夫が家事育児を「手伝う」感覚、家庭はどうなる?~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援する連載がスタートしました。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。
今回は、「家事育児は俺の仕事じゃない感」がにじみ出る夫と、どう「チーム家族」を運営していけばいいのか?教えていただきました。

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「手伝う」ってなんだ!問題

共働き夫婦は年々増えていて、現在は高齢者世帯を除くと夫婦の約6割が共働き世帯であると言われています。数字だけみるとだいぶマジョリティ感がありますが、夫婦の働き方も、家事育児分担も多種多様。「共働き夫婦のスタンダード」が確立されていない事もあり、あちこちで夫婦げんかの火種となっている模様です。
特に共働き妻たちの
「たまにちょろっと手伝っただけでイクメンを吹聴しているうちの夫!笑止!」
「そもそも“手伝う”ってなんだ!」
という夫への「家事育児参加度合い」の不満は、共働き世帯が増えるのに比例して年々ヒートアップしている気がしています。
私に直接相談に来る妻たちは皆、口を揃えて言います。「新婚時代に私が家事を頑張り過ぎたのが良くなかった。気づいたら何もしない(できない)夫になってしまいました」と。2人分の家事だったら気合と根性で回せたそうです。ところが、子どもができて、いよいよ妻たちは「自分が2人いないこと」「1日は24時間しかないこと」に気づきます。
以前、そのようなお悩みを持つ妻たちに向けて、「夫を新入社員として育てること」と「家庭内育児リーダー」の心得と手法についてブログに書き殴りましたが、
「なぜなの?うちの新入社員(夫)が育たない…」
というご相談を度々いただくため再考したところ、心得や手法の前にやるべき大事な事が見つかりました。それは夫に「当事者意識」を持ってもらうことです。

妻たちの怒りの正体とは

共働き妻たちの怒りを増幅させるものの正体、それは夫たちの「耐えられない当事者意識の希薄さ」です。

当事者意識 とうじしゃーいしき(タウジシヤ-)
{当事者意識}の意味
自分自身が、その言葉らに直接関係すると解っている事。関係者であるという自覚。(当事者意識を持つ)goo辞書より

妻が時短だろうがパートだろうが共働きだというのに、積極的に家事育児に参加しない夫は、総じてこの当事者意識が抜け落ちています。
職場でも、仕事ができない人の根本原因はまさにこれ。仕事のやり方を教えようと、道具や賞賛を与えようと、当事者意識のない人に「仕事+家事+育児」というマルチタスクをこなせるわけがないのです。
そこで、「妻が家事育児をして当たり前」「子育てはお母さんの仕事」と思い込んでいる新入への「当事者意識を養う」アプローチを以下にまとめてみました。

1.テキストを使う~『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(白河桃子×是枝俊悟)

本著は大人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を題材にして、それまでうやむやになっていた「家事育児労働の価値」や「これからの夫婦の働き方」を因数分解した「夫婦のテキスト」です。
家事育児労働を試算し、(ちなみに、妻のワンオペ育児家事の場合、夫が妻に支払う給料は月37万1336円、生活費用を折半したとしても26万8836円の支払いになる)夫の年収別、家事育児分担すべき割合&時間などもきっちり明記されています。
本著が素晴らしいのは、「家事労働は給与にしたらこんなに高いのだから夫も手伝え」という単純な話で終わらない所です。
婚活ブームの火付け役であり少子化ジャーナリストの白河桃子さんと、ご自身も子育て中のミクロエコノミストの是枝俊悟さんは、夫婦の経済状態をさらに深堀りして、夫婦がサバイブできる方法と、知っておくべきリスクを提示してくれているので、とても解りやすい。
例えば
・結婚や出産で妻が仕事を辞めると、生涯年収で2億円の損失。
・日本の税制はむしろ共働きに有利(世帯年収1千万円の場合、51.2万円も有利)
・夫の休日の家事育児時間が0時間と6時間以上の家庭では、その後11年間に第二子が生まれる確率がそれぞれ1割と8割の大差に。また、妻の愛情の8割が、第一子の子育ての初期に決まる。
などなど。
さらには、逃げ恥カップルを題材にしたシミュレーションでは、現在高収入の勤め人夫(SE)は、例え残業を減らしてでも今のうちに妻のキャリア支援(家事育児を担うこと)をすべきと提案しており、根拠は目から鱗なものでした。それは、「50歳をピークに夫の年収が下がるのに、子どもの教育費が一番かかる時期に当たる」からで、その時期を乗り越え、さらには老後資金を貯めていくとなると、将来の妻の「年収」が物をいうから、なのです。
終身雇用と年功序列が「何それおいしいの?」になって久しいのに、多くの共働き夫婦が「今は夫の方が稼いでいるし、夫の方が忙しいから」と妻のキャリア支援への投資をしていません。夫が家事育児をしない事でキャリアダウンさせているのです。これは、夫婦にとって大いなる損失。
夫の当事者意識を養うには、感情論やジェンダー論より、夫婦二人の「経済の話」として本著のようなテキストを使い「数値に基づいて」共に学ぶのが吉かと。

2.仕事を任せる(物理的に席を外す)

職場において、「自分よりもっと得意な人がやった方がいい」「誰かが助けてくれるはず」と、チャレンジしない類の新人が一向に伸びないように、家庭内でも「もっと得意な人」が手も足も口も出せる環境にあれば、彼らの当事者意識が芽生えることはありません。
料理や子守りを頼んで外出したら、もしかしたら台所や部屋がぐちゃぐちゃになるかもしれません。
それでも、最低限のやり方と引継ぎを行った上で、
後は「信じて任せる」
ことが重要です。
その際、自分のやり方に固執せず、引継ぎもタスクが解るだけにしましょう。

3.外部のプロフェッショナルに委ねる

とはいえ、「妻から学ぶのは抵抗がある。」という小さな度量に高いプライドを携えた夫の場合、その道のプロフェッショナルから直接学ぶという手が有効です。
代表的な所でご紹介すると、チャイルドファミリーコンサルタント(子育ての専門家を育てる)、ファザーリングジャパン(父親学級、ファザーリングスクール、子育てパパ力検定など)、男子限定料理教室「メンズキッチンスクール」なるものも存在します。
「プロに習った」という自信にもつながりますし、習得したことを試したくなるのは自然の理。
また、そこには仲間がいます。夫の周囲の友人や同僚が家事育児に積極的に参加していたら、今のような「家で何もしない夫」にはならなかったのかもしれません。今までと違う世界や新しい価値観を持った仲間を得ることで、夫の当事者意識に変化を起こすのです。

長々と書いてしまいましたが、当事者意識を持って家事育児に参加する夫になってもらうには上記のような手段は有効です。しかし、そもそも妻側に「家事育児は女の仕事」という根深いバイアスがあるとなかなか上手くいかないという事を最後にお伝えします。

夫が家事育児を主体的に参加する事により、夫婦仲はもとより、子どもにも良い影響があるとたくさんのデータが発表されていますので、マイナスになるバイアスはご自身がとっととアンインストールして、プラスになる情報は二人でシェアして、幸せな共働き夫婦を目指してほしいと思います。

川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。

イラスト:かしえみ

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