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日本マイクロソフトCTOが語る、ネットワーク戦略

MSエンジニアが切り拓く
“日本発世界標準サービス”

IT黎明期から基幹技術・サービスを生み出し続けるマイクロソフトは今、ネットワークを前提にした最新技術に対して、果敢にチャレンジしている。今回、日本マイクロソフトCTOと女性エンジニアのコメントから、MSエンジニアとして活躍する醍醐味について探った。

(取材・文/中村仁美 総研スタッフ/山田モーキン 撮影/飯島隆) 作成日:13.04.25

日本マイクロソフトCTOが語る、数万人のMS技術者が切り開くITの可能性とは?


マイクロソフトディベロップメント株式会社
代表取締役社長
兼日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 最高技術責任者
加治佐 俊一氏

「私たちが開発している製品は、OSのほかOffice、Bing(サーチエンジン)、MSN、Xbox、さらにはWindows Azureなど、手元のデバイスで使う製品からクラウドサービスなど多岐にわたります。しかもそれらを使う人も一般の消費者から大企業の社員までと多種多様です。あらゆる人が日々の生活や仕事の中で、価値を与えられる製品やサービスをいかに開発していくか。それがワールドワイドに多くいるマイクロソフト(以下、MS)のエンジニアに課せられた使命と言えるでしょう。新しい技術を常に吸収することで、エンジニア自身も成長できる。そんな面白い状況が続いているんです」

こう語るのは、マイクロソフトディベロップメント代表取締役社長兼日本マイクロソフト 最高技術責任者(CTO)の加治佐俊一氏だ。加治佐氏がITに関心を持ったのは1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)のIBM館で展示されていたペン型の入力端末機器に触れたこと。大学では情報工学を専攻し、「より多くの人に役立てる技術に携わりたい」という気持ちから、1989年にMSに転職。以来、2007年に発売されたWindowsVistaまで、OSの開発に携わってきたという。経営者となった今も「Visual Studio」を使ってプログラムを書いたりしている、という根っからのエンジニアだ。
今、MSで開発に携わる面白さは、ITの進化だけではない、と加治佐氏は指摘する。それはMS自身の開発姿勢や技術の取り組み方が90年代と比べ大きく変化してきたことにも要因がある。

90年代と21世紀で大きく変化。キーワードは「ネットワーク化」


変化の背景となったのは、ITがネットワークを前提したものへと変わったこと。
「今のITはどこ(何)ときちんとつながるか、その数が価値を決めています。一昔前まではMSでは競合製品とのつながりなどは考えていませんでした。しかし今は違います」(加治佐氏)
今年4月にリリースされた「Windows Azure Infrastructure Services」はその一例だ。これまでのWindows AzureはWindowsベースのプラットフォームの上でアプリケーションを実行するPaaS型のサービスである。今回のInfrastructure Servicesは、クラウド上にWindowsでもLinux環境も再現できるというものだ。
「MSのデータセンターの中で競合OSであるLinuxサーバも管理し、効果的な運用をするということ。Linuxだけではありません。競合であるオープンソースとのつながりも重視しており、オープンソースコミュニティとも密接に付き合い、いかに共存していくか、その方策を協調して探っているんです」(加治佐氏)

それだけではない。モバイル対応においても競合製品とのつながりを重視しているという。
「WindowsPhoneやSurfaceなどの自社製品だけではなく、iOS端末、Android端末ときちんとつながるようなサービスの開発も欠かせません」(加治佐氏)
よりオープンに、よりさまざまな技術とつながるという技術戦略に転換したことにより、仕事のやり方だけではなく求められる技術も変わってきていると加治佐氏は言う。
「今私たちが一番求めているのは、HTML5やJavaScriptなどのWeb技術に長けたエンジニアです」。

日本人技術者が「大きなインパクト」を残すための最新チャレンジ


日本人技術者がMSの中でどんな活躍ができるのか。それについて加治佐氏は「日本人だから貢献できる機能開発もたくさんある」と言う。IME(かな漢字変換)の開発などはその代表例だ。
「タッチデバイスなど新しいユーザーインタフェースへの対応、同じIDなら他のデバイスでも設定を同期できるクラウド機能など、IMEの機能拡張を日本チームで担当しています。そのほかOSやOffice、Bing(サーチエンジン)、Xboxなどのグローバル共同の開発案件にも携わっている人もたくさんいます」

これらの案件は主に従来型のMS技術者の活躍領域だろう。では先述したようなWeb技術者の活躍シーンはどこにあるのか。
「Windowsタッチ向けのアプリケーションやクラウドサービスの開発においてはJavaScriptが使われています。つまりJavaScriptやHTML5などのWeb技術者は、世界中で使われるようなキラーアプリ、キラーサービスを開発できるチャンスがあるということです。グローバルで名を売るにはまさにグッドタイミングと言えるでしょう」(加治佐氏)

