ライトニングトークに使うスライドは、シンプルにインパクトのある核だけで構成すべきと語った澤さん。澤円のプレゼン塾・第16回は、実際の「サムライベンチャーサミット」で、澤さんがシンプルなスライドを使ってどうプレゼンテーションしたのか紹介していきます。
ライトニングトークで聴衆を惹きつけるプレゼンの仕方
さて、前回ご紹介した通り、スライドができ上がりました。次はどう語るかです。まずは、澤流のライトニングトーク・メソッドを3つ紹介したいと思います。
1.言葉はシンプルに、切れ味よく
ライトニングトークでもっとも大事なのは「切れ味」だと思います。とにかく時間が短いのですから、スパッと決めたいところです。そのためには、とにかく選ぶ言葉はシンプルであるべきでしょう。小学生にでも分かるくらいの言葉を選びましょう。
2.説明ではなく、パフォーマンス
ライトニングトークは「説明」であってはならない、というのが私の持論です。ライトニングトークはパフォーマンス。エンターテイメント的要素が強くていいのではないでしょうか。
3.プレゼンで「語りかける」
そして、プレゼンのスタイルは「語りかける」です。聴衆に対して、問いかけ・訴えかけ・誘うのです。もちろん、全ての時間軸は未来です。明るい未来に向けて人々を導きましょう。
前述のプレゼンテーションで私がどのように話すかを説明しましょう。(この記事用に、実際に当日に話した内容とはあえて違うかたちでまとめてみました)
まず、会場はちょっと暗くすることがわかっていたので、スライドショーのはじめは真っ黒の画面から始めます。そして、アニメーションで聖書の写真が浮かび上がってきます。
澤の視覚的印象は「キリストみたい」という定義がある程度浸透しておりますので、聖書の話題を出すだけでアイスブレイクになります。「ボクがこれ言うと説得力あるでしょ?」と聴衆に問いかけて、聴衆の空気を柔らかくします。
その後、エジソンさんの言葉を借りて「1000回失敗したんじゃない、1000のステップだったんだなんて、ものは言いようですね!」と言って軽く笑いを取った後で、「でも、チャレンジを続けるベンチャー企業にかかわる皆さんは、この言葉の意味はわかりますよね?へこたれている暇なんてありませんよね!すばらしい言葉だと思います!」と、聴衆の意識をぐっと惹きつけます。
そして「自分の成功を自分だけのものにするなんて考えでは、大きな成功はできないのも皆さんは分かっていますよね。やっぱり仲間を大事にすることが成功の絶対不可欠な要素です!」と言って、会場の一体感を醸成します。
その後で「仲間を作るためには、自分の思いが詰まった言葉が絶対に必要ですね。言葉なくして、人と人はつながりません。人の言葉で人は考え、そして動くのです」と、核である「言葉」の意識を高めます。
いよいよ最後のスライドでは、「皆さんのチャレンジ精神、そして大事な仲間とのつながりを、言葉にしてください。言葉こそ、皆さんの最大の武器であり、未来への鍵になります。どんどん皆さんの言葉を世界に伝えていってください」と未来が感じられる言葉で締めくくります。
流れとしては以下の通りです。
後半に進むに従い、聴衆は高揚感を得られるような流れになっているのがお分かりいただけるでしょう。メリハリをつけ、スライドの一枚一枚に意味づけがある方が話しやすいですね。これが説明の多いスライドだと、聴衆が意識の置きどころがわからなくなって、「結局なんの話だったんだ?」となりかねません。
ライトニングトークは、ショーのように華やかにやるのが澤流です。聴衆の視線を一身に浴びて語る数分の間に、むこう数か月、あるいは数年にわたって聴衆の行動や思考に何らかの影響を与えられれば、大成功です。
意外!?ライトニングトークは早口厳禁
話し方、というテクニック面もいくつかご紹介します。
ライトニングトークをやる際に、時間を気にしすぎるあまり早口になりすぎてしまう人がいます。これはぜひ避けたいところです。
早口なプレゼンは、聞き手は受け取りにくいものです。ただでさえ多くの情報を伝えられない上に、受け取りにくい話し方をしてしまっては、ライトニングトークをやる意味がなくなってしまいます。
ライトニングトークの時ほど、落ち着いた話し方、しっかりメリハリのある話し方が求められます。
気持ちとしては、いつもよりもゆっくり話すくらいでいいです。少ないながらも純度の高い情報を準備して(そもそもここが大事なんですけど)、しっかりかみしめるように語りましょう。
そして1~2秒くらいの「間」を作るのも効果てきめんです。次のスライドに移るときに、ちょっとだけ黙る。そして、聴衆の視線を自分に向けさせてみましょう。そこでビビらず聴衆を笑顔で見渡してください。自分の言葉が沁みわたる瞬間を感じることができると思います。
ライトニングトークで慌てて話すのは格好悪いので、ぜひとも「落ち着いたプレゼンター」をセルフプロデュースしてください。
著者プロフィール
澤 円(さわ まどか)氏
大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術」
Twitter:@madoka510
※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。