『千と千尋の神隠し』のセリフで英語を学ぼう――「おとなしくして」を英語で言うと?

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第20回目の今回は「アニメ映画に学ぶ英語フレーズです。今回はジブリ映画『千と千尋の神隠し』を題材にしたいと思います。

プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度UP」が好評を博している。

今回、題材として取り上げるのはジブリ映画「千と千尋の神隠し」です。この映画は日本トップレベルの興行成績を収めた大人気の作品ですから、好きだという人も多いのではないでしょうか。

ジブリ作品をはじめとするアニメ映画は、海外で公開されるものも多くあります。そのためか、DVDやBlu-rayにはよく英語版の音声が含まれています(なお、再生できる地域の制限がありますのでリージョンコードにはご注意ください)。
好きな作品を何度も英語で観たり、セリフを覚えたりするのは、有効な英語学習の方法です。私自身、ジブリ作品のDVDを何枚も持っており、何度観たか分かりません。

今回は「千と千尋の神隠し」の英語版のセリフを題材にして、英語らしい表現の仕方を味わってみましょう。

「千と千尋の神隠し」の英語版のタイトルは…?

まず、最初に確認しておきたいのは「千と千尋の神隠し」の英語版でのタイトルです。ずばり、「Spirited Away」と名づけられています。

spiritというのは「(肉体に対する)精神」や「精霊」、つまり「目に見えない」ものを指す時に使われる言葉です。そして動詞で「spirit away」のように言うと「密かに連れ去る」――。それが受け身になり、「神隠し」を表すために使われています。

4つのセリフを英語にしてみよう!

これから、「千と千尋の神隠し」に登場する日本語のセリフを4つ取り上げます。まず、それらを英語で表現することにぜひ挑戦してみてください。

1.千尋、そんなにくっつかないでよ。歩きにくいわ。
2.千、お前のこと、鈍くさいって言ったけど、取り消すぞ!
3.おとなしくしててね。
4.入るなら、さっさとお入り。

全文を英語にするのはちょっと難しいと思う方は、下線部だけでも、英語でどう言うかを考えてみてください。

なお、合っているから良いとか、間違っているからダメ……などとは考えないでくださいね。大切なのはまず、知っている英単語で表現しようとすることです。

また、頑張って自力で表現しようとすることで、その後に解説を読んだ時の学びが大きくなります。ですから、ぜひ間違いを恐れずに、何か英語で表現してみてください。

「歩きにくい」を英語で言うと…

1.千尋、そんなにくっつかないでよ。歩きにくいわ。

このセリフは、映画の冒頭で、両親と一緒の千尋がトンネルの中に入るシーンです。怖がる千尋と一緒に歩く母親が上のように言います。

「歩きにくい」というところを、例えば
It’s hard to walk.
などと表現した人もいるかもしれません。それでも全く問題はありませんし、素晴らしいと思いますよ。

英語版の音声では次のように言っています。

Chihiro, don’t cling like that. You’ll make me trip.

まずclingは「しがみつく、ぴったりくっついて離れない」という意味合いですね。そして、「歩きにくい」のところは「You’ll make me trip.」と表現しています。

このtripは「旅行(する)」ではなく、「つまずく」という意味合いで、動詞として使われています。makeは使役動詞であり「make me trip」ですから「私をつまずかせる」という意味です。

それがwillの未来形で表現されていますので「(このままあなたが私にしがみついていたら)私をつまずかせることになる」、つまり「転んでしまう」⇒「歩きにくい」という風に気持ちが表現されているのです。

「前言撤回」はこうやって言おう

2.千、お前のこと、鈍くさいって言ったけど、取り消すぞ!

これは、リン(Lin)が千のことを見直して言うセリフですね。

「取り消す」と言うとcancelという動詞が思い浮かぶ人が多いかもしれません。それでも通じますが、英語版では、次のように言っていました。

Sen, I called you a dope before. I take it back.

まず「dope」というのは「間抜けなやつ」というような意味合いです。「called you a dope」ですから、「あなたのことをa dopeだと呼んだ(言った)」ことが以前あるんですね。

そして、その発言に対して「I take it back.」と表現しています。itは発言を指しています。takeは「手でつかむ」ことであり、backは「戻す」、つまり「つかまえて引っ込める」という「前言撤回」を意味するのです。

「おとなしくする」に当たる英語表現

3.おとなしくしててね。

これは銭婆(Zeniba)の家へと向かう電車の中で、千がカオナシ(No Face)に対して言うセリフですね。

Behave yourself, okay?

おとなしくする、というのは文字通りに英語に訳すことは難しいのですが、それに近い動詞がbehaveです。「ふるまい」や「態度」を表すbehaviorという名詞に見覚えがある人もいるかもしれません。動詞behaveは「振る舞う」ことであり、特に「behave oneself」のように言うことで「行儀よく振る舞う」という意味になるのです。

「さっさとお入り」はHurry up.でよいか?

4.入るなら、さっさとお入り。

銭婆(Zeniba)が、家に到着した千たちに言うセリフがこれです。例えば
Come in. Hurry up.
などと考え人もいるのではないでしょうか。それも素晴らしいと思います。

英語版の「Spirited Away」では

Hurry up. I don’t have all day.

と表現されていました。

「Hurry up.(急いで)」と言った後で、それを強調するために「I don’t have all day.」と言っています。これ、ちょっと日本語に訳しづらい表現ですね。「all day」は「1日中、丸1日」を表します。そんなにのんびりやっていたら丸1日かかってしまう、という意味で「私には丸1日という時間がない」と表現しているのですね。

英語を文字通りに味わおう

英語を学ぶ時に、私たちはつい、英語を日本語に訳して「覚えよう」としてしまいがちです。しかしそうではなく、英語が表していることを文字通りに感じて理解しようとすることが上達の近道です。

今回の4つのセリフは、答えを見て「なるほど! そう言えば良いのか」と思った方が結構多かったのではないでしょうか(伝わる言い方ができたり、正解されたものがあったりしたなら素晴らしいことです)。

英語は非常にシンプルな言語です。簡単な単語、特に動詞を使って様々なことが表現できます。アニメ映画はそういった表現を学ぶのにピッタリの題材ですから、ぜひ音声を英語版に切り替えて聞いてみてはいかがでしょうか。

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