■ はじめに
こんにちは、外資系OLのトイアンナです。
外資系企業は帰国子女の巣窟だとよく誤解を受けますが、いわゆる「純ジャパ」と呼ばれる、海外経験が一切ない人も多くいらっしゃいます。帰国子女に比べて英語力には上下幅があるものの、できる人は帰国子女が「教えてください!」と思うくらい流暢です。ところが、日本人の英語を読んだり聞いたりしていると「引っかかり」を感じることがあります。妙に、アメリカ人っぽいのです。
たとえば、以下は日本人の英語ができる人から受け取ったメールの一例です。
Anna, Hi, what's up? I hope everything is going great. Can you share the document from yesterday's meeting??? Thanks! Best, Light Yagami
これ、ニュアンスも含めて日本語訳するとこんな感じです。
アンナちゃん やっほー、最近どう?アンナちゃんのことだから楽しく過ごせてそうだね! 昨日の会議資料、俺にも共有してくんないかな?? ありがとー!またね! ヤガミ ライトより
日本人が中学校から学ぶ英語は基本的に「アメリカ英語」ですから、伝えるニュアンスも「アメリカ人っぽく」なりがち。しかし、日本人が常日頃こういうメールを書いていて、いざお会いしたらハグもせず「どうぞ宜しくお願い申し上げます」なんて深々とお辞儀をしてきたら怖くありませんか?もしくは、ハグまでやってのけるのでしょうか?いずれにせよそれは「日本人らしさ」を捨てて「アメリカ人」になろうとしているように見えます。
単に怖いだけならまだしも、非ネイティブの日本人がこういう英語を使うと恐ろしいリスクを抱えることも。まず、アメリカ英語は世界的に見ても軽いノリに思われやすいので、非ネイティブの日本人が軽いノリで英語を使うと「なんだあいつ、失礼なやつだな」と思われかねません。例えばイギリスでは、下の名前で相手を呼び合うのは親しくなってからです。そこで日本人がいきなり「ちっす!僕はケンジ!ケンって呼んでね!」と現れたら「なんだコイツ……」と気まずい空気が流れるはず。社内や学校生活なら問題なくても、初めて顧客に会う場合などはこういうトラブルを避けたいものです。
もう一つのリスクに「堅い文を書けなくなる」点があります。日本語でもそうですが、くだけた英語を使っているといざ堅い文章を考えようとしても戸惑うことになります。法務部門などで堅い言葉を日頃使っている人が「よっ、元気してたか?」と書く違和感と似ています。
■ 自由かよ!?非ネイティブの英語スタイル
「アメリカ英語って危ない!」と書いてまいりましたが、他国の非ネイティブさんたちは、どんな英語を使っているのでしょうか。私の知る範囲で、いくつか列挙してみます。
事例1:なんでも語尾にlaをつけるシンガポール人
シンガポールは経済発展のために公用語を英語にするという、とてもドラスティックな国です。じゃあネイティブじゃん!と思いきや、現地英語はとてもユニーク。とにかく語尾にla(ラ)がつきます。
例えるなら、”I want to go to school la~♪” (私は学校へ行きたいラー♪)という感じです。新種の萌えキャラか?全てにアップテンポの”ラ”が付いて来るので、真面目な話もちょっと微笑ましいトーンに。逆に会話で突然laが消えた場合は相手が怒っているかもしれないので、とても重要なサインになります。
事例2:やたら顔文字と!!!でハイテンションなインド人
インドはイギリスの植民地だったこともあり英語が堪能な方も多いのですが、とにかくハイスピードでまくし立てられることもしばしばあります。相手のリスニング能力なんてどうでもいいと思っているに違いありません。
メールだと親しくなればたとえビジネスだろうと”I like it!!! 🙂 🙂 :)”(私それ好き!!!(❀╹◡╹)ノ(❀╹◡╹)ノ(❀╹◡╹)ノ)みたいなメールが届きます。男性からも届くのでほのぼのしますが、反対意見のときも「それはヤダ!!!《 ゚Д゚》《 ゚Д゚》《 ゚Д゚》」みたいなのが来るので、えーと、メールでもうるさい。
