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新しい技術を生み出せる、スキルが広がる、多彩なキャリアパス…
これからの上流職種★検証・評価&サポートエンジニア
顧客満足度の向上を図るため、多くの企業が今、先端技術の導入以上に注力しているのが、検証・評価、サポートサービス分野である。今後“品質”がますます重要視され、注目職種になることは必至の検証・評価、およびサポートエンジニアにスポットを当て、その魅力を探ってみた。
(総研スタッフ/関洋子) 作成日:08.03.18
Part1 「検証・評価エンジニア ユーザー視点で設計に貢献!」
 耐震偽装や食品偽装、世間で話題を集めたこれらのニュース。これは、品質に対する社会の意識が高まっていることの表れである。これまで品質に対する要求がそれほど厳しくなかったソフトウェアの世界においても、この傾向はしかり。各IT企業は品質を向上させるべく、さまざまな取り組みを行っている。そんな中、これからの活躍に期待が集まっているのが、検証・評価エンジニアである。
Case1 “最短距離”で品質を高めていく面白さ 株式会社シーイーシー
● 評価組織を立ち上げるコンサルティング的な仕事も
「お客様が、何をどのように報告したいかをヒアリングし、それに合った評価組織をお客様とともに考えます」。
 沼倉さんの現在の仕事は、検証・テストエンジニアという枠を超え、顧客企業のモノの質を高めるための検証・評価方法を指南する、コンサルタント的な役割である。
 検証・テストエンジニアとしてのキャリアのスタートは、携帯電話の評価をする部署に配属されたこと。「発売前の最新携帯電話に触れて、不具合を見つけることが楽しかった」沼倉さんは、検証・評価の仕事にまい進し、2年たたないうちに機能リーダーになる。「お客様の要望を聞いてテスト計画をつくること、仲間とコミュニケーションしながら、計画を実行していくことの面白さに目覚めていった」と言う。

● 新しい評価技法を生み出せるのが魅力
 評価要員からどんどんスキルアップしていく間で、仕事の面白さも変わってきたという。当初は「不具合を見つけることが楽しかった」と言う沼倉さんだが、現在は不具合を見つけることよりもむしろ、「どうやったら最短距離で品質を高めることができるか。その方法を見つけていくことが楽しい」と言う。「この世界はまだ、標準化された技法やルールが確立されているわけではない。つまり、自分がデファクトとなる技法を生み出す余地がある。そこが技術的に面白いところかもしれません」(沼倉さん)。

