コミュ力は鍛えられる?デキる人になるための3つのステップ

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「彼はコミュニケーション能力が高い」「私の長所はコミュニケーション力があるところです」と、よく耳にしますが、そもそも「コミュニケーション」とは一体なんなのでしょう? 同じ言葉を話したり書いたりしているはずなのに、コミュニケーションが得意な人、苦手な人には、一体どんな違いがあるのでしょうか?

今回は、コミュニケーション教育のエキスパート山田ズーニーさんに「ニガテ」を「デキル」に変える、ビジネスパーソンのためのコミュニケーション術について、お話をうかがいました。

プロフィール:

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山田ズーニー

文章表現・コミュニケーションインストラクター /Benesse小論文編集長を経て独立。フリーランスで大学や企業で文章表現力・コミュニケーション力・プレゼン技法・自己表現力の教育に携わる。慶應大学非常勤講師。著書『伝わる・揺さぶる!文章を書く』『あなたの話はなぜ「通じない」のか』。「おとなの小論文教室。」連載中。

山田ズーニー (@zoonieyamada) | Twitter

信頼されるのは「自分の考え」を明かす人

——まず初めにお聞きしたいのですが、山田さんがコミュニケーションの指導において一番大切にしていることはなんでしょうか?

コミュニケーションにつまずいている人は 「考えること」と「表現すること」が足りません。

話すにしろ書くにしろ、言葉を発するためには“考える”ことが重要なのです。いま何が求められているんだっけ? 私はこれを伝えることで上司にどうしてほしいのか? お客さまにいま私ができることは何か? というように、要所で立ち止まって考えることが不可欠です。

——会話の途中で考えてしまうと沈黙が生まれ、相手にとって失礼にならないでしょうか?

“ちょっとお待ちください。いま考えを整理しますので”とことわっておけば失礼にはなりません。うわすべりのコミュニケーションに陥ってしまうよりはずっと有意義です。

・「何を考えているかわからない人」になってませんか?

——まず「考えること」で、要所で自分の考えをきちんと整理するんですね。つぎに「表現すること」について、教えてください。

「想い」は目には見えません。自分がどんなに会社のことを想っていても、上司や部下に役立つアイデアを持っていても、黙っていては誰にもわかってもらえません。そこで、見えない想いに“言葉”という誰の目にも明らかなカタチを与え、人や社会に通じさせていく行為、これが“表現”です。自分の想っていること、考えていることを言葉にして伝えることが肝心です。

——自分の考えを言うと、「角が立つのでは?」「バカにされるのでは?」「拒否されたら……」と不安に感じる人も多いと思うのですが……。

職場の人間関係で最も厄介な人は、“何を考えているか分からない人”です。チームに1人でも、自分の考えを全く明かさない人がいたら、皆その人を警戒し、チームはまとまりません。職場で信頼を得ている人は、自分はこう思っていると腹の内を明かす人です。周りの人は、心を開いてくれたと安心できます。たとえ考えが違う人がいたとしても、それは違う、と言えるし、話し合うこともできる。自分の考えを明かす人とはコミュニケーションできるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

できる人は「自分」とのコミュニケーションも良好

——それでは「表現する」ためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?

表現力やミュニケーション力を伸ばすには次の3つの段階があります。

  • 第一段階:自分と通じる
  • 第二段階:1人の相手に通じる
  • 第三段階:多数の人々・社会に通じる

多くのビジネスパーソンは、いきなり第三段階に当たる不特定多数の人々や、社会を相手にコミュニケーションを求められる。苦手意識を持って当然です。

——なるほど。この第三段階を鍛えるために、今日からすぐ伸ばしていくためにはどうすれば良いでしょうか?

そもそも親や友達にも自分の想っていることを伝えられなかった、という人も少なくありません。第一段階、第二段階を習ってこなかった人々は、まず第一段階から順に訓練することから始めましょう。その後で、第三段階は職場で訓練していくのが良いですね。

・他者と通じる前に、自分と通じる

——なぜ最初に「自分と通じる」必要があるのでしょうか?

