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カリスマプログラマー・Web企業経営者・専門家17人が語る

Webエンジニアよ、
「発信力」の時代がやってきた!

組織から個人主体の働き方にシフトしているWeb業界。その流れによって2013年、Webエンジニアは具体的にどのような考え方や視点を持って仕事をしていくべきなのか?17人の著名人の意見から探ってみたい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:13.01.09

17名の著名人が分析する、Webエンジニア活躍の条件

前回の記事では、Web業界における「組織→個人 依存→自立」シフトの動きと、Webエンジニアの最新ワークスタイル事情から個人主体の働き方について、著名人のコメントから読み解いた。
そして今回、2013年がはじまり、Webエンジニアに対して今後、どのような活躍や成果を期待しているのか?同じく著名人の方たちからそれぞれ独自の観点からご意見をいただいたので、紹介していきたい。
 

今回ご意見をいただいた皆様(※あいうえお順)
伊勢幸一氏(株式会社データホテル 情報環境技術研究室 執行役員CTA室長)
内山悟志氏(株式会社アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト)
大月英照氏(株式会社リクルートキャリア テクニカルアドバイザー)
片桐孝憲氏(ピクシブ株式会社 代表取締役社長)
上梨能寛氏(株式会社ループス・コミュニケーションズ シニアコンサルタント)
川田十夢氏(AR三兄弟 長男)
倉橋一成氏(iAnalysis  データサイエンティスト)
萩本順三氏(株式会社匠BusinessPlace 代表取締役社長)
橋本健太氏(クックパッド株式会社 執行役CTO)
増井雄一郎氏(株式会社FrogApps CTO)
松永賢次氏(専修大学 ネットワーク情報学部教授)
まつもとゆきひろ氏(Rubyアソシエーション理事長)
村上太一氏(株式会社リブセンス 代表取締役社長)
望月宏氏(専修大学 経済学部教授)
柳澤大輔氏(面白法人カヤック 代表取締役)
湯川鶴章氏(TechWave.jp チーフブロガー)
和田英一氏(東京大学名誉教授 IIJ技術研究所研究顧問)


■まつもと氏
「組織と個人が同じ方向を向いている間はいい。その状態を維持するためには、やはり“自分が何をしたいのか”を常に明確にしておく必要がある。もし同じ方向を向かなくなったとき、組織を変えるのはまず難しい。だからその時は、次の環境に素早く移る身軽さも重要」


■TechWave.jp 湯川氏
「例えば『フィギュアが好き』『クラシック音楽が好き』といった、これまで仕事に直接結びつかないような“趣味の領域”が今後、Webエンジニアにとって非常に重要な付加価値として認知されるのではないかと考えます。これだけ変化の激しいIT業界の将来を見通すことは、不可能に近いこと。それならば仕事やプライベートに関わらず、誰にも負けないと自負できるこだわりや思いをソーシャルメディアによってアピールしていく方が、“フィギュアに精通したJavaプログラマー”という独自のアプローチでPRでき、そこから全く新しいニーズが生まれる可能性もあるのがWeb業界なのです」


■カヤック 柳澤社長
“自分で物事を考え、作りたいものを形にするために周りを巻き込んで、スピーディに行動できるエンジニア”がひとつの理想です。 「こえ部」や「ナカマップ」などはそれぞれ5〜6人のチームでアイディアを出し合い、企画〜開発〜リリースまでどれも、1カ月〜半年以内にリリースしました。
それと、当社では何かアプリやコンテンツを作りたいエンジニアに対して、作る理由を問いません。『作りたいから作る』という単純な理由があり、かつチームが責任を持って開発していくことができるのなら、基本的にはOK。普通は作りたい理由や根拠を経営陣に対してプレゼンするプロセスがあるのかもしれませんが、その相手は経営陣ではなくユーザーでいいと思うんです。その方がよりスピーディかつ面白いサービスが生まれると思いますから」