● まだまだ未開の分野、自分がこの業界の伝道師に
「検証・評価を経験することは、キャリアパスの広がりにつながるのは間違いないでしょう」と沼倉さんは言う。その根拠は上流工程の組み立てと同時に、テスト設計を行うWモデルを取り入れる企業が増えていることだ。「検証のスペシャリストとしてはもちろん、プロジェクトマネジメントを極めていくこともできます。またソフトウェア設計職など上流職種への転身も今後、可能になるでしょう」と沼倉さん。
 沼倉さんが目指すキャリアは、「検証・評価の重要性をもっと企業に広めていくこと」だという。「既に品質に関するセミナーやシンポジウムで講演するチャンスをいただいたりしています。今後は最適な技法や解決策を生み出し、それをまとめて書籍にするということにもチャレンジしていきたいと考えています。開発に携わってきた方で、テストに興味を持ちプロジェクトリーダーとして活躍することのみならず、今後のPROVEQで開発プロセスの上流工程にあたる要件や仕様の定義改善、テスト設計等も共に学び実践したいと考えている方、そのほかにもさまざまなことにチャレンジしていきたいと考えている方には面白い仕事だと思います」。
沼倉靖弘さん
沼倉靖弘さん
PROVEQサービス本部
東日本サービス部
主査
今から約9年前に評価要員から機能リーダーへとスキルを積み上げ、国内、海外の拠点を統括するプロジェクトリーダーも経験。シーイーシーが提唱する第三者検証サービス「PROVEQ」の立ち上げにも尽力している。
Case2 “仕様設計段階”でユーザー視点を反映させる 株式会社V&V
嶋田雄次さん
嶋田雄次さん
第2技術部リーダー
2000年4月富士ソフトに入社。海外向け携帯端末におけるメールシステムの開発から評価テストまで、一連の開発プロセスを担当する。その後、検証・評価を専門に行うV&V事業部で、3G携帯の評価に携わる。2008年1月、同事業部が分社化するのに伴い、現在はV&Vで活躍中。
● 進化し続ける3G携帯のメールシステムを検証
 2004年に検証・評価専門の部署に異動して以来、第三世代(3G)携帯電話のメールシステムの検証・評価エンジニアとして、キャリアを積んできた嶋田さんは、入社当初はメールシステムの開発工程から携わっていた。「検証・評価の仕事では開発をしないイメージがあるかもしれませんが、実際には評価をやりやすくするためのツールなどは自分でつくるんです。開発から離れるという感覚はまったくありませんね」と嶋田さんは語る。
 現在、嶋田さんが携わっているのは3G携帯端末に搭載されたメールシステムの総合的な検証。「携帯端末のメールシステムに関する検証項目は増えていく一方」と嶋田さん。というのもメールは単体で使われるのではなく、カメラやインターネットなどと連携して使われるので、それらの動作をすべて検証していくことになるからだ。「同じ仕事はひとつとしてないんです」(嶋田さん)。

● レアケースのバグを見つけたときにやりがいを感じる
 検証業務の重要性は、「レアケースのバグを見つけ出すか」だという。「バグを出そうと思って開発している人はいません。開発者にとっては完全と思ったプログラムからバグを見つけるわけです。大変ですが、レアケースのバグが見つかると、やりがいも大きく自信にもつながりますね」と嶋田さん。だが検証エンジニアにとって、バグを見つけること以上に難しいのは「開発者への伝え方だ」という。「誰が見てもバグだと判断できるものを伝えるのは簡単です。難しいのは私にとって“バグ”と感じるものも、人によっては“バグじゃない”と感じる。自分だけの意見ではなく、ユーザーの気持ちになって周りの人の意見を聞きながら判断し、開発者にそれをうまく伝えることが大事になるんです」(嶋田さん)。

● 仕様書を見ただけでバグを見つけられるスペシャリストになる
 検証・評価業務の専門担当になって約4年、少しずつ「仕様書を見ただけでバグが出そうな場所の予測がつくようになった」という。今後は仕様書の段階で抜けがあるかどうかをチェックし、設計にフィードバックしていくようなことまで携わっていきたいという。「私たちが携わっているのは、携帯端末の総合的な試験。問われるのはユーザーの視点です。仕様書の段階でユーザーの視点から見た不備をフィードバックしていけるようなスペシャリストになりたいと考えています」と嶋田さん。「将来はさまざまな情報機器にもチャレンジしてみたい」──嶋田さんの夢はますます広がる。
Wモデルとは?
米国のソフトウェア技術者Andreas Spillner氏が提唱した、上流工程からテスト設計する開発モデル。このモデルを採用するメリットは、要求の漏れや設計上の抜け、あいまいさが事前に明らかになり、設計品質が向上することだ。このモデルを採用する動きが、加速している。
図1.Wモデル(資料提供:シーイーシー)
Part2 サポートエンジニア「ユーザーの満足度を肌で実感できるやりがいのある仕事」
 サポートエンジニアとひと口で言っても幅が広い。あるプロダクトやサービスに対して、電話や電子メールの問い合わせに応えるというプロダクトサポートから、アマゾンのように自社システムを他社に展開するためのサポートまで含まれるからだ。共通項は顧客と接する仕事であるということ。自分の問題解決能力が顧客満足度にダイレクトに反映する面白さは、サポートエンジニアだけが得られる醍醐味だろう。
Case1 “超高度なSCMロジック”が身につく アマゾン ジャパン株式会社
● ユーザーに近い立場でシステムをサポートする
 網さんが所属しているのは商品の仕入れから物流センターへの納品、そして物流センターからお客様への配送に至るまでの業務をシステム的にサポートするチーム。「担当しているのは、EDIシステムなどのシステム中心です」と網さん。仕入れ先の情報システム部門担当者やそのビジネスパートナーであるアマゾンのバイヤーを対象に、EDIなどのシステムの導入、サポートを担当している。「日本のユーザーから求められたシステムの修正や変更、機能強化などについて、米国スタッフと話をし、調整するのもサポートの仕事です」(網さん)。
 新卒で勤めた会社では、開発にも携わっていたという網さんが、サポート職を目指したのは、「よりユーザーに近い場所で仕事をしたかったから」だという。「ユーザーからありがとうと言われると、やっぱりうれしいですよね」(網さん)。

