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年収の増減は転職にあたって最も気になるところ。自分をアピールし、交渉して年収をアップさせるチャンスでもある。Tech総研では、2007年以降に転職した経験のあるエンジニア187人に、転職時の年収交渉の有無や、その結果として変化した年収に対する満足度を尋ねた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也) 作成日:08.06.06
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転職では必ず年収がアップするとは限らない。今回の調査では、転職後に年収が「増えた」人は全体の25%、「変わらない」が17%、そして「減った」という回答が58%あった。近年の同種の調査の中で、「減った」という回答がこれだけあるのは珍しいことだ。 |
DATA1 「転職で年収が減った」は約6割 |
例えば、Tech総研が2004年から2006年12月の間に転職したことのあるエンジニア300人に行った調査では、6割が年収アップと回答している。またこのときは、20代から30代前半にかけてはほぼ100%の人が「転職で年収が増えた」と回答しているのだが、今回は20代前半で50%、20代後半で64%、30代前半でも62%が「年収減」と回答している。ただし、その年収変化を見てみると、平均してマイナス27万円と大きなダウンではないようだ。 今回の調査における最大の関心は、転職にあたって給与に関する交渉を行ったか、交渉したとすればどのような交渉をしたか、ということである。全体では「交渉した」人が41%、「交渉しなかった」人が59%で、その数字は拮抗しているとはいうものの、交渉しない人が多いという結果になった。 |
DATA2 年収交渉したエンジニアは約4割のみ |
年齢別では、「交渉派」が最も多いのは20代前半の50%。30代前半の37%に比べるとその違いは歴然としている。これもやや意外な結果だ。まだ職歴の短い20代前半には、年収を交渉する余地は少ないと思われがちだが、そうではないようだ。むしろ、経験の少なさに開き直る形で、大胆に年収交渉に臨むという態度がうかがえる。この年代の転職に対するドライな感覚の表れといえるかもしれない。 むしろ、年収の増減が自分の生活設計に大きな影響を与えるはずの30代前半層が、年収交渉に対して控えめであるのは、どうしたものだろうか。もう少し積極的になってもよいと思われるのだが……。もちろん交渉した結果、提示年収が転職前よりも増えればそれに越したことはないが、そうはなかなかうまくいかないもの。 「交渉派」のうち年収が「増えた」人は25%、「変わらない」が25%、「減った」が50%である。この数字は「非交渉」の場合でもそう変わらない。「非交渉派」でも「増えた」人は25%、「変わらない」が12%、「減った」が63%である。 |
DATA3 交渉の有無が年収の増減を決める? |
とはいえ、交渉することが無意味だという結論にはならないだろう。交渉とは辞書の定義によれば「相手と話し合いをして、取り決めようとすること。かけ合うこと」である。交渉を通してはじめて、相手が本音のところで何を考え、自分が本当は何を得たいかが見えてくるものだ。 転職においてもそれは同じだ。転職は、転職先の候補を見つけ出し、自分との適性を検討し、自分の希望を述べ、自分を売り込むことから始まる。単に相手の言うことをうのみにするのでは、転職する意味がない。中でも年収交渉は「この価格で自分の仕事の能力が売りたいのだが、買ってくれるのか」という、まさに市場取り引きである。 たとえ、その希望が叶えられないとしても、さまざまなネゴシエーションの過程で、相手が自分に望んでいることや相手が自分をどう評価しているかがわかってくる。つまり、自分の市場価値がわかるまたとない機会なのだ。 |
さて、交渉したという人は、具体的にどのような交渉の仕方をしたのだろうか。その実際を聞いてみた。効果的な年収交渉の方法を探るうえでも、興味深い回答である。 まず転職情報誌の記述や転職エージェントの話と違う場合に、それを指摘することは、交渉の基本中の基本である。交渉の過程で、相手の言っていることが変わってくる場合もあるから、きちんとチェックしておきたい。交渉の条件・基準になるのは前職での年収額だ。前職を基準に交渉に臨んだ人が多かった。 |
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また、生活の困窮を訴え、いわば泣き落とし的かつ不退転の決意で臨んだ人もいる。 |
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前職基準というよりは、自分の能力の「絶対評価」を求めた人も少なくない。 |
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中には年収交渉は、やる気のポーズと断じる人も。交渉は相手の気持ちを読み、なんらかの意思決定を引き出す駆け引きでもあるから、こうしたポーズも場合によっては有効かもしれない。 |
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年収がそう変わらないとしたら、ほかの待遇面の向上を求めるというように、二段構えで交渉に臨むのもひとつのテクニックだ。なるほどと思わせるものがある |
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交渉は転職希望者と人事担当者の1対1で行われるもの、とは限らない。転職エージェントを活用するのも重要な方法だ。「お金のことを切り出すのはどうも気が引ける」という人には、この方法をぜひともおすすめしたい。むろん、そのためには事前に転職エージェントと、どれぐらいアップすれば満足か、という“獲得目標”を共有化しておくことは大切である。 |
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アンケートで過半数を占めた「非交渉派」が、なぜ交渉しなかったか、その理由も確認しておきたい。もちろん転職先から提示された金額におおむね満足している場合には、それ以上の交渉は必要ないかもしれない。 しかし、理由の多くは以下のように、どちらかというとネガティブなものだった。中には最初からあきらめている人もいた。 |
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給与が転職理由のすべてではないことはもちろんだ。自分にとってより面白く、価値のあると思える仕事に就くためには「給料は二の次」(Web系システム開発/29歳)と考える人がいることはけっして不思議ではない。ただ、そのことと、給与について敏感になることはまた別次元の話だと思うのだが、いかがだろうか。 少なくとも、以下のコメントのように、次の年収アップの手だてを考えながら、年収交渉には前向きの態度で臨みたいもの。そのほうが、結果的には転職を成功させることにつながるのではないだろうか。 |
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年収交渉をした人もしなかった人も、結果に満足できればそれでよし。しかし、今回のアンケートでは、年収変化の満足度について「どちらともいえない」が24%、「やや不満である」が14%、「かなり不満である」が11%と、不満傾向が48.1%とかなりの数字に上っている。この「モヤモヤ感」はどうしたら晴れるだろうか。結果がどうあれ、年収交渉を行うだけのスキルと自信さえあれば、少しはそれが晴れるのかもしれない。 |
DATA4 転職後の年収に対する満足度は? |
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