■リブセンス 村上社長
「技術理解はもちろん、誰かに指示を与えられなくても、課題に対してどうアプローチするかを意識し、サービスの企画もできるエンジニアであって欲しいと考えています。 知的好奇心を絶えず刺激しながら新しいアイディアや技術を探し追求することですね」


■ループスコミュニケーションズ 上梨氏
「人には3つのタイプがいます。『人の上に立つ人』『人の下につく人』、そして『誰とも相容れない人』。これまではこの『誰とも相容れない人』がどんなに優秀なエンジニアであってもその能力を十分発揮できずに、組織の中で孤立していたけれど、実は“いいパートナー”を見つけてタッグを組めば大きな成果を出すんです。だからこそ組織の枠にこだわらず、社内外から広く自分のやりたいことを実現させるための最適なパートナーを積極的に見つけ、アプローチし、実現していく。これがこれからのWebエンジニアのひとつのスタンダードになっていくのではないでしょうか」


■ピクシブ 片桐社長
「会社の中で“スペシャリスト”としての活躍が求められつつ、コミュニティの中でスペシャリストとしての知識・技術・情報感度を磨いていく。
そのハイブリッド型こそ、Webエンジニアのこれからのワークスタイルと考えます」


クックパッド 橋本氏
「クックパッドではエンジニアに対して、4つのことを求めています。ひとつ目は高い技術力であり、特に誰にも負けない強みを持つことを重視しています。二つ目は、シンプルな設計を心がけることです。先人の知恵を活かすことや、無駄な複雑性を排除することで実現されます。三つ目は、ほかのエンジニアの創造性や開発速度を向上させるものをお互いに作り合うことです。四つ目は、社内外の開発者全体への貢献です。オープンソースコミュニティへの成果の還元も目的ではありますが、成果を公開することによって厳しい評価にさらされることによる技術力の向上も期待しています」


■AR三兄弟 長男 川田氏
「エンジニーアは、基本的に孤独な職業です。具体的には、空気に触れる前の孤独と、触れた後の孤独があって、どちらに対する耐性があるのかが、すなわちエンジニーアの働き方ではないかと、僕は考えています。
空気に触れる前の孤独というのは、実際にプログラムを組むときの孤独です。ここの孤独に耐えられない人は、技術研究職にはむいていない。チームで補完しながら仕事を進めるか、その仕事を外側に言葉で伝えるか、そういう仕事がいい。
空気に触れた後の孤独というのは、サービスをリリースした後の孤独です。新しいものは、誰にもわからない。わからないものをちゃんと作って、最後まで説明できる人はリーダーにむいている。
エンジニーアとひと言で言っても、いろいろな役割と耐性があって、それにあった仕事や場所を探すのが、本人にとっても組織にとっても、いちばんだと思います」


■匠BusinessPlace 萩本氏
「すでに開発能力だけでは勝負できない時代が来ていますので、ビジネスをコーディネートする能力を身につけ、ITを武器に、ビジネスの第一線で戦うエンジニアを目指してほしいと思います」


■データサイエンティスト 倉橋氏
「100%のものをじっくり長時間かけて納品するよりは、70〜80%でも、できたものをスピーディに共有していきながらアジャイル的に開発していくことが、これからのWebエンジニアには求められます。そのやり取りの中で、開発に対する顧客の満足度もあがるのではないでしょうか」


■専修大学 経済学部 望月教授
「これからのWebエンジニアはインターネットを介して、人との連携を図り新たなビジネスを創造することを目指してほしい。自分とは異なる分野、特に、デザイン力のある人、新しいビジネスに取り組む人、あるいはネットワーク上のユーザーの接点となりうる人などとの連携は新たな価値を生むことにつながる」


