手軽に実践できる!情報分析力・企画力を高める「脳」の鍛え方

「お客様とコミュニケーションを取るのは得意だけど、企画を考えるのは苦手」
「プレゼン書を作成する作業は楽しいけれど、情報やデータを分析するのが苦痛」

…このように、誰しも得意な仕事と苦手な仕事がありますよね。それは「脳のどの機能が発達しているか・活発に動いているか」によるところが大きいようです。

医学博士・脳科学者であり、35万部を超えるベストセラーとなった『脳の強化書』の著者・加藤俊徳氏によると、脳は機能別に大きく8つの「番地」に分かれているといいます。

          

思考系脳番地…何かを考えるときに深く関与
感情系脳番地…喜怒哀楽などの感情表現に関与
伝達系脳番地…コミュニケーションや意思伝達に関与
理解系脳番地…情報を理解し、役立てることに関与
運動系脳番地…体を動かすこと全般に関与
聴覚系脳番地…耳で聞いたことを脳に集積させることに関与
視覚系脳番地…目で見たことを脳に集積されることに関与
記憶系脳番地…情報を蓄積させ、使いこなすことに関与

これら8つの「番地」を意識的に鍛えることで、脳の働きを活性化させられるそうです。そこで今回は、「情報を整理・分析する」「アイデアを練る・企画を考える」といった仕事力を高めるために、脳をどう鍛えればいいのかをお聞きしました。

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▲加藤俊徳氏

「理解系脳番地」を鍛え、情報整理・分析力を高める

情報の整理・分析を行うとき、頭の中では「理解系脳番地」が働いています。これを鍛えるには、次のような方法があります。

●10年前に読んだ本をもう1度読む

言語を理解する脳番地を鍛えるには「読書」が効果的。ただし、多くの本を読めばいいわけではなく、同じ本を複数回読むことで、理解力が鍛えられます。特に、昔読んだ本を読み直してみるのがお勧めです。10年ほど前に読んだ本を再度手に取ってみてください。以前より脳が変化しているため、理解の仕方が変わっているはずです。

「以前読んだときはこう思ったのに、今はこう思う。それはなぜか」といったように、以前と今の変化を読み解いてみてください。

また、小説であれば主人公以外の人物にフォーカスして感情移入してみる、ノンフィクションであれば著者の主張を批判する立場で読んでみるなど、多角的な読み方を試すことで理解系脳番地が鍛えられます。

●部屋の整理整頓、模様替えをする

理解系脳番地を活性化させるためには、「物事に対する見方を変える」のが有効です。
そのためには、定期的に部屋の模様替えをしてみるといいでしょう。

家具の配置やモノの置き場所を変えることで、「この場所はホコリがたまりやすい」「**を取るためにムダな動きをしなくてはならない」など、新たな気付きが生まれます。こうして「空間」に対する理解力が高まり、理解系脳番地の強化につながります。

また、生活空間が変わると、自分の動き方も変わります。動きが変わるとものの見え方も変わり、新たな発想も生まれやすくなるのです。

●電車内で見かけた人の心理状態を推測する

電車に乗っているときなどに、他の人の身なりや持ち物、行動、表情をそれとなく観察し、その人の背景を推理してみましょう。「なぜその服装をしているのか」「どんな出来事があって、そんな表情をしているのか」など。
こうした「非言語情報」から推測してみる作業は、理解系脳番地を刺激します。

●シュールな絵を眺め、新しい意味を考えてみる

サルバドール・ダリ、ルネ・マグリットなどに代表される「シュールレアリズム(超現実主義)」の芸術作品に触れるのもお勧めです。
現実ではありえないものを組み合わせたり、不条理な世界を描いた絵などを眺めて、自分なりに新しい意味を作り出してみましょう。

●自分のプロフィールを作る

すでに理解力が高い人たちであっても、意外とできていないのが「自己理解」です。
自分がどんな人間で、何が強みなのかを考えてみるのは、理解力を深めるのに有効です。

そこで、自分の特徴や長所を記したプロフィールを作ってみてください。転職活動をする場合に自己PR欄に記すような内容のほか、「初対面の人ともすぐ打ち解けられる」「**の名前を覚えるのが得意」など、プライベートなことでもOK。

こうした「自己の再評価」を半年に1回程度のペースで更新するといいでしょう。

さらにレベルアップするなら、新しい自分のプロフィールを他者に伝えてみてください。その反応から、新たな気付きが生まれ、理解が一段深まります。特に、あなたの過去を知っているけれど、最近のことはよく知らない「親」に伝えると効果が期待できます。

●出かける前の10分間でカバンの整理をする

出かける前に「10分間」などと時間を設定した上で、カバンの中身を整理しましょう。これからの予定を踏まえ、必要なもの・必要でないものを判断します。
人間の脳は「時間の枠」を設けたほうが働きやすくなります。限られた時間内に行うことで、理解系脳番地が活性化します。
「会議が始まる前の10分間にデスクの整理をする」などでもいいでしょう。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