またITのポテンシャルは、こんなものではないとも加治佐氏は付け加える。
「極端なことを言えば、iPS細胞が発見できたのもITのおかげともいえます。つまりIT(コンピュータ)がなければiPS細胞を見つけることはできなかったということ。今流行のビッグデータの活用に代表されるように、膨大なデータを活用して新しい知識を生み出すという仕組みを作るには、ITエンジニアが不可欠なんです。このように応用次第でITは世の中を変えていける力を持っている。いかに簡単に使いこなせるようにするか、これからのエンジニアの手腕にかかっているわけです」。

女性エンジニアが証言 クラウド&検証に対する壮大な挑戦


藤原淳子氏
Office開発統括部テスティングチーム
Senior Software Development Engineer in Test

実際にテストエンジニアとしてとして、グローバルで活躍しているのが藤原さんだ。藤原さんは13年前にMSに転職。入社後4年間はエンタープライズサーバ開発統括部でSQLサーバの検証業務を担当。その後Office開発統括部に異動し、Microsoft Office SharePoint Serverの検証業務に携わった後、現在はOffice2013の新機能であるOfficeテレメトリダッシュボード(アプリケーションおよびドキュメントの互換性検証機能)の検証、および次期Office製品の開発プロジェクトにおいてもテストエンジニアとして参加している。
「テストエンジニアは日本ではあまり馴染みのないポジションですが、携わる業務は非常に幅広いんです。製品開発プロジェクトにおいては、企画設計段階から参加します。これは検証しやすい設計にするためです。もちろん開発段階おいては開発者と並行して、テストの自動化ツールを開発。そのツールを駆使して日々、作成されるプログラミングコードの検証を行います」(藤原さん)

携わる範囲がクラウドやモバイルなどの登場により、検証業務の難度も非常に上がっていると藤原さん。
「クラウド対応するということは、何十万人もの人が使うことを想定しなければなりません。そのため検証においてもスケーラビリティの考慮は必須。それをいかにテスト環境で再現するか、非常に難しいポイントです。
しかもスマートフォンやタブレット端末など、検証対象となるデバイスも増えている。またユーザーが多くなると、必ず想定外の使い方をする人も出てきたりするもの。どこでもどんなデバイス、どんなバージョン、どんな操作でもバグが出ないよう、それらを100%再現できる検証プログラムをいかに作っていくか、日々メンバーとディスカッションしながら挑戦しているのが私たちテストエンジニアなんです。製品の品質を問われるだけにやりがいも大きいですね」(藤原さん)

日本発世界標準へ IT技術の可能性を若手エンジニアが生み出すチャンス


実は藤原さんが直近で携わったOfficeテレメトリダッシュボードは、日本発でグローバルに採用された機能である。
「日本では古いOffice製品を使っている企業も多く、それらの企業のIT部門ではOffice製品の互換性が問題となっていました。それを容易に解決するために開発されたのがOfficeテレメトリダッシュボードなんです。このほかにもMicrosoft Office SharePoint Serverのモビリティ機能(携帯電話搭載のブラウザでの閲覧機能)、さらにはブックマークやカレンダーを同僚とシェアするソーシャル機能なども日本発。このように日本で企画したことがワールドワイドで展開しているものもたくさんあります。日本人エンジニアがグローバルで活躍できるチャンスがMSにはたくさんあるんです」(藤原さん)

取材したとき、藤原さんはMSの本社であるレドモンドの開発チームに参加していた。グローバルで分散開発を行っているMSでは、藤原さんのような例は珍しいことではない。MSでは国籍、性別を問わず、誰もがグローバルで活躍するチャンスがあるということ。もちろん英語は必須となるが、「日本人は優秀な人が多いので、心配はしていない」と加治佐氏は言う。
「毎年、MSではImagine Cupという学生のためのITコンテストを実施しています。昨年、出場した日本代表チームは世界大会で2位という成績を収めたんです。世界大会は英語でのプレゼンが必須です。そのチームは英語がほとんどできなかったんです。しかし世界大会に出るまでの数カ月間で英語に必死に取り組み、世界の舞台で審査員を納得させるようなプレゼンをしたのです。私たちの業務では英語は必須だが、本気で取り組めばなんとかなるんです」
ITで世の中を本気で変えていきたい。そんな意欲を持つエンジニアにとって、これからのMSは、魅力ある可能性を持っているのかもしれない。


※マイクロソフト後援、マイクロソフト技術コミュニティが主催する
開発者・エンジニアのための応援セミナー
『Community Open Day』5月11日(土)開催
IT業界に興味のある18歳以上であればだれでも参加可能。
詳しくはこちらで
http://cod.ms/Pages/career.aspx

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