■増井雄一郎氏
「“明日、身一つになっても新しい仕事ができる”それが究極の目標。そのためには『売れる技術を身につけること』と『その技術がどこで売れるのか?を探すこと』この2つは必須です。
どちらかというと後者が苦手なエンジニアが多いように感じます。Rubyのコミュニティでも非常に素晴らしい成果を発表するエンジニアはいますが、それをどこで活かすのか?ビジネスとして昇華させるノウハウを知らないんです。
また役割分担を明確にして、個人が得意分野に集中できる環境を自ら作っていくことも重要。私はメンテナンスが苦手だしやりたくない。だからメンテナンスに関しては、あらかじめほかの人に任せる準備をしておくのです」


■専修大学ネットワーク情報学部 松永教授
「Webの仕事は、インターネットを通して何をユーザにできるようにするか、ということです。Webの20年の歴史を振り返ってみると、できることの範囲は常に広がり続けていることがわかりますし、これからも続いていくでしょう。Webというインタフェースで何ができるのか追求していく開拓精神を持って仕事を続けていただきたいと思います。そういった仕事は、日本人には向いていると思いますので、日本から世界に、日本発のオリジナルを提供していけるエンジニアが次々と出てくることを期待しています」


このように、「自分が何をしたいのか?」「作りたいから作る」という、エンジニア個人としての考えや思いを大事にしつつ、それを実現していくためにどのように組織やパートナーを活かしていくか?また実現させるための技術や各種スキルを身につけていくか?その2点を中心に常に考え、行動してスピーディに成果を出していく姿勢こそ、今後のWebエンジニアに求められているようだ。

これからWebエンジニアとして活躍するためのヒント

次に、これからWebエンジニアとして息の長い活躍をしていくために2013年の今、やるべきことは何か?そのアドバイスについても各著名人・専門家からの意見を紹介したい。ぜひこの中から、少しでも今後のキャリア形成にとって参考になるキーワードを見出し、早速実践していただきたい。

■まつもと氏
「プログラマーは自分の力で世界を変えることができる。それによって、“頼られる人”になるべし。そして“自分が今、何をしたいのか”を常に確認するスタンスを持って目の前のテーマに取り組んでほしい」


■TechWave.jp  湯川氏

自分自身の良さや強みを客観的に理解すること。そもそも生まれ持って身についている自分の能力に気づいているエンジニアは、それほど多くない。実名を通して自分のありのままの姿を発信し続け、周りの知人から指摘してもらったりすることで気づくこともある」


■ITR  内山社長
「トライブ化が進み、企業単位からプロジェクト単位で動く時代になっていくにつれて『クリエーション』『コネクション』『コントリビューション』この3つのスキルが必要になります。
また『7年後、自分がどんなライフスタイルを送りたいのか?』目標を決めることをお勧めします。経験や実績がゼロからでも、7年あれば独立できるくらいのレベルになるからです」


■リクルートキャリア 大月氏
背伸びして責任者になることをお勧めします。それが組織の歯車から逃れるための大きな一歩に。また、全くこれまでのスキルや知識と関係ない勉強会への参加によって、刺激を受けることも重要。一寸先何が起きるかわからないのがWeb業界だからこそ、個の力をどれだけ高められるかが重要なのです」


■リブセンス 村上社長
「広い視野で物事をとらえることができるエンジニアは、世界でも求められる優秀なエンジニアになれると思います。例えばさまざまな技術に興味を持って実際に手を動かす、他社のエンジニアと交流を持つなど自分の枠を限定せずにさまざまなことを経験して実感してみること、これが一番重要なことではないでしょうか」


■クックパッド 執行役CTO 橋本氏
常にサービスやアプリなどのものを作って、外に向けての公開し続けることをおすすめします。公開することにより、ユーザーやほかの開発者からの非常に厳しいフィードバックを得ることができます。ここから学び続けることが、エンジニアとしての成長につながります。サービスを開発、公開することのコストは非常に安くなっています。また、個人が社会にできる影響が大きくなっています。楽しみながら野心を持って、公開をし続けてください」