「思考系脳番地」を鍛え、企画立案する力を高める

企画を考える際には「思考系脳番地」が働いています。これを鍛えるためには、次のような方法を実践してみてください。

●身近な人の長所を3つ挙げる

職場の同僚、上司、取引相手、友人、家族など、身近な人の「長所」を3つ挙げるというトレーニングです。相手の評価を見直すことで、自分の視点や思考を転換できるという効果が得られます。

「3つ」や「5つ」など、数字を決めておくのも重要なポイント。普段よく思っていない相手であれば、苦労して長所を探すことになるでしょう。「無理にでも考えて絞り出す」という試みが、思考系脳番地の鍛練につながります。

●自分の意見に対する反論を考える

「自分はこう思う」という明確な意見を持っている場合でも、それに対する反論を考えてみてください。仕事や職場はもちろん、ニュース、ドラマ、映画、雑誌の記事などでも、自分が思ったこと・考えたことと逆の説を唱えてみるのです。
これにより視野が広がり、思考のパターンが多様化します。

●休日の行動計画を他人に決めてもらう

休日にどこに行って何をするかのプランを他人に決めてもらい、その通りに行動してみます。「せっかくの休みくらい自分の好きなことをしたい」と思うかもしれませんが、自分なら選択しないような行動をするという「意外性」が、思考系脳番地を強く刺激してくれます。

●考えに詰まったら、10分間睡眠を取る

思考系脳番地を活性化させるためには、「思考の切り替え」をうまく行うことも大切です。ひたすら考え続けていても、アイデアが浮かんでこないどころか、思考力が鈍っていくだけです。

こんなときは、10~15分でいいので思考のスイッチをオフにしましょう。

休憩室でコーヒーを飲むだけでは、思考を完全に止めることはできません。思考を切り替えるには、10分だけ「眠る」のが有効です。睡眠により脳の血圧を下げることで、脳の機能が再度働きやすくなります。
仕事中に睡眠を取るのが難しい場合も多いかもしれませんが、可能な状況であればお勧めしたい方法です。

●足、腰のツボをマッサージする

これは、企画を考えているときなどに集中力が落ちてきたと感じたら、試していただきたい方法です。足がむくんでいたり、肩や腰が凝り固まっていたりすると、脳はそれらの「患部」に意識を向けます。

足・腰などのツボをマッサージしてほぐすことで、脳は思考の方に集中しやすくなります。一見関係なく思えても、非常に有効な方法なのです。
なお、マッサージと同様に、きちんと入浴してリラックスすることも、脳の活性化のためには必要です。

●頭が働かなくなったらひたすら歩く

考えても考えても案が浮かばず、行き詰まりを感じたことはありませんか?
これは、特定の脳番地だけを使い続けることで、負荷がかかり過ぎている状態。この状況を改善するためには、別の脳番地にシフトする必要があります。

てっとり早いのは、とりあえず体を動かして「運動系脳番地」に移行すること。もっと手軽なのは「歩く」ことです。

思考が凝り固まってきたら、10~15分ほど、何も考えずに歩いてみてください。それまで酷使していた思考系脳番地を一旦休ませることで、再度活性化させることができます。

<まとめ>

「理解系脳番地」を鍛え、情報整理・分析力を高める

  • 10年前に読んだ本をもう1度読む
  • 部屋の整理整頓、模様替えをする
  • 電車内で見かけた人の心理状態を推測する
  • シュールな絵を眺め、新しい意味を考えてみる
  • 自分のプロフィールを作る
  • 出かける前の10分間でカバンの整理をする

「思考系脳番地」を鍛え、アイデアを練り企画立案する力を高める

  • 身近な人の長所を3つ挙げる
  • 自分の意見に対する反論を考える
  • 休日の行動計画を他人に決めてもらう
  • 考えに詰まったら、10分間睡眠を取る
  • 足、腰のツボをマッサージする
  • 頭が働かなくなったらひたすら歩く

――次回は、商談やチームワークなどで相手の考えを読んだり、交渉や駆け引きを行ったりする力を高めるための脳の鍛え方をご紹介します。

加藤俊徳氏

f:id:k_kushida:20150918072440j:plain「株式会社脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。
発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。医学博士。

14歳のとき、スポーツを通じて「脳に秘密がある」と直感し、脳を知るために医学部を目指す。MRIを使った脳の鑑定技術、脳の働きや酸素の使われ方を観察する手法などを開発。胎児から100歳まで、多くの人の脳を診断した経験も踏まえ、「いくつになっても脳が成長する生き方・鍛え方」を見出す。『脳の強化書』(あさ出版)『仕事ができる人の脳 できない人の脳』(ディスカバー)『高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか』(PHP新書)など著書多数。

EDIT&WRITING:青木典子 PHOTO:鈴木愛子

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