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外国法人との技術リレーション経験を武器に、海外プロジェクトに挑戦!
通信キャリアからSCEIのPS2ネットワーク認証システム業務へ
PlayStation2(PS2)を全世界へ普及させたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)は、オンラインゲームの拡充に動いている。そのために欠かせないのが認証システムだ。今回の応募者は、海外展開を前提としたその業務を希望した。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:03.07.16
THANKS! 技術開発にこだわりを持つエンジニアが多い一方、培った技術を生かして別の分野に挑戦するケースも増えてきました。中でも、海外展開を含めた大きなプロジェクトに人気があるようです。そんな志向のある方は、ぜひ参考にしてください。
応募したエンジニア 企業の面接担当者
応募したエンジニア
横手亜貴さん(当時29歳)
企業の面接担当者
開発研究本部ブロードバンド事業推進部
DNASオペレーション室 室長
橋本 稔氏
当時の職種 技術広報
募集職種 ネットワーク認証システム業務スタッフ
業務の内容 自社が行っている研究開発活動のすべてに関する宣伝・広報
仕事内容 PS2ネットワーク認証システムの国内・海外現地法人とのリレーション業務ほか
職務経歴 米国の大学を卒業後、大手通信キャリアに入社。研究開発を3年、米国の研究所でリサーチ業務を2年半、帰国後技術広報を半年
応募資格 ネットワークシステムの企画・運用経験、英語コミュニケーション能力など
志望動機 前職で海外との技術リレーションに興味を抱き、SCEIの業務内容にひかれた
募集背景 PS2ネットワーク認証システムを全世界へ適用させるためのスタッフ増強
人事部がいったん選考してから応募職種に該当する部署へ書類を渡す。部長、室長クラスが候補者を選び出す。 部長、室長、課長など2〜5人が面接する。所要時間は30分から1時間。

【通過率:約3割】
1次面接をした部長、室長に関連部署の部長クラスが加わり、2〜3人で面接。時間は約1時間。
【通過率:約5割】
各技術部門の責任者にあたる役員、人事部長など4〜5人が面接。時間は30分から1時間。
【内定率:7〜8割】
早ければ、3次面接を行ってから1週間以内に内定の旨を連絡。
Part1 志望動機、職務経歴、転職理由

大手通信キャリアの海外現地法人に勤務

橋本:
 それでは、面接を始めます。【Point1】最初に志望動機を聞かせてください。


横手:
 私は2年半ほどUSAの現地子会社へ出向していました。研究専門の会社です。
【Point2】米国人技術者やほかの会社の専門家たちとプロジェクトを立ち上げ、テストネットを作って次世代携帯電話ネットワークの研究をしました。外国人とコミュニケーションをとり、ネゴシエーションしながらプロジェクトを遂行するのは、苦労がある半面、面白さや充実感が得られます。私にはとても合っている仕事に思えました。

 今回、御社へ応募させていただいたのは、担当業務が海外現地法人との技術リレーションということで、その仕事と似通っているのではないかと思えたからです。


橋本:
 わかりました。では、【Point3】これまでの仕事内容を説明してください。


横手:
 USAの大学でコンピュータサイエンスを勉強し、卒業後の1997年4月、○○○(大手通信キャリア)へ入社しました。最初の3年間は研究開発部門でソフト開発に携わりました。半年先に開始されるサービスのためのソフトです。メーカーさんと相談しながら仕様を考え、プログラミングとテストを経て、実際のサービスインまで持っていく役割でした。

 そのあと、先ほど説明しましたようにUSAの研究所へ移りました。2010年を目指して実用化予定の、技術の研究に参加したのです。帰国は昨年秋でした。今は研究開発部門の技術広報を担当しています。○○○が行っている研究開発活動全般についての取材対応、プレスリリース、施設見学対応などが仕事です


大きなプロジェクトを推進していく仕事の醍醐味

橋本:
 【Point4】確認の意味で伺いますが、転職したい理由はそもそも何なのですか?


横手:
 理由はいくつかあるのですが、最も大きいのはUSAでの業務経験です。外国の技術者たちとコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていく仕事。それがとても楽しく思えたのです。

 日本へ帰ってからもそういうタイプの仕事に就ければよかったのですが、担当は技術広報でした。USAでの経験をどこかで生かすことはできないだろうかと考えたとき、他社へ目を向けるのもひとつの方法だと判断したわけです。

Point 1
[面接官]当社および応募職種にどれほど興味を抱いているか。それは、どうしてなのか。最初にそこを見たいのです。当社で仕事をすることに対しての「熱い夢」や「強い思い入れ」を、第三者が聞いてもわかるように語ってほしい。
 
[応募者]初めての転職活動でしたが、志望動機は当然、質問されると思っていました。しかし、特別に答えを用意していたわけではありません。ありのままを正直に話しました。

