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モバイル版「GREE」の本格化で急成長を続けるグリーが、SIer出身者を続々と採用しているという。畑違いのように思える企業向けSI経験が、ソーシャルアプリビジネスでどう活かされるのか。現場で活躍するエンジニアにその真意を聞く。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:09.11.25
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モバイル向けソーシャルアプリのビジネスでWeb業界をリードするグリー。そのエンジニアには、ケータイ向けWebサービスを開発する特殊なスキルが必要と思われがちだ。企業向けシステム・インテグレーションや業務アプリケーション開発の経験者には一見縁遠い世界。しかし、SI系のエンジニアが前職で得た経験を活かす余地は多く、SI業界で鍛えた開発力は同社の成長に欠かせないものとして、強く求められている。
グリーのエンジニア求人ニーズを探るシリーズ、前回の記事で、荒木英士・メディア開発部プロデューサーはこんなことを語っていた。 ソーシャルアプリと企業向けSI──。一見、畑違いのようにみえるが、大規模システムの構築という点で考えれば、ネットワーク・インフラの設計からさまざまな業務システムの開発に至るまで、SI的な要素は大いにある。ましてや1500万人という膨大なユーザーを想定したプラットフォームを設計する上では、こうしたインフラ部分の開発力の優劣が、勝敗を決定づけるといっても言いすぎではないのだ。 また現在は、ソーシャルアプリに主軸を置いているグリーだが、もともとはPC版SNSからスタートした会社。SNSとソーシャルアプリの可能性を考えれば、今後さまざまなサービスが生まれてくることが容易に想定できる。
それを実現するためには、法人向け、コンシューマ向けを問わず、アーキテクチャの設計からシステム運用にいたるまでのさまざまなサービス開発のスキルをもつSI系エンジニアの必要性が高まっている。
「サービスの企画立案から、ソーシャルアプリの開発、さらに事業の運営まですべてのフェーズにエンジニアが関われるというのが最大の面白さだと思います。少人数ということもあって、一人の担当分野や裁量範囲が非常に広い。決定権の多くの部分が現場に移譲されているので、意志決定のスピードも前職とは比較にならないほど速いのに驚きました」
企画からサービス立ち上げまでわずか数週間ということも、グリーでは決して珍しいことではない。 大手SIerのシステム開発組織が上意下達のピラミッド型だとすれば、グリーのエンジニア集団はフラット型。ピラミッド型は定型的なシステムを一気に仕上げるには効率的だが、ユーザー・ニーズを敏感に感じながら、その都度サービス内容を拡充し、それに合わせてシステムを改変していくような柔軟性には欠ける。そのことを澤は転職してあらためて実感するようになった。
澤と同時期に、SIerから転職してきた和田洋樹(30歳)は、現在、課金システムや広告販売管理システムといった基幹システムの開発に携わっている。 こうした開発手法が可能なのは、社内にそれだけスキルの高いエンジニアがいるということに加え、ほとんどのソーシャルアプリやシステムを社内で開発するという「自社開発の思想」が徹底しているからでもある。 大手のSIerでは、協力ソフトウェア会社やオフショア開発部隊に対する外注管理スキルが中間層のエンジニアに求められてくるものだが、グリー流の開発ではそうした外注管理はほとんど必要ない。企業によっては外注比率を高めることでより効率的で低コストの開発を進めることも不可能ではないが、現在のグリーはあえてその選択をしていない。社内のハイスキルのエンジニアが集中的に開発したほうが、より速く良いものができるという信念があるのだ。
もちろん3人とも前職での経験がムダだったとは考えていない。
山家は専門に担当する技術については前職からの継続性があるという。 澤もまた、「技術的には開発言語やRDBMSが異なったりしますが、前職で技術的な基礎を身に付けたことが大きく役立っている。技術以外のことでも、グリーはまだ若い会社なので業務フローなど改善できる余地はたくさんある。その際、前職での経験を思い出して、プロジェクトの進め方を変えることもあります。」と語る。
ただ、澤は「もっと早くグリーへ転職してもよかった」と思うこともある。エンジニアの成長にとって「グリーでの1年は前職の数倍も濃密な時間だった」ことを実感するからだ。 六本木にあるグリーのオフィスの受付にはディスプレイがあり、日本地図上にGREEの登録ユーザー数が県別で刻々と表示されている。会社の成長スピードを実感する瞬間だ。急成長のSNS・ソーシャルアプリ業界。自分たちがそれを作っていくというモチベーションと実感の深さが、グリーのエンジニアは、もしかすると他社のエンジニアとは違うのかもしれない。グリーにはどういうタイプのエンジニアがいて、これからはどういう人を求めているのか。
「たしかに、グリーのエンジニアは仕事への熱意というのが全然違いますね。『GREE』をより良くしたいと思い、次々にアイデアを出して、それを自分の力で実現していくという人がここには多い。だからこそ、成長意欲のある人はものすごく刺激されると思うんですよ」 「平均年齢29歳と若く、年齢層が近い人が多いことは私にとってはいい環境ですけれど、そもそもグリーでは年齢の上下というのはあまり意識したことがない。重要なのは、今目の前にある課題にどう取り組むか、その解決方法を周囲に対してきちんと説明できるかどうかだけです。変化の大きいWeb業界では前にこうやったからという経験主義に依存しちゃうとダメなんですよね」と、和田も言う。
山家が求めるエンジニア像も、他の二人と共通するものがある。
「GREE」を支える、SIer出身の3人のエンジニア。最後にこれからの抱負を聞いた。 「転職前は、一人で新しいサービスを立ち上げる力をつけたいと思っていましたが、グリーに転職してそれが実現できました。ただ、同時に一人で出来る事の限界も感じました。リーダーとしての私のこれからの目標は、“さらに多くのユーザーに使ってもらえる素晴らしいサービスを作るために、より良いチームを作っていくこと”です」(澤)
「技術であれマネジメント能力であれ、自分にできることを少しずつ増やしていく。将来は、3000万人会員を支えているかもしれないし、自分で会社を立ち上げているかもしれない。どんな立場になっているかわからないけれど、エンジニアとしての幅が広がれば、どんな将来像も実現できると思っています」(山家) |
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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る
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