資格を取るための「参考書・問題集」の選び方・使い方とは?――「資格の大原」元講師が教える“合格勉強法”

新年度が始まり、「今年こそはあの資格を取るぞ!」「今年こそは●●をマスターするぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか?しかし、いざ始めようと思っても、まず何から始めればいいかわからない…やっと勉強の計画が立ったと思ったら、教材選びに一苦労…そんなことをしている間にどんどんやる気が失われていく…なんてこと、あると思います。

そうならないために今回は「資格の大原」でおなじみ、大原学園で講師を務めた経験をお持ちで、『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』著者でもある石川和男さんに、失敗しない社会人の勉強法、特に、資格を取るための「参考書・問題集」の選び方・使い方について教えていただきます。

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ネットを見ても書店に行っても「社会人の時短術」や「30代逆転の勉強法」など、時間管理や大人の勉強法が溢れています。それらの情報を読むことによって、時間を確保する方法も、勉強したい方向性も、取りたい資格も見つかり、勉強術のノウハウも分かった。しかし、いざ勉強をスタートしようと思っても、どの参考書がいいのか、どの問題集のどこから開けばいいのかなど、進め方が分からない方も意外に多いのです。

資格学校では最初に「勉強の仕方」のガイダンスを行います。どんなに時間をかけても、間違った方法で勉強したのでは、せっかくの努力が無駄になってしまいます。

今回は、独学で資格を取得したいという方へ、資格学校で培ったノウハウを「家庭教師」のつもりでお教え致します。

気持ちは整った! さて、次の一手は?

大型書店に行くと、資格取得の書籍が数多く並んでいます。行政書士の資格を取りたい! 今年こそ税理士試験にチャレンジしたい! 将来独立するために司法書士の勉強をはじめたい! こんな熱い思いを持って書店に行っても、一体どの参考書、どの問題集を選べばよいのか、何冊必要なのかなど、迷われる方も多いかと思います。

では、何をどう選べば良いのか? どの資格試験を勉強するにしても共通の書籍選びの法則があります。

それは「参考書、問題集、過去問各1冊の法則」です。 

書店で参考書を選ぶ場合に、その資格の知識がないために、どの参考書が売れているか分からなかったり、大手専門学校ごとに参考書を出版していて迷ったり、買わなかった参考書から出題されたらどうしようといった不安に襲われたりすることもあると思います。

結論を言うと、立ち読みに時間をかけ、一番自分に合う参考書を買うのがベストです。まだ見ぬ専門用語が載っているため簡単に読み進むことはできないかもしれません。しかしその中でも、言葉が平易に書かれていて読みやすいか難しく書いてあって分かりづらいか、縦書きと横書きがあるが自分が読みやすいのはどちらか、カラーか一色かなど、検討していくうちに自分にあった参考書が見つかるはずです。ここでは値段で比較することはしないでください。何百円の違いで、合否に影響を及ぼすなんて、もったいないと思いませんか?

また、一方の参考書に載っているものだけが出題されることもありません。どの参考書も出題範囲に沿って作られているため、合格点に達するだけの情報は盛り込まれています。

受験日までという限られた時間のなかで勉強しているため2冊以上の参考書は消化不良をおこす場合があり、おすすめできません。また同じ参考書を暗記するほど何度も読みこんだ方が、新たな参考書に改めてマーカーをひくなどするより効率的です。

その代わり問題は数多くこなします。色んな角度から様々な問題を解いていくことが記憶の定着に良いからです。ただし問題集も参考書と一緒で最初は1冊です。しかもなるべく薄いものを購入します。試験範囲の問題を一通り把握することが重要であり、1冊終えることで達成感も得られます。また人は忘れる生き物です。何度も繰り返し解き、徐々に解ける問題を増やしていくのです。その問題集が完璧に解けるとなったら次の問題集を購入します。書棚に終わっていない問題集があると焦ってきます。また試験までに終えなければ購入した問題集も無駄になります。経済的な理由からも、自分のものになってから次の問題集を購入するようにしましょう。

 

過去問題集も忘れてはいけません。志望の大学を受験するときに赤本を読んだように、取りたい資格がどんな構成なのか、記述式かマークシートか、論述式か穴埋めかなど、試験の全体像を見るには過去の問題で把握することが重要だからです。(ネットから無料でダウンロードできる資格もあります)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

モノは揃った!暗記の前にまず「理解」

どれだけ勉強しても、合格しなければ意味がありません。目標は試験日までに合格レベルに達することにあります。そのためには計画を立てる必要があります。「いつまでに、どこを、どう進めるか」、詳しくはこちらを参考にしてみて下さい。