Point 2
[応募者]実際の面接では、この後に続く内容をもう少し詳しく説明したような気がします。応募した職種に役立つはずのアピールポイントであると同時に、まさに私が求める仕事の性格でもあるからです。
 
[面接官]この経験に基づく業務スキルと志向性は、募集職種にぴったりでした。こういう話が最初から出てくると、面接するこちら側にも熱が入るのです。

Point 3
[面接官]職務経歴を口頭で説明してもらうのには、2つの狙いがあります。1つは、提出された職務経歴書では見えない経験の起伏を感じ取りたい。もう1つは、仕事内容の変化をわかりやすく説明できるかどうかを見たいのです。いわゆるプレゼン能力の判定です。
 ちなみに、横手さんの説明は極めて簡潔にしてスムーズでした。プレゼン能力は申し分ありません。

Point 4
[面接官]横手さんは、当社への志望動機を説明する際、転職したい理由を推測がつくように話しています。わざわざ尋ねるまでもなかったのですが、はっきりとした答えを聞きたくて質問しました。
Part2 仕事の志向性と技術知識

技術をベースにした「新しい何か」を作りたい

橋本:
 横手さんのお話を伺っていると、研究開発から企画へと、ご自分の関心も実際の経歴も重心が移っているようですね?


横手:
 企画といいますと、どういう意味ですか?


橋本:
 何かそのもの自体を自分で作り出すのではなく、作り出された要素を使って何かをできるようにする。そういう意味です。【Point5】率直なところ、研究開発寄りを志向しているのか。それとも、企画寄りを志向しているのか。どちらですか?


横手:
 どちらが自分に合っているのかといえば、企画のほうです。研究開発は狭い範囲で深く取り組めますから、それなりに面白さは感じました。しかし、企画ですと、研究開発よりも人のネットワークを広げて、より多くの人たちと力を合わせて仕事をします。こちらのほうにより充実感を感じます。


橋本:
 最初の3年間、具体的にはどんなソフトの開発に携わったのですか?


横手:
 【Point6】主にIPレイヤーのプロトコルと自社独自のプロトコルの開発です。プログラムを実際に書くのは発注先のメーカーさんですが、仕様決めとテスト、製品としての完成は、社内の人間が従事していました。


橋本:
 ネットワークセキュリティーの知識はありますか?


横手:
 そう深くはありませんが、IPの研究をしていた関係で、研究テーマにセキュリティーが含まれていた時期もあります。


外国企業とのコミュニケーションギャップ

橋本:
 【Point7】最近の仕事で苦労した話を何か聞かせてください。


横手:
 USAでの仕事に関してでもいいですか?

橋本:
 構いません。ずっと以前の出来事でなければ。


横手:
 日本で開発をしていたときも、メーカーさんをはじめ、たくさんの人数でプロジェクトが動いていました。そのときに当たり前だったやりとりを、私はそのままUSAの研究所へ持ち込んでしまったのです。

 ところが、USAではそれぞれの会社のバックグラウンドもカルチャーも違いますから、日本標準ではうまくいかないんですね。【Point8】希望することをプッシュするだけでは受け入れてくれません。ある程度、向こうの意見を取り入れつつ、妥協点を見つけ出す必要がありました。日本での進め方とは別の方法を探して、実行しなければならなかったことに、意外と苦労をしました。





Point 5
[面接官]入社後、横手さんに担当してもらう仕事は研究開発ではありません。しかし、扱うのは認証システムです。技術のバックグラウンドが不可欠で、技術系出身者でないとできない、ビジネス寄りの仕事なのです。本心では研究や開発を希望している方は適しません。
 
[応募者]これほど明確には質問の意図はわかりませんでしたが、ここで「研究開発寄りを志向している」という答えはあり得ません。もしそうなら、この業務に応募するはずがないのです。

Point6
[面接官]PS2のネットワーク認証システムのアーキテクチャ。これを造作なく理解して、第三者へ説明できるくらいの技術レベルが、この職種では最低限必要です。  横手さんが前社の入社当初からネットワークプロトコルの開発、それも仕様決めに携わっていたと聞き、ネットワークや通信の技術に関する基礎知識は十分だと、即座に判断しました。

Point 7
[面接官]仕事には必ず苦労がつきまといます。それをどう乗り越えたのかを聞きたい。あきらめないとか、チャレンジ精神があるなどもそうですが、苦労を乗り越えて何を学び、どう変わったのかを知りたいのです。
 また、「最近の」と限定するのは、人は考え方も行動パターンも変わってゆくからです。遠い過去の話では意味がありません。

Point 8
[面接官]実は、こういう答えを想定していました。異文化コミュニケーションで苦労した体験の持ち主こそ、採用したいのです。
 
[応募者]海外とのやりとりでつき物のコミュニケーションギャップ。これに対応できる人材を求めているとは察していました。ですから、ここは私にとって大きな「売り」の1つです。しっかり伝えなければと思っていました。
Part3 業務への情熱とやり遂げる覚悟

突然始まった英語でのインタビュー

橋本:
 ところで、【Point9】横手さんはゲームをしますか?


