また行ってみたいです」などでOKです。地元の思い出は誰しも持っていますから、まずはエピソードを引き出すための質問をしてみましょう。
このように、質問は「その場しのぎ」ではなく、相手への興味を聞いていくと、エピソードトークにつながっていきます。
話題が広がるきっかけ質問とその広げ方の例
もっと具体的な質問例が知りたいという方もいると思います。いくつかおススメをご紹介しましょう。
・「〇〇を教えてくれませんか?」
⇒ 相手が得意なことを尋ねるのは、会話を広げるテッパンの一つだと思います。
・「週末(今晩)は雨が降るらしいですよ」
⇒天気の中でも、雨は話題になりやすく、たとえば「雨と言えば、降水確率何%なら傘を持っていきますか?」などと広げられます。
・「そのTシャツ、おしゃれですね」
⇒ 「どこで買ったんですか?」「いつもおしゃれですよね」など、広げていきましょう。
チェックポイント
☑ 「相手はどんな人なのか」「相手は何を話したいのか」に話の軸をずらす
☑ 自分が話す2:相手の話を聞く8の比率で会話する
☑ 「わらしべ質問」「やまびこ」「ねぎらい」の鉄板質問を使う
☑ 「きっかけ質問」で話題を広げる
まとめ
気づかいに才能は必要ありません。「損する」地雷を避け、「得する」型だけを実践していけば、だんだんと、そして自然と、「あっ、この場合は、こうしておいたほうがいいかな……?」という感覚が、磨かれていくのです。ぜんぜん乗れなかった自転車に、急に乗れるようになる。そんな感覚が必ず訪れます。気づかいは、そんなに難しいことではない。そして、気づかいがうまくいくと、人生こんなに楽しいことはない! あなたにも、そんな心境になってほしいなぁと思い、ビジネスの気づかいからプライベートの気づかいまで、幅広く使える気づかいの型を「損する気づかい 得する気づかい」に凝縮しました。あなたの人生に幸あれ!