社会人になると、「人脈」を築くことが大切だと、よく言われます。しかし、「よし、人脈を作ろう!」と思って社外の交流会などに出かけたとしても、何となく名刺交換をしただけで終わってしまう…という人も多いのではないでしょうか。
そこで、これまで数千人の経営者との人脈を築いてきた経営コンサルタント・中川勝弘氏にインタビュー。交流会などの場で自分が興味を持った人と仲良くなり、関係を深めるための「第1歩」のコツを伺いました。
交流会などの場ではなくても、顧客や取引先の人との初対面の場でも活かせるので、ぜひ参考にしてみてください。
初対面で、「今後もお付き合いしたい」と思われるための7つのポイント
●「会えてうれしい」を笑顔で表現する
初対面の人に話しかけるのは緊張しますよね。恐る恐る近寄って「すみません、よろしければ名刺交換を…」と、神妙な面持ちで声をかけている人をよく見かけます。
人に声をかけるときは、笑顔を向けるようにしましょう。「あなたに会えてうれしい」という気持ちを持って、態度で示すのです。笑顔で話しかけてくる人に対し、人はそっけなくできません。
逆に、「名刺交換を」と話しかけてきた人に対しても、まず笑顔を見せます。相手は「受け入れてくれている」と安心し、「この人となら心地よく話せそうだ」と思ってくれるでしょう。
●名刺にしっかりリアクションをとる
名刺はなるべく自分から差し出しましょう。そして、相手の名刺を受け取ったら、じっくりと見て、そこで抱いた印象や思いついたことを何か一言でも発するようにしてみてください。
珍しい名前なら「覚えやすいですね」と言いながら連呼してみるのもいいでしょう。名前の漢字に注目するのも手。例えば「晴」という字が入っていたら、「今日のような晴れの日にお会いできて、いいご縁になりそうですね」といったようにです。
自分に興味を持ってくれる人とは、相手も話したい気持ちになります。自分が相手に興味を持っているという姿勢を見せる第一歩が、名刺を丁寧に見て反応することなのです。
●何か一つでも相手を褒める
「人を褒めるのが苦手」、ましてや初対面の人を褒めるとなると「しらじらしくなりそう」などと思っている方もいるかもしれません。
しかし、さりげなく褒められれば多くの人はうれしく感じるものですし、褒めることによって、相手に自分の話をさせるように仕向けることができます。そこで聞き役に回れば、相手はさらに気持ちよく話せて、あなたへの好感度も上がるでしょう。
素直に感じたことであれば、しらじらしくはなりません。「センスがいいですね」「笑顔がさわやかですね」「いい声ですね」など、「いいな」と思ったことを口に出して伝えてみてください。
●相手の話を「聴く」方に意識を集中する
初対面の人とは、なかなか会話が続かないという人も多いでしょう。話題を見つけるまでもなく会話が終了してしまうこともあります。
会話を続けるコツは、相手の話をよく聴くことです。自分をアピールすることに夢中になるのではなく、相手の話を親身になって聴いてみてください。
「それはどうしてですか」など、質問を重ねていけば、相手は「自分の話を聴こうとしてくれている」と心地よくなり、何を聞いても答えてくれるようになるものです。相手は話すことが楽しくなり、「この人とまた話したい」という印象が残ります。
●次のアクションを見越して会話する
名刺交換をして「この人と仲良くなりたいな」と思ったら、次のアクションを見越した会話を盛り込んでみましょう。会話の流れの中で、「その点についてもっと知りたい。お話を伺いに行きたい」など、近い将来、「自分から会いに行く」ことを示唆するのです。つまり、次のアクションを起こすためのきっかけを、会話の中に入れ込んでおくのです。
すると、後でメールを送る際に、「先日お会いした際、お伺いしたいとお伝えしましたが、いつならご都合がいいでしょうか?」と切り出しやすくなります。
なお、そのきっかけは、仕事に直結することだけでなく、趣味や興味のあることでも構いません。「フルマラソンに出てるんですか。完走の秘訣を教えてほしい」などでもいいのです。
●元気に明るく振る舞う
明るく元気な人と一緒にいたら、自分もエネルギーをもらって元気になれた…という経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。相手にとって、自分がそういう存在になることで、「この人とまた会いたい」と思ってもらえます。
常にパワフルな人でいるのは難しくても、初対面の人と会う場では、普段の自分より何割か増で、元気に明るく振る舞ってみてはいかがでしょうか。
●見返りを期待しない
時間とお金を使って交流会などに参加したなら、何かしらの「成果」を得たいと思うのも当然だと思います。けれど、「この人は自分の役に立ってくれるのでは」「この人は自分に利益をもたらしてくれるのでは」といった下心を持って接していると、おそらく相手に見抜かれてしまいます。
こうした場では、純粋に「気の合う人」を見つけて楽しむスタンスで臨んだり、むしろ「あなたの役に立ちたい」くらいの親切心で接したりするほうがうまくいくものです。
初対面の人に話しかけるという「苦手」を克服するコツ
それでもやはり、初対面の人に声をかけて会話を続けるのは苦手!…という人は、次の方法を試してみてはいかがでしょうか。
●「緊張してしまって」を正直に打ち明ける
「こういう場は不慣れで、話しかけるだけで緊張してしまって…」と、正直に打ち明けてしまいましょう。少なくとも、会話が続かず気まずい雰囲気で終わるという事態は避けられます。
その場は笑顔で挨拶だけして、後で言いたかったことをメールなどで送ればいいのです。
●場を盛り上げるのが得意な人についていく
交流会の場には、初対面の人と打ち解けるのが得意な人もいます。そういう人をつかまえて、行動を共にするのも一つの手です。
「〇〇さんのように、多くの人とどんどん知り合っていけるのってうらやましいです。やり方を教えてください」「あの人と話してみたいんですが、私、緊張しちゃって。紹介してもらえませんか?」といったようにお願いして、サポートしてもらいましょう。
―― 交流会といった場に慣れていない人は、「何を話そうか」などとあれこれ考えず、まずはどんどん声をかけてみることをお勧めします。
すると、初対面の人が自分に対してどんな印象を抱くのか、自分はどう思われがちなのか、次第につかめてきます。やがては初対面の人との距離感の測り方もわかるようになり、自信が付いてくるでしょう。
中川勝弘氏/経営コンサルタント
株式会社エイトランド 代表取締役。
1966年神奈川県横浜市生まれ。大学在学中、実父が横浜にて経営していたナイトクラブが焼失。留学を諦め、父の事業をサポートする傍ら、2000年にIT系ベンチャー企業を創業。データマイニングや通信等に関わるサービス提供を行う。3年後、代表を退任。以降、現在の会社であるエイトランドを設立し、飲食業界向けの経営コンサルティング・出店プロデュースを展開。現在は、介護事業、IT関連企業、医療関係にまで幅広く携わり、事業戦略立案、コスト削減やビジネスマッチング、営業支援やファイナンス支援等、経営に関わるコンサルティングを広く行っている。著書に『図々しいから愛される人脈術』(マガジンハウス)
EDIT&WRITING:青木典子 画像:ぱくたそ