「6年の長期育休」をどう使う?100人100通りの働き方を提唱する会社で、プライスレスな時間は仕事につながった

人材不足や働き方の多様化に伴い、「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランスの推進」などが、声高に叫ばれてきています。ライフスタイルに合わせた働き方の実現は、性別や年齢を問わず求められていますが、出産前後の女性にとっては切実な課題です。

グループウェアを提供するサイボウズ株式会社は、『働き方改革』の先駆者とも言われ、今から10年以上も前に「最長6年の育児・介護休暇制度」も導入しました。このようなライフイベントの手厚い支援は、仕事や生活にどのような効果が得られるのでしょうか。サイボウズで実際に長期の育児休暇を取得した渡辺清美さんに、その休暇経験についてお聞きするため、サイボウズ東京オフィスを訪ねました。

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渡辺清美さん

1975年生まれ、株式会社オズマピーアールを経て2001年、サイボウズ株式会社に入社。マーケティング部で広告宣伝、営業部で顧客対応、経営管理部門で広報IRを担当後、2006年育児休暇を取得。2011年に復帰し、現在、ビジネスマーケティング本部コーポレートブランディング部に所属。1児の母。

※サイボウズ株式会社(https://cybozu.co.jp/company/business/)「チームワークあふれる社会を創る」を理念として、ソフトウェアを開発している。

会社の先進的な人事制度を大いに活用

―渡辺さんは現在、どんな業務の担当をしているのですか。

ブランディング部で、NPOなど非営利チームの支援や、オウンドメディアである『サイボウズ式』で、ワークスタイル関連の記事やイベント企画を担当しています。

―チームワークあふれる社会の創出ために、会社がどんな事をしているかを伝えているのですね。最長6年間の育児・介護休暇制度など、人事制度が先進的に導入されていますが、育児中に使える制度には他にはどんなものがあるのですか?

「子連れ出勤制度」などがあります。育児中に限りませんが「働く時間や場所を自由に選択できる制度」や「看護休暇」もあります。

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▲子連れ出勤のときにも使える、サイボウズオフィス内リビング

―多様な働き方に対応できるようになっていますね。渡辺さんは約4年8カ月間、産休・育休を利用されましたが、最初から長期で考えていたのですか。

いえ。そんなに長く休むとは思っていませんでした。2006年7月末、自分が産休に入る直前に最長6年間の育児・介護休暇制度が導入されました。妊娠中に、人事担当者が制度策定のためのヒアリングをしていた時に、法定の基準より長く休めてもよいのではないかと伝えましたが、そこまで長い制度ができるとは思ってもいませんでした。

会社を離れるのは寂しく、産休に入った日は朝方まで泣けてくる程でした。子どもが1歳になったら戻る予定で保活し、第2希望でしたが保育所にも入所が決まっていました。

―入所先も決まっていたのに、会社復帰をしなかったのには、どんな思いの変化があったのでしょうか?

決定した預け先は、保育環境があまりよいものに思えませんでした。とても迷いましたが、育休が長めにとれるのだから、「保育所はどうしても入りたい方にお譲りした方がよいのではないか」と思うようになりました。乳飲み子でまだ歩くこともままならないような時期で、できれば自分で育てたいと思いました。

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長期の育休だから得られたモノは?

―1年での復帰は見送る決断をしたのですね。その後、復帰されるまでの休暇中の生活はいかがでしたか。

1歳を過ぎたあたりから子どもと出かけやすくなり、広場や公園や親子教室に出かけ友達と過ごしていました。昔から子どもが好きで、子どもの発達に興味があったので保育士の勉強もしていました。

―お子さんとゆっくり過ごすことで、ママ友との時間や、勉強する時間も持てたのですね。育休の間は、会社のことは気になりませんでしたか。

気になる度合いは時期によって違いますが、時々、会社のホームページや株主向けのメルマガなどを見ていました。夫や会社の友人から会社の様子を聞く機会もありました。人事部の人が家庭訪問をしてくれたこともあります。途中から育休中の人同士のグループウェアで交流もできるようになりました。

―家庭訪問をしてもらえると直接話ができていいですね。予定した以上に長い育休になりましたが、長くとったことのメリットはありましたか。

子どもや友人と日中に、幸せな時間をたくさん持てたのがメリットです。子どもの興味に応じて、たくさんの経験を一緒にしました。いろいろなママ友ともお付き合いさせていただきました。――仕事に戻れる職場環境があっても辞めた人、夫の転勤で来た人、外国から来た人、たくさんのお子さんを育てる人……。さまざまな人と話したり、出かけたり、お料理やエクササイズを一緒にしたりしていました。

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「時間に縛られることなく、子どもを中心にした生活をしていました。自転車の前かごに子どもを乗せ、広々とした原っぱに出かけていました」と、微笑みながら思い出を話す渡辺さん

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会社復帰のタイミング

―サイボウズのサポートは手厚いですね。子育ての時間も充実していたようですが、育休最長の6年までは取得せず、復帰したのには何か理由があったのでしょうか。

もともと6年も取得するつもりはありませんでした。引っ越しをし、希望の保育所に入れず戻りづらくなっていたのです。子どもが幼稚園で集団生活を始めたころ夫が失業したので自分が働くことにしました。

―4年という育休期間は、ご自身のキャリアにとって何か影響はありましたか?メリットもデメリットもあるのかなと思いますが……。

1年で復帰していたら関われなかった社外のいろいろな方々との触れ合いはメリットだったと思います。社会課題や新しい働き方・生き方に関心のある方々を対象としたブランディングの仕事においては、多様な視点は生きていると思います。

育休中の4年間はサイボウズが働きやすい会社へと変化した過渡期でした。かつては離職率が高く、長時間労働が当たり前でしたが、定着率が高く残業する社員は減りました。かつて一緒に仕事をしていた方々の多くは辞めてしまいましたが、そういったビフォア・アフターを強く体感できたのはメリットかもしれません。

デメリットと言えば、保育所に入りやすい時期を外したので復帰しづらくなったことです。また会社が変化していた時期は研修を盛んにしていたそうです。もしかするとその時期に社内の方々と研修で経験を共有する機会をもてなかったことはデメリットなのかもしれません。

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▲公園のようなエントランスにはCAFEもあり、毎日何かしらのイベントを開催しています

―ご自身で思われるベストな育休年数は、どれぐらいだと思われますか?

状況次第ですね。もし次にとれる機会があったとしたら、長くなくても良いと思います。最近だと育休中も働ける制度などもできています。極端に長く離れたりせずとも、少しずつ関われるとよいのではないかと思います。

「長期の育休中に子どもと一緒に地域の中で過ごすことが、仕事とは異なる人間関係を作る良いきっかけになった」と語ってくれた渡辺さん。その関係から得られたものが、今の仕事の企画に生かされています。育休は一見すると、社会で働くことから離れた時間に見えます。けれども、その時間は、職場復帰後の仕事を充実させるためのパワーをつくる貴重な時間としてつながっているのでしょう。

文:Loco共感編集部 川田亮子

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