■AR三兄弟 長男 川田氏
「変な強迫概念を持たないことだと思います。かといって、なんでもいいかというと、それも違う。技術者としての誇りは誇りとして持ち続けて欲しいし、技術の探求は欠かしてほしくない。特に最近は、技術のサイクルがとても短くなっています。アーキテクチャも言語も、使い捨てみたいな状態になっている。エンジニーアであれば、ここに危惧を抱いて欲しい。自分が探求した技術が、どうしたらずっと永く使い続けられるか。社会との接点をどう持てばいいのか。そちらに重きを置いていれば、自ずと息の長いエンジニーアになっているはずです」


■匠BusinessPlace 萩本氏
「Web技術だけを追いかけて常に忙しい状態を5年も続けると、使い捨ての技術者になってしまいます。息の長い活躍をするためには、Web技術だけではだめで、クラウド等サーバー技術に加えて要求開発の技術(ビジネスをモデルとして表現できるモデリング力、コミュニケーション力やファシリテーション力)を学ぶことをお勧めします。
手前みそですが、要求開発の入門お勧めサイトはリコーITソリューションズの要求開発超入門がいいと思います。(http://www.jrits.co.jp/tech/openthology/index.html)」


■データサイエンティスト 倉橋氏
「大企業で仕事をするにしても、クラウドソーシングで働くにしても、コミュニケーション力は大事です。フリーで働くからコミュニケーション力が不必要なわけではなく、むしろ契約周りのこともしなくてはならない分、重要になっていきます。
それでもエンジニアのクリエイティビティを発揮するために、スキルを磨くだけでなく、社会人としてのマナーを身に付けることが、良い仕事をしていく条件になるでしょう」


■和田氏
「概念的ですが“モノづくりのセンスを磨く”ことですかね。Henry Baker君が『悪貨は良貨を駆逐する』をもじって『悪いシステムは良いシステムを駆逐する』といったことがあります。つまりWindowsが広まって困ったということ(※前回でビルゲイツを褒めたのと矛盾しますが)」


■専修大学経済学部 望月教授
「Webエンジニアの労働市場へは、コンピュータとネットワークがあれば個人でも容易に参入できるという特徴があるため、参入障壁が低く、市場へ多くの参入者が見込まれる。その中での激しい競争に生き残るためには、自分の持つ競争力を高めていくことが非常に大事になっていく。そのためにはインターネット上にある知識、知恵、人材などを有効に利用し“新しい価値を創造できるWeb Creator”を目指すこと。
今後は、組織に縛られない、こうした有能なWeb Creatorである個々人が連携して価値創造を行ってゆく、そういう新しい動きが加速するように思われるからである。その中でも自分が新しいうねりを作ってゆく、くらいの高いモチベーションを持ち続けてほしい」


■データホテル 伊勢氏
「ひと言で言えば“大いに無駄を行え”と言いたい。本来業務を行う上で過剰な事や無用な事であっても時間を割いて取り組み、常に余計に調査や検証テストする事が大切。すべてのイノベーションや発明、発見は無駄から生まれてくる。
そのためには興味を持続すること。不思議な事やわからない事、知らない事をそのままにせずに原因を解明し、理解し、知り得るまでとことん突き詰める事が必要。そしてその結果や経験をオープンにすることが大切。人は他人に情報や知識を教えようとする時に一番物事を習得する事ができる。人に教えるということは自分が最も学ぶ事になるということを知ると良い」


■専修大学ネットワーク情報学部 松永教授

「Webの世界は、技術の大きな変革がいつ来るかわからないので、そういった状況になってもついて行けるように準備していくことが、大事だと思います。そのためには、常に新しいものに興味を持って勉強していくという姿勢が大事ですし、新しい技術動向を知るために英語のドキュメントを読んでいくことも欠かせない。この業界で活躍している人は、話しをしてみると知的好奇心にあふれていると思います。」

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