【森田正康氏インタビュー】社会人経験ゼロの研究者が、組織をマネジメントできた理由

多くの管理職の方が常に課題に感じている「マネジメント」。そんなマネジメントに必要なスキル・ノウハウについて、海外留学を経て語学系出版社・アルクの第2次創業メンバーとして取締役に就任し、その後ヒトメディアを創業された森田正康さんにお話を聞いてきました。

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森田正康(もりた・まさやす) / 株式会社ヒトメディア代表取締役

1976年愛知県生まれ。12歳で家族と渡米し、カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学、ケンブリッジ大学など海外の大学・大学院を渡り歩く。2003年に日本へ帰国し、語学系出版社・アルクの第2次創業メンバーとして取締役に就任。2006年には JASDAQ上場を果たす。同年、ヒトメディアを創業し、教育や異文化領域における新規ビジネスの立ち上げや、ベンチャーへの投資・育成を中心に活動。国内外の企業取締役やNPO団体理事、大学教授なども務め、幅広く活躍している。

ビジネスの原点は研究者として学んだ

僕のキャリアはわりと特殊で、12歳のときに家族で渡米して、20代前半までは研究者をやっていたんです。小さい頃から「総理大臣になって世の中を変えたい」みたいな思いがあって、最初はカリフォルニア大学バークレー校で政治経済を学び、途中で上から世の中を変えることの難しさに気づいて、教育方面に転向しました。

ちょうどその頃、ハーバードの大学院にITと教育を結びつけた「eラーニング」という分野の研究ができるプログラムが新設されました。たとえば僕が先生になっても、生涯で教えられる生徒の数はせいぜい2~3万人ですが、インターネットを使えば、何億という人に影響を与えられるかもしれない。そこに可能性を感じて3年でバークレーを卒業し、ハーバードの大学院に進学しました。

ハーバードには、会社経営と学問や研究を両立している教授がたくさんいました。どうすれば子供の集中力を絶やさないような教材がつくれるかを研究しながら、セサミストリートやスターウォーズなど、一流コンテンツのキャラクターをコンサルティングしている教授もいたんです。そういう方々を見て、研究者ってやっぱりかっこいいなと思いましたね。教育系の学部なので、教職経験のある学生も多かったんですが、僕は教師としての経験を積むよりも、人がやっていない分野をやろうと考え、ケンブリッジ大学に移ってITを活用した児童心理学をやったり、コロンビア大学でテレビメディアの研究を通じて人に伝えるってことを勉強したり。教育に関することをひと通り自分でわかるようになりたかったんです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

学生から、いきなり役員に抜擢される

ケンブリッジ大学時代にアルバイトを探していて、インターネットで「英語」と検索して最初に出てきたアルクという語学系出版社にメールを送ったのが、今につながる転機でした。「英語だけはできるから添削でもなんでも仕事をください」というふうにお願いしたところ、当時の常務から「そういう仕事はないから本を書け」と返事があった。そうして書いた本が、僕の最初の著作です。その後、コロンビア大学にいる頃にメールをいただいて、「アルクで子会社をつくるんだけど来ないか」と誘っていただき、帰国してアルクの子会社・スペースアルクに入りました。それが僕の社会人デビューなんですが、役職を見るといきなり役員だったんですよね。給料は16万5000円でしたけど。

僕は当時26歳。出版社の社員はわりと年齢層が高いので、部下も全員年上でした。それに当然、みんなには出版や編集の経験があるわけです。社内で本をつくったことがないのは僕だけ。仕事の仕方もわからない状態で、自分が何をすればいいのかということを、ずいぶん考えましたね。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

部下と同じ土俵で戦わない

新任マネージャーとして僕が常に心がけていたのは、部下と同じ土俵では戦わないこと。僕には出版の知見がないわけですから、前任者や他の役員と同じことをしても勝てるわけがない。幅広く一から知識を蓄えていくよりも、僕が専門とするネットやITに偏った方が、議論も深まるし、組織としてもうまくいくだろうと考えました。

組織のなかでもっとも経験がない僕としては、自分ができないことを明確にしたうえで、ある意味では自分の強みを相手に押しつけるしかなかったんです。「僕はこれをやったことがないからできません」と正直に伝えれば、部下がしょうがないなって思ってくれる。最年少だったからこそ、ある意味お得なポジションから始めやすかったんでしょうね。

でも、たとえマネージャーのほうがキャリアも歳も上だったとしても、自分ができないことをチームに理解してもらうことって必要ですよね。マネージャーは部下より優れているわけではなく、ただ、チームのマスコットのつもりぐらいが丁度いい。その事業部の顔が事業部長であるだけで、やっぱり結果を出していくのはその下にいるメンバーですから。

>>後編へ続く

監修:リクナビネクストジャーナル編集部

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