計画を立て終えたら、まずは参考書を最後まで読んで下さい。ざっと一通り目を通すぐらいで構いません。分からない用語や計算式は無視して構いません。理解することが目的ではなく、どれぐらいの範囲(分量)で、どんな形式で、難易度がどれぐらいかなど全体像を把握することが目的だからです。

次に計画にそって今日の参考書の範囲の勉強をスタートします。参考書は汚してナンボです。重要だと思うところに線を引き、補足で書き込み、折り目や付箋をつけるといったアクセントをつけて勉強しましょう。分からないことをやり続けると人間眠くなります。色んな刺激を与えることで眠気覚ましになり、またマークやコメントは次回読むときに注意しなければならない箇所だと一目で分かります。

参考書を読み終えたら、参考書⇒問題集⇒解答⇒解説⇒参考書のサイクルで勉強をします。参考書の範囲が終わったら、その範囲の問題集を解き、理解度をチェックする。できない問題があれば、もう一度参考書に戻って理解する。この繰り返しで力を付けていきます。

一連のサイクルで注意することは「まとめノート」を作らないことです。参考書に書いてある重要なことをノートに書き写すことは、単に参考書をまとめているだけで2冊目のコンパクトな参考書を作っているようなものです。限られた時間で勉強をしているのです。ノートを作る時間があるなら一問でも多く問題を解く時間にあてて下さい。

ただし「間違えノート」は必要です。問題を解いていて分からない問題や、間違えた問題があればノートに書き込む。綺麗さよりスピード重視です。だれに見せるわけでもないので、自分が分かれば良いのです。見直すときのために参考書や問題集の何ページを参照するかを記載しておきます。完全に理解したら、そのページに×をつけても構いません。私の受験生時代は、いつも勉強を始める前に「間違えノート」を見てから1日の勉強をスタートさせていました。また試験会場に色々な教材を持っていっても迷うので「間違えノート」のみを持参し、試験前に最終チェックをしていました。分からない、間違えやすい問題が全てこのノートにあると思えば、本試験で仮に分からなかった問題が出ても諦めがつくからです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「理解」できているかを問題集で試す

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参考書を読んだだけで勉強をやった気になるときがあります。しかし試験は参考書を読んだだけでは受かりません。参考書を読むのはインプットをしている状態です。試験はアウトプットなのです。問題を解くことでアウトプットをし、理解度を確認しましょう。また問題を解くことで、試験レベルの問題、試験独特の言い回しなどを掴むこともできます。

前項でお伝えしましたが、1回転目は、参考書⇒問題集⇒解答⇒解説⇒参考書のサイクルで勉強を続けて下さい。2回転目は問題集⇒解答⇒解説⇒参考書の順になります。参考書を見た後にすぐその範囲の問題を解いて解けるのは、ある意味当たり前です。まずは以前に勉強したことを覚えているか。いきなり問題集で試します。その後に解答を見て合っていればその問題は終了です。間違えていたら解説を確認します。解説で理解できたら次の問題、解説をみても理解できなければ参考書に戻ります。分かる問題に時間を割くのではなく、分からない問題を解けるように心がけましょう。

「理解」できなかったら一旦「暗記」してしまおう

それでも理解できなかったら、奥の手「暗記」です。

理解しながら進むのがベストですが、独学だと難しい場合が多いです。また資格の学校で勉強をしていても難易度の高い問題に対しては理解できない場合があります。

そのときは暗記して次に進むのです。受験勉強で一番悪いのは理解できるまで次に進めないこと。資格試験は満点を取るのが目的ではなく、合格点を取ることが目的です。出るか出ないか分からない問題に固執して、その後にある問題に進まないのは合格という目標を達成するためには無駄なことです。

また一度丸暗記して勉強を続けることにより、ある日突然理解できることもあります。ひとまず暗記して先に進みましょう。

社会人は学生に比べ勉強時間がたりません。せっかく確保した勉強時間を最大限に活用しましょう。そのためには計画を立てて、勉強するこが必要です。

資格を取ってその分野の専門家になる、会社で昇進試験を受かって一段上の自分を目指す、独立するために知識を増やす、どの目標を達成するにも共通しているのが、勉強することなのです。

f:id:asukodaiary:20170309141602j:plain【プロフィール】石川和男(いしかわ・かずお)

建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。
『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)は16刷中ほか、勉強法、時間術など3冊のビジネス書を出版している。
石川和男 公式サイト http://ishikawa-kazuo.com

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