「英文メール」の書き方(超初級編)――“翻訳ツール”を使って、誰でも簡単に英文メールが作れる

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『英語を「続ける」技術』(かんき出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第6回目の今回は、「英文メールの書き方(翻訳ツールの使い方)」についてです。

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多くのビジネスマンにとっての鬼門と言える「英文メール」。英語が苦手な方であっても、英文が楽に読めるための方法と、英文メールを書く際の機械翻訳ツールの上手な使い方をご紹介します。

英語は大の苦手なのに、仕事で英文メール(や英語のドキュメント)を読まなければならなくなった……。そして、返信メールを英語で書かなければいけない……。

日本語のメールならわずか3分で済むのに、英語だと1通書くのに数時間かかってしまって仕事の効率低下がひどい、というケースもあるでしょう。もしくは、翻訳ツールから生成された英文をそのままコピー&ペーストしているだけという人もいるかもしれません。

そういった英語の苦手な方でも、仕事の効率を大きくUPさせられる英文メール術を3回に渡ってお届けする予定です。今回は、超初級編。まずは、英文を楽に読め、機械翻訳ツールで比較的まともな英文が書けるテクニックをお伝えします。

英文メールや英語ドキュメントを楽に「読む」方法

英語が苦手な方は、Google翻訳やエキサイト翻訳などの機械翻訳ツールを使っているかもしれません。例えば、以下の英文メールが届いたとします。

I am writing to inquire about the product T-010. I have seen the product on your website and I’d like to know more about its details. I appreciate if you can send me the catalog and also the price of one unit as well as discounts on bulk orders. I need to make a decision in the coming few days so it’s really important that I receive this information as soon as possible. Awaiting your reply.

これを、機械翻訳で日本語にすると、例えば以下のような日本語が生成されるでしょう。

私は、製品T-010を問い合わせるために手紙を書いている。私はあなたのウェブサイトで製品を見て、私はその詳細をもっと知りたい。もしあなたがカタログを私に送ることができるならば、私は値上がりし、また、大きさの1つのユニットだけでなくディスカウントの価格は注文する。私が次の数日での決定をそんなにする必要がある 私がこの情報をできるだけ早く受け取ることは本当に重要である。あなたの返答を待つ。

現状では、機械翻訳はギャンブルに近いところがあります。中ほどの「私は値上がりし、また、大きさの1つのユニットだけでなくディスカウントの価格は注文する」という箇所の意味がうまく解釈できないかもしれません。場合によっては、比較的ちゃんと訳されることもあるでしょう。

機械翻訳の問題点

さて、機械翻訳の精度は、これからもどんどん上がっていくでしょうが、本質的に2つの問題をはらんでいます。

1つは、全文訳であるために、複数の意味を持つ単語は、誤訳の可能性が高くなることです。例えば「cell」という単語には、表計算ソフトにおける「マス目」や「細胞」の他に、「独房」や「小集団」、はたまた「電池」という意味まであります。これを文脈に従って、機械が正確に訳せる日は来るのでしょうか。

もう1つは、機械翻訳に頼ってしまうと、あなたの英語力が一切上がらないことです。英語は言語ですから、正しい学び方をすれば、誰でもできるようになります。それなのに、学校で身につけた英語力を全く生かさなかったり、せっかくの上達のチャンスを逃したりしてしまうのは非常にもったいないと言わざるを得ません。

「全文」訳ではなく「単語」訳を表示してくれるツール

機械翻訳が持つ上記の欠点をうまくカバーする方法として、単語レベルでの訳を表示してくれるツールを使うことを私はお勧めしています。この連載の第1回目でも実はご紹介しましたが、「英読」という無料のアプリです。

英文メールをコピーして貼り付け、変換することで、以下のように難しい単語にだけ訳を表示してくれるのです。

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ちなみに、上記の例では一番低い「レベル1」に設定がされており、中学2年生レベルよりも難しい単語に訳が表示されています。つまり、中学1年生レベルの英語さえ一応分かっていれば、辞書なしで難しい英文が読めてしまうのです。

メールなどの英文を直接貼り付けることもできますし、URLを貼り付けて、英語のウェブサイトや記事などに訳をつけることもできます。レベル設定を切り替えることで、訳が表示される対象を減らすことも可能です。無料アプリですので、ぜひうまくご活用ください。

「英読」iPhone版(iOS)

「英読」Android版

8,568通り、あなたはどのタイプ?

比較的ましな英語を翻訳ツールで「書く」方法

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では次に、英文を「書く」方に話を移しましょう。

もしあなたが今、日本語を翻訳ツールに打ち込み、出てきた英文をそのまま意味も分からずに、メールに貼り付けて送っているならば、これからお伝えする3つのポイントをぜひ実行してみてください。それだけで、生成される英文のクオリティが格段にUPします。

悪い例

まず、比較のために、悪い例からお見せします。元となる日本語は、私が実際にいただいたご相談の文章を使っています。

仕事で海外とのやり取りがあり、英文メールを書くのですが、翻訳ソフトで正しく書いているのに、しょっちゅう内容を誤解されたり、メールを無視されたりします。

これを機械翻訳にかけると、例えば以下のような英文が生成されます。

【結果A】

There is communication with overseas at work and writing English sentences, but although I correctly write in translation software, I often misunderstand the contents or ignore mails.