あと、決して忘れてはいけないのは、インド人のメールが72時間以内に帰ってきたら「ラッキー」だということです。私が会ったインド人たちはみな、時間感覚にルーズな人でした。日本のマナーで考えると心が折れます。
事例3:フランス語で発音しないからってhを抜いてくるフランス人
英語の非ネイティブ同士が連絡すれば、ミスは起きるもの。そして、ミスの仕方にもお国柄が出てきます。例えば日本人はよくLとRを間違えて、「That’s Right(それは正しい)」と言いたいのに「That’s Light(それは軽い)」と言ったり、書いたりします。
その中でも、フランス人のミスは特徴的です。フランス語ではhを発音しないため、英語でよくhを抜いてきます。一度「アッシュタグは欠かせない」と会議でプレゼンされ、「アッシュ?灰(ash)のこと?」と思っていたら”hashtag(ハッシュタグ)”だったことがあります。heavenはエブン、heroはイーローです。文字ならまだしも、会話だと結構困ります。
* * *
しかし、こういったミスを「完璧じゃない!アメリカ人やイギリス人のように話せ!」と言ったらそれこそ「なんじゃそれ?」という目で見られるでしょう。ある程度のクセは、その国の文化を表す個性なのです。ネイティブスピーカーも言語が通じる限りは、こういった個性を尊重します。たとえ他言語を使っていても、自国の文化、ひいては自分の個性を自然に表現できてこそグローバル人材と言えるのではないでしょうか。
■ 日本人の”文化”を伝える英語とは?
では、日本人が自国の文化を表すような英語を話すなら、どういったものがいいでしょうか。私は「一言添える丁寧な言葉」だと思います。もともと日本語には、相手へ丁寧な印象を与えるよう、さまざまな敬語が存在しています。
敬語をあまり詰め込みすぎると野暮ったい長文になってしまいますが、一言そっと添える言葉なら、ビジネスだからこそ優しさが伝わるのではないでしょうか。以下に、いくつか英語でも使える「添え言葉」を用意してみましたのでご覧ください。
【1】やんわりとした断り文句「ご希望に添えず申し訳ございません」
- We are sorry that we could not choose your preference.
英語で”Sorry”は通常、自分が悪かったときだけ使う言葉です。ただし”I am sorry”と全面的に非を認めるのではなく「○○という事象に対して」ならばトラブルを避けることができます。「あなたのお気持ちに沿えず」と明確に書けば、ビジネス上の非はなく、気持ちに対して謝罪しているので大丈夫です。
【2】「万障お繰り合わせの上」と出席をお願いする言葉
- This is our honour to have your presence at ~.
直訳すると「あなたがいらっしゃることが私たちの名誉です」という文章。よくパーティの招待で定型文として使われるのでそのまま使えばOKです。「~」の部分にはパーティの名称を入れてください。
【3】「どうぞ宜しくお願いいたします」で相手の仕事へ信頼を置く
- We highly appreciate your strong support as always.
カジュアルな英語では”Thanks!”で終わらせるところを「いつもお世話になり、厚く御礼申し上げます」にすることで、かなり丁寧な印象を与えることができます。文頭よりは、”Best Regards”といった、文末の言葉の前に添えるといいでしょう。
■ おわりに
英語はほとんどの国で「伝える」ことを最重要視されてきた言語です。そのため「伝わればいい」「文法が間違っていても根性さえあれば」という論説を見かけます。確かに日本人は”そもそも喋ろうとしない”ことが大問題なのですが、どうせ会話をするならばちょっと丁寧な言葉で伝えてみてはいかがでしょうか?
特に非ネイティブが丁寧な言葉を使えると、「おっ」といい印象を与えることになります。ぜひ”日本の心”を英語でさりげなく伝えて、グローバルで活躍できる人材になってください。
著者:トイアンナ (id:toianna)
日系企業の長期インターンやベンチャー起業を経験後、外資系企業へ就職したアラサー女。
ブログ「外資系OLのぐだぐだ」にて、キャリアから英語学習メソッド、女性の生き方まで連載中です。食べることが趣味。