自分が自分とコミュニケーション不全に陥っている人って、実はけっこう多いんです。自分でも自分がどうしたいのかわからない、言いたいことが上手く言葉にできない……という経験、みなさんもありませんか?そのような状態では、上司を説得するにしたって、お客さんに売り込むにしたって、通じるわけがないのです。まず、自分と通じること。話すにしろ書くにしろ、その前段階として自分自身へ問いかけ、自分の心の声を聞いておくことは不可欠です。

  • 自分がいちばん言いたいことは何か?(意見)
  • これを相手に言って、で、自分はどうしたいのか?(目指す結果)
  • 自分は本当のところ、この件についてどう想っているのか?(想い)

少なくともこれら3つの問いは、他者に発信する前に自分自身に聞いてみましょう。最初は時間がかかっても、やっているうちにどんどん自分と意思疎通が図れるようになってきます。

・コミュニケーション上手は、リアクション上手

——次に、第二段階である「1人の相手に通じる」へ進むには、どうすれば良いでしょうか?

自分の言いたいことを相手に響くように伝えられるようになるまでには、やはりそれなりの訓練が必要です。

——そうなのですね……。今日からすぐにできる、簡単な方法はないのでしょうか?

まずは「聞き方」を変えるだけでも、ぐっと信頼されるようになります。メール文化で育ってきている人は、目と目、顔と顔、を合わせて話すことが少ない。メールやチャットでは、相手の目を見る必要もないし、うんうんと頷く必要もない、リアクションを表情や態度に出すことも求められません。さっさと返信内容を考えて送信ボタンをおせばいい。そのスタイルがクセになってしまって、対面や電話でやりとりしてるのに、うまくリアクションできず、次に自分が何を言うかばかりに気を取られている人も多いのです。

例えば『常識がないですね?』と相手に投げかけられたら、『そうですね、たしかに常識がない行動でした』と反省を示すとか、『いや、私の職場ではこれが常識になっているんです』と正当性を主張するとか、相手の発言に対する反応を表情なり言葉なりで表して、それから自分の本来言いたいことを言うべきです。

ところが、最初の投げかけに対し、無表情で、相槌などの反応もまったくしないままスルーして、『今度から気をつけます』だけ答える人が多いのです。それだと問いかけた側は聞いていないのか、聞いたのに無視されたのか、いずれにしても不安な気持ちになってしまいます。

相手の発言には、目を見て頷いて聞く。これだけでも相手は嬉しいのです。さらに、他人に安心感を与えられる人は、相手の発言に対して、“聞いています”“あなたが言ったことを受け止めました”“それに対してこう感じました”という意思表示を表情・言葉・態度・声色で表現できるのです。

メールもただ受け取っておくだけの人も多い近頃、送った人は、読んでくれたのか、わかってくれたのか、不安を感じるものです。だからこそ、”承知しました””連絡ありがとうございます””当日はいただいたメール通りにちゃんとやりますのでご安心ください”など、一言だけでもリアクションすると相手は安心でき、あなたへの信頼感を高めることができます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

シーン別・自分への信頼を高めるコミュニケーション術

ここまで、コミュニケーションを取っていくうえで最も大切な、基礎の部分を教えていただきました。続いては、この基礎を念頭に置きながら、実際のビジネスシーンではどのようにコミュニケーションを取るべきか、シーンごとにお聞きしたいと思います。

・仕事のメールは「くれ文」でなく「与え文」で書く

——日々のビジネスメールのやり取りで、気をつけるポイントはどこでしょうか?

仕事で書くすべての文章は、「くれ文」ではなく「与え文」で書くべきです。

くれ文とは、『認めてくれ』『褒めてくれ』『ああしてくれ』『こうしてくれ』と、くれ、くれいう文章です。読んだ人はパワーを吸い取られます。逆に、与え文とは、読んだ人が、新しい情報を得たり、ヒントを得たり、モチベーションが上がったり、勇気づけられたりする文章です。仕事の基本は他者や社会に貢献すること。たかがメール1本でも、相手に分かる・伝わる以上の付加価値、ささやかでも相手に何かを“与える文章”を目指して書きたいものです。

・会議や商談の場では、相手の言わんとすることを要約

——異なる意見を持つ人が集まる会議や商談の場で、お互いの話をどうやってすり合わせていったら良いでしょうか?