横手:
 学生時代にはよくコンピュータゲームをしましたが、今はあまりしません。実は、私は何かを始めるとハマってしまう性格なので、ゲームには軽々しく手を出さないように気をつけているのです。


橋本:
 そうですか(笑)。もう一点、別な話になりますが、横手さんは高校からUSAに行ったんですね? 生活した期間は合計11年半?


横手:
 はい、そうです。


橋本:
 少し英語を聞かせてもらえますか? (Point10)ここから英語で話しましょう。
(橋本氏が英語で尋ね、横手さんが英語で答える形になった。質問の内容は、競合他社の製品についてどう思うか、その製品に対抗してPS2を差別化するには、どんなことが可能だと思うか、など)


本当にこの業務を「やってみたい」と感じるか?

(ここから日本語に戻って)
橋本:
 最後に、横手さんにお願いをしたい業務について説明します。
(橋本氏は、PS2認証システムの仕組み、海外販売子会社3社を通じた、各地域のゲーム制作会社への認証システムモジュールの組み込み要請、日本の運用センターとの連絡などを説明した)


橋本:
 オンラインゲームですから、ゲームタイトル完成後も、サービスは継続して提供されます。緊急対応の体制が必要。それを海外販売子会社とともに作る計画になっています。
 従って、横手さんにもその一員に加わってもらわねばなりません。呼び出しの携帯電話を24時間持ってもらうことになります。そういう仕事ですが、実際にやってみる意欲はわきますか?


横手:
 真夜中に呼び出されたくはありませんが、やむを得ない事態が発生すれば、駆けつけるのは当然のことだと考えます。開発を担当していた時代には徹夜を何度も体験していますし、緊急対応もしていました。
 海外とのやりとりは私がまさに望む仕事であり、認証システムを理解することに関しては、これまでに蓄積した知識が使えると思います。


(このあと、橋本氏は横手さんからの2〜3の質問に答え、面接は終了した)


Point 9
[面接官]この質問の意図は、当社のカルチャーになじみやすいかどうかを探ることにあります。現状、提供しているコンテンツはゲームですから、ゲームに対する親近感はないよりあったほうがいい。
 
[応募者]この質問以降、答えがボロボロになってしまいました。私がSCEIへ応募したのは、ゲーム機のメーカーだからではなく、技術の知識を生かしながら海外とのプロジェクトを実行できる仕事だからです。付け焼き刃でも、ゲームの知識を仕入れておけばよかったと思いました。

Point 10
[応募者]英語力の判定は、選考過程のどこかで行われると予期していました。けれども、目の前の面接官(それも第1次面接の!)が、まさか突然「英語で話しましょう」と言い出すとは、思ってもいませんでした。これには驚きました。
 
[面接官]この職種では英語力が絶対条件です。必ず実力をチェックします。尋ねる内容は何でもいいのですが、私はわざと難しい質問をします。しどろもどろの答えを英語できちんと表現できる人は、レベルが高いのです。横手さんはネイティブスピーカーに近いレベルと感じました。


面接官はここを見た!
●交渉や議論ができるレベルの英語力と英語での業務経験
●ネットワークシステム関連業務のマネジメント経験
●ビジネス寄りの志向性
 PS2ネットワーク認証システムの業務には3領域があり、担当スタッフが異なる。選考ポイントもおのずと異なる。今回の応募者は海外現地法人とのリレーションが希望だったため、上記の3点を中心に選考された。ネットワーク技術の知識は、業務遂行上のバックボーンなので必要不可欠。なお、ほかの担当領域のうち、システム運用スタッフの場合はUNIX、ネットワークシステムの構築、運用経験など、より高度な技術力が求められる。
横手さんはコレで決めた!
「(詳細に業務内容を説明したあとで)
そういう仕事ですが、
実際にやってみる意欲はわきますか?」
 橋本室長の説明は理路整然としていて、わかりやすいものでした。細かな点を確認したかったので、途中で何度か質問をしたのですが、ていねいに答えてもらえました。これで、入社後に担当する仕事をイメージできたのです。これまでの業務経験と結びつく部分が多く、技術の知識も生かせるとわかりました。さらに、エンタテインメントという未経験の事業分野なので、新しいことが学べもする。この仕事をしたいと、入社の意欲が増しました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 今回の面接現場に潜入して感じたこと。それは、「フランクな会話の合間に散る火花」です。テンポよく進む会話がウソだというのではありません。お二人ともコミュニケーションを楽しんでいる。しかし、「ここはキモだぞ」という場面では、キリリと表情が引き締まり、自分の真意を伝えようと努力する様がわかるのです。そしてまた、笑顔で面接が再開されます。
 私の実感ですが、このような面接では応募者の通過率が高い。面接官と応募者が、五分の立場を継続しているからだと思います。みなさんの面接へのギモン、お待ちしています!

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