文章が苦手でも、ビジネスシーンで「わかりやすいドキュメント」を作成する方法

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みなさんの提案書や報告書、メールなどのドキュメントはわかりやすいでしょうか。ビジネスではさまざまなシーンでドキュメントが使用されますが、日本人にとって日本語で文章を書くことはあまりに自然すぎて、クオリティや効果といった要素はあまり意識されていないように思います。

ここでドキュメントを作成するそもそもの目的に立ち返ってみましょう。数千万円の予算が動くプロジェクトの提案書であれ、社内で発生したトラブルの経緯報告書であれ、進行している案件についてのクライアントとのメールであれ、すべてのドキュメントには共通した目的があります。

それは「文章によって人を動かす」ことです。予算の承認も、トラブルの解決も、スムーズな案件の進行も、それを媒介しているのは文章のクオリティであり、効果です。したがって、ビジネスにおいて使用されるドキュメントは、徹底してわかりやすい文章で構成することが重要です。

そこで今回は、ふだんあまり文章のクオリティや効果を意識しないビジネスパーソン向けに、ビジネスシーンでわかりやすいドキュメントを作成する方法をご紹介します。

わかりやすいドキュメントは誤解を生まず、人を動かす

まず、わかりやすいドキュメントというのは、誤字脱字や表記のミス、日本語のまちがいがない文章で構成されるドキュメントです。そして、このようにわかりやすいドキュメントは誤解を生まず、人を動かすことができます。

「誤解を生まない」ことについては、毎日のビジネスメールを想像するとわかりやすいでしょう。相手からの返信内容が要領を得ないものであると、そこには余計なコミュニケーションコストがかかります。一方、洗練されたビジネスメールは、やりとりをスムーズにするでしょう。

「人を動かす」とは、文章の力を借りて目的(予算の承認をとりたい・トラブルを解決したいなど)を果たすことです。たとえば、すぐれた広告のキャッチコピーは、目にした人に商品購入や会員登録、資料請求など促すことができます。同様に、わかりやすい提案書や報告書では、ドキュメントの目的がストレートに伝達し、人を動かすことができるのです。

誰でもわかりすいドキュメントが作成できるおすすめツール

誤字脱字や表記のミス、日本語のまちがいは、ビジネスパーソンとして以前に、大人として教養を疑われる可能性があるので注意したいところ。しかし、一般のビジネスパーソンが文章のプロフェッショナルではないのも事実です。そこで、文章作成を効率化する初心者向けのツールやサービスを以下に紹介します。

(1)日本語校正ツール

Yahoo! JAPAN提供のテキスト解析Web APIを利用しているほか、日本新聞協会の「新聞用語集」、共同通信社の「記者ハンドブック」を参考にしており、現在利用できる無料かつ会員登録なしの校正ツールではもっとも使い勝手がいいと思います。以下のように、表現の間違いや不適切な表現に関する指摘も校正してくれるようです。

  • 誤変換(人事異同→人事異動)
  • 誤用(煙に巻く→けむに巻く)
  • 使用注意(外人墓地→外国人墓地)
  • 不快語(がんをつける→にらむ)
  • ら抜き言葉(食べれる→食べられる)
  • 外国地名(モルディブ→モルジブ)
  • 固有名詞(ヤフー→Yahoo!)
  • 人名(ベートーヴェン→ベートーベン)※新聞や文科省指定教科書では「ベートーベン」表記

それ以外にも、機種依存文字・表外漢字・商標などのチェック、さらには助詞不足から冗長表現の警告までしてもらえるため、とりあえずこのツールを利用してみましょう。

ただし、無料ツールだけだとどうしてもチェックの抜け漏れがあります。そこで、より校正の精度を高くするために、ビジネスパーソンに身近なMicrosoft Wordの校正機能を組み合わせて活用するのがおすすめです。

作成した文書を貼り付けて[F7]キーを押せば、簡単な日本語のミスについて指摘してくれます。すでにご存知の方も多いとは思いますが、Microsoft Wordを校正ツールとして利用したことがない方は、ぜひ試してみてください。

(2)文字数チェッカー

ドキュメントのわかりやすさには文字数も重要です。ビジネス用のドキュメントでは、一文の目安は大体50~100文字程度。最終確認の際だけでなく、文章作成の途中で文字数過多・不足をチェックしておくと、あとで編集作業に手間を取られずにすみます。上記のツールは、文字数を自動カウントしてくれます。