たくさんの人で話し合う会議、大事な商談では、少しのズレがあとあとに響いて大ごとになりかねません。「キーワードの定義」や「ゴールの共有」など、すれ違いを未然に防ぐ手立てをしておくべきです。

——しかし、議論が進むうちに決めた定義やゴールが変わったり、脱線してしまうこともありますよね?

そういうときには、要所で相手の発言を要約することが効果的です。『社長がおっしゃっているのは要するにこうこうこういうことですね?』と。的確ならば相手は、自分以上に自分の言わんとすることを言い得てくれた、わかってくれた、と、あなたへの信頼を高める効果があります。たとえ要約をはずしたとしても、そこで気づけて軌道修正できるので、リスクを未然に防止することができます。要約するときは、できるだけ短く80字程度の一文でやるのがポイントです。なるべく自分の言葉でまとめると良いでしょう。第三者が聞いても、あなたの要約だけでわかるようにまとめるといいです。

・人前で話すときは「最初の一文」を大事に

——スピーチやプレゼンでは、どこに気をつけたら良いでしょうか?

話を聞く人の集中力は、“最初の一文”にもっとも集中します。にもかかわらず、表現に慣れていないわれわれ日本人が、無意識にやってしまうのが、『緊張して頭が真っ白になってしまって』『文章を書くのが苦手なもので読みづらいかもしれませんが』などの言い訳からはじめてしまうことです。せっかく人々が何を言うかと固唾を飲んで集中してくれているのに、言い訳からはじまったら、あーあ、と聞く気が失せてしまいます。一度失せてしまった集中を、話の中盤で戻そうとしても難しいのです。

そこで、最初の一文で勇気を出しましょう。逃げたり言い訳をしたりしないことです。『本日はお足元の緩い中~』などの常套句も控えましょう。『パワーポイントの準備に手間取ってしまってすいません……』などなぜか本筋と関係ない、おわびから始める癖の人もダメです。本筋に関係ない余計なことは、はじめにいっさい言ってはいけません。いきなり本題を切り出しましょう。

印象的で魅力的な最初の一文で始めるのがベストですが、なかなかそうもいきません。そんなときは、もっと肩の力が抜けた始まりでいいのです。『今朝、会社にくる途中でこんなことを思い出しました』とか、『先月、お客様アンケートの言葉に身が凍りました』とか、さりげない出だしですが、言い訳よりよっぽど感じがよく、興味もそそられます。

日々コツコツと、「考える力」と「表現する力」を鍛えよう

何気なく使ってしまう「コミュニケーション」という言葉。これを正しく実践するためには、まず自分の心の動きをよく観察し、本来の気持ちや自分オリジナルの言葉を大切にすること。そして他者に対しては、相手の想いや立場、時間を尊重する、ということが重要なようです。こうして振り返ると、求められていることはとてもシンプルですが、そのぶん難しくもあります。

——最後に、コミュニケーションができる人とできない人の違いは、なんでしょうか?

センスでも才能でもない「場数」ですね。

コミュニケーション力は筋力のようなものです。できる人は、どこかで何かで場数を踏み、コミュニケーションの筋トレを積んでいます。例えば、子供のころから店番をさせられ大人と話す筋肉を鍛えられたとか、高校の部活でキャプテンにさせられ、みんなの前で話すことをたくさんせざるをえなかったなどです。

ですからコミュニケーションが苦手な人も、今日から、自分の頭で考え自分の言葉で伝えることを、小さく、かわいく、きっちりとやっていけば、『考える筋肉』と『表現筋』が鍛えられていきます。表現の機会は、会議でも、仕事の中でも、日々おとずれています。考えを聞かれたら、逃げずに小さい勇気を出して、一言でもいいから表現してみましょう。そして、毎日1通だけでも『このメールだけは、自分で考えた自分の納得のいく言葉で書くぞ』とか、社内でだれかたった1人だけでもいい『この人にだけは嘘をつかないでコミュニケーションするぞ』と決め、自分で決めたらコツコツと続けましょう。一週間、一ヶ月、三ヶ月と続けるうちに話すことも書くことも、ずっと柔軟になっていきますよ。

<取材/伊藤七ゑ>

編集:鈴木健介
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