【結果B】

There is exchange with foreign countries to work, and English mail is written, though it’s being written right by a translation software, you misunderstand the contents and ignore a mail constantly.

元の文は、相談者の方が無意識に使っている自然な日本語ですが、2つの機械翻訳ソフトを使った結果、全く内容の違う英文が生成されました。これでは正しく伝わらない可能性が非常に高いと言えます。

コンピュータは空気を読めない

もちろん、機械翻訳の精度がまだまだ高くないこともあるのかもしれません。しかし、通じる英語がうまく生成されない理由――それは、あなたの日本語が、コンピュータにとって難しすぎるということなのです。

日本語は省略の多い言語です。主語を省略するのは日常茶飯事であり、言わなくても分かることは、どんどん省略してしまいます。

しかし、コンピュータは基本的に、指示された通りにしか動くことができません。省略されたものを推測することは、非常に困難なのです。

逆に言えば、うまく指示を出しさえすれば、うまく翻訳してくれる(可能性が高い)ということです。普段通りの日本語ではなく、機械が理解しやすい日本語を入力する――。そのほんの一手間によって、生成される英文はずっとまともなものになる(可能性が高い)のです。

翻訳ツールを使う際には、以下の3つのポイントをぜひ意識してみましょう。

・1文で1つのことしか言わない

・主語をはっきりさせる

・できる限り言葉を省略しない

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ポイント1:1文で1つのことしか言わない

私たちは日本語のネイティブですから、長い文章であっても難なく理解することができます。しかし、英語で1文が長かったらどうですか? きっと、読む気が失せたりしてしまわないでしょうか。

つまり、1文が長いとそれだけで難しくなってしまうということです。上の例では、1つの文の中でなんと5つのことを言っていました。

仕事で海外とのやり取りがあり、 / 英文メールを書くのですが、 / 翻訳ソフトで正しく書いているのに、 / しょっちゅう内容を誤解されたり、 / メールを無視されたりします。

まずはこれを1つ1つに分解して、文として独立させてください。

1.仕事で海外とのやり取りがあります。

2.英文メールを書きます。

3.翻訳ソフトで正しく書いています。

4.しかし、しょっちゅう内容を誤解されます。

5.また、メールを無視されます。

ポイント2:主語をはっきりさせる

英語は、主語と動詞が最初に来る言語です。主語を省略することは滅多にないと考えてください。

ですから、主語をはっきりと書くようにしましょう。繰り返しをうるさく感じるのは、日本語的な感覚ですから、今は気にしないでOKです。

1.私は仕事で海外とのやり取りがあります。

2.私は英文メールを書きます。

3.私は翻訳ソフトで正しく書いています。

4.しかし私は、しょっちゅう内容を誤解されます。

5.また私は、メールを無視されます。

ポイント3:できる限り言葉を省略しない

主語以外にも、様々な言葉を私たちは省略しているものです。くどいかもしれないと思うくらい、省略を避け、はっきりと書くようにしてください。

1.私は仕事で海外とのやり取りがあります。

2.私は英文メールを書きます。

3.私は翻訳ソフトを使って正しくメールを書いています。

4.しかし私は、しょっちゅうメールの内容を相手に誤解されます。

5.また私は、相手からメールを無視されます。

さて、3つのポイントを踏まえて書き換えた日本語を、改めて機械翻訳ツールに通したところ、以下のような英文が生成されました。

【結果A】

1. I have communication with overseas at work.

2.I write English sentences.

3.I am writing the mail correctly using translation software.

4.However, I will be misunderstood about the content of e-mails frequently.

5.Also, I will ignore the mail from the other party.

【結果B】

1.I have exchange with foreign countries to work.

2.I write English mail.

3.I’m writing a mail right using a translation software.

4.but I’m misunderstood dealing with the mail contents constantly.

5.I ignore a mail from a partner.

5.についてはどちらも、「私が無視する」という風に誤訳されてしまっていますが、それでも最初と比べたらずっとましな(分かりやすい)英文になりましたね。

まとめ:分かりやすい日本語を使おう

ほんの少し、日本語を使う意識を変えるだけで、「鬼門」である英文メールでのやり取りがずっと楽になるはずです。今まで機械翻訳に頼りっぱなしだったという方は、お伝えしたポイントをぜひ取り入れてみていただけたらと思います。

ちなみに、日本語力やコミュニケーション力がUPするという嬉しい副作用が得られるかもしれません。「話が通じづらい」という人は、1文が長かったり、省略しすぎていたり……というケースが実は少なくありません。「1文で1つのことを言う」「省略しすぎない」というポイントは、日本語力を上げるためにも大切だと言えるのです。

次回は「初級編」として、翻訳ツールを効果的に使い、もっと質の高い英文を書けるようになるコツをお伝えする予定ですのでどうぞお楽しみに。

西澤ロイ(にしざわ・ろい)
イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。
TOEIC満点(990点)、英検4級。
獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。
暗記の要らない英会話教材「Just In Case」正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『英語を「続ける」技術』(かんき出版)他、著書多数。

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