(3)日本語入力支援ツール

文字入力の際に誤変換でイライラしがちな方は、日本語入力支援ツールを利用しましょう。有料ソフトだとATOKが有名ですが、お金を払うのに抵抗が……という場合もあると思います。Google 日本語入力は検索エンジンが膨大な言語データを扱う利点を活かしており、無料ツールの中では比較的、精度が高いです。

(4)類語・関連語検索

やや上級者向けになりますが、文章のクオリティを上げるのは「言い回しの妙」です。もちろん、ビジネスのドキュメントに文学的な表現は必要ありませんが、TPOに見合わない単語を別の表現で言い換えたい場合は、類語検索を利用してみてはいかがでしょう。

検索すると関連語が多数ヒットし、みるみるボキャブラリーが増加します。また、他の辞典サービスと同様に、類語・同意語もしっかり表示してくれるので実用性が高いです。このように、ドキュメントを作成するときは、できるだけ細部にこだわる意識を持つと文章が上達しやすいです。

声に出して読み上げて、違和感がないか

ここまで、初心者でも誤字脱字や、表記のミス、日本語のまちがいのない文章を作成するツールを紹介しました。しかし、ツールだけではカバーできないわかりやすいドキュメントのポイントもあります。そこでおすすめなのが、文章を声に出して読んでみること。

以下の文章について考察してみましょう。まずは声を出さずに読んでみてください。

「考えるべきことは、翌月・翌々月の売上をいかに組み立てて、当月の落ち込みのカバーを行うかに視点をシフトする必要があります」

この文章に違和感を覚えたでしょうか。もしも違和感を覚えなかった場合は、声に出して読んでみてください。おそらく、不自然さを感じるかと思います。

この文章の不自然さを感じたら、品詞分解をしてみましょう。文章の骨格は主語と述語によって成立するので、まず主語と述語を探してください。すると「考えるべきことは(主語)/必要があります(述語)」というように読めて、主語と述語の関係がねじれていることがわかります。

このようなわかりにくさはツールでは判断しにくいため、見逃されてしまいがちです。この文章の正しい主語と述語は「必要が(主語)/あります(述語)」なので、紛らわしい前半部分を整理する必要があります。

「考えるべきことは、翌月・翌々月の数字をいかに組み立てて、当月のカバーを行うかという点です」

とすればわかりやすくなります。

もう一例、「数字が売上目標を達成するための組み立てを行う」という文章を考察してみます。同様に「数字が(主語)/達成する(述語)」わけではなく、主語と述語がねじれています。実はこの文章には、主語がないため「(私が)売上目標を達成するために数字の組み立てを行う」とすればわかりやすくなります。

このように、書き言葉には時として、読み手にわかりにくい表現が含まれている場合があります。そんなときは声に出して読み上げてみると、わかりにくい文章になっていることを事前に察知できるはずです。文章を作成するのが苦手な方は、ドキュメントが仕上がったら一度、声に出して読み上げることをおすすめします。

わかりやすいドキュメントを作成するために

繰り返しになりますが、日本人にとって日本語で文章を書くことは自然なことなので、練習なしに誰にでもできると思われがちです。もしもあなたが、これまであまり意識せずに文章を書いていたのであれば、ぜひ一度上記のツールや、声に出して読み上げる方法を試してみてください。

意識せずに書かれた文章は大半がわかりにくいです。そしてわかりにくい文章は、リソースと引き換えに作成したにも関わらず、その目的を果たせなくなってしまいます。この機会にぜひ、文章のクオリティや効果を上げるための練習をしてみてください。いつか、あなたの文章で人を動かす瞬間がくれば幸いです。

著者:朽木誠一郎 (id:seiichirokuchiki)

朽木誠一郎

編集者、ライター、メディアコンサルタント。大学時代にフリーライターとしてキャリアをスタートし、卒業後はメディア事業をおこなう企業に新卒入社。オウンドメディアの編集長として企画・編集・執筆を担当したのち退社。現在はYahoo!ニュース個人などで執筆、PAKUTASOのフリー素材モデルとしても活動している。ブログ『あまのじゃく日記』はメディア論から美味しいごはんまでゆるやかに更新中。

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