● 非常に高度なSCMのロジックが学べるのが魅力
 前職は社内ITスタッフだった網さん。「社内ITはパソコンのセットアップやサーバーの設定などという仕事もある。一方、今は業務に直接関係するシステムに携われるというのが、いちばんの魅力です。しかもそのシステムのロジックは、優秀な技術者が考えた非常に高度なもの。毎日がエキサイティングで、ワクワクしながら仕事をしています」と網さん。
 そう言いながらも、それなりに苦労することも多い。「コミュニケーションのとり方は難しいですね。特に米国本社スタッフや海外取引先とのやりとりで難しさを感じます。言った、言わないということを避けるため、相手が社内であってもミーティング時には必ず議事録をとり、メールするようにしています。そうするとお互いの認識が共有されますから」(網さん)。

● SCMに関する知識を高めていきたい
 現在は外部との接続部分のシステムをサポートしている網さん。しかし所属チームでは1〜2年ごとに、同じチーム内で別の機能を担当するようローテーションがある。「需要予測や在庫管理などのシステムにも携わり、SCMに関する知識を高めていきたい」と網さん。SCMに関する知識を十分につけることができたときに、次のキャリアが見えてくるのでは、という。
「当社のシステムサポートは技術力を深められるだけではなく、海外とのコミュニケーション力も高められる、バランスのよい環境。やることが多く大変ですが、スキルアップできますよ」(網さん)。
網俊貴さん
網俊貴さん
Opsシステムソリューションチーム
Tran/SCプログラムマネージャー
法学部卒業後、米国の大学院に進学し、経営情報システムを学ぶ。大学院修了後、外資系コンサルティングファームに入社。SCMシステムやERP導入プロジェクトに携わる。その後、外資系非鉄金属メーカーに転職、社内ITスタッフとして社内システムのサポートを担当。昨年秋、アマゾン ジャパンに転職。
Case2 問題発見・解決能力を高め、“上流職種”へ フィールディングシステムテクノロジー株式会社
丹羽直樹さん
丹羽直樹さん
サービス事業本部
システム運用第一サービス部
東関東センター
主任
82年、新卒でNECフィールディングに入社。約6年間、汎用コンピュータのオペレーション業務に携わる。その後約10年間はサーバーのシステム管理を担当。2007年フィールディングシステムテクノロジーの設立とともに同社に出向。運用管理およびテクニカルサポートに携わる。
● 最新の技術で運用とテクニカルサポートをする
 丹羽さんの担当業務は運用サポート。「顧客のサーバーが設置してあるデータセンターに常駐し、システムの構成管理やリリース管理を実施しています。その中で、オペレータやユーザーからの問い合わせに対応するテクニカルサポート業務まで行っています」(丹羽さん)。
 丹羽さんがテクニカルサポートも担当する運用業務を目指したのは、「テクニカルサポートは常に最新の技術を身につけ、道なき道を切り開きチャレンジすることができるやりがいのある職種だと思ったから」と言う。またテクニカルサポートであれば、今後、どんな仕事でも必要となる問題発見能力や問題解決能力の強化も図れる。丹羽さんは「キャリアの幅が広がる職種だ」と判断したのだ。

● 一つの問題解決が線となり、スキルアップを実感
「いちばんのやりがいを感じるのは、困っている人のために何かができたときです」と丹羽さんはいう。大きな問題が起こった場合は、メンバー全員が一丸となり解決していくこともある。「そういう一体感もこの仕事ならではの醍醐味です」と丹羽さん。
 一方で、苦労することも多い。例えばオープン系システムがトラブルを起こした場合、ハードに原因があるのか、ソフトに原因があるのか、その切り分けが難しいという。「そのトラブルの要因がひとつではなく、重なっていることも多い。常に自分の技術力を磨いておかなければ対応できません。でもその難しさが面白さでもあるんですけどね」。
 そうやって問題を解決していくうちに得た知識は点となり、やがてそれは線となっていく。「資格も容易に取得できるようになるなど、スキルアップが実感できる職種なんです」。

● トップマネジメントへの道を目指していきたい
 将来にはどんなキャリアパスが考えられるのか、丹羽さんに尋ねたところ、こんな返答があった。「テクニカルサポートで得た知識や経験を生かして運用系の上級スペシャリストやシステムマネジャー、さらには開発系の知識もある人なら運用現場を熟知したプロジェクトマネジャーやコンサルタントへのパスも考えられます」。
 丹羽さんはさらに「問題発見能力と問題解決能力を磨いていけば、トップマネジメントへのキャリアアップも夢ではない」と言う。「その夢をかなえてみたい」──。丹羽さんはそう将来を展望する。
市場から見ると、ユーザーに近い検証・評価、サポートは上流職種だ
 上流工程とは本来、開発・設計の初期段階を示す言葉である。これまで下流に位置づけられていた検証・評価業務は、先述したWモデルが一般化すると上流職種といえるだろう。一方のサポートは、顧客(市場)の視点から見ると、最前線に位置する上流職種ということができるのではないか。
 いずれの職種も、顧客の要求、社会のニーズをいち早く把握できるという魅力がある。これこそが、将来のキャリアパスを広げる源泉なのかもしれない。
 例えばシーイーシーの検証エンジニアの場合は、下の図のようなキャリアパスを用意している。ここには含まれてはいないが、検証・評価の知識を得て、設計業務に就くという道も考えられる。
検証・評価エンジニアのキャリアパス例(資料提供:シーイーシー)
 一方サポートエンジニアの場合はPart2でも説明したとおり、さまざまなサポート職があるため、キャリアパスもおのずと多彩になる。
 例えばパッケージソフトのテクニカルサポートであれば、テクニカルサポートの分野でステップアップしマネジャーやスーパーバイザーになる道もあれば、プロダクトに関する知識を生かして、セールスや導入コンサルに転身する道もあるだろう。フィールディングシステムテクノロジーのような運用サポートの場合は、運用の上級スペシャリストや運用コンサルに加え、運用の視点を考慮した上流SEになることも可能。そのほかにもアマゾンのように、ブリッジSEや社内SEなどになる道も考えられる。
 今後、各IT企業は品質向上、顧客満足度向上を目指して、これらの職種をより充実させていくことは間違いない。「ユーザーに近いところで仕事をしたい」と考えているのであれば、転職を検討してみてはいかがだろう。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
今回、検証・評価、サポートエンジニアを特集しました。これまでTech総研であまり取り上げてこなかったテーマだけに、非常に興味深く取材できました。ユーザーに近い仕事はいろいろ大変ですが、やりがいもありますよね。私たち編集者も読者を見て記事を作っているのですが、その参考になるのがみなさんの声。おしかり、励ましなどなど、これからもいろんな声を聞かせてください。

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